Sharethroughがネイティブ広告にかける想い、パブリッシャーが目指すデジタル広告ビジネスのあるべき姿 [インタビュー]

画期的なネイティブ広告プラットフォームとして日本でもすでに知られているSharethroughを日本に持ち込み、現在その普及を進めている同社日本ビジネス事業責任者の高広伯彦氏に、マーケット環境を踏まえた日本での取り組みについて聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

ネイティブ広告への強い想いがシンプルなプロダクトに反映されたSharethroughの特徴

―高広さんは、なぜSharethroughを日本で広めようとされているのか、その背景からお聞かせください。

私は現在ネイティブ広告プラットフォームのSharethrough日本ビジネスの代表をしています。
ネイティブ広告は、日本でもこの数年の間に知られるようになった「インバウンドマーケティング」、「コンテンツマーケティング」といったコンテンツを活用するマーケティング手法とも親和性が高いと数年前から注目していて、以前インバウンドマーケティングの専門会社の代表を務めていた際にも、同社の将来のビジネスプランとしてネイティブ広告は視野入れていたぐらいです。また、それだけではなくネイティブ広告がモバイルファーストな時代なデジタルマーケティングにあっているし、加えて媒体社・広告主・ユーザーにとって三方良しな仕組みだというところにパッションを持っています。

きっかけは、6年前に辞めたGoogle時代の同僚であったPatrick Keane(パトリック・キーン)からの連絡で、彼は現在Sharethroughのニューヨークオフィスでプレジデントを務めています。彼がSharethroughに参画したということで、LinkedIn経由で「おお、おめでとう!面白そうだね。この分野は昔のGoogle AdWordsの思想と似ていて、今後きっと伸びそうだよね。もし日本市場に興味ができたらその際には連絡して」とメッセージを送ったのです。そのあと1年くらい連絡はなかったのですが、今年の春先に突然「ファウンダーのDanたちが日本に行くから会ってみて」と連絡が来て(笑)、それで、CEOであり共同創業者のDan Greenberg(ダン・グリーンバーグ)たちと東京で会ったのです。その時、すでに私のほうはJIAA(日本インタラクティブ広告協会)でネイティブ広告研究会の幹事もやっていたのですが、彼らに日本に参入するなら2015年中、ないしは遅くて2016年頭にすべきとアドバイスをしたのです。それと、その時にいきなり日本オフィスを立ち上げるとなるとコストかかるし、むしろ日本でSharethroughのプラットフォームを採用したパブリッシャーがある程度増えたところでオフィスを作れば?とも伝えたら、じゃあ「日本でのビジネスを手伝ってほしい。」とDanから言われ、今年6月からSharethroughのメンバーとして日本のパブリッシャー向けの導入、事業開発に携わるようになりました。

Sharethroughの共同創業者でCEOのDan Greenbergは、米国IABのネイティブ広告グループの主要メンバーで、” Native Advertising Playbook ”というガイドラインの共同執筆者です。彼はネイティブ広告に対する強い思いの持ち主でして、欧米ではこの領域の Thought Leadershipとして影響力を持っている人物です。

Danは今年サンフランシスコで開かれた全社集会で、「僕たちがネイティブ広告に取り組む理由は、コンテンツを作っているパブリッシャーのビジネスが維持されて、良いコンテンツを僕らが読めるようにするためだ」と言っていました。彼は「 Preserve Publishing 」という言葉を使っていましたが、すなわち、「媒体ビジネスの維持、媒体がもっている価値をちゃんと使って収益機会を提供することができるようにすることを目指す」ということです。ここしばらくのネット広告業界を見渡すと、アドネットワークやデマンド側のプラットフォームが普及し、とりわけコンテンツを自ら時間と手間をかけて生み出しているパブリッシャーからすると「今のネット広告の料金は自分たちの提供する価値と比べて安すぎる」という思いが強かったと思われます。日本が欧米と比べてCPMが1/5とも1/20とも言われていますが、それでは媒体ビジネスの維持はなかなか難しいでしょう。コンテンツを自分たちで作っていない、コストがそれらにかからないパブリッシャーならともかく、そうでないところはビジネス継続のためのツールが必要なわけです。ただ、残念ながらそういうツールがなかった。とりわけネイティブ広告は媒体のもっている価値をより反映した広告の仕組みなので、良い媒体が良いオーディエンスを持っているのであれば、そのオーディエンスに受け入れられ、そしてそれが収益を向上させるものである必要があります。オーディエンスにとっての良い広告体験と、パブリッシャーにとっての新たな収益機会を提供すること。その両方をとりもつという思想がSharethrough内部およびプロダクトに込められています。

