台湾デジタルマーケティング市場を攻略する-第一回:ここが知りたい、訪日台湾人へのアピール-|WireColumn

訪日旅行客向けやEコマース利用者向けをはじめとするインバウンド需要の取り込みに向けて、国内デジタル広告業界各社の台湾への展開が進んでいる。
DSPのLogicadを展開するソネット・メディア・ネットワークスも、2016年11月に台湾に本格的に進出し、現地での事業拡大を進めている。
台湾のデジタルマーケティング市場を攻略する上で必要な台湾の基礎情報から国民性、そして現地デジタル広告業界に関する情報や、実務の上で役立つ情報について、ソネット・メディア・ネットワークスが今後4回に亘り解説をする。

Exchange Wireの読者のみなさん、はじめまして、ソネット・メディア・ネットワークス台湾の林 靜怡(リン チンイ)と申します。連載の機会を頂きましたので、簡単な自己紹介をします。私は台湾で生まれ、台湾の大学を卒業後、日本の大学院で学びました。そして出身地である台湾と日本それぞれでビジネスに携わり、現在は、ソネット・メディア・ネットワークスの台湾法人において、日本法人、グローバル企業、台湾現地企業へプログラマティック広告のビジネスを提案しています。

日本のみなさんにとって台湾の人々のイメージは「親日的な国民」、「日本に好感を持っている」、「日本文化を受け入れやすい」などが強いと思います。では、実際に台湾の人たちは、日本のカルチャーや商品などをどう思っているでしょうか?

今回は台湾の広告事情を軸に、日本、台湾に10年以上在住し、両方を見てきた私の視点から、台湾と日本の似ているところ、異なるところを含めた紹介できればと思いますのでよろしくお願いします。

丁度1月27日から台湾は旧正月に入り、一大旅行シーズンに突入します。台湾入境管理局のデータによると2016年は旧正月期間の7日間に平均14万人、さらに旧正月の前日には16万人が海外へ移動しました。その中で、日本は台湾からの観光客にとってかなり魅力的であり、訪問モチベーションの高い国です。そこで今回は、台湾からの訪日観光事情の現状をみながら、小規模予算でも簡単に現地へアピールできる、台湾へ向けた広告配信についてもお話できればと思います。

現地データやスケジュールなどからみた台湾のポテンシャル

台湾からの訪日観光客数は年間360万人、対前年比15%と大きく伸びています。
台湾の人口はおよそ2,300万人、そのなかの360万人となりますので、大きな割合を占めています。またリピーターも非常に多く、40~50代の台湾人の多くが、日本への渡航歴があります。
台湾では学校・会社の年度が9月から始まります。1~2月の間に約1週間の「新年(旧正月)」と4月初めにある「春休み」、そして7~10月の間にある「夏休み」、「中秋」などは、台湾の人たちが盛んに海外へ旅行する時期となっています。このようなスケジュールの中で、訪日人数アジア2位の台湾観光客に対して、日本企業はどうしたらビジネスチャンスをつかむことができるのでしょうか?

2015年に東森ニュース(東森新聞台)(台湾の大手放送「東森電視」グループ)が実施した調査によると、「台湾の人が海外旅行で一番行きたい国ランキング」という問いに対して、世界各国をおさえて日本がNo.1になっています。

1位 日本
2位 アメリカ
3位 フランス
4位 中国
5位 イギリス/イタリア

また、「日本で何を楽しむか?」という観光の目的に関する質問は、以下の通りです。

1.有名な都市・観光スポット
2.遊園地
3.お祭り・花火の開催地
4.自然風景・温泉
5.ドラマ・映画・MV(ミュージックビデオ)の撮影地

地理的な近さ、治安の良さ、漢字で何となく通じるという安心感は、台湾人が海外旅行の際に日本を優先させる理由となっています。さらに近年のLCCの発達をはじめ、円安の影響で、「初海外ならやはり日本へ」、「円安だから今換金しなきゃ」などの声もSNSやニュースでは散見されています。

3つに分かれる台湾訪日客のタイプ

実際に台湾の旅行関連企業の人からの意見をまとめてみました。台湾から日本への旅行者のタイプは、大きく3つに分けられると思います。

1.訪日初心者―「初めて日本に訪れるわくわくタイプ」(20代、60代以上)

