WireColumn: DMPの導入を検討する前にチェックしたい、たった3つの大きなこと

DMP(データマネジメントプラットフォーム)はここ数年バズワードとなり、カスタマージャーニーの分析ができるようになったらしい、ウェブのアノニマス情報とEメールが統合できるらしいなど、デジタルマーケティングシーンに登場した魔法のテクノロジーかのような期待を集めています。

魔法使いに、叶えて欲しいことを正しく伝えなければ、期待したことは叶わないのだと思います。何を伝えると叶うのか考えてみましょう。

 

 

 

先走る思いと、基本の積み重ね

 

先述した、DMPで実現できるらしい!で紹介した例はいずれも、実際にお問い合わせをいただいたDMPの先進的は活用方法です。デジタルマーケティングに長く取り組んでいるマーケターの方は、実現したいことのイメージを既に持っていてそれを実現できるDMPを求めているように感じています。私自身カスタマージャーニーの分析とジャーニーを元にしたマーケティングをDMPで実現したいと考えているひとりです。

 

しかし何事も基本が大事、ということでコラムの初回はDMPの基本的な役割からお話して参ります。

DMPの基本的な役割は、マーケティング活動のタッチポイントで接触されたアクセスデータをオーディエンス主体のデータに定義・変換するもので、変換したオーディエンスデータをセグメント化し、必要な人に必要な時に必要な訴求をする、オーディエンスに寄り添ったデジタルマーケティングを支援するものです。

 

それを実現するためには、ありきたりに聞こえるかもしれませんが、まずはDMPを導入することでどの課題を解決し、どのような結果を得ようとしているのか、DMP導入前に目的を明確にすることを強く推奨しています。この目的の明確化と、そのための丁寧な準備が、DMP導入の成功と失敗を隔てる最大の要素であることを、DMPを10年間提供しているベンダーの経験としてお伝えしています。

 

目的の設定は、売上や成約率アップなどパフォーマンスをKPIとするものから、オーディエンスのボリューム把握や顧客インサイトなど、顧客情報を財産とするカスタマーインテリジェンスの創出が目的となることもあります。

DMP導入の稟議を得るには、ROI向上など納得されやすい指標をあげて提案したくなるところですが、DMPは自社の財産であるオーディエンスを知り、アクションを起こすことを支援するテクノロジーです。稟議交渉の際にはこの核心部分を数字に置き換えず、価値を理解してもらえるよう提案していただきたいと思います。

DMPでオーディエンスを知りアクションを起こすために、具体的にどのようなカスタマーインテリジェンスを得ることができるのかはこの連載を通して説明して参りますが、初回はまず次にあげた3つの項目を通して、目的を実現するための準備に入っていただきたいと思います。

 

 

DMPの導入を検討する前にチェックしたい、たった3つの大きなこと

 

1. 横断組織の発足(ガバナンス)

 

インターネットユーザーはコンテンツからコンテンツへと、ブランド、メディア種を問わずインターネット上を自由に行動します。それは実生活において様々な店舗で、様々なブランドを購入し、属性で括ることのできない興味や楽しみを持っているのと同様です。自社で展開しているブランド群のターゲット層がかけ離れているとしても、企業が保有するオウンドメディア全ての情報を一元化して、オーディエンスの特徴や傾向を知ること、すなわちカスタマーインテリジェンスを創出することこそ、DMPの真骨頂です。ただこれを実現するには、CIOとCMOをオーナーとした組織を横断したタスクフォースの結成が必須となります。

 

  • テクノロジー:企業が保有するオウンドメディア全てにタグを設置する必要があります。(*cookieテクノロジーを利用したDMPの場合)
    事業を横断した全サイトに、もれなくタグを設置し設計に基づいたデータを正しく取得するのは、技術部門の協力なしでは実現し難いものです。サイトで利用されている膨大なタグの動作を把握している、かつ全サイトのストラクチャを理解している技術者、それが非現実的であれば各担当技術者によるワークチームの参画が必要です。

 

  • カスタマーインテリジェンスと分析:収集したデータをオーディエンスのインサイトを軸に分析することで、オーディエンスの特徴であるカスタマーインテリジェンスを発見することができます。このインテリジェンスをビジネス要件に沿ってセグメント化し、速やかに社内に提供することがDMPの心臓部と言えます。
    これらビジネス要件の理解、データ分析、カスタマーインテリジェンスの発見、セグメント化のスキーム、インテリジェンスのフィードバックスキームを支えるには、マーケティング部を中心に関連部署からスペシャリストの参画が必要です。またカスタマーインテリジェンスを受け取る側も、マーコム、プロダクト開発、ブランドマネージャー、広告購入部門、広報など、受け取り先の担当者もプロジェクトの一員である認識が重要です。

 

 

2. 目的のリストアップと共通認識

 

目的に対して、技術および機能的に対応しているかを社内技術部門およびDMPベンダーと確認し、実現したい目的の優先順位を定め、目的の順位とそれによって得られる結果の共通認識を社内で持ちます。

 