このような思想に共感し、Danとお互い意気投合したことも、このビジネスをお手伝いすることになったきっかけの一つです。

―Sharethroughのサービス内容についてお聞かせください。

Sharethroughは現在グローバルでは三つのプロダクトを持っています。
一つ目はパブリッシャー向けSSPのSharethrough for Publishers 通称SFP、二つ目は広告主向けのSharethrough Ad Manager通称SAM、そして三つ目はSharethrough Exchange通称STXです。日本ではまずSSPの提供を開始しました。

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―実にシンプルなプロダクトラインナップですね。

はい。パブリッシャー向けSSPは、ネイティブ広告に特化したSSPです。広告配信はパブリッシャーが現在使っているDFPなどのアドサーバーを用い、それとインテグレーションするだけで、パブリッシャーはネイティブ広告に関するあらゆるツールを手に入れることができます。例えばネイティブ広告の作成ツール、効果分析ツール、売上管理ツール、プログラマティックなセールス関連のツールなど、ネイティブ広告の運用と収益管理に関する必要なものは、一通り揃えています。米国ではProgrammaticに熱い視線が集まっているので、SharethroughのSSPは、広告在庫をどこかのPrivate Market Placeに出すことも、Open RTB 2.3にも対応しているので、対応しているDSP側とも繋ぐことも可能です。すなわち、オンライン取引であるProgrammaticセールスにも、人的販売のDirect Salesの両方に対応し、広告管理が可能となっています。パブリッシャーとの向き合いにおいては、Direct Salesのサポートにも力を入れており、パブリッシャーの当該部署との広告枠開発・企画、営業向けトレーニングや営業書類作成などのサポートまで行っています。これはネイティブ広告を正しく世の中に拡め、またパブリッシャーにとって適切かつ高い収益の得られる販売をしてほしいということでもあります。

―利用料金体系はどのようになっているのでしょうか?

SSPとして、広告配信量に応じた従量課金制を設定しています。CPMあたりいくらといった感じですね。初期導入費用は幾分かかりますが、日本国内で早期に弊社のプラットフォームを採用してくれるパブリッシャー様には無料としています。来年の第一四半期までに参加していただいたところにはそのようにしていこうと思っています。

―対応されているネイティブ広告のフォーマットは、どのようなものになりますか?

現状はパブリッシャーがサイト側に導入できるフォーマットは、モバイルでの記事見出しリスト形式のサイトデザインに合った「In Feed」、記事中に挿入する「Mid Post」、記事下に挿入する「Below the Post」など5種類ほどあります。また、「Gallery」やカスタム型にも対応しており、ほとんど全てのサイトデザインに合わせたネイティブ広告枠が作れます。そしてSDKも準備してあるので、iOS/Androidなどのアプリにおけるネイティブ広告枠設置も可能です。また自動再生型の動画広告へも対応しています。これらが媒体側から見た広告フォーマット。
そしてSharethroughの特徴として、ネット上のコンテンツであればあらゆるものをネイティブ広告化することができる「ネイティブ広告ジェネレーター」という仕組みを持っていますので、広告主側は既存のブランドコンテンツ、例えば、

● オウンドメディア、ブログに投稿された記事
● instagram/pinterestに投稿された写真
● facebook/twitterに投稿されたツイートやポスト
● YouTubeやVineに投稿された動画

