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アドベリフィケーションツールやDMP、機能を越えたツールの理解で最適運用を実現するトレーディングデスク |WireColumn

(コラムニスト:株式会社コスモロジー 石塚 拓郎)

今注目を浴びているDSPのトレーディングデスクについて解説していく本シリーズ。3回目の今回は、DSPのツールとしての特性に着目して、トレーディングデスクの強みについてお話ししたいと思います。

 

第2回までの内容はこちら

http://www.exchangewire.jp/2013/04/11/wirecolumn-masunaga-1/

http://www.exchangewire.jp/2014/01/28/wirecolumn-cosmology-2/

 

 

 

 

 

ツールとしてのDSPの特性

 

現在メジャーなDSPは複数ありますが、前回述べたプラットフォームとしての違い以外にもそれぞれ機能的な特徴があります。また、DSP毎に媒体社としての運用体制の違いもあり、それらの特徴を把握して最適な運用を行うこともトレーディングデスクの重要な役割です。

DSPにはCTRやCPCなどの指標を活用して自動最適化する機能がありますが、クライアントの要望はCPA重視の運用から露出重視のなるべく安いCPMで配信する運用依頼まで、案件毎に目的は異なります。何も考えずにそのままDSPの最適化に任せていたのでは、クライアントの目標は達成できません。それぞれのDSPが何を指標にどのようなロジックを働かせているのかを知り、手作業でチューニングする部分とDSPの最適化アルゴリズムに任せる部分をうまく使い分けることが重要です。

 

 

DSPを取り巻くツール

 

トレーディングデスクを行う上でDSP自体の機能について把握することは大切ですが、それ以外にも日々進化する新しいアドテクノロジーについて知り、実際の運用に活用していくことも大事になってきます。当社では、市場に出回るツールはほとんど実際に使ってみてトレーディングデスクの運用に使用するかどうかを選定しています。

ここでは、我々が実際にクライアントのアカウントの運用で使用するツールについて紹介したいと思います。

 

・アドベリフィケーションツール

アドベリフィケーションツールには、大きく3つの役割があります。インビューの計測と掲載面のコントロールとブランドセーフティーです。

インビューの計測は、広告配信の効率化に使う機能です。ディスプレイ広告の基本的な考え方であるインプレッションという数値は、ユーザーのブラウザにリクエストされたアドタグが呼び込まれた時点で1回のインプレッションとしてカウントされます。ページの最上部のバナーでもページ最下部のバナーでも、ブラウザから読み込まれた時点で同じ1インプレッションです。当然、ページの最下部はユーザーがスクロールしなければユーザーの視野には入って来ません。

配信されたインプレッションが実際にユーザーの目視できる範囲で表示されたかどうかを測るのが、インビュー率の計測です。アドベリフィケーションツールでは、特殊なスクリプトにより、DSPのそれぞれのインプレッションのインビューの計測を実現しています。

 

これにより、どのDSPのどのメディアが高いインビュー率を実現しているかを把握でき、そのチューニングを行うことでCTR、CPAの最適化に繋げる事ができます。

 

2つ目3つ目の掲載面のコントロールとブランドセーフティーについては、CPAやCPM等のパフォーマンス運用と、ブランディング重視の運用を行う際に活用する機能です。

ブランディング重視の企業のプロモーションを担当する上では、社会的に望ましくないサイト(アダルトや暴力的な内容など)への配信はブランドにマイナスのイメージを与えるとして、配信の制御を行うことを強く求められるケースがあります。通常のDSPの機能でもドメイン単位での配信制御は可能ですが、これではブランディングにポジティブな内容が掲載されているページから配信制御を行うべき内容が掲載されているページまでさまざまな内容が入り混じる大規模サイトなどについては、全て許容するか全て停止するかのどちらかを選択するしかありません。

アドベリフィケーションツールを用いることにより、こういったケースにおいて配信面単位で自動的に制御できるようになります。

 

アドベリフィケーションツールはDSPの配信精度の向上に不可欠になっていますので、社内のツールとして活用しています。

 

 