【目的例】

● オーディエンスの態度変容に沿ったキャンペーンを実施したい
要素: 変容ステージの定義、ステージのセグメント化、フリークエンシーコントロール
期待する結果: 変容ステージのステージアップ、新規獲得
確認事項: DMPが定義に沿ったセグメント化ができるか、フリークエンシーコントロールが可能なDSPと連携しているか
● オーディエンスの活動時間に合わせたターゲティングをしたい
要素: 行動時間のセグメント化、時間指定配信
期待する結果: 再訪問数増加、コンバージョン率向上、ロイヤリティ向上
確認事項: DMPがオーディエンスの行動時間、曜日の取得ができ、これらを要素としたセグメント化ができるか、時間指定で広告を配信できるか
● ウェブサイトを訪問したオーディエンスにEメールを配信したい
要素: Eメール、会員番号などEメールとcookie情報を紐づける情報
期待する結果: 再訪問数増加、コンバージョン率向上、ロイヤリティ向上
確認事項: DMPがEメールや会員番号情報などウェブ訪問情報と紐づける情報を保持(インポート)でき、かつメール配信サーバーやキャンペーンマネジメントシステムにデータフィードできるか

 

目的があるからこそDMPを導入するのですから、目的と実施順位を定めることはとても重要です。また目的においては、”何をしたい”に留まらず、それによって”何が得られる”か?まで明示していただくことが更に重要です。それは目的のKPIとなり、DMPの設計で常に意識するものであり、施策結果の判断に利用するものとなります。

 

もうひとつ、目的を達成するために非常に重要な要素があります。DMPはデータを集めて分析を行いセグメント化することに優れていますが、これらカスタマーインテリジェンスは“行動”しなくては、何もイノベーションは起こりません。インテリジェンスをイノベーションに速やかに結びつけるには、DMPとDSPがシングルプラットフォームであることは大変優位です。シングルCookieを利用するシングルプラットフォームは、リダイレクトやピギーバックなど情報をシンクするプロセスを必要とせず、データをロストすることなくターゲティング広告配信へ“行動”を起こすことができます。

 

 

3. オーディエンスの設計

 

オーディエンスターゲティングを行う上で、コアとなるのがセグメントの設計(セグメント化)とそれに必要な要素の取得と言えます。前述した2.の「目的のリストアップ」において、要素に”セグメント化”と記載したものはセグメントの一例ですが、求めるセグメントを作成するためにセグメントごとに、構成する要素、セグメントルールを設計書に落とし、ひとつひとつ丁寧に定義します。ここの定義を疎かにしないことと、構成要素をDMPでセグメント化できるかの確認が必要です。

 

【セグメント例】

●態度定義に沿ったセグメント例
1ヶ月以内に1回、新製品キャンペーンでディスプレイに接触したことがあるが、クリックしたことがなく、サイトへの訪問もないセグメント
1ヶ月以内に1回サイトに訪問経験があるがコンバージョンせずに離脱し、その後2週間以上再来訪がないセグメント
1ヶ月以内に2回以上の訪問があり、かつ最後の訪問が1週間以内で、コンバージョンはしていないセグメント

 

上記の例では、以下のような要素をセグメントの条件として利用します。

・キャンペーン(キャンペーンデータを要素として取得)

・訪問のタイミング(指定期間、指定回数)

・ディスプレイの反応(ディスプレイへの接触やクリックなど)

・サイトへの訪問履歴の有無

 

特定のキャンペーンに接触したかどうか、接触したタイミング、接触した反応など、ターゲットオーディエンスの態度の変容レベルに沿ったルールでセグメント化を行います。

 

● 行動時間のセグメント化

・20時〜24時にアクセスが多いオーディエンス

・ガジェットを8時〜19時の間に閲覧した

・子供用品を19時〜8時の間に閲覧した

 

上記の例では、以下のような要素をセグメントの条件として利用します。

・アクセス時間

・時間帯によるアクセス頻度

・閲覧(購入)した製品

 

8時〜19時を勤務時間、19時〜8時をプライベート時間と定義するなど、同じオーディエンスでも“勤務時間”に該当する時間には、プライベート時間の行動履歴に基づくターゲティングを行わないなど、企業がオーディエンスに歩み寄ったマーケティングを時間帯ターゲティングによって設計します。

 

 

いかがでしょうか?たった3つですが、どれも甲乙付けがたいほど大きなテーマで、どれかひとつでも欠けたら残念ながら成功は難しくなるものです。

まずはDMP導入にあたりCIOとCMOにオーナーとなっていただき、その元で会社を横断したタスクフォースを発足し、各事業部やブランドから実現したい目的を持ち込み、予測結果(効果)と技術的な課題を加味した上で実施順位を定めて取り組んでいただきたいと思います。

DMPによって異なりますが、セグメントは作り直すことができます。しかしながら大元のデータ取得方法や取得条件を頻繁に修正するのは避けねばなりません。そこに修正を入れるということは、設計がうまくできていないということになります。

また、一度設計したら完成!というものでもありません。サイト解析と通じる部分がありますが、時代とともにSNSやデバイスなど新しいチャネルがどんどん登場し、消え去ってもいます。ウェブサイト自体がリニューアルすることもまたあります。DMPの設計は数年置きに見直すものと予め念頭に置いていただき、定期的なメンテナンスの実施をタスクフォースで意識していただければ幸いです。

 

 

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川角 保子

オーバーチュア株式会社、シーネットネットワークスジャパン株式会社、アドビ システムズ 株式会社、AudienceScience Japan株式会社に於いて、ビジネスディベロップメント、ウェブマーケティング、プロダクトマーケティング、フィールドマーケティングに従事。マーケティングとプロダクトに寄り添うBtoBテックベンダークラスター。猫をこよなく愛す。