などをネイティブ広告として活用することが出来ます。つまり現在コンテンツマーケティングやソーシャルメディアマーケティングを行っている広告主は、コンテンツをより見てもらう、フォロワーやファンを増やすためにSharethroughのネイティブ広告の仕組みを使うことをお勧めしたいと思っています。
また、「Continuous Campaign 継続キャンペーン」という仕組みを持っており、自動的に、新しく投稿されたコンテンツをネイティブ広告として媒体に配信することもできます。この場合、媒体側と「半年」で「月間1000万imp」のような契約をして、その間最新のコンテンツ、過去のコンテンツをうまく配分しながら半自動的に配信することができるようになり、広告主にとっては継続的なトラフィックとエンゲージメントを獲得できるし、パブリッシャーにとっては長期の契約が取れることになります。
このように、今までの広告とはちょっと違った仕組みが、Sharethroughが提供するネイティブ広告プラットフォームには存在します。

―パブリッシャーがSharethroughを導入するために、何を準備する必要があるのでしょうか?

正直なところネイティブ広告用に特別な枠を作る必要はありません。例えばすでに、見出しが並んでいるようなサイトであれば、その一部をネイティブ広告として設定すればいいので。今までのネット広告はわざわざ「広告枠」を設けるためのサイトのデザインをしていましたが、ネイティブ広告の場合は究極的にはその作業は必要なく、「コンテンツが読まれるためのサイトデザイン」をすればよいのです。この流れが進むと、一般的な広告枠が存在しないサイトデザインが普及することになると思います。でもそれでもマネタイズができる。なぜなら、コンテンツ枠の一つがネイティブ広告枠として機能するからです。SharethroughのSFPでは、パブリッシャー側がそうした枠を設けてさえくれれば、あとはインテグレーションするだけでいいですし、優秀なデザインチームがこちらの社内にはいて、彼らが媒体のデザインごとにあったネイティブ広告枠を制作します。つまり、パブリッシャー側はサイトの中のどこかをネイティブ広告枠と設定し、そこにアドサーバーからの広告配信設定をし、SFPとつなぐ、以上。です。とりわけDFPであれば簡単に設定ができます。

―仮に例えば、Yahoo!JAPANさんのPCのポータルのトップページでも、導入しようとされればすぐにでも利用できるということでしょうか?

interview_image2はい、こちらとしてはできます(笑)。ただ、Yahoo!JAPANさんに採用して頂けるかどうかは別の話ですが。SharethroughのSFPはデスクトップ/モバイル/タブレットの全てのネイティブ広告に対応しているので、デバイスに関わらず導入可能です。しかし今インターネットトラフィックのモバイルシフトが急激に起こっており、サイトによっては全トラフィックの7~8割がモバイルからのトラフィックであるというケースもあります。またそもそもニュースコンテンツなどはアプリで視聴されているという状況もある中で、モバイルにおける広告のマネタイズが大きな割合を占めてきています。しかしIABが昔設定した「IAB Standard」と呼ばれるディスプレイ広告のフォーマットは従来のデスクトップPC向けに定められたものなので、モバイルインターネットにおいては急速に効果を落としています。これは従来型のネット広告のフォーマットがモバイル時代にフィットしていないということを指しています。そこで、この時代に合ったものとして、例えばニュース記事の見出しのような、Stream形式だとかTimeline形式やList形式と言われるようなモバイルのエクスペリエンスにフィットしたサイトデザインが普及してきています。このデザインにおいては「In feed」と呼ばれるネイティブ広告が合っており、ユーザーの目につきやすく、かつ収益性の高い広告として機能します。これはパブリッシャーにとっても、ユーザーにとっても意義のあることです。
Googleが数カ月前に「今のネット広告の50%は、意図的でないタップやクリックを発生させている。」という調査結果を発表しました。これは先ほど申し上げたような従来のPCインターネットを中心に作られたインターネット広告が、モバイルの時代に合わなくなってきているということです。ネイティブ広告は、まさにこうしたモバイルの時代に合ったフォーマットとして出てきているのです。

Sharethroughプロダクト設計の思想の先にある、インターネット広告のあるべき姿

―貴社サービスを導入した場合、パブリッシャーは具体的にどのような手順でネイティブ広告の配信が出来るのでしょうか?

