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モバイルは非常に効果が高いが、問題も残っている:Jules Minvielle氏とのQ&A

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

今年の4月に、ATS Parisにおいて、フランスのモバイル広告マーケットについてのディスカッションが行われた。このセッションは、Numbate社のバイスプレシデントであるMathieu Rostamkolei氏が参加した「モバイル」のセッションを上回るほどの多くの注目を集めた。

それから3ヶ月たち、ExchagneWireは市場の変化をフォローアップするために、Numbate社 CEO Jules Minvielle氏にインタビューをし、フランスのモバイル広告におけるトレンド、チャレンジ及び将来性について話を聞いた。

―モバイルは世界中に著しい成長を遂げています。フランスの現状はいかがですか?

フランスのモバイル市場は、他の国と比較するとまだ比較的歴史の浅い市場ではありますが(2015年段階で、全体のデジタル広告におけるモバイルの割合は22%)、小さな市場の中で非常に多くの競争があり、市場は今後大きくなっていくでしょう。フランスの全体的なデジタル広告支出は、2019年までに34.2億ユーロまで成長すると予想されています。また、モバイル広告は19.8億ユーロを占めると考えられています。モバイルフォーマットで市場を勝ち取ったプレイヤーが大きなチャンスを手にするのは明確です。

―動画もまた、フランス市場では現在は小規模ながら、モバイルにおいて非常に大きな成長を見せています。フランスのモバイル動画市場における機会についてはいかがでしょうか?

動画は飛躍的な成長を遂げています。現在、モバイル動画広告はデスクトップの動画広告と比べても非常に人気があります。eMarketerによると、フランスの2015年のモバイル動画広告は6700万ユーロ市場と言われていますが、2020年には3億5800万ユーロまで拡大すると期待されています(全体の動画ネット広告収入の54.1%)

モバイル動画のインベントリーが未だに少ないのは明白です。モバイル動画のアウトストリーム型は増大傾向にありますが、広告主は正しいフォーマットが必要です。効果を生み出すためには、モバイル動画広告はテレビ動画広告よりも短くあるべきです。より優れた結果を出すための改善案の一つは、インタースティシャル動画のようなアウトストリーム型の広告で動画広告を実施することです。また、タテ型動画は広告主がモバイルでより良い結果を出すために検討すべきフォーマットの一つです。

―フランス市場のモバイルにおける直接取引に対してのプログラマティックの利用状況はいかがですか?

フランスにおけるプログラマティックの支出は、UKやUSなどと比較すると低いです。しかしながら今後、UKで昨年起こっていたような変化が、フランスにおいても起きるのは間違いがないと感じています。エージェンシーはより(プログラマティックダイレクトを含む)プログラマティック利用を行うようになっていくでしょう。キャンペーンを実施する際に、いくつかのエージェンシーはプログラマティックのみで取引を行うようになり、直接的な取引は今年の終わりまでに、スローダウンしていくでしょう。UKではすでに起きていることですが、企業の中には直接的な売買を中止し、プログラマティック経由でのみの取引を行うところも出てきています。

―モバイル業界はいかに、アプリとモバイルウェブのユーザーを繋ぐ問題点に取り組んでいくのでしょうか?

Jules Minvielle氏, CEO, Numbate社

Jules Minvielle氏、Numbate社 CEO

アプリとモバイルウェブのユーザーデータを繋げることは業界全体における課題です。ユーザーはモバイル上で、これら二つの環境を使って遷移するので、広告主もその点を意識してアクションをとる必要があります。残念ながら現状まで、これら二つを組み合わせたデータは100%信頼がおけるわけではありません。ほとんどが確率論に基づくもので、私たちはより優れたテクノロジーを必要とします。そしてこの問題に関してはAppleとGoogleの二社がどのような解決策を示すかにかかっています。

しかしながら、実はこれ自体が問題で、GAFA(Google、Apple、Facebook、及びAmazon)のような巨大プレイヤーは、すでにデスクトップ、モバイル、アプリにおいて正しくユーザーを捉える方法を備えています。このことはもちろん彼らに不公平な利点を与える一方で、彼らは中小規模の企業に対して、これらのデータを提供する点に関して消極的です。

―新たな広告フォーマットの開発によって、モバイルにおけるユーザビリティはいかに改善していくでしょうか?ネイティブモバイル広告においてはどういった機会があるでしょうか?

ユーザビリティはモバイルにおける成功の鍵となります。しかしながら費用が非常に安く、また広告主はデスクトップのフォーマットを、モバイルに適応させようと考えないため、パブリッシャーやネットワーク事業者がユーザーにとって好ましくないフォーマットを提供し始めました。

例えば、広告主から1分もしくはそれ以上の16:9比率の動画を流したいという要望を受けることが良くあるのですが、メッセージを正しく理解してもらうためには、音声のスイッチをオンにしている必要があります。しかしながら95%以上のユーザーが携帯を縦型で利用し、音声もオフにしています。

こういった背景から、新たなモバイルフォーマットを開発する場合、Numbate社では常にユーザビリティを大切にし、「実際の」キャンペーンが行われる以前に全てのフォーマットのテストを実施しています。もし広告主がより優れたキャンペーンの結果を求めるのであれば、よりプランニング、クリエイティブの点で工夫をこらすべきです。モバイルはそれらを活かすための多くの機能を備えています。加速度センサー、カメラ、クーポン、位置情報に至るまで出来ることは本当に様々存在します。しかしながら、モバイルのクリエイティブの展開は、テレビやプリント、デスクトップの焼き直しが本当に多いのです。

ネイティブ広告は、業界が直面している問題全てを解決し、ユーザー、パブリッシャー、広告主にとって作用する素晴らしい機会であると捉えられることがあります。しかしながら全てのことが満たされるわけではありません。広告主がモバイル広告に支払う費用は、デスクトップよりも掲載ページ数が減少するパブリッシャーの収益を補うものではありません。業界がネイティブ広告により高価な費用を払う準備ができるまで、インタースティシャルフォーマットは存在するでしょう。

―モバイルにおけるユーザーの伸びが顕著な一方で、広告支出は同じ様には進んでいません。広告主が消費者に追いつくためにはどういったことが必要でしょうか?

Frenchwebの2016年の研究によると、モバイルにおけるクリックスルーはデスクトップを上回っており、2015年7月から2016年1月にかけてのディスプレイ広告の大凡70%がスマートフォンで発生し、デスクトップは30%程度に留まりました(タブレットは3%以下)。しかしながら、広告主はモバイルよりもデスクトップに費用をより費やします。このトレンドが変化していくことを願っています。

モバイルは実際に非常に有益です。しかしながら、古くからの習慣はなかなか無くならず、問題は残ったままです。広告主はモバイルを、最初のタッチポイントと考え、キャンペーンの中心として捉えるべきです。Numbate社では、開発の原則は明確にその点に準じています。モバイルキャンペーンでどれだけインパクトを残せるかによって、私たちはマーケターのマインドセットを変えることができると考えています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。