「ビューアビリティ・広告取引透明性のグローバル潮流を語る」-オムニバスイベントレポート-第1回

オムニバスは、今年3月21日にMOAT社を招き、ビューアビリティ計測や広告取引の透明性のグローバル潮流をテーマにしたイベントを開催した。
当日の様子を、二回にわたりお届けする。

第1回は、Twitter、Facebookなど数々の大手プラットフォームで広告計測の認定ベンダーに採用されているMOAT APAC and Japan Director のXIAOMING SHAO(シャオミン シャオ)氏によるプレゼンテーションである。

MOATは、” To make brand advertising more effective online”をビジョンに掲げる3rdパーティ計測ツールベンダーです。測定対象としては、主に広告のビューアビリティやヒューマントラフィック、アドフラウド等をメインに行っています。米国ではプレミアムパブリッシャーに対して9割のシェアを持っており、多くのブランド広告主にも導入されています。

まず、MOAT社の事業ドメインとも非常に密な関連性のあるテーマについて、世界的なブランドのCMOが行ったスピーチをご紹介致します。

【Marc Pritchard, P&G, on Better Advertising Enabled
by Media Transparency at IAB ALM】

今回は計測ツールベンダーとして、このスピーチの中から要点として挙げた3点に沿ってお話したいと思います。

・Only Buy Human and Viewable inventory
・Adopt the MRC Viewability Standard
・Platforms Must Support Third Party Measurement

1. Only Buy Human and Viewable inventory

(ビューアブルであり、かつ人が見ているトラフィックのみを買う)

インターネット広告はビューアビリティが保証されているわけではありません。インターネットというメディア自体がブラウザやアプリによってアクセスされていて、スクロールされることも多い中で、広告枠は上に張り付けられていることもあれば下に埋もれているままのこともあります。
ビューアビリティは媒体社によりサイトのレイアウトや構成、記事コンテンツと広告のバランスなどの面でコントロールできる部分であり、正しく計測を行うことで改善や新規メニュー開発につなげることも出来ます。

一方、Human(人間)によるトラフィックか否かについて。人ではないトラフィックを指して NHT(non-human-traffic)、米国では主に IVT(Invalid Traffic)と呼ばれています。意味合いとしては「効果の無いトラフィック」ということになります。

図

その「効果の無いトラフィック」の中身を見てみますと、さらに2種類のトラフィックに分けられます。General と Sophisticatedです。ジェネラル(一般的な)とは「悪意のない無効なトラフィック」を指しており、インターネットの世界で必ず存在するようなもの、データセンターからの通信やサーチエンジンによるクロールなどです。こういったものは多くの場合、「自分はロボットですよ」というような表示を媒体側に渡していて、媒体側もこれは人間ではない、というのが分かるようになっています。

そして Sophisticated(ませた、詭弁)なIVT とは、悪意のあるトラフィック。ハイジャックされたデバイス、マルウェア、クッキースタッフィングなど色々なカテゴリーがあります。主にはトラフィック稼ぎ、それによる広告収益稼ぎを狙うようなものです。

どちらも人間のトラフィックではないので、米国の広告主-代理店-媒体の中では基本的に報酬は発生しないという合意が取れています。APACではこれから測定を開始してその割合などを調査するので、今後こういう論議が始まってくると思います。

このIVTの計測に関しては、ベンダーの認定は基本的にMRCという組織が行っているのですが、去年まではジェネラルにのみに対応していれば認定がとれていましたが、今年以降はもう一方の悪意のあるトラフィックの方についても対応しないといけなくなってきています。

ではそのIVTが、現状どの程度発生しているのか、2016年Q3の日本でのデータを出してみました。デスクトップおよびモバイルWEBのバナー、それぞれ約2.5%と2.2%。デスクトップの動画、モバイルWEBの動画については1.9%、2.0%になっています。

また中身を見てみるとほとんどがジェネラルのIVTが占めており、今のところ大きな問題にはなっておりません。つい最近ある日本の新聞紙で結構な金額の広告費が不正でとられているのではないかという記事がありましたが、それも今後JIAAがいくつかの3rdPartyベンダーを用いた調査を行うとのことです。

