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クリエイティブプロセスに欠かせなくなりつつある“データ”の存在:カンヌライオンズで MediaMath 社を取材

広告クリエイティブの祭典として名高いカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルでは、広告テクノロジー企業が存在感を増しつつある。

Google、Yahoo!、Facebookといったアドテク大手が名を連ねるだけでなく、xAd(モバイル広告)、Videology(動画広告)といったニッチな企業の参加も目立つ。

今回は、ExchangeWireロンドンの新エディターであるRonan ShieldsによるMediaMath社のEMEA担当マネージングディレクター Dave Reed氏へのインタビュー記事をお届けする。

 

カンヌライオンズのような、従来の「クリエイティブ」フェスティバルにおけるアドテク企業の役割とは?

我々は、様々な業界やアイデアを融合させるグローバルな現象を目の当たりにしています。多くのクリエイティブエージェントがCESなどに出席し、アドテク企業もカンヌライオンズに参加しています。ここに来て、「メディアの企画と実行」と「コピーラライト」が隣り合わせだった1950年代への回帰が起きているのです。

その昔、創造的なアイデアをひらめいたDavid Ogilvy(デイヴィッド・オグルヴィ)には、そのアイディアが「一貫した方法」で茶の間に届くことがわかっていました。しかし、個々の部門が縦割りで独自に進化していき、これらをまとめるためのテクノロジーが長らく不在でした。これが、(キャンペーン実績の)フィードバックのサイクルが遅くなっていった理由です。

現在、広告業界のクリエイティブな部分による、こうしたテクノロジーへの関心が高まっています。テクノロジーを介すことで消費者と会話をし、テクノロジーを中心にクリエイティビティを発揮し、ブランド管理をより良く行うことができるからです。

 

データを取得し、それをクリエイティブプロセスに戻すアドテク業界は、その実行レイヤーに属しています。我々はクリエイティブ企業ではありませんが、クリエイティブプロセスに必須な役割を担っていると思っています。そういう意味で、カンヌライオンズへの参加は意義のあるものです。

 

クリエイティブのフェスティバルで、アドテク企業であるMediaMath社が発信したい一番重要なメッセージとは?

最近、当社のマーケティングブランドを、「重要なのは具体的成果」(It’s outcomes that matters)というメッセージに一新しました。例えば、旅行業界の企業にとってはクリック数ではなく予約実績こそが重要です。新しいタグラインは、「実績の新しい概念」(‘performance reimagined’)および「マーケティングのリエンジニアリング」(‘marketing reengineered’)としています。

 

このフェスティバルではどんな会話が中心となっているか?

テクノロジーを使うことで、ユーザーに対していかに的確な広告を表示できるか。またファーストパーティデータを使うことで、広告実行のクリエイティブな側面をいかにオーダーメイドできるかを見てほしいと思っています。

加えて、広告キャンペーンを通してブランド認知をアップさせる最適なプロキシを探したり、インストア・コンバージョンまで徹底的に追跡できたりすることなど多くの副題もあります。

 

このフェスティバルはどんな企業担当者と対話を進めているのか?通常話をしているクライアント層とは違いはあるか?

大半は媒体社とトレーディングデスクです。ただ今回参加してみて手応えを感じているのは、大手ブランドがDSPやDMPについてより深く知りたいと関心を示していることです。Googleやその他の企業を通して弊社のアドテクツールを導入している企業もおり、すでに間接的にビジネスの関わりがあります。しかし、ヨーロッパでは一般に代理店がテクノロジープラットフォームとの関係を構築しているケースが目立ちます。

今後、アドテク市場にはさらなる成熟が見込まれ、将来、大手ブランド企業でも直接テクノロジープラットフォームと関係を持つことが理にかなう状況になっていくでしょう。検索広告ではKenshooやMarin、そして広告配信ではDFPやSizmekと直接取引するのと同じことです。

広告運用に関しては今後も代理店が全てを担い、アドテクノロジーの契約やリレーションは、ブランド企業が直接押さえて行く流れが生まれると考えています。すでに、こうしたケースが出始めています。

 

最近の調査では、関心はあるものの、「プログラマッティク」を依然として信頼していないブランド企業が多い。この専門分野の企業としてその不信をどう改善していくのか?

今はまだ初期段階です。アドテク業界のテクノロジーが出揃った後、最終的にバリューチェーンのどこかにそれぞれ収まるでしょう。

例えばアドサーバーの分野を見てみると、当初は媒体社向けのサービス(自社サイト内の広告配信管理をする仕組み)を提供していましたが、ビジネスは伸び悩みました。その後ネットワークモデルが広まるにつれ、それらを運用するための必要なテクノロジーとして普及しましたが、今度はそのモデルの不透明さに人々は居心地の悪さを感じています。その後、弊社のようなアドテク企業が登場し、デジタル広告枠の売買を金融市場のように扱い、デジタルメディア市場に金融市場と同じ原則を適用したのです。

 

こうした流れを受けて、広告代理店は先回りをした施策をどんどん進めています。ブランド企業に「リアルタイムの広告枠の入札ができるか?」と聞かれれば、広告代理店はすでに仕組みがあることを示し、自社のトレーディングデスクを連れてくるでしょう。こうした啓蒙が進んで行けば、やがて不信感が拭われていくだろうと考えています。

 

これ以外にも、構造上のシフトがあちこちで起きています。WPP(そしてそのトレーディングデスクXaxis)は、メディアエージェンシーがトレーディング側であり、トレーディングデスクはテクノロジーを管理するサプライサイドになるだろうと主張しています。代理店はすでにアドテクの売り込みに着手しており、ブランド企業はアドテク業界にすでに足を踏み入れていると言えます。

 

アドテクの台頭で代理店が中抜きされる可能性についてはどう考えているか?

率直に言って、その点はあまり心配していません。クライアントにとっては、アドテクプラットフォームとの契約は独自に行い、日々の運営はメディアエージェンシーが行うという役割が自然でしょう。

むしろ我々が懸念するのは、RTB(リアルタイム入札)を「誰かが不透明な方法でつくる安いインベントリー」と同義語で扱う風潮です。

とはいえ、広告業界では、モデリングの手法や複数のタッチポイントの貢献度を分析する「マルチタッチアトリビューション」を向上させるためのオフラインデータの活用などの進化が続いています。今後、必要となる透明性の強化という意味でも必要不可欠な動きだと言えるでしょう。

カンヌライオンズでMediaMath社を取材-2

 

(編集 : 三橋 ゆか里)

 

 

ABOUT 大山 忍

大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。