台湾デジタルマーケティング市場を攻略する― 第二回:日本商品は本当に大好き?!台湾市場で失敗しないEC戦略|WireColumn

 
 

ソネット・メディア・ネットワークス台湾の林 靜怡(リン チンイ)による、台湾デジタルマーケティング市場に関するコラム第二回をお届けします。

第一回はこちら

訪日でも現地でも大人気の日本製品

ExchangeWireの読者の皆さん、ハッピーバレンタイン!ソネット・メディア・ネットワークス台湾の林 靜怡(リン チンイ)です。1月末から2月の始めは、ちょうど台湾の旧正月でした。皆さんは街中で台湾からの訪日観光客を見かけましたか?筆者はドラックストアで、蒸気温熱シートを10パック以上購入している台湾のご婦人をみかけて、少々驚きました(笑)。

2~3年前から「爆買」という言葉が話題になっていますが、見方をかえると海外消費者に日本製品がとても評価されている証拠だと思っています。

実は、観光客が日本へ来て消費するだけに限らず、台湾現地でも日本の商品・サービスが多く消費されています。大手家電製品はもちろん、自動車、化粧品、日用品や食品、ゲームなど、台湾人の生活は必ず多くの「Made in Japan」製品と密接に関わっています。台湾経済部の統計データでは、2016年台湾のEC市場規模は4兆円(日本は13.8兆円)で、年間成長率は12%でした(図1)。昔の物流と決済が不便な時代では「海外への輸出・出店・宣伝」の過程が障壁だと考えられましたが、近年、イーコマース(EC)の発達でハードルが低くなりつつあります。

私は「初めて海外市場チャレンジしたい」、あるいは「すでに海外進出しているが、より業績をあげるための有効な手段を探している」というEC事業者のみなさんにぜひ台湾市場をお薦めしたいです。「日本と似ているマーケット構成、成熟したEC環境、日本商材への需要」の3つの理由により、海外事業の展開における初期リスクを最小限に抑えることができます。連載の第1回では訪日台湾人へのアピールについてご紹介しましたが、今回は台湾の消費者に大人気である日本商品・サービスをテーマに、台湾市場で失敗しないEC戦略についてお話できればと思います。

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<図1>台湾のEC市場規模と年間成長率
出典:http://info.taiwantrade.com/CH/bizsearchdetail/373046/I

データからみる台湾市場に進出する前に知っておきたい、現地EC事情

まず日本のビジネスパーソン(マーケッター)が、台湾市場でビジネスを展開する際に浮かぶ疑問は、「台湾の消費者は、ネット上でどのような行動をして、どんな商品を購入するか?」ではないでしょうか。MOMOショッピング(台湾でTop3に入るB2C向け総合ECサイト事業者)が持つ、100万件以上の実績データから導き出された「2016年人気商品ランキング」と「2016年激上昇商品ランキング」から答えがみえてくると思います。

「2016年人気商品ランキング」

1. ティッシュペーパー
2. 洗剤
3. ウェットティッシュ
4. 洗顔ソープ(自然成分のもの)
5. カウンター化粧品(発酵技術を応用した高級基礎化粧品など)
6. 食品・食材(ブランド肉、ブランド米、高級野菜など)
7. 化粧品・パック
8. 天然水
9. 食品・おやつ(一般的なキャンディ、チョコレート、おつまみ)

10. 断熱ボトル(飲料向けの水筒)

「2016年激上昇商品ランキング」

1. オーガニック洗剤(フランス産)
2. 真空断熱ボトル(日本産/水筒のほか、お粥などを保温できるもの)
3. 酵素/健康食品(日本産)
4. キッチン用品・鍋(イギリス産)
5. お風呂用品(日本産)
6. キッチン用品・圧力鍋
7. 天然水(ドイツ産)
8. エアコン
9. お茶

10.空気洗浄機(日本産)

台湾の消費者が総合ECサイトでよく購入する商材は、生活用品、化粧品、食品、健康食品、白物家電などが挙げられます。一方でアパレル、旅行商品、電子書籍・チケットなどの商材は総合ECサイトで出店するより、それぞれの自社サイト、アプリでの展開が多くなります。(*参考1)

リサーチ会社ニールセンの調査によると、2014年の店頭販売とネット販売の売上比率は、店頭販売6:ネット販売4となり、ネット販売が成長し続け、近い将来には店頭販売の売上を逆転する状況まで来ています。