・DMP(データマネジメントプラットフォーム)

昨今のバズワードである「ビッグデータ」の担い手として注目されているのがDMPです。しかし、日本においてはまだまだ発展途上だということも感じています。現状だと、まだまだデータ自体が少ないですし、データの信憑性もデータ元によってさまざまです。本人確認ができているデータであればそのDMPのデータを100%信用して配信できますが、インターネット上にそこまで強い確証が持てるデータはそれほど多くありません。また、統計的な推測を用いているDMPも多くあります。

DMPが将来的にスタンダードになっていくことは間違いないと思いますが、そのためにはもう少しデータとそれを活用する体制が洗練される必要があります。

また、自社の会員データを活用して独自のDSPを作る「プライベートDSP,DMP」へと取り組みを始める大手クライアントも少しずつ増えて来ています。

 

・動画配信

世界的に動画を始めとしたリッチメディアでの広告配信が注目されてきています。

当社のトレーディングデスクでも動画の配信を行うことはありますが、通常のDSPの枠内というよりは、別メニューとして運用することが多いです。

動画はインパクトが強く、ユーザーの視線を惹く上で効果が高いことは明らかです。ナショナルクライアントを中心に需要が増えてきている状況ですので、運用アカウントも増えてきています。

 

 

ツールの活用とDSP最適化

 

こういったDSPの運用に有効なツールが次々に登場するのは喜ばしいことですが、一つの課題として挙げられるのがこれらのツールをプラグインしてコストが2倍3倍となる事で比例してパフォーマンスもそうなるかというと、そうでないケースもある事です。我々はDSPを運用する上で、CPAを始めとしたコストパフォーマンスの向上を求める場合、これらのツールを活用することによりインプレッション単位やクリック単位でコストオンされていきますので、下手をすると「配信効率は上がったが、最終CPAは上がってしまった」ということも十分にあり得ます。そのため、勝ちパターンを見つけるまで手間と時間が非常にかかることもあるのです。

 

このあたりのツールの活用についてはクライアントの考え方によるところもありますので、DSP運用に対する考え方もヒアリングしながら、要望に適う運用を実現するよう心掛けています。

 

 

トレーディングデスクの提供する価値

 

DSPやアドテクというと機能面が注目されがちですが、その特性を知り最適な運用を行うのがトレーディングデスクです。トレーディングデスクでは、表面的な「DSPの運用」だけを切り出して依頼されてもなかなか成果に結びつきません。トレーディングデスクが運用するのはDSPのプラットフォームですが、実際に広告が表示されるのはそれぞれのメディアであり、広告をクリックしてサイトを訪問するのは個別のユーザーです。DSPのプラットフォーム上の数字だけと向き合うのでは無く、先に広がる実際の世界を見通しながら運用することも重要になってきます。

 

我々がクライアントのアカウントを運用させていただくことになった際は、必ず初めにマーケティングのビジョンとゴールをなるべく細かいところまで共有いただくようお願いしています。単純な管理画面上の数値だけを基にした運用であれば、誰がやっても似たような結果になります。クライアントのビジョンを知り、同じ視点を持つことで、初めてそのアカウントの最適な運用が見えてきます。これは、複数運用するDSPの中の1アカウントの運用を担当していてはなかなか持てない視点であり、アドネットワーク全体の運用管理を行うトレーディングデスクだからこそできることかもしれません。そういう意味では今後も間違いなくトレーディングデスクは広まると考えていますし、これはDSPが市場に出てきた当初から私が感じていたことでもあります。

 

どのような最適化ツールも結局は道具であり、それをどのように用いるかが重要です。道具の使い手として人の手を掛けることで、初めて高いレベルの運用が実現できると言えるでしょう。

 

 

ABOUT 石塚 拓郎

石塚 拓郎

株式会社コスモロジー 執行役員 広告事業会社のマーケティング事業部でオンライン広告全般に携わり、スタートアップベンチャーの創業やコンサルティングを経て2013年11月にコスモロジーにジョイン。DSP、リスティング、Web解析ツール等を研究し運用型オンライン広告のマネージメントを担う。