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The Way to Programmatic Marketer-Webプッシュ通知で変わるダイレクトマーケティングとマーケティングオートメーション-

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ExchangeWire.jpでは、今後「プログラマティック」をテーマに、マーケッターの方向けを想定し、またマーケッターの視点を出来る限り反映したコンテンツを、不定期でご提供してまいります。

まずは、マーケッターの方による連載コラムをお届けします。著者は、株式会社マクロミル 事業戦略本部の、Webマーケティング部門責任者 広瀬 信輔氏です。

同氏は、マーケッターの立場からWebマーケティングを深く研究、Digital Marketing Labを運営し、また直近では『アドテクノロジーの教科書 ~デジタルマーケティング実践指南~』を発刊されています。

初回のテーマは、「Webプッシュ通知で変わるダイレクトマーケティングとマーケティングオートメーション」です。

転載元:Digital Marketing Lab「Webプッシュ通知で変わるダイレクトマーケティングとマーケティングオートメーション」

Webプッシュ通知(ブラウザプッシュ通知)の概要

Webプッシュ通知(ブラウザプッシュ通知)とは

2015年中旬頃から登場した、アプリではなくWeb(ブラウザ)からプッシュ通知を送信する仕組みです。スマートフォンはもちろん、PCにもプッシュ通知を送信することができます。

著者はこの仕組みがダイレクトマーケティングの1つの手段として今後拡大すると期待しており、今回記事を書かせていただきました。この記事では、Webプッシュ通知の位置づけ・有用性、各社サービスの比較、マーケティングオートメーションとの関係性について解説します。

Webプッシュ通知の位置づけ

以下はリードナーチャリングとリードジェネレーションの事例と手法で紹介した、リードジェネレーション~ナーチャリングのステップをまとめた図です。ターゲットフェーズごとに、利用されるコンタクトチャネルを記載しています。この記事では、ユーザーを【PHASE3】までシフトさせることで、メールアドレス等の個人情報を取得することができ、コンタクトチャネルの選択肢が増えることを解説しました。

 

web_lead1

 

しかし、個人情報の取得ハードルは高く、「潜在顧客」になるまでにかなりの数が脱落します。そこで「未開拓ユーザー(PHASE1)」と「潜在顧客(PHASE3)」の間に「つながりユーザー【PHASE2】」というフェーズを提唱しました。Webプッシュ通知は、「つながりユーザー」を作り、関係構築するために有効なコンタクトチャネルと考えています。

関連記事:リードナーチャリングとリードジェネレーションの事例と手法

Webプッシュ通知の導入方法と表示内容、メールとの比較

Webプッシュ通知の導入方法

Webプッシュ通知の導入には「WebサイトにURLリンク設置」「WebサイトにJavaScriptタグ設置」のいずれかが必要であり、利用するサービスにより異なります。
URLリンクの場合は、ユーザーがオプトイン用のバナー画像などのリンクをクリック、遷移先Webサイトでプッシュ通知を許可することで、プッシュ通知の送信対象となります。JavaScriptタグの場合は、URLリンクと同様のこともできますが、サイト訪問時にポップアップを表示して許可を得ることができるサービスもあります。どちらの場合も、ユーザーは個人情報を入力することなく、企業からの通知を受け取ることができます。
以下は、株式会社シロクが提供するURLリンク設置型Webプッシュ通知「プッシュさん」の導入フローです(フローというか、リンクを設置するのみです)。

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下のキャプチャはPC、スマートフォンそれぞれのWebプッシュ通知の表示例です。画像+タイトルテキスト+数行のテキストを送信できます。クリックすると設定したWebページに遷移します。Webプッシュ通知を送信した際に端末の電源をOFFにしていた場合も通知がストックされ、次回起動時に通知が表示されることが特長です。

new_web047

Webプッシュ通知とメールの比較

同じような用途となるメールとWebプッシュ通知の機能を比較してみました。注目すべきは「Webページ誘導率」です。メールの場合は、メールの「メール開封 → リンクのクリック」の2ステップでWebページに遷移しますが、Webプッシュ通知の場合は「通知のクリックのみ」の1ステップでWebページに誘導することが可能となり、そのため、メールよりも効率良くWebページに誘導できます。

