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IPアドレスをいかに位置情報サービスに利用するか

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

IPアドレスは、皆さんご存知の通り1990年代から利用されている。しかしながら、消費者データの利用が今までよりも盛んになってきた現在において、IPアドレスはデジタル広告主にとって最も重要なデータ手法の一つであり続けている。私たちはIPアドレスの多面的な利用方法について業界のエキスパートに話を聞いた。

以前は、地域に紐付いたマーケティングはボリュームやリーチの不足から広告費用の無駄と考えられていた。しかしながら、Codewise社のCTOであるMaciej Szlachta氏は、今日の消費者のテクノロジー利用によって位置情報の必要性が高まっていると述べている。

「現在の動きの速いコネクテッドな世界においては、移動時や家庭にいるとき、またはオフィスにいるような場合にリーチが可能なことが必要になっています。Digital Element社が提供するIP及び位置情報のテクノロジーによって、正確な情報提供が可能になり、広告主はより良い形でのターゲティング機能およびリアルタイムのキャンペーンパフォーマンス機能を活用することができます。Codewise社において、当社のVoluumTRKプラットフォームの利用は昨年と比較して25%成長しており、このような拡張的なソリューションが求められていると言えます」。

加えて、広告ブロックの利用が増えていることから、広告主はよりパーソナライズされたクリエイティブを届ける必要にせまられている。位置情報に応じてより最適化された広告は、現在広告主に求められている手法の一つである。

アクセスポイント

位置情報の人気が高まるにつれて、多くのデータ取得及び活用ソリューションが登場し、広告主を戸惑わせている。アクセスポイントは位置情報を獲得する方法の一つで、ユーザがある距離範囲圏内に現れた際にトラックを始める手法である。

しかしながら、この手法で集められたデータには問題がある、とDigital Element社のUK&アイルランドのバイスプレシデントCharlie Johnson氏は説明する。アクセスポイントの利用ではユーザのデータ収集位置をピンポイントで特定できず、大きなエリアでの特定のみにとどまってしまう。例えばBT社はUKで12のアクセスポイントしか設定していない。これらの地域の消費者は数百マイルも離れてしまっている可能性があり、あるユーザに対して適切な広告が他の人には不適切という可能性もあり得る。

ここにIPアドレスの需要がある。以前はアクセスポイントと同様の問題を抱えていたが、ここ数年で新たなIPアドレス管理手法が出現してきた。これによって単一のアドレスによって管理される範囲が限定されるようになった。より詳細な位置情報のデータを活用することで、よりパーソナライズされた広告を国中の消費者に配信することが可能になった。

IPアドレスは特に中小企業やローカルビジネスにとって有益である。以前はIPアドレスによる位置情報は、対象範囲が大きすぎて多くの無駄が発生してしまうため非実用的だったが、現在は非常にローカルに根付いたクリエイティブの発信が可能になっている。

アドフラウド

あなたがCPCキャンペーンを行っていて、クリック率が高いにもかかわらずコンバージョンが得られない場合は、アドフラウドによる可能性がある。ところが、これらのクリックのIPアドレスを検知することでページへのアクセスを防ぐことができる、とJohnson氏はアドバイスをする。

同様に、IPアドレスを利用することで、ユーザが他の国にいるのに対象国にいるような形態でのなりすましを検知し防御することも可能になる。

また、クッキーの利用ができないモバイルの利用が顕著になり、位置情報を検知し、アドフラウドを防御できるような新たな手法が必要となっている。そのためIPアドレスの重要性は高まっている。

データコラボレーション

IPアドレスの利用に加えて、位置情報を活用したいと考える広告主は、より包括的なアプローチを求めている。メディアのエキスパートは、位置情報だけでなく、IPアドレスに加えてSDK、Wi-Fi、GPSなどのテクノロジーを通じてより多くのデータを必要としている。

例えばテイクアウト専門のレストランのデータなどのニッチな情報も、パブリッシャーから収集される情報とともに活用されるべきだ、とJohnson氏はコメントしている。これらの情報から得られるインサイトによって、位置情報に関するデータだけでなく、クリック、購入、何時に消費者が購入を行うのかなどの情報を組み合わせることが可能になる。

データがあまりにも多いように感じるかもしれないが、DMPによってデータの融合が可能になる。DMPテクノロジーを活用し、位置情報と異なる事業者やサービスによるモバイルデータを組み合わせることで、広告主はパーソナライズを目的とした新たなオーディエンスプラットフォームを確立することが可能になる。

IPアドレスはアドフラウドを防御し、位置情報を正しく把握する優れた方法である。しかしながら、競合に対してパーソナライズされたクリエイティブという面で差別化を果たすためには、より一層の進化が必要である。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。