サイバーエージェントの「動画広告市場で勝つ」クリエイティブ戦略 [インタビュー]

サイバーエージェントグループ動画広告ビジネス横断組織キーパーソンへの取材第5弾。

同社インターネット広告事業本部 クリエイティブ局 局長 兼 エグゼクティブクリエイティブディレクター 安藤達也 氏と、サイバーエージェント独自の会議『あした会議』により2016年10月に新規事業子会社として生まれたMOZZ TOKYO(モズトーキョー) 代表取締役社長 大岩裕和 氏に、サイバーエージェントのクリエイティブ戦略や、動画広告への取り組みについてお話をうかがった。

(聞き手:ExchangeWire Japan 山本 聖香)

ブランド企業もWEB動画に本気

― サイバーエージェント インターネット広告事業本部における、クリエイティブ局についてお教えください。

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左:大岩氏  右:安藤氏

安藤氏: 管轄するクリエイティブの部門には、ブランド向けの『ブランドクリエイティブ部門』と、ダイレクト向けの『ダイレクトクリエイティブ部門』の2つの部門があります。
ダイレクトクリエイティブ部門そのものは古くからあり、ダイレクトマーケティングの案件を多数扱ってきています。
しかし昨今の流れでナショナルクライアントなどのお客様がデジタルに本気で取り組まれるようになり、当社でも次世代ブランド戦略室というブランド広告主様に特化した営業部門が設立されました。また、ブランド広告主向けのメディアの使い方を専門とするサイエンスグループや、動画広告の活用などの研究グループが立ち上がったりする流れの中で、もう1つの『ブランドクリエイティブ部門』を立ち上げました。

― 大岩さんはクリエイティブ局との関連も含めてご自身の役割についてご紹介をお願いします。

大岩氏: 安藤は、インターネット広告におけるクリエイティブ全体で、私はその中で動画・映像に特化した会社を立ち上げました。2016年の9月に出した『あした会議』で決議され10月に立ち上げたという形です。
現在は、ブランドのお客様に対する広告制作をやっていきたいと思っています。良いものを作っていくことはもちろんのこと、効果に向き合うことがサイバーエージェントの子会社としてやる意味だと思っているので、そこは動画制作会社といっても、マーケティング的な考え方をもった組織にしたいと思っています。

― 現状、安藤さんの管轄するクリエイティブ局でも独自に制作をされているということですか?

安藤氏: 実制作もしていますが、サイバーエージェントのクリエイティブ局では、クリエイティブディレクターやプロデューサーが多いです。案件内容においては、Web動画広告のクリエイティブが一番多いです。動画以外にも、Webサイト、バナー広告、イベントなど、色々なものを取り扱っています。
その中で、動画の関わる大きなプロモーション案件ではMOZZ TOKYOと連携を図るという感じです。

― 動画の部門を切り出して子会社を作られたというのは、どのような理由があるのでしょうか?

大岩氏: サイバーエージェントっぽいやり方なのですが、安藤のチーム含めて本体のクリエイティブチームも強化しつつなのですが、サイバーエージェントとして、強みを作りたいときにはそれを切り出して子会社化し、「そこにコミットするしかない状態」を作るということです。ですので、私もそこに本気で向き合っています。採用に関してもMOZZ TOKYO独自では私が行っており、組織の強化を図っています。

― MOZZ TOKYOの採用についてもう少し詳しくお教えください。

大岩氏: 経験値のあるプロデューサーや、今の環境に物足りなさを感じていて新しいチャレンジがしたいと思っている若い人を採用したいと思っています。

― そうなると、もともと動画広告関係でいらした方を採用しているのでしょうか?

大岩氏: そうですね、多いです。ただ、それだけだと変わらなくなってしまう部分もあるので、マーケティング的なことが得意な人やデジタルのリテラシーが高い人など、色々なタイプの人に参画頂きたいなと思っています。

メディアを熟知し、クリエイティブを左脳でも分析

― 今回テーマが動画ということでお話を伺いたいのですが、動画広告でどう勝っていくのかや、今注力されていることを教えてください。

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安藤氏: メディアのアルゴリズム、メディアの仕組みや思想を理解したクリエイティブ開発ということが一番重要なので、そこに関して今誰にも負けない状態にしています。ダイレクトマーケティングでもやってきたことなのですが、例えば、なぜFacebookだとこのフィードが表示されて、そのフィードにどういうアクションがあれば、どういう風に評価をされ、配信をされていくのか。

その仕組みが分かっていると、どうすれば一番安い価格で、最大のリーチが出せるか、どういう作り方をすれば、一番効果がでるかというかということを掴むことができるので、左脳的にクリエイティブを分析する機関をもっています。

それをもっていることで、結局一番メディアを理解して作ることができる、そのメディアで一番効果を出す作り方を知っている、という状態を作っているのが当社の強みです。

― その場合のメディアというのは、ネットのメディアのことを指しているのか、テレビとかまで含めていらっしゃるのでしょうか?

安藤氏: デバイスとしてのテレビは含みます。要はインターネットテレビです。ネットテレビ、YouTube、Facebook、Twitterなどです。

― 一番の強みはメディアを熟知してらっしゃるということでしょうか?

