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モバイル詐欺の苦悩: 広告主が知っておくべきこと

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

携帯電話による詐欺行為は様々な場所で見られるが、デジタル広告のエコシステムに従事する人々は、詐欺行為の防止のためにもっと出来ることがあるはずだ。多少の詐欺行為というのは避けることができないかもしれないが、詐欺防止の対処を怠ることは、広告主にとって考えているよりも多くの被害につながるかもしれない。このコラムでは、AppLift社のマネージングディレクター Maor Sadra氏が、プログラマティックの利用により如何に詐欺特定が容易になり、また詐欺防止のための3つのアクションについて話をしてくれた。

Applift社とForensiq社の調査によると、プログラマティックによるモバイルトラフィックの34%は詐欺行為のリスクに満ちたものである。最近のファイナンシャルタイムスのレポートによると、ロシアのモバイルアプリの開発者が、MoPub社のマーケットプレース上で、1日25万ドルもの収益を広告詐欺によって挙げ、広告主に数百万ドルものコストを課したとのことだ。詐欺行為が広がっていることに疑いの余地はない。全世界でのモバイル広告支出は1000億ドルを超えると考えられている。

私たちはデータの海の中を泳いでいるようなもので、全てのインプレッションを効果的にモニターすることは難しい。この産業はお金の無駄について寛容であると、少なくとも小数点範囲でのコンバージョンを容易している現状においては考えられている。我々の業界標準のクリックスルー率は一桁であり、広告主は99%のインプレッションがアクションにつながらない現状を許容している。34%ものモバイルトラフィックが詐欺の可能性がある現状も自然に受け入れてしまっている。

広告詐欺を削減することは、費用対効果を高め、モバイル広告の将来的な成長に繋がっていく。プログラマティックにより詐欺を特定し、詐欺的な広告パターンを停止させることが容易なのは好意的なニュースである。

モバイル広告詐欺の種類

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Maor Sadra氏、Managing Director、AppLift社

インプレッションのレベル上では、広告主が示した広告条件に合致していないインプレッションに対して支払いを行っている詐欺行為が確認できる。例えば、スクロールダウンされる前の時点でインプレッションが発生していたり、IAB標準に合致していなかったりといったケースである。意図していない場合であっても、これらは詐欺行為とみなされる。より悪質な場合はサーバーのAPIに対してハッキングを行い、偽のインプレッションを生成するケースである。

位置情報を使った詐欺行為は、広告主が特定の国や地域のみのインベントリに対してプレミアムCPMを支払っているにも関わらず、トラフィックが他の地域で発生するケースである。通常、裏で操作をし、位置情報によるCPMで生じた差額を着服する悪質なメディアトレーダーが存在する。

クリック詐欺はCPCの形で売買を行うプラットフォーム上で発生する。Facebookは数百万もの偽物のプロフィールを削除したり、ボットに対処したりしていることで良く知られている。モバイル詐欺の最も進んだ例としては、リアルタイム通信レベル、例えば、アプリのダウンロード詐欺が挙げられる。

広告詐欺を行う人々によって、インストールが偽造されたり、アプリが実際はインストールされていないのに、インストールされたようにDSPをピングしたり、広告主にアプリがインストールされたという信号を送信したりできる。

モバイル商取引が拡大するにつれて、クレジットカード利用詐欺も増大している。このスキームにおいては、偽の支払い情報を利用して購入が行われる。デスクトップに関しては、我々はこの対処方法について既に学習をしている(PayPal社が行なっている対処方法などが参考になる)。似たような詐欺がモバイルにおいて増大しており、モバイルに関しても対処を急ぐだけの理由がある。モバイル商取引は取引終了のようなペナルティを与えられる可能性もあり得る。入金の取り消しなどはクレジットの与信に影響を与え、請求を担うプロバイダーからパートナー解消などを迫られかねない。

非効率的な広告と同様、詐欺行為はお金を無駄にする。広告主はパートナーに対して詐欺行為に対しての対処方法を確認し、強固な防御策を持つビジネスパートーナーを選択すべきである。以下の対策を参照にしてほしい。そして決して問題を正面から捉えることを怖がらないでほしい。

1. 単純なパターンに目を光らせよう

パブリッシャーとDSPはトラフィック及びキャンペーン関連のKPIにおける怪しいパターンをモニターすべきだ。例えば、通常考えられないほどのアプリのインストール率が確認された際に、同じトラフィック源からのクリックとアプリのインストール率は一定で、クリックとインストールの時間が著しく短かった場合は、レッドフラグが掲げられるべきである。ある種の決まったパターンが確認された際にはアラートやアクションが起こるような仕組みをプログラム化すべきである。広告主はトラフィックやKPIを自身で確認し、何か奇妙な数値を見つけた場合は声をあげるべきである。

2. 人的かつ機械による介在

詐欺と戦う最良の手段は、(サードパーティのソリューションを含めて)テクノロジーを利用する一方で、トラフィックをモニターし、データパターンを精査する人もしくはチームを組み合わせる対応である。広告主は積極的に関与すべきである。サプライヤーよりも先んじて気になるトラフィックパターンを見つけた際には、出来るだけ多くのデータを共有することで、パートナーが学習することにつながる。

3. 経験を共有しよう

名前がある企業なら誰もが詐欺トラフィックの被害などに会いたくはない。私たち全てが同じ問題を共有しており、「悪者」と戦うためには協力をしあうのが何よりである。もし詐欺防止の対策が自身の会社に役立った場合には、ぜひ業界で共有をすべきである。(しかしながら内密に行うべきである。詐欺部隊に対処方法を知られるべきではないからだ)。

詐欺行為の特定し、早い段階で効果的な対策を行うために協力をしていくことだ。詐欺行為の可能性を低めることは、コンバージョン率を高めることと同様に、あなたの次のキャンペーンにとって有益である。どの広告主も見逃すべきでない機会なのである。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。