IVTについては、個人的に「花粉症」と同じようなものだと思っています。「いつ来るかわからない」部分があり、1つ悪いベンダーが誕生すると数値も大きく変動する可能性がありますので、そちらは常にトラッキングしておく必要はあると思います。

2. Adopt the MRC Viewability Standard

(ビューアビリティについてMRCの基準に準拠する)

写真1

世の中的に色々な基準が媒体や代理店ごとに混在していたので、統一的な基準を1つ設けないとビジネスに支障をきたすという話です。ビューアビリティの基準を定めたのは5つの団体でして、iab, ANA, 4A, MRC, dcm です。MRCがいちばんメインになるメディアレーティングのグループでして、業界の中で80年-90年の歴史があり、古くはラジオや新聞紙のレーティングを行ってきた非営利の組織です。

MRCの定義によればビューアビリティとは以下のようなものです。

・ディスプレイ広告に関しては、50%以上表示かつ1秒以上表示
・動画に関しては 50%以上表示かつ2秒以上表示。
・モバイルの基準はデスクトップに準拠

これが他のあるグローバルエージェンシーでは、ディスプレイは100%をオンスクリーン(ただし表示時間の規定なし)、動画広告は100%オンスクリーンを動画尺の50%の長さかつ音声ONで、という基準が採択されています。

動画に関する基準がとても厳しいのが分かります。一方でディスプレイに関する基準は「100%オンスクリーン」と厳しいように見えつつ、ユーザーが(特にモバイル環境で)スクロールする速度を考えると時間規定がない状態で正しく「広告が見えた」と言えるかどうかは怪しいです。

このようにたくさんの基準が混在しているので、一番ベーシックになる基準、ここではMRCの基準を採用し、統一することでビジネスを分かりやすくすることが大きなメリットです。

3.Platforms Must Support Third Party Measurement

(プラットフォームは3rdパーティ計測ツールをサポートするべきだ)

これは、冒頭紹介したスピーチの中では「狐に鶏小屋を守らせるな」と表現されています。ビジネス上の取引を行うために、第三者による公平な目が欠かせないという意図だと思われます。実際、2016年に発表されたFacebookの動画広告評価指標の誤りなど、媒体者自身が自分たちの広告価値を決定してしまっている「囲まれた庭(Walled Garden)」状態の問題点を示す事実が複数出て来ました。

MOATは3rdパーティ計測ベンダーとして現状で唯一、Twitterでの動画広告、FacebookとInstagramの動画広告、YouTubeやSnapchatやPinterest などを測定できる立場にあります。

ビューアビリティの先〜ブランドセーフティに関する議論

つい先日のニュースですが、英国でHavasグループがYouTubeへの広告出稿を差し止めたという報道がありました。これが示唆していることとしては、HumanとViewability が保証されたとしても、次の一歩として「ブランドセーフティ」の問題があるということです。

ブランド広告がどのような記事やコンテンツに配信されるか。例えばテキストコンテンツであればキーワードベース、動画広告であれば音声認知や画像認知を用いた技術でしっかりとコンテンツの中身の精査をしていくことが重要になってくると思います。

ブランドセーフティを守るための手法(のタイプ)として「Pre Bid Post Bid」というのがあります。Pre Bidとはつまり、ビューアビリティの低いimp等に対してそもそもプログラマティックでbid(入札)しないというアプローチ。一方Post Bid とは、取引形態として手売りの枠やPMPなどのプレミアムな広告枠についての事後的なアプローチ(広告商材に反する内容のニュースが発生した際に公共広告への差し替えなど)のことを指します。

まとめ

以上様々な角度からビューアビリティや人では無いトラフィック等についてお話をさせて頂きました。弊社のビジョンに通じるところとしまして、「人によるトラフィック」かつ「ちゃんと見ることが出来るインプレッション」の確保がデジタルキャンペーンの第一歩だと考えています。

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。