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インストリーム動画広告市場の救世主となるか!?ビデオエクスチェンジVidible開発者に聞くプロダクトに寄せる想いと可能性[インタビュー]

日本の動画広告市場は今、高成長を続けているが在庫が引き続き不足しているといわれている。特にインストリーム広告はそれが顕著であり、大手広告主が安心して出稿できる媒体は、YouTubeやYahoo!・GyaOなど一部に限られており、それ以外の選択肢がほとんどないといわれている。その理由の一つに、インストリーム広告を挿入する動画コンテンツの作り手と売り手、買い手の間の流通が遮断されており、エコシステムが完成していないことがある。

作っても売れない、買って提供しても儲からない、欲しいけどない・・・。クリエイター、パブリッシャー、大手広告主からは、それぞれこのような声が上がった状況が続いてきた。作り手、使い手、買い手三者が効率的に売り買い出来るような場があれば便利なのに・・。動画ビジネスに関係する方の多くが、一度はそのように思ったことはなかろうか。

AOLプラットフォームズが、これに応えるようなソリューションを近々に日本でリリースする。コンテンツエクスチェンジと呼ばれるもので、動画コンテンツのクリエイターとパブリッシャーとが動画コンテンツの売買取引が出来、またそこにAOLが大手広告主からの広告を持ち込み、マネタイズ支援をしてくれるというユニークなサービス。ビジネスモデルもまた多様な形態をとりユニークである。

果たして日本のインストリーム広告在庫枯渇問題を解決してくれることを期待してもよさそうであろうか。米国でこのサービスを作り上げた、Michael Hyman氏に、サービスやビジネスモデルについて話を伺った。

(聞き手: ExchangeWire Japan 編集長 野下 智之)

動画コンテンツの売り手と買い手とをつなぎ、インストリーム広告の流通拡大に寄与

―自己紹介をお願いします。

AOL-Platforms_020516私は、現在は、このビデオプラットフォームのシニア・バイス・プレジデントをしております。もともとはこのVidibleというサービスを作りスタートアップの会社を経営していました。その後会社をAOLに売却してグループ傘下に入りました。1年前のことです。当時AOLとはお付き合いがありませんでしたが、複数のお客様から、AOLと組んで仕事をしてほしいという依頼を受け、一緒に仕事をし始めました。実際にAOLと話をし、また仕事をしてみると共通点も沢山あることを感じました。またAOLで働いている方も非常にいい方が多く、とても気が合いました。実際にわれわれのほうから、このプラットフォームのプレゼンをAOLにすると、AOL側から将来に対する期待感を持ってもらいました。その後徐々に距離が縮まっていったのです。
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―Vidibleを作られた背景について教えてください。

日本では、いま広告主やパブリッシャー側の動画在庫が不足していることが動画広告市場拡大のボトルネックになっていると思います。以前米国でも同じ状況でした。そういったことが経緯でこの会社をやろうということになったわけです。当時は動画コンテンツを持っている方からすると、パブリッシャーへコンテンツを提供するのが非常に難しく、逆にパブリッシャーも、自分たちのほしい動画コンテンツを見つけることが難しいという状況でした。私はVidibleを作る前、動画配信のサービスを提供する会社に勤めていたことがありましたが、その頃広告キャンペーンで得た収益よりも弁護士に払う費用が高くついてしまというように、動画コンテンツの活用には、非常に高い中間マージンのお金を要求されました。
そして、このような無駄なコストをなくし、効率よくしたいと考えました。クリエイターがパブリッシャーに無駄なく、安価な流通コストで動画コンテンツを提供し、パブリッシャーもまた、動画コンテンツをより適切に早く見つけることができるような、効率的なサービスを提供したいと思っていました。

