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Interview: テレビ通販を軸に、テレビとネット横断型の広告貢献度の可視化を実現させるGMOアドパートナーズ

MrTakahashi

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インターネット広告の業界は、リスティング広告、ディスプレイ広告といった個別の最適化から、集客の全体最適を行うための統合化へと方向転換を図ろうとしている。デジタルの世界を超え、ダイレクトレスポンスを軸にテレビとネットを横断した広告効果の実験を始めたGMOアドパートナーズ代表取締役社長、高橋信太郎氏にビジネスの方向性について話を伺った。

 

(聞き手:ExchangeWire Japan編集長 大山忍/ライター:鶴田修朗


 

 

広告主、媒体社、広告代理店の間でWin-Win-Winの関係を構築する

 

大山:先日(2013年5月7日)、ダイレクトマーケティング支援事業を手掛けるトライステージと合弁会社を設立することが発表されました。新会社のトライズデジタルベース社が担うことになる「テレビを中心としたメディアとWEBメディアの融合による広告貢献度の可視化」は、従来のアドテクノロジー業界では解決できなかった課題を解決する取り組みとして、注目を集めています。今日はインターネット広告会社としての御社の戦略をうかがいますが、まずは御社の概要から簡単にご説明いただけますか。

 

高橋:弊社の事業セグメントはインターネット広告事業とメディア・コンテンツ開発事業の2つに大きく分かれています。インターネット広告事業は、メディアレップ事業とエージェンシー事業に加えてアドテクノロジー開発も行っており、メディアサイドの広告プラットフォーム「GMO SSP」や広告主向けのマーケティングプラットフォーム「GMO MARKETING SUITE」など自社開発のアドテクノロジー商品を提供しています。一方、メディア・コンテンツ開発事業は、「読めるモ」などのメディアや、スマートフォン向けコンテンツを開発・運用を行う事業です。通常の広告代理店とは異なり、メディアレップ、エージェンシー、アトテクノロジー開発、メディアの4つの領域を、ワンストップで提供できる点が最大の特徴です。

 

大山:アドテクノロジー開発やメディア開発を通じて培ったノウハウを、広告主や媒体社に提供できるのが強みということですね。

 

高橋:そうですね。例えば従来型のメディアレップの仕事は、媒体社から広告枠を仕入れて顧客に売ることです。しかし弊社では今、メディアレップ事業の仕入担当部門を「メディア・マネタイズ・アンド・オプティマイズ」という名称に変更しています。つまり単に広告枠を仕入れるだけではなく、メディアをマネタイズし、最適化するというビジネスにシフトしています。

 

大山:なるほど。媒体社は利益が出るようになり、その媒体に出稿する広告主もROIを向上できる。さらには御社自身が良質なアドテクノロジー商品やメディア/コンテンツを開発することで、広告代理店にも喜んでいただける。いわばWin-Win-Winの関係を構築しているわけですね。

ところで御社は約1,000の媒体社と付き合いがあり、広告主とも直接取引をなさっています。媒体社や広告主、あるいは代理店は今、広告についてどのような課題を抱えているとお考えですか?

 

高橋:皆さんお感じになっていると思いますが、アドテクノロジーが高度化したことによって、広告のトレンドも運用重視に変わってきて、しかも非常に複雑化しています。そのトレンドにキャッチアップできるところと、そうでないところの2極化が進んでいると思います。メディアレップ事業では、取引のある代理店にこうしたトレンドを理解してもらった上で事業化していくことがポイントになっていますし、クライアント向けには、前述の「GMO MARKETING SUITE」を無料でご提供し、一体となってプロモーションを展開することに腐心しています。

 

大山:確かに今のインターネット広告市場は、RTBなどの新しい仕組みを使いこなせる広告主にとって有利な市場になっていると思います。しかし一方で媒体社にとってはあまり良い環境とは言えず、売れ残った広告枠がたたき売りされているということも耳にします。媒体社の課題については、どのようにお考えでしょうか。

 

高橋:メディアに関しても、売れるメディアと、売りづらいメディアの2極化が進んでいます。特に中堅以降のメディアでは純広告を売りづらくなっているのが現実です。純広告の減少分をアドテクノロジー商品でフォローしようとしても、思ったほどの収益を上げられないという状況があります。

 

 

動画によるマーケティング手法を知るには、テレビの世界を知らなければならない

 

MrTakahashi_2大山:2極化が1つのキーワードですね。ところで御社はアドテクノロジー商品やメディアを自社開発していますが、特に力を入れている商品はありますか?

