米国がプログラマティック先進国なのは、バイイング力の高さのお陰

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

2016年11月3日に実施されたATS ニューヨークでは、Prohaska Consulting社のCEOであるMatt Prohaska氏がモデレーターを務め、プログラマティック動画が、メディア購入の様相に変化を与えるかについてパネルディスカッションを行った。パネリストであるTeads.TVの米国プレジデントであるJim Daily氏と、Business Insider社のプログラマティック及びデータ戦略部門のVPであるJana Meron氏が業界、リソース、開発環境などについて議論を交わした。

テクノロジーは大きく発達しているとはいえ、動画には多くの問題点が残っており、より改善が必要な段階にあると言える。統合は進んでいるものの、一つの大きな問題点はVPAIDとVASTの問題だとBusiness InsiderのMeron氏は述べる。「買い手はインベントリの50%以上がモバイルである点を理解する必要があります。そのため、VPAIDは機能しません。それにもかかわらず彼らはVPAIDのクリエイティブを送り続けます。これはオーディエンスのいないところにメッセージを送るようなものです」。

しかしながら、Daily氏は問題は買い手だけにあるとは考えていないようだ。「売り手側は販売可能なものを提供しているに過ぎません。ベンダー側がモバイルインベントリーをより推奨することが必要ではないでしょうか」。

Daily氏は、ワークフローにも様々な問題があると言及している。異なるオペレーションチームや売り手と買い手の専門知識などの問題である。トラブルシューティングを行う専門チームの必要性や、デマンドサイドを教育するために時間を費やすべき点について述べてくれた。

もし売り手、買い手の両者から教育を求められるとすると、教育の責任の所在について変化は生まれるのであろうか。Daily氏によると、買い手はプログラマティックのパフォーマンス測定に基づいたパフォーマンス計測を求めることが多いが、これは動画には適していないと感じている。現在、動画は保証のないメディアになりつつあり、マネージドサービスが必要と感じています。

このシフトはパブリッシャーにとっての収入の喪失に繋がらないだろうか?Meron氏は反対の意見を持っていた。「保証のない形態をとり、支出が伸びないようであれば、止めればよいだけのことです」。多くの活動がオープンエクスチェンジで行われているが、エージェンシーや広告主にオープンエクスチェンジを推奨することは、コカインの中毒者にコカインを勧めるようなものだと述べる。「顧客がもっと欲しがるので、より多くの量を欲しがるような提案を提示するのです。オープンエクスチェンジに勝る取引はありません。もしオープンエクスチェンジでの平均取引価格が25ドルで、それでもあなたが取引を得ることができなければ、保証型を選ばない理由はありません」

動画が、プログラマティックからマネージド型のサービスに変化していくようになると、チャネルのサイロ化の問題がまた出てくるのではないだろうか。しかしながら、エージェンシーのトレーディングデスクがプランニングおよびバイイングにおいて十分に機能を果たすことができれば、動画であれディスプレイであれ、エージェンシーが全てのプロセスにおける責任を果たすことができるとMeron氏は考えている。Business Insider社では、このような動きは割と早く起きるだろうが、今はちょうど変化が根付き始めているところだと考えている。

このような状況は米国だけにおける話なのか、それとも世界的な変化なのだろうか?Daily氏は、市場が大きく変わり始めている点に言及している。「英国におけるプログラマティック市場は非常に良好な状態にあり、南部に行くほど市場は遅れ、ドイツのように北部では非常に市場の普及は進んでいます。アジアではまだそれほど大きな動きは起こっていません」。Daily氏およびMeron氏ともに、米国が最もプログラマティックにおいては先進的で、その原因はバイイング力にあるという点で意見を一致させている。デマンドおよびサプライの両方から非常に大きなボリュームのプログラマティックの取引が行われており、その一方で人件費が高いことから、オペレーションの効率化の動きも進んでいる。結果として、米国に持ち込まれるような、他国からの好例はあまり存在していない。

米国がこのようにプログラマティックにおける先進国である以上、動画市場についても他の市場に対しての先駆者としてあるべきである。一方で、市場全体がモバイル動画の取り扱いについて知識を蓄えており、動画のトランザクションについても、オーデェインスマッチングにおいて成されたように、市場が広がるにつれて容易になっていくだろう。

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長
慶應義塾大学経済学部卒業。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。
国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。
2014年10月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価機関デジタルインファクトを設立し、プロジェクトディレクターに就任。