―サービスの概要と特徴について聞かせてください。

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われわれの、このビデオプラットフォームは、ビデオコンテンツを作るクリエイターにとっては簡単にアップロード出来、管理、シンジケート、配信が出来ます。パブリッシャーは、クリエイターがアップしたコンテンツを使った広告の収益化やトラッキングをしてパフォーマンス分析をすることが可能です。パブリッシャーは、このプラットフォームを使うことで、ビデオを自社サイトで流すこともできますし、また、クライアントサイトにシンジケートというかたちで流すことが出来ることです。
そして、Open-Exchangeという場では、誰でもビデオを購入してこれを使うことが出来ます。このような幅広いサービスを提供しているところは、Vidibleの特徴であり強みでもあります。
クライアントがもし他のサービスを使った場合には、いろんな会社の複数のサービスを組み合わせなければ同じ機能、水準のサービスを受けることは出来ません。Vidibleは使い勝手もよく、実装も早く可能です。またコスト面では短期的、長期的にも低く抑えることができます。

一つのプラットフォームで複数の機能をまとめて、コストを抑えて使用できることは、このツールの強みです。同様の機能全てを他社のもので賄う場合には、複数を組み合わせて使用する必要があり、かえってコストが上がってしまいます。

―テクノロジーの観点で、何かポイントがあればお聞かせください。

通常、オンライン動画コンテンツにはメタデータが入っていないのですが、われわれはこれを挿入しています。そのことで自動的にサウンドやデータ、ウェブサイトを分析し、その動画の内容をいち早く理解することができます。それを、コンテンツバイヤーであるパブリッシャーにリコメンドする機能もついています。例えばパブリッシャーがあるページで2020年東京オリンピックに関するコンテンツを掲載している場合には、それに関連する動画をリコメンドするというような感じです。

―Vidibleに参画しているクリエイターやパブリッシャーについて、また流通しているコンテンツについて教えてください。

パブリッシャーやクリエイターの数は、実際には把握しきれていませんし、規模も様々です。参画しているパブリッシャーには、当社AOL、ハフィントンポストをはじめ、NBCやスポーツ専門サイト、カクテルのレシピサイトまであります。
流通するビデオの数は現在約250万ありますが、現在も増え続けています。

世界第三位の日本市場で注力!サービスへの投資を引き続き拡大!!

―Vidibleのビジネスモデルについて、お聞かせください。

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ビジネスモデルは、三つあります。一つは、SaaS型モデルです。私たちのクライアントがライセンス費用を払えば、どのようなことも出来るというタイプのサービスモデルです。
SaaS型のモデルには、二つパターンがあります。一つは使用した分が課金されるというモデル。もう一つは、われわれの親会社ベライゾンと組んで、この動画の配信実績時間ごと、何時間ストリーミングをしたのかということに対しての課金のパターンと、もう一つは、そのストリーミングを行ったビデオの数をベースにして課金をする。二つのパターンがあります。

二つ目は、オープンビデオエクスチェンジからのマージンです。私たちのクライアントが、動画に価格を付けます。例えばそれは、CPMベースであり、あるいはレベニューシェアという形です。これをパブリッシャーに販売した際、われわれが売上の何%かマージンを取るという仕組みです。

三つ目は、リセラー収入です。動画コンテンツを持つ人が、マーケットプレイスに動画を登録し、私たちのディストリビューションを使いパブリッシャーに配信します。その際、私たちがマネタイズをして、コンテンツを持つ人、パブリッシャーの3者でレベニューシェアをするという仕組みです。

―ここでのクライアントとは、パブリッシャーとクリエイターのどちらでしょうか?

パブリッシャーとクリエイター、両方のパターンがあります。
例えばハフィントンポストは、自社で動画を作ることもあれば、ニュースサイトに動画を入れることもあります。また、その自社の動画を他社に提供するというケースもあります。

―今後の日本での展開について、お聞かせください。

日本は世界第3位の規模を誇り、私たちにとり非常に重要な市場です。ですのでわれわれも、日本向けにかなりの投資をしてまいりました。これからも投資を続けてまいります。サービスの日本語化にも注力しております。

―最後に日本の読者の方に何かメッセージがあればお願いします。

当社が持つテクノロジーをチェックしていただき、是非使っていただきたいです。また、このわれわれのサービスや製品が、より日本の市場に合ったものになるため、ご協力いただけることをお願いしたいです。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。