非常にシンプルです。Sharethroughの管理画面上で、広告として配信したいコンテンツのURLを所定の箇所に張り付けて、 配信先を指定するだけで広告が自動生成されます。この手順で、企業のプレスリリースなども含め、世の中にあるコンテンツ全てが、広告になり得るのです。ネイティブ広告はコンテンツマーケティングの有力なチャネルとして今大きな注目を集めています。現状のコンテンツマーケティングは、SEO頼りです。ネイティブ広告は、良いオーディエンス抱えている良い媒体に対して、広告主がコンテンツを持ち込むことで、そのコンテンツをある媒体の見出しの部分に、見出しとしてそのまま出せます。
実はこれはすごくインターネット的であると私は思っています。インターネットとは、もともとリンクで結びついているものです。ですが今までの広告は、クリックした先の企業ページが、企業のマーケティング活動の一環として作られたいわば広告なのです。これまでは、ユーザーをその「いわば広告」のページに到達させるために、また別の「バナー広告」を作っていたわけです。つまり、「広告のために広告を出す」という状態であったわけです、ネット広告とは。

一方、ほかの広告においては、ある広告施策を行うために、別で何かの広告を打つというようなことはありません。例えば、ユーザーにテレビCMを見せるためにテレビCMを打つということはないわけです。
Sharethroughがネイティブ広告ジェネレーターとかリアルタイムテンプレーティングと呼んでいる、世の中でネイティブ広告といわれているものは、コンテンツさえあればそのコンテンツをそのままコンテンツの一部として広告することが出来ます。広告とコンテンツが密接に結びついています。ネイティブと呼ばれている所以です。
今までのインターネット広告は、ランディングページである広告のために、バナー広告を出していました。だから今までの広告はネイティブではなかったのです。

―広告主が広告をするためのフローがネイティブ広告では簡素化されますね。SSPであるということは、ネイティブ広告のRTB配信にも対応されているのですよね。

高広 伯彦氏、Sharethroughはい。米国や英国では、広告主向けのSharethrough Ad Managerというサービスをリリースしており、これを活用してオーディエンスターゲティングや、最適化運用による配信が現在出来るようになっています。日本ではまずパブリッシャー向けのSSPの提供を開始しました。どの媒体であったとしても、その媒体にフィットしたネイティブ広告が出せるようになっています。
従来のバナー広告では、パブリッシャーは広告の枠の分だけ広告素材を用意する必要がありました。しかし、コンテンツさえあれば、それが不要になります。

―その他に何かユニークな特徴があれば教えてください。

Sharethroughは、広告主側のコンテンツ(=ネイティブ広告)が持ついエンゲージメント力や、視聴・クリックなどのユーザーのリアクションがあるかなどをスコアリングする、”CQS コンテンツクオリティスコア”という機能を持っています。バナー広告の場合、ユーザーも広告であると認識し、広告主のコンテンツとして媒体とは別の評価をするわけですが、ネイティブ広告の場合は媒体側のインターフェースに似通っており、広告に対するユーザーの評価が媒体に対する評価に近似してきます。そうすると、広告主のコンテンツであったとしてもコンテンツのクオリティは問われるようになります。これが、Sharethroughがこのような指標を作った背景です。このスコアは、パブリッシャー側も管理画面で見られるようになっており、コンテンツクオリティが低い広告のブラックリスト化や、クオリティの改善要求を広告主側にすることもできるような仕組みを持っています。
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また、Sharethroughでは、データサイエンティストやニューロサイエンティストをメンバーに加えている点です。彼らの知見をもとに、通常の広告とネイティブ広告がどのくらい効果が違うのかなどを、脳科学の観点で研究し、その結果をホワイトペーパーなどで公表しています。単にソリューションのみを提供しているのではなく、Sharethroughがネイティブ広告の中でのリーダー的存在であるのは、このような調査結果などの情報も膨大な量を出しています。ヘッドラインの長さがどのぐらいであれば、エンゲージメント率やCTRが高くなるかなどを出しているのです。

―コンテンツクオリティスコアは、Googleの仕組みを連想してしまうのですが、例えばRTBで買い付けする場合、コンテンツクオリティスコアに応じて広告配信単価が上下するというような仕組みは導入されているのでしょうか?

