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新たなメディア環境下でのモバイルデバイスIDの重要性

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

クッキーがなくなることは無いかもしれないが、スマホの利用が増加するにつれ、モバイルデバイスIDがメディア環境の収束に応じて主流になっていくだろう。YouAppi社のチーフレベニューオフィサー Leo Giel氏はExchangeWire社とのインタビューにて、現在のネット世界でのオーディエンスを特定したいのであれば、モバイルターゲティング戦略におけるデバイスIDを軽視すべきでないということについて語ってくれた。

この10年で、私はスマートフォン、ゲーム、複数のフィットネスデバイス、テレビに接続されたハードウェアデバイスなどを日常のメディア利用において新たに使用するようになり、メディア習慣は大きく変化しました。そして、これから数年の間に、現在のApple Watch(これを利用して以来、ミーティングに遅刻しなくなり、より運動をするようになりました)以上にスマートな時計が登場し、日常のメディア消費パターンに影響を与えるようなコネクテッドなデバイスが登場するでしょう。

一方で、私の利用メディア選択肢は、Netflix、Amazonプライム、ESPN Live、HBO Now、Verizon go90など格段に広がり、またこれらのメディアに複数のデバイスからアクセスしています。メディア利用環境は実際変化しています。

利用するデバイスやチャネルが増えるに従い、ブランド企業が私を特定するための、ユニークなIDへのニーズが増えてきます。ブランド企業は様々なコンテンツに複数のデバイスでアクセスする私を同一ユーザーとして認知する必要があります。

10年程前であれば、電子メールのアドレスで私のデスクトップPCでの活動を特定することができました。しかしながら、多くのデジタルデバイス、プラットフォームが登場し、ユーザーの活動環境が変化を見せる中、私にはメディア利用を特定するようなIDが必要です。そして携帯電話のデバイスIDこそがその役目を果たしてくれます。

これは私だけではありません。comScore社によるとスマートフォンの普及率が米国では80%に近づき、より多くの人々がスマートフォンを自身のIDとして利用し始めています。

このようなトレンドはモバイルのマーケターやエージェンシーにとってどのような意味を持つでしょうか?消費者が多くのデバイス、サイト、チャネル、プラットフォームを利用するに従い、消費者は一つのものに依存することがなくなり(私も同様ですが)、ブランド企業はエージェンシーに高価値を持つ消費者の特定及びターゲティングを求める様になります。その為に必要なのが以下の3つの方法です。

キャンペーンターゲティングにモバイルデータを追加する

Leo Giel氏, YouAppi社

PCにおける標準的なクッキーが無いことで、モバイルを含んだキャンペーンのターゲティングはより難易度が高くなります。デバイスIDを活用すると、モバイルデータから位置情報やアプリ利用のデータを得ることができ、マーケターはより優れたターゲティングのインサイトを獲得出来ます。

モバイルは時間あたりの広告費用が他のデジタルメディアよりも遅れおり、モバイルパブリッシャーが、インアプリ広告によって売上が向上する事を広告パートナーに見せることは重要です。それ故、モバイルアプリはデータを蓄積し、より価値を高めるためのパッケージ化の方法を考える必要があります。モバイル機器、モバイルIDを利用したデバイスのアクティベーション、モバイルデータなどの情報は、アドブロックの問題やPCからの閲覧の減少などに直面する中で、収益増加が必須のデジタルマーケティング産業にとって非常に重要です。

クロスデバイス活用時に、PC世界の先を見据える

通常、マーケターはクロスデバイスでのターゲティングにおいて、モバイルとPCという環境を念頭においてきました。モバイルとPCにおけるクロスデバイスは非常に重要ではありますが、Internet Retailer社の調査によると30%のeコマースでの取引がモバイルからになっており(70%はPC及びMac)、他のデバイスからも多くの興味深いデータが入手可能になっています。スマートテレビやスマートウォッチ、健康・フィットネスデバイス、車などの環境向けのネット接続デバイスなどIoT環境が大きく成長する中、PC以外にも目を向ける時期にきています。

健康・フィットネスデバイスのように目的が明確なデバイスにおいては、データは広範囲にも集中的にも利用可能で、興味深いデータの取得が可能です。高所得者の多いフィットネス好きな消費者をターゲットにしたいマーケターは多く存在します。

モバイルデバイスIDを活用したデバイスが増えることで、新たなデバイスから入手出来るデータによって、マーケターは以前よりもより深くリッチなプロフィール情報を入手することができます。

トラッキング、測定のための新たなテクノロジーを考える

オムニチャネルマーケティングとの統合によって、今日の環境やマーケティングトレンドにより合致した、トラッキングや効果測定のテクノロジーが存在する様になりました。

携帯電話がどこにでも存在することで、例えばMobile Resarch Labs(MRL)社のようなアプリをベースとした、オーディオマッチング技術を活用した消費者測定のソリューションにより、どこで、どのようなデバイスを通じて、新旧のメディアが利用されているかの理解が可能になります。オーディオをベースとした測定や感情分析のテクノロジーといった新たなトラッキング及び測定テクノロジーによって、キャンペーン評価を通じて新たにインサイトを得ることが可能になります。

消費者と同様、エージェンシーやマーケターは以前よりも多くのチャネルを通じて、見込み客や現存客を増やそうとしています。ユーザーとのエンゲージメントが電子メール(現在は殆ど電話上で確認されています)や他の環境を通じてであれ、おそらくユーザーの携帯電話またはモバイルデバイスIDを通じて、接続され同期されているのではないでしょうか。

今こそ、業界全体でモバイルIDについてより優れた標準を作り出し、ユーザー、メーカー、マーケター、エージェンシーにとってより効率的な利用方法を考え時に来ています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。