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インタラクティブ動画: 全てのインプレッションが平等でない新たな世界

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

インタラクティブ動画というとSFに出てくるようなものを思い浮かべるかもしれない。しかし、パブリッシャーの間では、徐々に顧客のイマーシブな(没入型の)体験提供に応えるために利用を始めるなど、素早いスピードで実用に向かっている。MediaCom社のグローバルデジタルディレクターであるLiam Brennan氏は、ExchangeWireのインタビューに対して、企業及びエージェンシーがインタラクティブ動画やダイナミックなコンテンツを活用するためには、トラディショナルなオンライン動画における想定を捨て去る必要性がある点について語ってくれた。

消費者の細分化、若者の間のテレビ視聴の低下などによって起こる失われたリーチを補う手段として、企業はオンライン動画の活用を模索するようになりました。

これは賢明な動きではありますが、クロスデバイスにおける(低コストで、インタラクティブ性の無い広告との)単純比較では、イマーシブでインタラクティブな動画の付加価値を計ることが出来ません。私は、次のようなやり方をお勧めします。

カスタマイズされたイマーシブ体験

私たちは先進国においては、動画の進化によって、オンライン動画が通常のテレビと同様有効な選択肢であることを理解しています。実際のところ、新規の非常に興味を引くインタラクティブユニットによって視聴者及びユーザーにカスタマイズされたイマーシブな体験が提供されています。

最も市場を騒がせているのはオンラインVR(Virtual Reality)動画でしょう。Google及び(2014年にOculus社を買収した)Facebookによって開拓されたこの市場では、360度動画などの、以前はギミックと思われていたフォーマットが多くのパブリッシャーによって利用され、企業のより深いストーリーを伝えたいという需要に応えています。

例えば、ナショナルジオグラフィック社は360度動画を利用し、カムチャッカやビクトリアの滝などの美しい自然体験を提供しています。また「スターウォーズ/フォースの覚醒」のティザー広告として、視聴者は、ジャクーの荒廃地をレイのスピーダーにて「運転する」ことが出来ました。

NielsenやGoogleなどの調査により、視聴者が長い時間動画を閲覧するほどに、広告想起やブランド認知、商品購入意思などにポジティブなインパクトがある点が明らかになっています。こういった効果はよりイマーシブな体験と結びついている可能性が高いと考えています。

こういったイマーシブなフォーマットが将来のインタラクティブ動画と関連付けられる一方で、拡張性に問題点を抱えています。これらのフォーマットは配信が難しく、クリエイターが期待するほどには、これらの体験が可能なテクノロジーは浸透していません。

パーソナルでシームレスな体験

より現実的な機会は、もっと簡潔なインタラクティブ動画体験に隠れているのかもしれません。私たちが主導権を握るものです。私たちが考え、ストーリーを伝え、消費者を導き入れ、動画を利用したショッピング機会を提供し、知人との会話を促し、購買に導き、次のストーリーを提供するものです。このような形態は動画がどのように購買され、また計測されるかといった点の再設計が必要になります。

もちろん、私たちはその域まで達していませんが、過去の歴史が、私たちがその途上にいることを教えてくれます。バナー広告がどのように購入されるようになったかを考えてみてください。リーチについては既に問題は解決しています。

Liam Brennan氏, MediaCom社 グローバルデジタルディレクター

Liam Brennan氏
MediaCom社 グローバルデジタルディレクター

今日、カスタマイズ可能なインバナーコンテンツは、顧客を購入ファネルに導くために利用されたり、データを獲得し、離脱率の減少やコンバージョン率の向上に利用されています。同じような発展が、将来的にインタラクティブ動画でも見込まれます。ほとんどの場合、動画は未だに「閲覧してクリック」の体験をもたらすだけで、短時間のコンテンツを閲覧させ、クリックしてより多くの情報を提供したり、購入に導いたりといった利用が主となっています。私たちは、「ショッピング可能な動画」として、コンセプトを発展させ、視聴者にYoutubeのアノテーションやネイティブ開発された商品経由で商品のクリックを促すなど一定の進歩を果たしました。同様の配信と比較して非常に高いCTRを達成するにも関わらず、開発は現在滞っています。

私たちは、イマーシブな体験を提供できるだけでなく、消費者の購入プロセスを包含したエンドエンドのフォーマットとして提供可能であることから、ダイナミック動画に大きな潜在性を感じています。製品を調査し、店舗を比較し、知人と相談し、動画内で詳しい情報を閲覧し、他のサイトから引用されたレビューを調べて、購入に至るような動画の世界を想像してみてください。こういった動画は、無料で利用可能な消費者や購入データを活用することで更に進化し、購入に応じてさらに適した商品やサービスを紹介し、体験自体をカスタマイズさせることが可能です。しかしながら、これらは、トラディショナルな広告フォーマットと比較してどのように評価されるべきでしょうか?これらの価格はいくらに値付けされ販売されるべきでしょうか?広告主やパブリッシャーは「閲覧してクリック」なモデルから喜んで移行するでしょうか?

インタラクティブ動画の真の価値を見出せるようになるにはまだ数年の月日が必要かもしれません。しかしながら、現存する以前は予想も出来なかった他のフォーマットと同様、インタラクティブ動画の未来はやってきます。私たちはまだその姿をほとんど目にすることはできませんが、現在の習慣から解放された時に、私たちは動画の潜在性を知ることができるでしょう。

想像を膨らませたり、夢を見たり。そういったことが何か偉大なことをスタートするにはいつも重要なのです。

インタラクティブ動画を再度考える

インタラクティブ動画の開発を更に進めるためには、変化が必要とされる重要な分野が3つあると考えています。

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コンテンツ:短い動画から、異なる消費者をターゲットとした長くインタラクティブなストーリーを持つ動画への変化。

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費用/検証: インタラクティブ性を無視したCPMの仕組みは作用しません。露出とコンバージョンの関係性が全く新たなものであるため、価格付けを含めた全く新たな仕組みが必要です。

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KPI: インタラクティブ動画が、性質的に全体的な購入ファネルに影響を与えることができると仮定し、現在のブランディングを重視した動画のKPIは購入意思やコンバージョンといった項目にシフトしていく必要があります。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。