日本への旅行が初めてもしくは数回目の人は、台湾国内の旅行会社から提供するグループツアーやフリーツアーを多く利用します。ほかには、日本に到着後、日本の旅行会社が提供している1Dayツアーを利用する観光客も多いです。
初心者のみなさんが訪問する日本の観光地として、東京・大阪(都市で遊ぶ)京都・奈良(寺社仏閣巡り)・沖縄(リゾート気分を満喫)・札幌(普段みられない雪景色)など台湾の人にとって聞いたことのある有名な都市の人気が高くなっています。
フリーツアーを利用する旅行者(3泊4日のスケジュールが一番人気)の行先は、ガイドブックに載っている観光スポット、お寺、遊園地、レストランなどがあげられます。移動手段は、基本的に、電車などの公共交通機関です。そのため、旅行者は日本へ出発する前に、旅行会社から提供された資料、ガイドブック、そしてネット上や知り合いの旅行経験をまとめて、いくつかの訪れたいスポットを決めて行く場合が多いです。

2.訪日の達人―「何回も日本行って楽しみたい」(20~40代)

続いて、日本への旅行がとても気に入り、年2~3回以上訪れる“達人レベル”と呼ばれている旅行者です。達人たちは旅行会社から提供されたツアーパッケージにととまらず、インターネットで交通手段と宿泊情報を検索して、自らの行程を作って観光をします。行き先も首都圏や都市部から電車やバスで行ける日本の観光名所へ広がります。代表例は、軽井沢、白川郷(合掌村)、富士山、日光、伊勢、松島、阿蘇などが挙げられます。また達人たちの最近の傾向として、鉄道旅行、シーズンにあわせた旅行(桜・花火・紅葉・スキー)、ゴルフ、リゾート、日本最北(南)端など、テーマ別の旅行を自分たちでプランニングするのも人気となっています。
達人レベル旅行者の特徴は横連携が強い点です。旅行系コミュニティーをはじめ、個人ブログで自分の旅行経験と写真をシェアし、ニュースや広告で話題となっている観光地の情報をほかの旅行者と交流して、一緒にプランを作っていく場合が多いです。

3.訪日名人-「日本人も訪れたことのない秘境を発見し楽しむ」(30~50代)

先程の“達人レベル”から、さらに日本への旅行が好きになり、滞在時間やシーズンにこだわらず、まだ人に知られていない秘境を探索することを楽しんでいる“名人レベル”の人たちも増えています。
名人レベルの人たちは、インターネット広告、雑誌やコラムの案内、他の旅行経験談が主な情報源となります。
よくある行程内容は、レンタカーを借りて田舎へドライブしたり、各地域の旅館や民宿に泊まって現地イベントを満喫したり、霊場巡りなど、日本古来の文化、風習を体験したりするものです。また達人と比べ、名人たちは、宿泊と食事の品質をより追求する傾向があるため、各地域の観光経済にとって大きく貢献します。

タイプが異なる訪日客にどうアピールするか?

一見、異なるタイプの訪日観光客たちですが、大きな共通点もあります。それは日本と同等にインターネットで情報を収集する傾向が強いことです(表1、表2参照)。2015年度の台湾のデジタル広告市場は720 億円規模を超え、年間成長率は19.6%と増加しています。またスマホの普及率は7割以上で、OSの市場占有率はAndroid:7、iOS:3となっています。2015年度Googleの年間調査結果により、台湾のAndroid市場売上は世界第3位、台湾人は勤務時間を除いて、一日平均4.3時間も情報端末(PC、スマホ、タブレットを含め)に接しています。インターネットの利用目的としては「情報収集」、「SNS」、「ゲーム」、「ドラマ/映画鑑賞」の利用時間が長いことがわかっています。

これらの傾向から、台湾の旅行者へリーチするには台湾へのオンライン広告配信とアフィリエイターの利用が効率のいいプロモーション手段と言えます。

表1.台湾旅行者 インターネットによる情報収集の概況 (資料:台湾 旅行関連業者)

検索内容 例

初心者 達人 名人

旅行会社ツアー

市内観光スポット

市外・地域観光

リゾート・旅館

カプセル・ビジネスホテル

公共交通機関

公式サイト(行事・お祭り)

レンタカー

飲食店・隠れ家

通信サービス(simカード)

◎=旅行前にネットで調べて利用(旅行商品の購入)する
○=旅行前、旅行中に調べて参考にする

表2. 台湾旅行者対象 日本旅行情報における人気サイト(一部例)

台湾サイト

 日本サイト(中国語版あり)

