SSPグローバル大手、Rubicon Projectの日本事業責任者が語る、日本の業界動向と事業戦略 [インタビュー]

米国発グローバル大手のSSPとして日本に参入、現在市場での事業拡大を活発化させているRubicon Project。同社の日本事業総責任者である池田智幸氏に、市場動向や足元のビジネス、また最近業界で議論が活発化しているヘッダービッディング(HEADER BIDDING)について聞いた。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

売上は14~15年で10倍以上に成長

―まず、日本における足元のビジネスの進捗についてお聞かせください。

Rubicon-Project_Photo1具体的な数字はお出しできませんが、売上自体は非常に伸びております。例えば2014年と15年で10倍以上、16年も非常に好調です。

―好調の要因はどこにあるのでしょうか。

パブリッシャーにとりパフォーマンスがよい、という点に尽きます。どういうバイヤー(広告主、広告代理店)がどれくらいでビットしているかなど、透明性を持ったレポートを評価していただいています。
マルウェアの対応もしっかりしていますので、信頼していただいているのだと思います。

―以前、導入セラー(媒体社、モバイルアプリ、ウェブサイト、メディアレップ)契約社数は60社とうかがいましたが、現在はどのくらいですか。

現在は100社以上に導入いただいております。

―日本におけるSSPの市場環境についてお聞かせ下さい。

パブリッシャーの数も増え、当社で扱っているimpのボリュームも増えています。市場自体が伸びていると思います。
皆さん積極的に、我々のようなプラットフォームを活用して広告収益をよりオプティマイズする動きがあります。PMPについては電通の動きがあると思いますが、パブリッシャーも代理店も非常に積極的に動き始めていると感じております。14年から15年でそれがより顕著に見えてきていると思います。

―日本のパブリッシャーのプログラマティックに対する取り組みに変化は見られますか?

そうですね。マルウェア問題などが出てきていることもあるので、皆さんそこは慎重に進められているイメージです。
それでも以前に比べ、いろいろ活用してやってみようというトレンドがあると思います。

―導入されているパブリッシャーは大手から対応しているイメージでしょうか。それとも規模は関係なく、会社のカルチャーなのでしょうか。

カルチャーと、運用している担当者の方次第であると思います。テクノロジーを活用して、アドサーバーで何ができるかとか、そういう取り組みをしている媒体社様がご興味を持たれます。

アドサーバーをよりスマートにさせるのがヘッダービッディングの役割

―ヘッダービッディングのトピックスに関する議論が、最近にぎやかになっていますが、そもそもの経緯や議論の本質についてお聞かせください。

現状のアドサーバーはいわゆるウォーターフォールで上から順番にラインアイテムを処理する仕組みになっています。通常純広告などのような単価の高いダイレクトの案件は高いプライオリティにセットされていて、SSPやネットワークなどは低いプライオリティにセットされています。この場合、仮にSSPで純広の単価より高く買ってくれるデマンドがあったとしてもアドサーバーは純広でそのインプレッションを売れれば売ってしまうので、必ずしも効率的な売り方にはなっていないという問題があります。GoogleのDFPではダイナミックアロケーションがあり、これにより単純なウォーターフォールに比べれば、効率的な販売ができるのですが、これもラインアイテムにセットされた固定の単価と比較してアドエクスチェンジで売るかどうかを決めるため、必ずしもホリスティックなオークションができているわけではありません。

この問題を解決するのがヘッダービッディングで、アドサーバーにコールする前にSSPで事前にオークションをし、そのインプレッションがいくらで売れるかという情報を持った上でアドサーバーにおいてどのラインアイテムで売るかを決めていきます。従って、ホリスティックに広告在庫の運用ができるようになるとともに、パスバックの必要もなくなりそれに伴う在庫のロスも防ぐことが可能となります。このようにヘッダービッディングは、アドサーバーがよりスマートに広告在庫のマネタイズできるようにするための仕組みなのです。

―Googleも現状の課題に対応を進めているとお聞きしましたが。

はい、Googleがダイナミックアロケーションの一部開放のテストを行っている動きですね。ダイナミックアロケーションではアドエクスチェンジのデマンドとDFPのラインアイテムを競わせることができますが、現状ではアドエクスチェンジのデマンドのみに限定されています。そこに我々のようなエクスチェンジやSSPが参加できるようになるというのが今回のテストです。これはパイロットとして、一部のパブリッシャーと我々を含めた特定のパートナーで行っているテストになります。パイロットではありますが、我々がダイナミックアロケーションに参加してリアルタイムの価格を渡せるようになるという意味では以前よりは進化してよりホリスティックなオークションが可能になりました。