メールの開封率、リンクのCTRは著者が運用しているメルマガの実績を記載、Webプッシュ通知のリンクのCTRは株式会社シロク様より頂戴した事例を記載しております。

Webプッシュ通知とメールの比較

メールWebプッシュ通知
ユーザーの許可ハードル×
メールアドレス入力

プッシュ通知の許可のみ
取得できるユーザー情報
フォーム入力情報
×
プッシュ通知を送信するためのIDのみ
保存性
受信メールBoxにストック
×
通知表示時に1度だけ表示される
表現力
長文テキスト+画像やCSS
×
短文テキスト+アイコン画像
作成の労力×
ライティング力が必要

短文テキスト+アイコン画像
到達率(A) *×
12.7%

ほぼ100%
リンクのCTR(B)×
10.7%

15%
Webページ誘導率(A×B)×
1.4%

15%

*メールは開封率、Webプッシュ通知は通知が端末に表示される率

Webプッシュ通知の使い方の注意点と各社サービスの比較

クリエイティブ自体の表現力は低い、目的はあくまでWebページ誘導

プッシュ通知は短文のテキストとアイコン画像画像しか送れません。ユーザーがクリック(タップ)したくなるようなメッセージを作りましょう。目的はあくまでWebページの誘導です。

メールの場合は、開封してもらう(読んでもらう)だけで1つのエンゲージメントとして評価することができますが、プッシュ通知はクリックされて初めて意味があるものです。

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一斉メール配信みたいな使い方はしないで欲しい

敢えて厳しく言うと、クリックされないプッシュ通知はユーザーの行動を妨げるだけの無駄なものです。メールよりもCTRを厳しくウォッチしてください。現在はWebプッシュ通知をマーケティングの手段として取り入れている企業は少ないですが、今後増えると予想しています。

そうなった時にユーザーは多くの企業からプッシュ通知を受け取ります。全く興味のない情報が多数届いた場合、ユーザーはプッシュ通知自体に嫌気が差すでしょう。

Webプッシュ通知は強力なダイレクトマーケティングの手段に今後なり得ます。ただし、それは企業側の使い方次第です。マーケターにとって、ユーザーにダイレクトにリーチできるコンタクトチャネルが増える機会はそうそうありません。この機会を本当に無駄にしないで欲しいと思っています。

テーマが絞り込んであるWebサイトなら良いですが、複数のテーマや商材を扱うWebサイトなら「ユーザーがWebページの何のコンテンツに興味を持ってプッシュ通知を許可したか」を把握できる環境を整え、その上で自社のマーケティングにWebプッシュ通知を取り入れてください。

届けるコンテンツはユーザーの興味に合わせてパーソナライズした内容が好ましく、企業側で送信の頻度をコントロールすることや、ユーザー側で送信頻度がコントロールできることも重要です。ここは後述のマーケティングオートメーションに期待しています。

Webプッシュ通知各社のサービス比較

まだまだ、提供企業が少ないWebプッシュ通知ですが、各社サービスの比較資料を株式会社シロク様(Webプッシュ通知サービス「プッシュさん」を提供)より頂戴しましたので紹介します。無料で利用できるサービスも多いため、各サービスの違いを理解するには実際の管理画面を触っていただくのが1番良いと思います。

Webプッシュ通知の各社サービス比較1

Push7Pushnateプッシュさん
URLhttps://push7.jphttps://pushnate.comhttps://pushsan.com
提供元株式会社GNEX個人株式会社シロク
無料プランありありあり
有料プラン不明なしなし
配信制限5千/月5万通/月なし
対応プラットフォームPCGoogle Chrome×
Firefox×
SPAndroid OS
iOS
※アプリインストール必要
××
実装方法jsタグ設置jsタグ設置/リンク設置リンク設置
※非SSLページ可
特徴独自ドメイン対応
サブドメイン対応
RSS連携
API連携
WordPressプラグイン
独自ドメイン対応
日時指定配信
定期配信
シナリオ配信
RSS連携
通知ごとのアイコン画像の指定
日時指定配信