台湾の消費者の購買習慣は、52%が“ネットで購入する前に店頭で実物を確認する”一方で、68%の消費者が“店頭で購入する前にネットで商品を調査する”というネットとリアルで頻繁に行き来している様子が見て取れます。またEC利用者の年齢層は、20~39歳に集中していますが、最近では40~50代の消費者世代にも波及し、2013年から約30%の年間成長率を続け、好調を持続しています。性別で見ると、女性消費者はアパレル、靴、化粧品、男性消費者は旅行、ホビー(トイグッズ)、PC、スマホ用品の購入が中心となっています。(*参考2、3)

台湾ECにおける4つのタイプと各ビジネス状況との相性

台湾におけるEC市場の構成については、大枠で4種類に分けられます。

1. C2C(オークションサイト)

単品商材においてよく展開される手法です。種類は僅かながら特徴を持っている、あるいは市場に期待されそうな新しい商材を持っている企業にとって相性が良いです。展開手法は、C2Cプラットフォームを利用(例えば、Yahoo!拍賣露天拍賣蝦皮拍賣など)しつつ、自社で作成する商品詳細ページと現地の決済・物流サービスを連携させるものです。マーケティング手法は、SNSの公式アカウント(Facebook Fan pageやLine公式アカウント)経由でコアユーザーを集め、商品販売を行っていく方法などもあります。この手法で日本からの健康食品(青汁、酵素など)、化粧品、雑貨などのECも繁盛しています。

2. B2C(総合ECサイト/マーケットプレイス型)

単品商材や少数商品を持っている事業者、またEC市場へはじめて参入する企業は、よく大手B2Cプラットフォームに出店しています。B2Cサイトのメリットは、多くの消費者が集まり、簡単なプロモーションパッケージサービスで宣伝し、安全な物流と決済システムを活用できることです。一方で、同類商材の競争激化、ビジネス自由度の低下、広告宣伝の選択肢が少ないなどの懸念点もあります。2016年の大手台湾B2Cサイトは「PChome 線上購物」、「Go Happy」、「MOMO購物」、「udn 買東西」、「Yahoo!奇摩購物中心」となっています。その他には、日本企業の出店が少ないローカルB2B ECサイトには、代理販売・並行輸入業者も多数存在し、日本の生活用品、食品、化粧品などが大人気です。

3. B2B2C(総合ECサイト/テナント型)

より簡単に出店できて、台湾EC市場をトライアルしたい企業が活用するのが、テナント型と言われるビジネスモデルです。プラットフォームから物流と決済のサポートが提供されるのをはじめ、宣伝プロモーション、サイトデザインなどB2Cサイトより自由度が高くなります。なかでも台湾の楽天市場〔樂天市場購物網〕は、「日本商品」をテーマにして運営することで、ビジネスを大きく成長させています。

4. 自社ECサイト

多数の商材を持つ事業者には、自社で運営するECサイトの開設をお薦めします。消費者にブランドイメージをアピールできると共に、会員管理やサイト分析によってマーケティング情報の収集もできます。日本で運営している自社ECサイトを翻訳し、サイト構成はそのままでも台湾においては、違和感はありません。日本の家具、健康食品、化粧品などの企業は、すでに自社ECサイトを開設し、デジタルプロモーションを実行しながら、好調に業績を伸ばしています。

どのタイプでも不可欠なデジタルプロモーション

上記4種類のビジネスモデルもデジタルプロモーションは不可欠です。台湾でEC事業と立ち上げた直後の初期段階では、SNSやDSPなどのデジタル広告リソースを利用しサイトに新規ターゲットユーザーを誘導します。この段階では低CPCでターゲットユーザーを多めに獲得する事が重要です。お薦めは、ブロード配信やオーディエンスターゲティング配信、動画メニューの利用です。続いて、すでにサイトに到達したユーザーの中から、実際の購買者になりうる人々に、リターゲティング広告を配信することが「運用型広告」のポイントとなります。当社のDSP『Logicad』もそのひとつですが、「運用型広告」とは、広告目標を達成するようにリアルタイムに配信調整(入札額、クリエイティブ、ターゲットなど)を改善しながら運用し続けていく広告です。私は「台湾の広告代は安いですが、なかなか伸びないですね。市場は小さいからですか?」と、時々広告主の方から聞かれていますが、そうではありません。本当の理由は、広告の運用力と配信メニューにまだ改善する余地があるからです。現地で運用型広告を提供している代理店や媒体は多く存在しますが、以下の①~③が提供できるところを重視し、問合せしていただければと思います。

