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プライベート・エクスチェンジ: 媒体社の期待に応えるソリューションか?

 By Gareth Holmes, UK Publisher Director at PubMatic

(8/7配信のEMEA記事の日本語版。オリジナルはこちら)

媒体社はようやく、大手のデジタル広告主や代理店が相次いで採用しているオーディエンス主導の自動入札シナリオの現実に向き合い始めている。それに呼応して、大手の媒体社は、独自のプライベート・エクスチェンジやオーディエンス・エクステンションオファリングを開発してきている。この自動化の流れの中、将来的にある程度の支配権の維持を狙って、Condé Nast やThe Weather Channelのような多数のプレミアム媒体社 を対象としたプライベート・エクスチェンジが台頭してきている。

しかし、こうしたプライベート・エクスチェンジは流動性は生み出すものの、プレミアム・バリューの維持、最良の広告主との関係への付加価値付与、売り手側の利益拡大にはほとんど寄与しない。媒体社が在庫の対価を最大限に享受するための戦略に、技術的な管理機能が全く組み込まれていないのだ。市場の事例によると、プライベート・エクスチェンジは主に売れ残り広告を収益化しているにすぎず、その一方プレミアム在庫は、直接販売用に隔離されている。更に、上述の複雑な取引には、コスト効率管理システムや、最新の技術開発に遅れをとらないような自動化が必要となってくる。ただ契約さえ結べば、あとは目に見えないテクノロジーが広告の世界を連れてきてくれるなど期待はできないのだ。

他の選択肢があるのだろうか? PubMatic社 としては、プライベート・エクスチェンジではなく、プライベートマーケットプレイスこそが必要なのだと確信している。PubMatic社の直接/間接販売を対象とした在庫収益化および一元化されたセールスプラットフォームとは、ビジネスルールや業界団体標準に依拠した厳選在庫販売のため、媒体社が特定のDSP、エージェンシートレーディングデスク(ATD)、代理店、又は広告主を指名し、一対一の相互に透明性のある関係でプライベートグループに参加できる場を提供する。もちろん、媒体社(売り手)と広告主(買い手)のパフォーマンスが改善するよう、リアルタイムで取引をサポートしながら、コスト効率に優れ、可視化された管理機能の下にこの取引を自動的に実施することが可能だ。PubMatic社 の顧客であるNBC News.com社は、販売戦略の一環としてプライベート・マーケットプレイスを活用し始めた。

ブランドマーケッターは自社在庫の掲載箇所にこだわるものだが、プログラマテック・バイイング(自動購入)で広告が全く的外れな環境に掲載されてしまったり、アドネットワークがサイトリストの作成に消極的だという話には事欠かない。広告主(買い手)が知りたいのは、自分達が購入しているものの中身であり、今日の成功をもたらしたプレミアム・コンテンツ/コンテキスト・バリュー、ブランド・エクイティ、確立されたオーディエンス、在庫販売パッケージの使用履歴、及び価格設定モデルに対し、プレミアム媒体社が報われてもいいはずだ。

プライベート・マーケットプレイスでは、成約に至った買い手、売り手の2社のみが価格設定と在庫(広告スペース)の掲載箇所を目にするのだ。とりわけ重要な点は、媒体社がビジネスの変化に応じて関係を拡大・縮小することができるよう、PubMatic 社のプライベート・マーケットプレイスに堅牢な管理機能が装備されていることだ。また、本ツールの厳密なビジネスルールや柔軟な在庫パッケージ用ユーザーインターフェースで、自動化された直接契約を管理・実行することができる。このビジネスルールには、厳選バイヤー向けパッケージ在庫、DSP、ATD、代理店、広告主といった様々なバイヤーのコンビネーションや契約毎の価格コントロールが含まれる。

さらに、PubMatic社のプライベート・マーケットプレイスは、プログラムによる直接的/間接的関係を最適化する「一括最適化エンジン」につながっている。これは、販売自動化による在庫リストの調整を図るだけでなく、媒体社の全販売チャネル間での調整も行う。媒体社は、プライベート・マーケットプレイス、または直接販売在庫を通し、それぞれのインプレッション(広告表示)に対し最大価値を享受できるところで、実際に決定を下し行動を起こすことが可能となる。突き詰めれば、ブランドと代理店がプレミアム在庫へのアクセスを通し、媒体社の関係をあらゆるレベルで維持しながら、媒体社は販売チャンネルと販売の関係のバランスを取っているのだ。

プライベート・エクスチェンジは媒体社のオペレーションにまた一つ新たな販路(サイロ)を追加する傾向があるが、プライベート・マーケットプレイスは、一括最適化と共に、人を介する販売と機械による販売の壁、保証と無保証の壁、透明な在庫と目に見えない在庫の壁を取り除いてくれるのだ。PubMatic社のプライベート・マーケットプレイスは、媒体社があらゆる種類の在庫販売を自動化する場所であり、彼らは、営業マンよりも機械の方がより高価格で販売可能な広告があることに気づきつつある。プライベート・マーケットプレイスの真髄は、適切な売り手と買い手とマッチングすることによって、買い手が最良の在庫を獲得し、キャンペーンのKPIを達成できることであり、一方、売り手は自社在庫の最大限且つ実対価を享受できることである。非常に長い間、いかに買い手に支配権を与えるかに重点がおかれてきたが、PubMatic社のマーケットプレイスのようなツールがあれば、媒体社は今一度、デジタル広告販売モデルの将来に主導権を握ることができるのだ。

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。