Webプッシュ通知の各社サービス比較2

Browser MessangerPushCrewbpush
URLhttps://browser-messenger.nethttp://www.pushcrew.jphttps://bpush.net
提供元株式会社大広株式会社アッション個人
無料プランなしありあり
有料プラン初期50万円
月額10万円
1万円/月~
(オプトイン数:501~)
20万円
(ライセンス販売)
配信制限10万通/月通知相手500人まで5万通/月
対応プラットフォームPCGoogle Chrome
Firefox××
SPAndroid OS
iOS×××
実装方法jsタグ設置jsタグ設置jsタグ設置
特徴日時指定配信
定期配信
セグメント配信
レポート機能
通知ごとのアイコン画像の指定
サブドメイン対応
日時指定配信
セグメント配信
レポート機能
RSS連携
API連携
通知ごとのアイコン画像の指定
独自ドメイン対応
マルチドメイン対応
日時指定配信
RSS連携
API連携

作成日:2016年3月31日
出典:株式会社シロク

マーケティングオートメーション×DMP×Webプッシュ通知

マーケティングオートメーションとDMPの得意領域

DMPの市場規模と課題とマーケティングオートメーションでは、以下のように解説しました。

■ DMP:データを蓄積・セグメント化することが得意なシステム
■ マーケティングオートメーション:マーケティングのアクションが集約されたプラットフォーム
→相性が良い

図にすると以下のようなイメージです。

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Webプッシュ通知が加われば、マーケティングオートメーションは強力になる

Webプッシュ通知はマーケティングオートメーションと組み合わせると非常に面白くなります。

これまで、個人情報を取得していないユーザーに対して行えるアクションは、広告配信くらいでした。Webプッシュ通知がマーケティングオートメーションに加われば、このユーザーに対しても企業側から継続的にアプローチすることが可能です(プッシュ通知のパーミッションを得る必要はある)。

マーケティングオートメーションはマーケティングのアクションが集約されたプラットフォームです。メールに関しては、ステップメール(シナリオ配信)、セグメント配信などが行えます。最近はDMPとの連携も進み、個人情報取得済みの顧客や見込顧客だけでなく、Webサイト来訪者のデータが取得できるツールもあります。

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DMPから得たオーディンエンス情報や自社のデータをもとに、セグメント化したデータをWebプッシュ通知に活用すれば、パーソナライズしたプッシュ通知を送ることができます。これは非常に強力なダイレクトマーケティングの手段です。

Webプッシュ通知のクリエイティブは簡単に作成できるため、案内したいWebページの数に比例して送信数(アクションの頻度)が増えます。そして、コンタクトチャネルの数やアクションの頻度が増えるほど、マーケティングオートメーションのニーズは高くなります。

クライアントがMAツールに期待するのは「どんなアクションができるか」です。パーナル情報を聴取していないユーザーに対して、ダイレクトにアプローチできるWebプッシュ通知は、今後ダイレクトマーケティングの強力な手段となるでしょう。そして、これを好機捉えたMAツールの中にも組み込まれていくと予想しています。

関連記事:DMPの市場規模と課題とマーケティングオートメーション

関連記事:国内DMPの一覧と比較 ~DMPの実際の画面と使い方~

関連記事:DMP(データマネジメントプラットフォーム)の仕組みと特徴

ABOUT 広瀬 信輔

広瀬 信輔

マーケティング情報サイト『Digital Marketing Lab』の運営者。

1985年、長崎県佐世保市生まれ。西南学院大学 経済学部 国際経済学科 卒業。 2008年、株式会社マクロミルに入社。2015年12月現在、Webマーケティング部門の責任者として同企業に所属。

株式会社イノ・コード 取締役 CMOも務める。

個人では、広告主や広告代理店向けに、「Web広告運用・導入支援」「SEO対策」「Webサイト制作」「PJT推進」「セミナー講演」など、デジタルマーケティングのコンサルティングや、アウトソーシングサービスを提供。

著書:『アドテクノロジーの教科書』(版元:翔泳社)