背包客棧

 じゃらん / 楽天トラベル/アゴラ / booking.com

Visit Japan

 Navitime・Yahoo! 路線情報

Dig Japan

 Google Map

痞客幫

 ウェザーニュース

このような傾向を背景にして、すでに台湾へインターネット広告を出稿している広告主は多いです。それらは主にGoogle、Yahoo!奇摩、Facebookなどのトラフィックを経由して広告配信を行っています(日本の政府観光庁のプロモーション広告、宿泊予約サイトのリターゲティング広告、日本旅行者向けのクレジットカード広告など)。また日本への旅行の達人や名人でもあるアフィリエイターのブログやサイトで、「純広告枠」を購入する広告主も多いです。あるレンタルWifi業者は、人気ブロガーの紹介(広告バナー)経由であれば特別料金を案内するキャンペーンを提供しています。

日本の広告主が台湾に向けて広告配信をするにあたり「どんなメディアを選択すべきか?」、そして「どんなクリエイティブを出すべきか?」という2つの課題があります。

日本と台湾の異なるメディア別の環境と、攻略するためのポイント

広告配信ボリュームの点ではGoogleとYahoo! 奇摩との連携によって、ほぼ7割以上の広告在庫が確保できます。またFacebookとLineの利用人数が多く、インフィード系広告の効果も好調です。以下がまとめです。

1. ソーシャルメディア
Facebookの利用が圧倒的に多い、一方でTwitterの利用が僅か。代わりに中国のWeiboの使用者は近年増えているが、台湾からの広告配信は行えない
2. ディスプレイ広告
アドネットワーク業者は日本より少なく、数社ほど。一方で、RTB広告配信は、Yahoo! 奇摩、Googleを中心に大手SSPの在庫の活用が盛況
3. DMPを活用した広告配信
最近、活用が盛んになりつつある手法で、膨大な会員数を誇るニュースサイトや、ECサイトなどユーザー情報を集めている企業が、DSPやSSPと連携しながら、会員へのセグメント配信を実施。(配信メニューとクリエイティブの対応は各社よって異なる)

これらの環境をふまえ、初めて台湾へ配信してみたい広告主のみなさんには「商材の特徴を考えながら主流メディアで新規ユーザーの開拓し、現地の事情に詳しいDSP事業社とコミュニケーションをとりながら、より正確なターゲッティングで配信を実施する」といった方針ですすめるのがいいかと思います。

意外と見落としているクリエイティブのローカライズ

日本の方が見落としているのは、クリエイティブのローカライズです。台湾では「中国語×繁体字」を使っています。台湾で会話するときは、ほぼ標準語と台湾語を併用しています。文字に関しては、「台湾用繁体字」、「香港用繁体字」と「中国大陸で使われる簡体字」などの種類があります。意外と知っている方が少ないと思いますが、「台湾用繁体字」以外のバナーは、CTRが格段に低くなってしまいますので、クリエイティブ制作する際に間違いないように気をつけなければなりません。(こちらは今後の連載のなかで詳しくお話しします)

またクリエイティブのフォーマットに関しては、静止画、動画、ダイナミッククリエイティブ、Gif、カルーセルなどすべて対応可能なので、商材や訴求内容に合わせて積極的に各種類のフォーマットをトライアルしてみる価値はあると思います。例えば、観光スポットの案内であれば、バナーと20秒動画の組み合わせ配信を、宿泊予約サイトの場合はダイナミックの利用など様々な配信メニューをチャレンジしていただければと思います。台湾のインターネット企業はクリエイティブの重要性を熟知しているので、日本から台湾へ進出している代理店も現地の代理店もクリエイティブデザインに注力するところが多いです。またそれぞれのメディアにふさわしいクリエイティブの形式もあるので、経験のある代理店やメディアに相談することでクリエイティブの成功率は大幅に向上すると思っています。

今回は、台湾現地の訪日旅行の視点から、旅行関連の広告事情までお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?今年の旧正月へのプロモーション時期は過ぎましたが、今後の観光シーズンそして来年の旧正月向けのプロモーションに向けて、参考にして頂ければ嬉しいです。
次回は、台湾国内で盛んに購買されている日本の商品やECサービスに関する紹介する予定です。敬請期待!

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ABOUT 林 靜怡 (リン チンイ)

林 靜怡 (リン チンイ)

ソネット・メディア・ネットワークス台湾(台灣碩網媒體網路股份有限公司)

台湾大学を卒業後、日本の大学院にて修士・博士を取得(専攻は木造建築)。 台湾にて広告PR関係の会社を起業、約3年間に経営に携わり、日本の総合広告代理店に勤務を経て、ソネット・メディア・ネットワークスに入社し、台湾事業の立ち上げに参画。 現在は、ソネット・メディア・ネットワークス台湾にて、日本法人、グローバル企業、台湾現地企業へプログラマティック広告のビジネス提案を行っている。