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プロダクト責任者に聞く、四つのテクノロジーを繋いで実現するMediaMathのクロスデバイス広告ソリューション [インタビュー]

デジタルマーケティングにおけるクロスデバイスでのユーザーの捕捉や、それを前提にしたユーザーとのコミュニケーションの実現は、グローバルレベルでマーケッターが抱えている喫急の課題だ。
これに応えるMediaMathのクロスデバイス広告ソリューションConnected IDの日本でのローンチに合わせて来日した同社プロダクト責任者のPHILIPP TSIPMAN氏に、サービスの詳細について伺った。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)


クロスデバイスは、データ活用における大きな課題

Photo: MediaMath社

―自己紹介をお願いします

MediaMathのPHILIPP TSIPMANです。

LGエレクトロニクスで勤務したのち、その後広告業界ではアウトブレインで勤務しました。
MediaMathには今から2年前に入社し、現在プロダクトプランニングのディレクターをしており、様々なテクノロジーの開発に携わっています。
今回ご紹介するのは、このたび日本でローンチするConnected IDというプロダクトです。

―米国における広告配信時のデータ活用のトレンドについてお聞かせください。米国の広告主の間では,現在どのような領域でデータマネジメントをすることに,関心が高まっていますか?

広告主の関心が高いのは、現在三つの領域です。
一つ目は、企業が蓄積したデータをいかに有効活用していくか、そしてまたデータをいかにリアルタイムで使うことが出来るかという点です。

二つ目のポイントが、ユーザーレベルでのターゲティング。Cookieが使えない環境でも、全てのデバイスにまたがるユーザーをどのようにターゲティングしていくかという点です。

三つ目は、パフォーマンスの計測について。単にラストクリックを評価するのではなく、アトリビューションの考え方になりますが、全てのタッチポイントにおいて、どのように最適化をするかということです。

これら三つのポイントが、データマネジメントに関して広告主の関心が高い領域です。

四つのテクノロジーで実現、高精度のクロスデバイスターゲティング

―今回日本でリリースとなるConnected IDの概要についてお聞かせください。実際にどのようなテクノロジーが使われ、どのようなことが出来るようになるのでしょうか?

Photo: MediaMath社

Connected IDは、大きく四つのテクノロジーによって構成されます。

一つ目はCookieです。また、ユーザーのトラッキングにおいては、RubiconProjectやオラクルなどのパートナーさんとの共通のバックグラウンドを通して、情報をエクスチェンジする役割もあります。
MediaMathの実績としては、世界中で95%のユーザーをCookieベースで把握しています。

二つ目は、Cookieless IDです。現在では、Cookieが活用できないデバイス環境が増えてきています。Safariブラウザのユーザーなどをいかに認識するかが課題になっています。MediaMathは、ブラウザやネットワークのパラメーターをもとにして、ユーザーを認識するテクノロジーを持っています。これは、2014年に買収したTactadsという会社を買収して入手したものです。

日本では7000万のデバイスでCookieが使えない状況にあります。また、今後はIoT化の進展により、Cookieを使えない状況というのは、さらに大きくなっていきます。

そして三つ目ですが、アプリケーションに関しては、OSが発行しているIDFAなどの、広告識別子を活用します。

現在モバイルからのトラフィックの過半数はアプリからのものであり、これは重要なテクノロジーです。

モバイルWebやアプリを使うユーザーが主流になり、オムニチャネル化が進んでいます。モバイルのチャネルだけではなく、他のチャネルと合わせてユーザー行動を管理するニーズが高まっています。このようなトレンドは、MediaMathにとっては幸運だったといえます。

四つ目は、クロスデバイステクノロジーです。かなり高い確率で、デバイスを跨いでユーザーの把握が出来ます。
当社のデータパートナーであるパブリッシャーなどの協力を得て、三つのデバイスが、同一人物のものであることを確定することが出来ます。この推測は、100%に近い高い精度を実現しています。
これにより広告配信の最適化が実現できるようになります。これは、先ほどお話したTactadsのテクノロジーを活用して実現しています。

当社は、クロスデバイス領域でのテクノロジーへの投資は他のDSPに先駆けて、多額の投資を行ってきました。そしてこのMediaMath独自のテクノロジーは、顧客に対して無償でご提供いたします。

―デバイスの推測技術は、FingerPrintingとは異なるのでしょうか?

はい、異なります。FingerPrintingは、少し古い世代の技術であり、私たちは全く違うアプローチで開発をしました。

ブランド系からパフォーマンス系まで、グローバルで2000社が導入

―Connected IDの活用事例などがあればお聞かせください。

Photo: MediaMath社

このソリューションは、三つのクライアント層にベネフィットがあると考えています。

一つ目は、ユーザー層が若くモバイルセントリックなラグジュアリーブランドの広告主です。そして二つ目は、Eコマースを運営する広告主です。Eコマースのユーザーは、デバイスを跨いでサービスを利用するので、このソリューションの利用は最適です。

そして三つ目は、ブランド広告主です。このソリューションにより、これまで把握できないユーザーにリーチ出来ることになり、インクリメンタルリーチが、従来よりも3割~5割増やすことが出来ます。このためブランド広告主にとっては、最大限のリーチ効果をご提供することが出来ます。

このソリューションの導入により、コンバージョンレートは、20%近い改善が見られます。これにより、CPAは下がりますしROIの改善にもつながります。また、レスポンスレート(インプレッションあたりのコンバージョン率)、リーチしたユーザーあたりのコンバージョン数などは、3倍になりました。今まで計測できなかったところが見えるようになったことによる改善効果と同時に、全体の最適化も改善されており、Cookieのみを利用した広告配信よりも明らかに良い効果をもたらします。

―グローバルではいつごろからサービスの提供が始まり、現在どのくらい導入が進んでいるのですか?

2015年のはじめごろに、クローズドでβ版の提供を開始し、その後10月に全ての広告主への提供を開始しました。現在までに広告主2000社に導入されています。導入の多くは主にエージェンシーを通して行われています。エージェンシー1社を通して50~100社に導入していただいているケースもあるので、ここまで多くの数の実績となっています。

クロスデバイス対応に向け取り組むべきは、ファーストパーティーデータの整理

―日本での展開はいつからですか?

まさに今からです。(笑)
現在日本の広告主企業にもご紹介をして回っていますが、皆さん強い関心をお持ちいただいています。

―広告主がこのソリューションを導入する際に準備が必要なことはどのようなことでしょうか?

導入いただくための準備が大変ということはないのですが、Cookielessの環境で、効果的にユーザーを補足して、最大限の効果を上げていただくためには、やはりファーストパーティーデータを、しっかりと整理する必要があります。今までも、色々な情報を集めていましたが、実際に活用するうえでの精度を高める、あるいは、例えば今まで収集していなかったアプリ内の情報を新たに収集する、あるいは全てを収集しきれていなかったWebの情報を収集するなどの必要があります。

あとは、オフラインのデータを、オンラインと統合していくことも重要になってきます。

これらは、取り組みながら整備していただくということでも勿論大丈夫です。

―今後日本でこのソリューションをどのように広げていきたいですか?

このソリューションは、データをよりスマートに管理することもでき、成果をより高く出すことが出来るものでもあります。既にMediaMathをお使いいただいているお客様は勿論、新規のお客様にも使っていただきたいと思います。モバイルとPCというところだけで考えても、有効活用いただけます。積極的な導入拡大に向けた提案を進めてまいります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。