 

高橋:やはり今年3月に連結グループ子会社化した「JWord」です。この検索連動型広告を、もっと皆さんにお使いいただけるように商品開発していくのが非常に重要なミッションです。

 

大山:御社は媒体向けのSSPから広告主向けのDSPまで幅広いプラットフォームをお持ちです。加えて自社メディアやJWordのような商品を運営していますから、膨大なオーディエンスデータがたまっていると思います。そのオーディエンスデータをプライベートエクスチェンジに活用することはお考えでしょうか。

 

高橋:クライアントの費用対効果を最大化し、メディアの価値を最大化するためのソリューションを提供するのが、本来の広告代理業だと思います。現時点ではプライベートエクスチェンジの事業は行っておりませんが、最適なソリューションを提供するために、その準備は進めているところです。

 

大山:GMOインターネットグループ内にはショッピングサイトもありますから、購買データという、マーケッターにとってはセグメントをつくりやすい非常に強力なデータもお持ちです。

 

高橋:GMOインターネットグループ全体のトラフィックのシェアは、ネットレイティングスの調査で、国内上位に位置します。しかもその中には、決済回りのものや購買データ、検索クエリ、ブログまで多種多様なデータが含まれています。カバレッジの広いオーディエンスデータをさまざまな形で取得する力があるのは弊社の強みの一つです。オーディエンスデータの利用についてはデリケートな問題もありますが、いずれはそれらのデータを適切な形で活用できるようにしたいと考えています。

 

大山:中堅以降の媒体社では純広告が売りづらくなっているというお話がありましたが、オーディエンスデータの活用でターゲティングができたりすれば、媒体社にも新たな価値が生まれると思います。広告枠を売って終わるのではなく、新たな価値をつくり出すことにもつながります。

 

高橋:おっしゃる通りです。オーディエンスデータを含め、次世代の広告代理事業に必要な資産を持っているかどうか、持てるようになるかどうかが、今後のインターネット広告ビジネスの勝敗を大きく左右すると思っています。

その関連で言えば、デジタルマーケティングの世界では、クリエイティブの話はあまり語られない状況もあると思います。しかし弊社はクリエイティブを極めて重視しています。例えば弊社の1階には、クリエイター向けのギャラリーを設けており、その運営をクリエイティブチームのメンバーに任せています。

 

大山:アメリカでは広告とコンテンツを融合したネイティブアドが今注目されています。御社は事業領域として広告とメディアの両方をお持ちですし、ヒトの面でもアドテクノロジー、クリエイティブの両面からプランニングができる人材を資産として持っているわけですね。

 

高橋:そうですね。クリエイティブの重要性を社内に浸透させることには、非常に重きを置いています。弊社にはテクノロジー、クリエイティブ、マーケティングのそれぞれの領域において、専門性の高いメンバーが在籍しています。そしてそのような人材をクライアントやメディアに出して、常駐のような形で価値最大化のお手伝いをするケースもあります。改善のスピードが大切だったり、高度な運用が必要だったりするときには、そうしたメンバーを外部に出向させて、一体となって課題解決にあたっています。

 

大山:日本のデジタルマーケティング市場は、今後どのような方向に進むとお考えでしょうか。御社が注目している分野はありますか?

 

高橋:北米の広告市場では今、RTBによるプログラマティック・バイイングが進んでおり、日本市場もいずれそのような流れになるのは避けられないと思います。プログラマティック・バイイングが一般化する中で、どのような立ち位置でビジネスをしていくかは常に考えています。今、その答えが明確にあるわけではありませんが、クライアントの利益最大化と媒体の利益最大化をきちんと考えていれば、われわれの存在意義も増していくと思っています。

もう1つはスマートフォンやタブレット端末の普及で、動画によるマーケティングが伸びてくるのは間違いありません。現時点ではブランド広告主とのお付き合いはあまりないのですが、動画マーケティングの需要をどう取り込んでいくかは考えなければいけません。

 

大山:冒頭にお話ししたトライステージとの合弁会社設立は、まさにそのための布石ということでしょうか。

 

高橋:そうですね。動画によるマーケティング手法や、ブランド広告主さまとのお付き合いの仕方を知るためには、まずわれわれ自身がテレビ広告の世界を知らなければなりません。ブランド広告主は全体のプロモーション予算の9割をテレビに投資しています。その9割の予算が実際にどのように使われているのかを、理解しなければいけないということです。ネットと親和性の高いテレビ通販の業界で、テレビ広告とネット広告を融合する実験をするのが、合弁会社のトライズデジタルベースのミッションの1つです。

 

大山:トライズデジタルベースは、テレビとネットを、クロスプラットフォームで測定するようなツール開発も担うのでしょうか。

 

高橋:予定はしていますが、スピード重視でやっていきますから、外部から最適なツールを持ってくる形になると思います。

今、ブランド広告主は、テレビ広告とインターネット広告の発注先を分けているのが一般的です。プロモーションを担当している広告会社が異なるため、データを統合的に管理するのが難しく、効果を可視化できないという課題を抱えています。この課題の解決に挑戦することが、弊社の強みにつながると考えています。

 

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。