現状は広告取引単価に反映される仕組みは持っていません。Sharethroughの場合、Direct Salesの需要が大きいのが現状です。パブリッシャー側が売りたい金額、CPMで枠を販売するケースが主流です。
広告のパフォーマンスは、クリック数や読了率などの指標などにおいて、従来のインターネット広告の10倍から20倍は効果が出ているといえます。
話が戻りますが、実際の運用面においては、海外ではパブリッシャーに対して手厚いサポートをしており、例えば海外ではパブリッシャーと一緒に媒体資料を作るというようなこともしています。
またSharethroughには、媒体の枠に合わしたネイティブ広告の枠を作るデザインチームも組織されており、パブリッシャーのサポートをしています。パブリッシャーが、「この部分にネイティブ広告の枠を作りたい」とリクエストを出せば、Sharethrough側はそれに合わしたデザインの広告枠をしっかりと作り、パブリッシャーに提供しています。Sharethroughは、いかに媒体にフィットした広告効果の高いネイティブ広告枠を作るのかということに関する多くの知見を持っています。

―導入はすでに進んでいるのでしょうか?また、パブリッシャーがSharethroughを導入することにより得られるメリットのポイントは何でしょうか?

現在テスト段階として進めています。Sharethroughを導入することによる媒体のメリットとしては、先に上げたようなクリエイティブ入稿の簡便さ、様々なネイティブ広告売買取引への対応などとともに、例えば「カード」と呼ばれるフォーマットへの対応なども大きいでしょう。これはネイティブ広告をタップないしはクリックするとその場で動画やコンテンツが立ち上がり、視聴されたり、読まれたりする仕組みです。これはパブリッシャーのプロパティに中で広告が消費されるので、サイトの滞留率があがることになります。これは、ユーザー側にとっても他のページに遷移する時間や手間を省くことが出来るというメリットにつながります。
また、先に述べたようなソーシャルメディアのコンテンツも広告化できるというのも大きな特徴でしょう。例えば、PinterestやInstagramの写真を広告にできるので、フォロワーを集めるときにも活用できます。
オープンなインターネットにおける、URLを持つコンテンツであればすべて広告化が可能です。ですので、広告主はどんどん広告を作ればいいし、媒体社側は見出しの中を広告枠として設定すればいいという仕組みなのですよね。

アドブロックが普及することの意味と、ネイティブ広告ビジネスへのインパクト

―話が変わりますが、アドブロックの普及は、ネイティブ広告の普及にどのようなインパクトを及ぼすとお考えでしょうか?

これはSharethroughとしての意見ではなく、あくまで個人的な意見ですが、アドブロックというものは、基本的になぜそれが生まれたかということがポイントであると思っています。ブロックするツールが生まれるということは、そもそも広告が好かれてないということです。PCやモバイルにおいて、広告はユーザー体験を損なってしまうということが、やはり大きいと思っています。もともとYahoo!が広告を二十年前に初めて広告枠を設置して以降、広告不要論は連綿と続いています。もっと遡ればテレビCMだって「トイレタイム」と言われていましたし。それを一旦Googleが検索連動型広告という仕組みで、人々に嫌われない広告をユーザーに提案し、これを普及させました。検索連動型広告とは、あくまでも検索サービス内の広告です。検索連動型広告以外では嫌われない広告をユーザーに提供するための手法はこれまでずっとなかったように思います。
一方、Facebook、Twitter、LinkedInなどの様々なソーシャルメディアプラットフォームが、従来のIABスタンダードにはない、自分たちのサイトに合った広告枠、ネイティブ広告を作りました。根本的にユーザー体験を損なわない広告としてです。このようなユーザーから嫌われず、効果の高いネイティブ広告のプラットフォームを全てのパブリッシャーがオープンに使えるようになれば、みんなハッピーになります。
ネイティブ広告の仕組みを全てのパブリッシャーに提供することこそがSharethroughがいま取り組んでいることです。

