×

SSPに別れを告げる時がきた。その理由とは。

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

SSPはデジタルエコシステムにおいて、パブリッシャーのインベントリーとDSPやエクスチェンジを結びつけ、パブリッシャーに最大の成果をもたらすために、必要かつ無くてはならないものだと考えられてきた。しかしながら、Ooyala社の広告プラットフォーム部門のジェネラルマネージャーであるScott Braley氏は、パブリッシャーがそれらのデマンドに直接アクセスできない理由はないと述べている。Braley氏はスタンドアローンのSSPは既に時代遅れのものであると考えており、次のようにその理由を説明している。

アドテクの現状を見てみると、パブリッシャーの予算を狙っている怪しげな会社の数の多さに当惑せざるをえません。私がここで述べているのは、パブリッシャーに「収益化」「需要拡大」「付加価値提供のためのデータ活用」などのサポートの提案をもちかけるテクノロジーカンパニーのことを述べています。残念なことに、パブリッシャーはこれらの餌に食いついてしまっています。

IABの調査によると、45%のメディア収益しかパブリッシャーのポケットに入っていない、というひどい現実があります。他の収益は、率直に言うと、そのパブリッシャーへの価値提供に疑問を持たざるをえないような様々な企業に吸い上げられているのです。この55%の埋め合わせをしようと、多くのパブリッシャーが実施するのは、サイトにおける広告比率を高めたり、自身の持つインベントリーに関しての低質なアクセスを許可して、エコシステムの中で最も重要な構成要素である消費者のユーザービリティを低下させたり、いらいらさせたりといった結果に繋がっています。このようなことから、アドブロックの人気が高まり、パブリッシャーの収益に更に悪影響がもたらされています。

明らかにこれでは機能せず、何かを変える必要があります。幸運なのは、パブリッシャーには選択肢があることですが、正しい質問をするところから始めなくてはなりません。パブリッシャーは、自身の目指すところを明らかにし、パートナー選びには、自身のビジネスの目的と完全に合致するという点を最大の優先事項として付き合う必要があります。ビジネスモデルの透明性が高いこと、倫理性が高いことなども重要です。

注目すべきテクノロジーソリューションは多くありますが、端的には、私はSSPにフォーカスしています。

釣りの仕方を教える

SSPを評価する場合に、「彼らに払う費用に対してどの程度の価値をこの企業がもたらしてくれるのか」ということを自問してみましょう。あなたが放送業社だったり、優れた動画コンテンツとオーディエンスを持つプレミアムパブリッシャーである場合に、自社のコントロール及び収入面で譲歩して、インベントリーを販売する必要があるでしょうか?しばしば、需要喚起やユニークなデータ提供によるプレミアムサービスの提供、といった謳い文句とともに、事業者が、あなた自身では実現が難しいと称しながら、あなたのアセット(インベントリー)をトレーディングデスクやエージェンシーやマーケターに販売するよう提案してくるでしょう。あなたのインベントリーを魅力的にパッケージ化して、正しい価格で正しい相手に販売することは難しいことではなく、アウトソースされるべき事柄ではありません。これは、人に魚を与えるのか釣りの仕方を教えるのかと同じような違いです。コンサルティングサービスが可能なパートナーは、あなたが自前で自社のデマンドを管理するための知識とスキルを提供し、パッケージ化や価格戦略についてのアドバイスを提供してくれるでしょう。結果的に、あなたの収益はより大きなものになります。

信頼こそが重要

Photo

Scott Braley氏、
Ooyala社 GM Advertising Platforms

セールスをネットワーク事業者やスタンドアローンのSSPにアウトソースしてしまうもう一つの問題点は、インベントリーの価値が他のSSPやネットワークによって低くなってしまう点です。もう一度言いますが、品質が高く、信頼を得られているプレミアムの放送業社やパブリッシャーであれば、自社でインベントリーの販売を十分に行えます。サードパーティのプラットフォームによって、混在したオーディエンスパッケージを生成し、多くのサイトに販売することは、収益の最大化にはつながりません。いくつかのネットワークやSSPと連携するだけでも、あなたのインベントリーの価値は十分薄まってしまいます。古くからの言い伝えにあるように、付き合う相手には十分な注意をすべきです。

難しい質問を聞け

最後に、最も重要な点になりますが、現状の取引においては、透明性が大きく欠如しており、商業的なやりとりは主に私欲によって推し進められています。プレミアムサプライヤーは、特に自身の費用がどのように活用されているかについて100%明確でない場合には、厳しい質問をすべきです。あなたのインベントリーはDSPではいくらの価格がつけられますか?それぞれのSSPに課されるコストはどの程度でしょうか?SSPやネットワーク事業者は、デマンドを軸としたアプローチを実施するのに非常に大きな営業チームを必要とします。この費用はどこから払われているのでしょうか?これは、彼らがパブリッシャーや放送事業者に不必要に大きな費用をチャージしているか、他に潜在的に大きな収益の柱があるのか、自社のスキームの中に隠しているマークアップが存在するのかのいずれかです。どの場合においても、私が最初に述べたビジネス目的に合うパートナーを最優先すべき、という言葉とは共鳴しません。

スタンドアローンのSSPが機能する場合

今まで色々述べてきましたが、デマンドベースのスタンドアローンのSSPやネットワーク事業者にも必要性は存在します。パブリッシャーや放送業社がブランドを構築中で、自社でバイヤーへの効果的なアプローチが行うのが難しい場合には、需要喚起の作業をアウトソースすることで、広告ビジネスを飛躍的に伸ばす試みをする利点はあります。

R.I.P.(安らかに眠れ)

プログラマティックが広告の将来だという点に関して、議論の余地はなく、業界全体が、プログラマティックでのやり取りに(好意的でないとしても)慣れ親しむようになってきています。Magna Global社の調査によると、プログラマティックディスプレイ及び動画広告はデジタル全体の3/4を占め、2019年までに470億ドルもの市場となり、半分以上の動画広告はプログラマティックによって管理されるようになると想定されています。そのような現状ですが、スタンドアローンのSSPに別れを告げる時がやってきたと考えています。「オンライン動画」における、「オンライン」が重複しているのと同じように、プログラマティック広告の「プログラマティック」も冗長なものとなるでしょう。テレビはどんな機器であれ、オンラインまたはケーブルであれ、テレビであることには変わりがない様に、広告もプログラマティックで販売されても、直接販売されても広告であることには変わりがありません。将来の広告プラットフォームはこのような考えを反映したものになり、広告サーバーの全てとSSPが一つに統合され、全ての在庫に関して放送事業者やパブリッシャーにより高い視認性と管理機能をもたらすものとなるでしょう。また、それに加えて、収益構成に関してもよりわかり易いものとなることでしょう。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。