[EMEA] 偉大なる広告テクノロジー”スタック”

(8/2配信のEMEA記事の日本語版。オリジナルはこちら)

スタックこそが次なるブームだ。誰もがスタックになりたがっている。しかし、問題は、本当にスタックの何たるかを理解し、市場の席巻をもくろむマルチ・スタック・ソリューションをサポートできる十分な数の広告主(買い手)がいるかどうかだ。

「スタック」とは?

スタックとは何か、実際のところ、誰も明確には理解していない。アドサーバーに接続した包括的なプラットホームらしいと、直感的には認識している。スタックとは、(LUMAの)Kawajaタイプのカオスマップに散在する多数のFNACを最終的にまとめるプラットホームである。それぞれのスタックを中心に、メディアバイイング・最適化・効果測定プロセスに付加価値を提供するツールや機能が集まっているのだ。

広告テクノロジースタック構築の理由とは?

持続可能性にとって、スタックの開発は欠かせない。広告テクノロジー業界は、ある形式の感性に対して、手が届くところへ来ている。確固たるビジネスモデルを未だ持たず、ベンチャーキャピタルの支援を受けている企業は、上場への出口を求めているが、今や企業統合の波にまき込まれている。実際、企業統合が進めば、インターネット広告業界の風通しがよくなり、健全性が増すだろう。スタック構築の裏にあるもう一つの動機が、上場への出口の可能性に関連しているのは確かだ。拡張性をもつエンド・ツー・エンドソリューションは、マーケターの予算の大部分を管理・実行(または、媒体社の広告在庫の大多数の収益管理や配信)を提供する。このソリューションは、潜在的なバイヤーとっては、インテリジェントデータモデリング機能や、セマンティックインデキシングにより言葉をターゲットセグメントへ変換する機能より、はるかに価値がある。基本的には、スタックは利益拡大と同義語なのだ。

誰がスタックを構築しているのか?

この質問に答えるのは容易いことではない。スタックの可能性についての解釈は、人それぞれだからである。仮に、完全なエンド・ツー・エンドソリューション、広告主―媒体社、買い手―売り手の双方向性を検討するならば、広告スペースにおける圧倒的な大手としてのGoogleやAppnexus に注目すべきである。Adnologiesは欧州に参入しつつあるから、その動向を注視するのが賢明だろう。IPONWEB や Switch Conceptsのような企業も忘れてはならない。両社の活動は目立たないが、実は多数の広告テクノロジー企業向けの基盤構築を舞台裏でひっそりと進めている。両社ともカスタマイズ比率の大きいエンド・ツー・エンドソリューションの代表的企業となるかもしれない。

競争は、限定的だが、バイサイドまたはセルサイドのどちらかに軸足をおいた企業もある。SSPやDSPにおいては、単一ソリューション以上の提供を目的とした独自のプロポジションを明確に策定し、提供サービスの中にフルスタック機能を組み込もうと目論んでいる。

BlueKai等も、エンドー・ツー・エンドの「データ・スタック」を構築中であるとしている。やはりこの場合もスタックビジネスの解釈次第ではあるが、進化し、マクロレベルやミクロレベルのスタックに似ていく可能性があるのだ。

IBMとAdobe は、ダークホースと言える。両社は、独自のエンタープライズレベルのプロポジションを構築できる確固たる立場にある。両社のポジショニングや方向性は未だ明確ではないものの、仮に彼らがこのビジネスに本腰をいれれば、その資本力ゆえに影響力を持つだろう。

買い手は誰だ?

業界内の識者の多くが、最大4~8スタックで構成されるソリューションになるものと憶測/主張/仮定している。その計算根拠が何であろうと、はたして、この数のエンド・ツー・エンドスタックを維持できる十分な需要があるだろうか?

代理店を保有する企業が販売ターゲットとなるのは明らかであるが、どの企業が今も市場に存在するのだろうか?選択肢を検討してみよう。

– WPP

WPP社 は、24/7 Real Mediaにコミットメントをした。その額はなんと6億4900万ドルだ。WPP は、現在も、そして今後も、他社と提携せざるを得ないが、Googleに対する対抗馬を打ち立てるという同社の戦略によって、ソリューションの社内開発という方向に向かうことは確かと言えるか?

– Publicis

Publicis社はかなり以前から、Googleと運命共同体だ。 同社がGoogle御大から離れることはまずないだろう。仮にGoogleがこの分野で最高だと認識されているならば、多大なる影響力を駆使し、マジョリティ・パートナーとなり、ロードマップや今後の展開に積極的に影響を及ぼせるようにすればいいのではないか?そうなれば、先行投資予算を計上する必要のない、超優秀な社内開発チームを抱えているに等しい。

電通(Aegis

IgnitionOne社が電通にとってエンド・ツー・エンドの広告テクノロジースタックになるかどうかを判断するのは、時期尚早である。電通が、第三者へのアクセスをあっさりと遮断したりするだろうか?より大きな利益の確保を考えれば、同社が近い将来この戦略を実行することは考えられないことではない。

– Omnicom

つい先日、MediaMindとOmnicomが国際的な契約を締結したとの報道があった。MediaMindは、堅調なアドサーバービジネスを展開している。また、同社は、RTB機能開発の真っただ中にある。この種の契約を締結するとは、MediaMindは非常に賢明かつタイムリーな一手を打ったものだ。同社がOmnicomが世界展開する唯一の広告テクノロジーソリューションになるとは考えにくいが、切望している「推奨パートナー」としての地位は獲得できるだろう。

– Havas, IPG

これはちょっとしたチャンスかもしれない。Digilant(旧Adnetik)は、Havasから距離を置いている。つまり、Havasにとっては大手スタックプロバイダーへの道が開かれたといえるだろう。Havasから離れるというDigilant(Adnetik)の決断は、その時点では理にかなうものだった。しかし、結果論ではあるが、Havasの「推奨パートナー」のままでいるほうが、ベターな戦略だったのではないか?同様のことがIPG、特にCadreonにも言える。現在IPGグループ内には、どうやら有力な広告テクノロジーパートナーは存在していないようだ。

統合広告配信サービステクノロジーとデータ管理能力を持ち合わせるDSP企業は、HavasやIPGと親しくなることをお勧めする。

もちろん、上記では、主要な持ち株グループ企業以外に存在する巨大なチャンスには触れていない。広告テクノロジースタックプロバイダー向けに実行可能なビジネス戦略を提示する独立系代理店は多数存在している。しかし、米国以外を見渡した場合、そのようなチャンスが本当に存在しているだろうか?

独立系代理店レイヤーに、エンド・ツー・エンドのスタックを構築することは実際に可能だろうか?彼らはまだ第三者にウェブの実務を外注しているというのに。

仮に上述のシナリオが実行されれば、恐らくIBMやAdobe のような企業はメディアビジネスに進出したいとさえ思わないだろう。むしろ、両社は、スタックを巡る泥仕合は他社にまかせ、CMO/CIOの権限内に鎮座するエンタープライズレベルのデータ製品の構築を継続するだろう。

媒体社の動向は?

媒体社については、別にテーマを立てて記事にする価値がある。ATS Londonの開催日が迫っているが、数週間内に媒体社に関する記事を掲載するので、お見逃しなく。

結論としては、スタックを巡る競争はまだ始まったばかりだということだ。スタックの所有競争の過程で、今後一層、企業統合、ジョイントベンチャー、戦略的提携が見られるだろう。しかし、重要なのは、大企業が独自のエンド・ツー・エンドの戦略を実行する中、一体どの企業にこのエコシステムを購入し、実行に移すだけのリソースがあるのかである。

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大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。