×

「運用広告の未来はスマホ、動画、ブランディング」、オプト主催運用広告セミナー

3月29日、都内にて、インターネット広告代理店オプト主催の運用広告セミナーが開催された。

現在のインターネット広告全体の中で運用広告が占める割合は71%。大部分の広告が自動取引を通じて配信可能になったことで、その運用方法に対する関心が高まってきている。満員となった会場には、各企業の広告・マーケティング担当者などが100名超集まった。

写真1

冒頭の挨拶を行なった同社取締役の岡部晃彦氏は、運用型広告の利用法が多様化してきたと述べ、これまでは運用広告と言えば主に顕在化した顧客や既存顧客を対象としたリスティング広告等を意味していたが、現在では潜在顧客の新規開拓やブランディングにも用いられるようになってきたことを伝えた。

写真2

続いて基調講演を行なったのは、執行役員の掛谷章往氏。「運用型広告の過去・現在・未来」と題し、運用広告の歴史を大きく3段階に分けて解説した。同氏によると、第1段階は「広告スコアの時代」。人手を介した「ディレクトリ型」と入札金額のみで広告表示の順位が決まる「完全オークション型」を経て、入札金額とクリック率を掛け合わせた「広告スコア型」が誕生したのが2002年。有料登録や入札金額といった広告主側のみが管理できる要素に加えて、クリック率という概念を導入することでユーザーの関心をも指標に加えたこの仕組みを、掛谷氏は運用広告における「一番大きな発明」と表現する。さらに2003年になってコンテンツ解析技術に基づいたGoogle AdSenseのコンテンツ・マッチ広告が誕生したことで、ユーザーの関心に基づいた広告こそ優先的に表示すべきという思想が根付いた。

2005年から2012年にかけては、第2段階となる「cookieの時代」。サイト閲覧ログを生かすことで、対象ユーザーが集まる可能性のある特定のメディアに広告を出稿するのではなく、あらゆるメディアに散らばった対象ユーザーに直接働きかけることを可能にした同技術は、一般的に「枠から人へ」の発展と呼ばれている。このcookieを活用する形で、リターゲティング広告、DSP、レコメンド広告、DMPなどの新規技術が次々と生まれることになった。

そして2012年から現在に至る第3段階は「スマホの時代」。第2段階で大々的に活用されたcookieをデフォルトで排除するiPhoneが普及したことなどを受けて、スマートフォンに対応したインフィード広告やSDKを活用したアプリ開発への注目が高まっている。

写真3

この「スマホの時代」における各施策を紹介したのが、株式会社ユーキャンの教育事業部ウェブマーケティング部次長を務める鳥羽渉氏。通信教育事業を手掛ける同社の主要顧客は20代~40代の女性。比較的早い段階でスマートフォンの利用を開始したセグメントであるため、同社ではインフィード広告に自ずと注力し始めた。ところが、インフィード広告は、他の形式に比べて同一広告の効果が継続しないことが判明。そこで作成しやすいテキストに注力し、商品群をカテゴリ別に括り段階的に訴求検証することで、商品に適合した訴求を発見し、効果を担保したという。

また鳥羽氏は、広告の最適化を目的とした自動取引を通じてCPAのみを追求すると、訴求対象は限定されていく一方になると指摘。最終的な利益を見据えた顧客層拡大のためには、自動取引のみに頼るのは得策ではないと主張した。同社では、短期的には自動、長期的には手動を重視し、また稼動範囲の異なる自動入札ツールを使い分けることでこの問題に対応しているという。

写真4

一方、不動産事業を営む株式会社レオパレス21にとっての運用広告の課題は、各地域で在庫数(空き室)と広告の反響のばらつきがあること。同社の賃貸事業部営業企画推進部Webマーケティング課課長代理の大谷和郎氏は、在庫と反響のバランスを取るため、GoogleのDoubleClickを活用し、在庫数に連動して自動で広告における購入キーワードのOn/Offを切り替えることで費用対効果を向上させたという実例について述べた。また同社では、店舗周辺にいるユーザーに限定したO2Oターゲティングや、これから一人暮らしを始めることになる受験生やその母親へリーチするためにユーザー属性別で広告文や入札価格を出し分けられるGoogleのDFSA(Demographic for Search Ads)やYahoo! DMPデータを活用しているという。

オプト社トレーディングコンサル1部部長の大場健太郎氏は、インフィード広告の活用意義と攻略手法について解説した。同氏によると、「検索行動の代替機能」として認知されているインフィード広告を有効活用すれば、これまで広告をクリックしたことがなかった生活者にアプローチすることができる。また今後はインフィード広告においても動画が増えることにより、「静止画ブラインドネス」が進んでいく可能性を指摘。さらに、必ずしも動画閲覧を主目的としていない、Yahoo! JapanやFacebookといったニュース媒体またはコミュニケーション・ツールのユーザー向けに配信する動画においては、内容を端的にまとめる必要があるなどのアドバイスを提供した。

写真6

最後に登壇したトレーディングコンサル5部部長兼海外マーケティング部部長の久保隼人氏は、リスティング広告のブランディングとしての使い方について説明した。地味な印象を与えるリスティング広告だが、近年ではコールアウト、電話番号、価格、アプリリンクなどの表示機能が備わっている。またロケーション履歴をオンにしているユーザーのサンプル集合を集計することで来店コンバージョンの推定値を算出する「Store Visit」や、広告出稿期間の前後でブランド理解がどれだけ進んだかを調査する「Google Consumer Survey」などの機能をブランディングに活用できるツールとして紹介した。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。