アドブロッカーとは、先ほども申し上げた通り、広告嫌いに基づき使われています。現状を考えると、広告嫌いである人たち向けにアドをブロックする仕組みというのは、サードパーティーのタグや、セカンドパーティーのなかから広告タグなどを識別し、その部分を出さないというような仕組みになっています。そういう意味では、多くのネイティブ広告も、実はブロックされる可能性があります。
アドブロックはタグやスクリプトによって広告表示をブロックする仕組みですから、今後はホワイトリストとブラックリストが作られ、この広告は表示し、この広告は表示しないという選別をされる可能性があります。広告表示されるのはユーザー体験を妨げない広告として認められたもの、というようになるでしょう。結局ユーザーのためにならない、ユーザー体験の邪魔をする広告というのは、ブラックリスト化するけど、ユーザー体験の邪魔にならない広告をアドブロック側がホワイトリスト化しはじめた際に、そこに選ばれる体制を持てるかどうかが、今後の広告ビジネスを左右することになります。

―市場規模の観点では、ホワイトリストが整備されると短期的なネガティブインパクトは大きくなりますよね。

そうです。ホワイトリストを持つアドブロッカーが普及すると、今後生き残る広告と生き残らない広告っていうのが出てくるのではないかと。その中でネイティブ広告は生き残るほうであるとは思いますけどね。

―物理的には、ネイティブ広告も含めすべての広告が排除されてしまうということですね。

はい、現状はそうです。ですが一方でこれを受けて、今後ファーストパーティーアドサービングが復活するのではないかという考え方もあります。

―そうすると、今のアドブロッカーの技術ではブロックすることが出来ない?

はい、その通りです。

―Appleがいま取り組んでいることは、いわゆる表向きの美学的な話と別に、Googleに対抗した戦略的なものであるという見方も出来ます。今後iOSに関しては、Appleが自社OSにおいては、自社でクローズドに広告ビジネスを拡大していこうとする方向に向かっていく可能性も、否定しきれないのではないでしょうか?

他社のビジネスの話について語る立場にはありませんので、あくまでも個人的な見解となりますが、可能性は否定出来ないですね。AppleのiAdは面白い仕組みだったし、また形を変えて大きく復活する可能性はあるかもしれませんね。ただ、アドブロッカーの話をAppleがクローズドな広告ビジネスをする前触れのように捉えるのは、私は正しくないと思っています。結局のところ、「そもそも広告が嫌われているんだよ」ということが、その背景にはあります。立ち戻って、じゃあ、好かれる広告、嫌われないとはなにか?ということです。「嫌われない広告とはどういうことなの?」ということを考えながらみんなが広告ビジネスに取り組んでいれば、再三になりますが本来アドブロッカーは現れないはずです。アドブロッカーがこれほど大々的に表舞台に出てきてしまうほど、広告というものが嫌われている状況について、広告業界は真摯に受け止めるべきであるというメッセージであるという気がしております。
アドブロッカーというものが出てくることを許してしまった状況に大きな問題があるわけで。
ユーザーとパブリッシャーと広告主の三つの立場に立ったときに、「最もバランスが取れた広告の仕組みというのは何なのか?」という問いに対する答えの一つはネイティブ広告であると思っています。
Sharethroughは、このことを真摯に考えています。Sharethroughには、元Googleの者が何名かいるのですが、彼らと話をしていて面白いのが「昔これ、Googleが考えたことと同じだよね。」という話はよくするのです。「これってGoogleがやっていてもおかしくなかった話だよね。」と(笑)。

―今後のSharethroughの日本におけるビジネスの目標についてお聞かせください。

日本のプレミアムパブリッシャーの導入件数10社を目指します。新しい仕組みですので、慌ててやりすぎないということが結構大事であるという気がしており、1社1社と向き合いながらじっくりと取り組んでいこうと考えております。

Sharethroughの日本での導入に関するお問い合わせは、こちらから

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ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。