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FacebookのSSPプロダクトに関する不吉な前兆

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

2014年7月に、Facebookは推定500億ドルにてLiveRailを買収した。
LiveRailは当時有力な動画アドエクスチェンジとして有名だったが、アドサーバーを自社管理していることはあまり良く知られていなかった。2016年1月に、Facebookはサービスの新規顧客の受付を終了したとアナウンスした。

この発表はFacebookがアドサーバーにおける顧客ベースのおおよそ1/3をシャットダウンした後にもたらされた。発表時には、Facebookがより大規模なプレミアムパブリッシャーに向けてサービスを提供していくと一般的には捉えられていたが、どうやらアドサーバービジネスから完全に撤退するようだ。

ExchangeWireはOoyalaのアドテク部門SVPのSorosh Tavakoli氏にインタビューを行い、今回の動きがLiveRailやFacebookにとって意味する点や、LiveRailアドサーバー顧客への影響について話を聞いた。

-ExchangeWire: LiveRail社のビジネスの背景について教えて下さい。

Sovosh Tavakoli氏: LiveRailは(私自身が設立し、現在はOoyalaのアドテクビジネスの一部となっている)Videoplazaとほぼ同時期に設立され、アドサーバーの提供とパブリッシャーへの収益ツールとしての役割を担っていました。

彼らの製品は、サードパーティの収益化パートナーと密接に協業するアドネットワークやパブリッシャーの間で非常に人気を得るようになりました。アドサーバーとSSPの提供を組み合わせたようなサービスを提供することで、市場では大きな反響を得ました。

-LiveRailの終了は動画パブリッシャーにとってどのような意味を持つのでしょうか?

彼らの広告サービス商品を利用しているパブリッシャーは他の選択肢を探す必要があります。私個人的には彼らのSSPプロダクトについても不吉な前兆である予感がします。パブリッシャーがビジネスを運営するツールに関して選択肢が狭まることになります。

-LiveRailの競合として、Ooyalaはこのサービス終了によってどんな影響がもたらされるのでしょうか?

市場における競合が一社少なくなったという明らかな利点があります。Facebookがサービス提供を終了した数百もの顧客にサービスを提供できる機会が得られるという点においてもOoyalaにとってはチャンスです。これらの機会をとらえるため、Ooyalaでは以前LiveRailを利用し、動画インベントリーに関するアドサーバー及びプログラマティックソリューションを必要とする顧客に対して、移行費用を現在免除するようなサービスを提供しています。

Sorosh Tavakoli氏, Ooyala社

-多くの人々がFacebookはLiveRail及びAtlasの買収によりパブリッシャーディスプレイネットワークを広く構築していくと考えていました。なのに、なぜFacebookは動画広告サービスから撤退するような選択をしたのでしょうか?

独自のデータセットと300万にも及ぶ広告主を利用して、Facebookは自身で管理するプロパティから更にビジネス基盤を拡張しています。これらの元となっているのがAtlasのバイイングプラットフォームで、バイヤーが購入場所に依存せずにFacebookデータにアクセスすることが出来ます。他の側面としては、パブリッシャーのためのツールの拡張であり、このツールによりFacebook側の広告主の予算を獲得することが可能になります。
これらの動きは完全な収益化を行うための(広告サービス及びSSPのような)商品やツールの提供を目的としているのではなく、Facebookに割り振られる予算をより多くするためのSDKや特定のPMP機能の提供を目的としており、Facebookが収益化におけるパートナーや需要ソースとして機能するものです。

-LiveRailのコアビジネスが動画広告販売の自動化であると考えると、市場におけるインパクトはどのようなものでしょうか?

LiveRailの成功の多くは、ダイレクトセールスを自身で管理できる広告プラットフォームとパブリッシャーがプログラマティックによる販売を管理するSSPを組み合わせた戦略に依存していました。このサービスはパブリッシャーが目指す方向性と共鳴していたため、LiveRailの広告サービス終了により、提供サービスは遥かに魅力を失うことになります。今回のアナウンスで多くの企業が、技術提供を主ビジネスとしていない企業に依存している現状を改めて明らかにしています。Ooyalaについては、我々の戦略、DNA、集中する分野は非常に明確です。我々はパブリッシャーへのソフトウェア及びツールを提供し、収益化と持続可能なビジネスを確立するためのサポートをしています。我々はビジネスの選択を脅かすようなメディアビジネスを所有していません。我々はパブリッシャーが、広告サービスとプログラマティック取引の両方を行えるようなプラットフォームを利用してビジネスを展開すべきだと考えています。これらは今後統合されていくからです。

-Facebookは次にどこに向かうと思いますか?

Facebookがアドサーバー及び、今日知られているように実質的にSSPのビジネスをシャットダウンするのは正しい選択のように感じます。彼らは独自なデータアセットを利用して動画広告市場において更にシェアを広げていくでしょう。しかしながらパブリッシャーのプラットフォームに関しては、Facebookは市場から撤退していくでしょう。次にSSPからFacebookが撤退するという発表がされたとしても驚きではありません。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。