ただし、これはまだ一部で行われているテストです。加えてGoogleとパブリッシャーや我々のようなパートナーが、どういう条件でこの取り組みができるかも明確になっていないので現時点では何とも言えないというのが正直なところです。どちらにどうメリットがあるのか。それに、Googleが対応しているのは現在デスクトップだけなので、モバイルやビデオだとどうなるのかなども不明瞭です。

PMPではディールIDを使いますが、このパイロットはそこもまだ対応していません、そのあたりが見えていないと、どちらが良いかは分かりません。我々のスタンスとしては、Googleがよりオープン化を進めて、パブリッシャーにとって、より効率的なインベントリのマネタイズをサポートしていく動き自体は良いことであるので、積極的に参加しようとは考えております。

我々のヘッダービッティングソリューション、「FastLane」は、PMPも対応していてモバイルも対応しているので、現時点ではパブリッシャーに「FastLane」をお勧めしています。

―ヘッダービッティングはもともとGoogleのオークションの仕組みの中で裏技だ、と聞いたことがありますが、そうなのでしょうか。すごくテクニカルな対応であると伺ったことがありますが。

裏技かどうかは分かりませんが、テクニカルではあります。要はパブリッシャーのWebサイトのヘッダーにスクリプトを入れて、アドサーバーにコールする前に、ヘッダーが読まれた瞬間にその情報をいったんルビコンにもらい、そこでオークションをかけて、誰がいくらで買おうとしているかの情報をブラウザ経由でアドサーバーに返します。

そのため、そのスクリプトをページに入れていただく作業がパブリッシャー側では必要になります。

―いろんなSSPがヘッダービッティングに対応していますが、SSPによってヘッダービッティングというサービスの特徴は異なるのでしょうか。

Rubicon-Project_Photo2基本的な考え方には大きな違いはありません。SSPにつながっているデマンドに違いがあればそれによって違いが出てくるかもしれません。またレスポンスタイムも多少違いがあるかもしれないですね。
我々はモバイルアプリやPMPなどにも対応しているので、よりいろいろな形態で販売できます。そのため、いろいろな広告在庫をより効率よく売っていただけると思います。既に日本で導入いただいているパブリッシャーからも非常に高い評価をいただいております。

動画広告にも注力

―ヘッダービッディング以外の領域で、直近の貴社の新しいサービスやお取組みについてお聞かせください。

動画広告で、ドワンゴさんとの提携を発表しました。以前から、ディスプレイ広告については我々を使っていただいていましたが、ニコニコ動画のインストリーム広告も入れていただけるようになりました。

我々と接続しているDSPからは、ニコニコ動画のインストリーム広告をバイイング出来ます。バイヤー(広告主、広告代理店)からは大きな反響があり、好評を得ています。

―現状、インストリーム広告の在庫は増えているのでしょうか。

現状、在庫ボリュームはまだそれほど大きくありません。インストリーム広告の在庫をもっているパブリッシャー自体はそれほど多くないので、動画という意味ではインライン、テキスト面に差し込むアウトストリーム広告を積極的に導入、販売しています。

―いわゆるインリード動画の導入はパブリッシャー側では積極的なのでしょうか。

そうですね。他社でも展開されていることもありパブリッシャーとお話しすると、動画広告の案件があれば入れますよ、と言っていただきます。
広告主もいまFacebookの動画広告が増えてきている流れで、ではFacebook以外でも動画広告を出稿しよう…という流れは来ていると思います。そういうデマンドに対して、アウトストリームでも提供できればと考えております。

―PMPの需要は増えてきているのでしょうか。

徐々にではありますが、増えつつあります。一つあるのは、リターゲティングを展開されているDSPさん、広告代理店さんのキャンペーンで、よりそのキャンペーンを最適化していく意味で、優先アクセスでPMPを活用するという事例があります。もう一つはいわゆるブランディング系です。より配信先の面を気にされている広告主向けのキャンペーンも増えてきております。
あとは、アウトバウンド需要です。日本の広告主が海外でキャンペーンを展開する上で、非常に高いニーズがあります。日本の広告代理店さんが海外のパブリッシャーと直接取り組むのは大変です。それなりに海外の配信面は値段も高いです。そこで、グローバルプレーヤーとしての我々の強みを発揮することが出来ます。海外のパブリッシャーとのPMP経由での配信において何らかのトラブルがあった時も、我々が仲介して解決するなどの対応が可能です。この領域でのご依頼は、増えています。