安藤氏: そういうことです。作るだけじゃなく、作る前提としてメディアに合った作り方を定義し、作った後もメディアに合わせた運用を行います。それはWEB広告を理解して入れば当たり前のことなのですが、これができるところが実はほとんどない。例えば、WEB広告では、渾身のクリエイティブを1本作って配信しても、絶対に効果が出ないのです。右脳的な瞬発力が必要なクリエイティブだけでなく、左脳的・科学的に作り方を定義したり、作ったクリエイティブを取り廻しできる体制を持っていないと、効果を追求することはできません。

― MOZZ TOKYOはいかがですか、会社の強みを教えてください。

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大岩氏: さきほどお話したことでもありますが、良い動画クリエイティブを作る会社になるというのはもちろんなのですが、サイバーエージェントグループの中で広告代理店やメディアと連携しながら動ける立ち位置なので、マーケティング的な考え方ですね。考え方を理解しながらいいモノづくりをつくるというのが、強みにしたいと思っています。

― 会社を立ち上げられたばかりですが、今後の目標をお教えください。

大岩氏: 今年に関しては、実績を作っていくことだけ考えています。それから並行して採用をしていく。その2軸です。
今は数を蓄積していって、会社としてのブランドをつくっていくというところでしょうか。

― ブランドクリエイティブ部門は、どのような目標をお持ちですか?

安藤氏: 次世代のすごいものを作りたい人が全員集まる場所にしたいです。
「こんなもんじゃねえぞ」という反骨精神というか、レジェンドは終わったんだというか、そのような考えの人が全員集まる場所にしたいです。事業の戦略的には、インターネット広告の分野におけるバナー広告の効果を出すことについてはおそらく日本一だと思うので、動画広告の分野においても、とにかく日本で一番効果の出るものがつくれる、効果が出せるチームにすることだけです。

プラットフォームに合わせた動画広告へ

― 動画広告の市場のトレンドは上り基調かと思いますが、今後どのようになっていくと思われますか?

大岩氏: サイバーエージェントが公表している動画広告市場調査では、大きく成長すると予測しています。実際現場にいる私たちの肌感としてもそうなので、間違いなくそうなるかなと思います。

― 今までの動画とは違う形で進んでいて、インターネットのメディアに則したものが増えていくという形になるでしょうか?

大岩氏: そうだと思いますね。実際、YouTubeだと6秒とか、やっぱり15秒のテレビCMとは違う考え方をしないと作れないですよね。一方で、逆にWEBだと長尺というか、コンテンツのような広告っぽくない広告は30秒~1分とか長尺の広告クリエイティブみたいのがありますし、メディアや見せたいターゲットに合わせていろんなフォーマットが出てくるというのを理解しながら作っていかないと正しい形にならないかなと思います。

― たくさんの種類の動画が多く出ていく感じになるでしょうか?

大岩氏: 日々そういうものが生まれてくるのは流れとしてあります。
AbemaTVでは、現状だとテレビCMの併用が多いものの、例えばバラエティとバラエティの間に流れる広告というところで、1分尺の芸人さんがカップラーメンのCMで美味しいおかずを探しに行くというような、ミニ番組のような1分広告を作った実績があります。やはり、そちらのほうが効果がよく、プラットフォームに合わせた広告をつくることは大事だということを改めて認識ました。

広告主様もそれに気付きだされており、理解を深めていかれているので、そういうことが出来る会社は強くなるかなと思います。

― 今おっしゃられていたような事例が今後増えていくと思われますか?

安藤氏: 変わってきていると思います。気付いているクリエイターはもうやり始めていますただ、それが徹底的にできているのは僕らの資産ですので強みとして考えています。

クリエイティブではナンバーワンでありたい

― クリエイティブへのお取組み姿勢について、他にも強調されたいことがあればお聞かせください。

大岩氏: テレビCMとは異なり、WEBにおいてはカッコイイ動画がいいクリエイティブかといわれたら、それは違うと思うのです。メディアに向き合って効果が出るクリエイティブを作りたい、WEBにおけるクリエイティブの強さを追求していきたい。当社にはそういった組織や体制もあるし、今まさにそれに向かって動いています。

― Web動画広告におけるいいクリエティブとは?どのようなものでしょうか。

安藤氏: テレビCMは、テレビの中でこそいい広告なのだと思います。タレントさんがたくさん出ている番組と番組の間に挟まって15秒で伝えるということになると、タレントを使ってワンメッセージでドーン!になりますよね。商品にスポットライトをたいて、面白おかしくしないと見ないよね、というのは、テレビだからだと思うんです。そういうテレビCMの歴史の中で戦ってきた、テレビCMに特化したクリエイターの方は、やはり迫力が違いますし、すごいと思います。

一方で、WEBにおいてはテレビCMとは異なるいいものがあって、それを作るということだと思うのです。すなわちWEBにおいて効果が出るクリエイティブはこういうことだと。その迫力を出していくことです。

― 最後に何かメッセージがあればお聞かせください。

大岩氏: わかっているクリエイターはもう気付いている、ということですね。優秀な人ほど今までの映像の作り方とか、今までのテレビの作り方だけじゃないことを当然分かっていて、デジタルではデジタルの形を作っていかなければならないと思っています。
WEBにはWEBの制限がある。テレビが15秒の制限があるように。その中で一番新しいものをつくれるクリエイターを育てたいし、ナンバーワンでありたいと考えています。

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ABOUT 山本 聖香

山本 聖香

1997年に調査・コンサルティング会社 シード・プランニング入社。 国内外のIT関連のマーケティングリサーチに従事。エレクトロニクスIT領域のリサーチを長年担当。主なIT分野の専門領域は動画、配信、デジタルコンテンツ。 2014年からは、デジタル領域を対象とする市場・サービス評価機関デジタルインファクトの事業に参画。