①「現地の広告相場に詳しい」
シーズンによって、入札の相場感と商材に相応しい目標CPA設定の助言ができるところ

②「精密な配信設定ができる」
基礎設定だけではなく、各配信ドメインや配信時間帯など、精密に調整できるシステム

③「現地駐在する運用チーム」
即時に運用対応でき、丁寧にサービスを提供しているチーム

脚光を浴びつつある「ダイナミッククリエイティブ」と、アフィリエイト展開で気を付けること

また、台湾EC市場で多く使われはじめている広告形式は、「ダイナミッククリエイティブ」です。ユーザーが一度閲覧した商品を通常のバナーでリマインドするだけではなく、関連性のある商品も動的に提示することができます。閲覧履歴のともに、興味関心の高い、最適なクリエイティブを自動的に生成し、クリックとコンバージョンを促進できます。

当社『Logicad』における日本国内のアパレル系ECを対象とした調査(*参考4)においては、ダイナミッククリエイティブは、通常バナーよりCTRを3倍に向上させるとともに、CPAを58%改善する実績があります。多数商品を扱っている広告主(例えば、総合EC、化粧品、健康食品、家具類など)は積極的に利用すべき広告手段です。

その他には、商材の内容によってアフィリエイト広告で話題を喚起する手段もよく使われています。近年では、医療美容、効果性を求める健康食品などの商材もますます増えてきています。その一方で、日本とは異なる風習や法律が存在します。例えば、お酒のバナー広告はOKですが、アフィリエイト広告はNGです。また、風水関連のグッズは人気EC商品となっていますが、葬儀関連のものをインターネット広告で配信すると、縁起が悪いとして忌避されます。

このため、ランディングページの内容と広告は、広告の撤去、商品の回収、損害賠償、罰金などの処罰の対象になりますので、まずは台湾の「消費者保護法」と「食品薬物管理法」に違反していないか必ず確認してください。

コンビニ間の取引が発達している物流網と多様な決済サービス

最後に、豆知識として現地で利用されている物流と決済の常識を紹介します。物流は「配送」(郵送)と「コンビニ取引」の2種類に分けられます。配送の場合、郵便局のサービスをはじめ、各社宅配便、クール便、ECプラットフォームの自社物流システムなどの選択肢があります。配送にかかる時間は、発送から4時間~翌日に到着し、時間帯指定も正確に対応しています。日本との違いは、コンビニ取引での「スポットtoスポット」流通が対応できる点です。EC事業者は、コンビニで荷物を送付し、消費者が指定コンビニで受け取るという仕組みとなっています。台湾では4大コンビニブランド(セブンイレブン、ファミリーマート OK-MART、HiLife〔萊爾富〕)があり、トータルで1.1万店舗出店しています。
これは、店舗密度(店舗数/面積)として世界最高であり、各店舗ほぼ24時間営業となっており、非常に強力な物流ネットワークとなっています。決済に関しては、日本のECではクレジットカードが主流の決済手法ですが、台湾ではクレジットカードの普及率が低いため、「クレジットカード払い」、「振込」、「郵貯小額払い」、「電信料金小額払い」、「コンビニ払い」、「プリペイドポイント払い」、「代金引換」、「商品到着後払い」など、様々な金融サービスを選択できます。多くの選択肢から、自社のビジネスモデルや経理フローに合わせて、最適なサービスを選択いただければと思います。

今回は台湾のEC環境と広告手法に関してご案内させていただきました。いかがでしたでしょうか? 次回は台湾のインターネット広告市場の現状と今後の発展についてお話できればと思います。またご覧くださいませ。再見!

<参考URL>
*参考1 http://www.brain.com.tw/news/articlecontent?sort=&ID=22087
*参考2 http://www.nielsen.com/tw/zh/press-room/2014/news-2014-Taiwan-online-shopping.html
*参考3 http://www.nielsen.com/tw/zh/insights/reports/2015/convenience-and-accessibility-are-fueling-taiwans-online-shopping-boom.html
*参考4 http://www.so-netmedia.jp/company/news/2016/information_20160615.html

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ABOUT 林 靜怡 (リン チンイ)

林 靜怡 (リン チンイ)

ソネット・メディア・ネットワークス台湾(台灣碩網媒體網路股份有限公司)

台湾大学を卒業後、日本の大学院にて修士・博士を取得(専攻は木造建築)。 台湾にて広告PR関係の会社を起業、約3年間に経営に携わり、日本の総合広告代理店に勤務を経て、ソネット・メディア・ネットワークスに入社し、台湾事業の立ち上げに参画。 現在は、ソネット・メディア・ネットワークス台湾にて、日本法人、グローバル企業、台湾現地企業へプログラマティック広告のビジネス提案を行っている。