―PMPで海外の広告枠を買い付ける時、パブリッシャーの選定は貴社でされるのでしょうか。

広告代理店さんから、こういう広告主で、地域、ターゲティングでと、ご希望をお知らせいただければ、パブリッシャーをご紹介します。ただ最終的には、どのパブリッシャーで実施されるかは、広告代理店さんが選定をされます。

―海外媒体を広告代理店に紹介したり、選定をすることはすごく付加価値がありますね。

そうです。広告代理店さんのご担当者は日本人のため、英語のやり取りがハードルになっている面もあります。そこに我々が入って要望をお聞きして、対応するというところに価値を感じていただいていると思います。

日本の会社で展開しているグローバルブランドを海外で、という案件の場合、海外拠点があればそこ経由で、ということもできますが、なければ日本でマネージしていく必要があるのですが、それは大変です。でも我々が出てきてより効率的に海外へ広告出稿いただけるようになったと考えております。

―アウトバウンドはどういった業種の企業様がお使いなのでしょうか。

BtoBの通信会社やIT企業などです。スポーツメーカーもありました。

―インフィード枠への対応はどのようにされているのでしょうか。

当社はInMobiさんと提携しており、現在はInMobiのSDKを活用してネイティブ広告の対応をしておりますが、独自対応の準備も進めております。今年中には対応を予定しています。そうするとモバイルのネイティブ広告も更にRTBでの販売を広げていくことが出来るようになると思います。

―他にSSPのビジネスの中で、キーワードがあれば教えていただけますか。

Viewabilityでしょうか。販売している広告枠のViewability対応がどの程度であるかも、パブリッシャーさんに見ていただける機能の準備を進めています。これにより、例えば80%以上の広告枠をパッケージで販売することも可能になります。

―事業を進めるうえでの課題についてお聞かせください

SSPとして機能のみではなく、広告売買の自動化という軸で、バイヤー(広告主、広告代理店)にもいろいろな機能をご提供したいと思っております。フルスタックで、オートメーテッドギャランティードでの保証型のものを売っていく機能の提供もスタートしています。その中で課題は、テクノロジーをまずご理解いただき、活用していくところでしょうか。日本ではまだまだ時間がかかると思いますが、そこをがんばってやっていきたいと考えております。

―事業としてバイサイドにも進出されるのでしょうか。

実はもうDSPも持っており、昨年くらいからご紹介を始めています。ただし、我々のDSPを必ず使ってください、ということではなく、ある意味補完的な位置付けです。サードパーティのDSPを使っていただきながら、我々はPMPに特化して作っている強みがあります。PMPはRTBにおいてディールIDを使ってやり取りするのですが、サードパーティのDSPではそのディールに対してしっかり買い付けられないということもあるのです。その課題を解決するために、自前のDSPを作りました。PMP案件を今後さらに拡大していかれるニーズがある場合には、我々のDSPをご紹介させていただいております。

テクノロジーの理解を深め、クライアントと共に推進

―今年の日本におけるパブリッシャーのプログラマティック領域への取り組みに関するトレンドと、貴社のお取組みの方向性についてお聞かせください。

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今年フォーカスしているのがモバイルとビデオ、そして「FastLane」です。市場的にもそのあたりが重要になっていくと思います。 我々はこれまでパブリッシャー向けに展開してきましたが、結局このビジネスにおいて片方だけ取り組んでいても、ビジネスとして広がりがありません。パブリッシャーの在庫に対して買い付けていただけるバイヤー(広告主、広告代理店)が増えていかないと、ビジネスとしては広がらないのです。そのため、そこをいかに両面でやっていくかが重要だと考えております。

特に日本のマーケットは新しい取組みに慎重な部分もありますし、リソースが不足していることも多いです。動画も案件があればやる、といったようにある程度売上げアップにすぐに結びつくことを示すことが重要です。まず両サイドと話して、案件をいかにどんどん作っていくかが重要だと考えております。それをやるためのテクノロジーをご理解いただき、一緒に進めていくという流れで、今年もフォーカスエリアを中心に成長をしていきたいと考えております。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。