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ファウンダーが語るTeadsの戦略から読み解く、動画広告の近未来 [インタビュー]

日本におけるインリード動画広告普及の立役者であるTeadsは、今年3月、オランダを本拠地とする通信放送会社Alticeの傘下に入るという大きな話題を提供した。

直近のビジネス動向や、Altice傘下に入った理由と今後の戦略、直近の業界動向を踏まえた同社の取り組みと今後について、同社ファウンダーの一人であり、会長のPierre Chappaz氏にお話を伺った。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

日本のプログラマティック取引はグローバルの40%が目標

― 今年より日本国内において主要DSP事業者からのプログラマティックな買い付けが可能になりました。こちらの近況をお聞かせください。

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Teadsはグローバルでは、2016年初頭より、主要なDSPからプログラマティックでの買い付けをビジネスとして開始していました。日本では今年1月からスタートしています。以前は予約型での広告バイイングがメインだったのですが、今年の1月からはDeal IDベースでバイイングが可能になりました。

― 貴社ビジネス全体のトレンドに変化はあるのでしょうか?

まだ始めたばかりですが、PMPを意識したDeal IDでのバイイングと同時に、一部媒体社様からはOpen exchange経由でバイイングをしていただくということも開始したところです。

日本ではまだまだ数字としては小さいですが、グローバルで見ると既に全体の35%から40%程度の売上がプログラマティックから成り立っていますので、日本でも期待値としては同じところへ持っていきたいと考えています。
既に当社がグローバルでお取引しているDSPグローバル大手各社との接続は完了しています。
一方で日本ローカルのDSPとの接続も今、数社について進めており、近く接続が可能となります。

― 貴社にとって日本はどのようなマーケットですか?

いわゆるプログラマティック取引という言葉が醸し出す印象は、ありとあらゆる媒体のプレースメントを変えるようなイメージを持たれる方が多いと思います。
しかし、Teadsがプログラマティックビジネスとして目指しているのは、プレミアム性をプログラマティックに持ってくるということです。

私たちは日本で有数なパブリッシャー様とお取引させていただいております。
大手新聞出版社系の、自分たちが書いているコンテンツに対して責任感をもっているコンテンツプロバイダー様とお取引させていただいており、そのインベントリーを販売させていただいているということもありますので、プログラマティック取引に変革をもたらすといいますか、「プログラマティックバイイングに見合う量と、プレミアムな質を兼ね備えたビジネス」というものを目指していく、というのが私たちの考え方で、それは日本でも変わらないと思います。

テレビと動画広告のシナジーを見越して

― 貴社が傘下に入ったAltice社について、そしてその意図と今後の戦略をお聞かせください。

Altice社は、欧米を中心に事業を展開している通信会社、通信放送事業者です。
アメリカでは大手ケーブルテレビ会社も買収し、いわゆるモバイル事業だけではなく、通信と放送、両方の会社を傘下に持っている会社です。今回の買収は、Teadsのベンチャーキャピタルが保有していた株を全て買い取る形という形態になっています。
つまり、創業者として持っている株は引き続き維持しつつ、これまでベンチャーキャピタルがもっていた部分だけをAltice社に移管したということです。

― Altice社はこれまで広告ビジネスを展開してきているのでしょうか。

いえ、今回新たな事業領域に参入するための第一のステップということで当社を買収しました。
彼らの成長戦略における事業の柱として、一つは従来通りの通信事業、もう一つはコンテンツ事業、三つめが広告事業、この三つの事業を育てて行くというのが彼らの今後の成長戦略となっており、三つ目の広告の領域に参入することで、大きく貢献していくという位置付けになります。

― 広告ビジネスとしては貴社への投資が初めてということになりますか?

はい、そういうことになります。

― 最近、グローバル市場では通信会社が広告会社を傘下に入れるケースが目立ちますが、大局的に見れば同じ流れと見てよろしいでしょうか?

そうですね、恐らくトレンドとしてはいくつかあると思いますが、その流れの一つとして見て頂いて良いのではないかと思います。

― Altice社は貴社をグループに加えられたということで、今後どのような事業展開が考えられますか?また、なぜ動画SSPというプラットフォーム事業にAltice社は興味を持たれたのでしょうか?

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二つの面で両者にとってメリットがあると思っております。一つは通信会社として保有する、あるいは放送事業者として保有する膨大な契約者情報を元に、そのデータを活用した広告活動が可能になります。
具体的には契約者の住所、世帯構成、年齢、どんなものに興味関心があるのか?といったデータを大量に持っているので、そのデータを活用した広告活動が出来るようになります。

もう一つは、いわゆるクロススクリーン、動画広告としての広がりというものをケーブルテレビ会社は持っているので拡大していくということになります。
既にアメリカのケーブルビジョンという会社は、テレビで見る広告枠をGRPではなくCPMで販売しています。

そういった流れはどんどん加速していくでしょうし、その中でテレビでもパソコンでもスマートフォンでも画面に関係なく、動画広告を最適なオーディエンスに対して最適なタイミングで配信していくことで効果を高める。といった未来を見越して、そこにおける戦略を考えております。

― 貴社はアウトストリームの領域に特化されてきました。クロススクリーンになった際にはインストリームへも取り組まれるということでしょうか?

ケーブルテレビ等で見られるのはインストリームになります。そこにテレビとしてのあるべきフォーマットは尊重します。
しかし、同じ時間帯で同じ番組を見ていても見る人によって配信する広告を変えるという、アドレッサブルな考え方は実際TVの世界でも起きることになると思います。

インターネット上でモバイルを中心とした環境で見るという場面において、アウトストリームが最適解であるという私たちの考え方は変わりません。

見たい人だけが見て頂ける、そういった諸々のことを考えてTeadsとしては今後もアウトストリームを突き進めていくので、インストリームの領域に入っていくということはないです。

ブランドセーフティとビューアリビティこそが価値

― 次はブランドセーフティとビューアビリティについてぜひお聞きしたいのですが、昨今は業界全体で非常に話題になっていると思うのですが、貴社はそれについてどう認識されていて、今後どういう立ち回りを考えているのかお聞かせください。

私たちは長年そこが最も重要であると言い続けていました、ようやく皆さんが理解をしはじめてくれたなというのが正直な感想です。

当社のサービスが、業界のベンチマークに対してTeadsはどうなのかを第三者機関に調べてもらった結果、ビューアビリティ、不正アクセス、ブランドリスクにおいてベンチマークを大きく上回る結果を出しています。ようやくこの部分が価値として理解して頂けてきたかと思います。

動画のKPIというのは視聴完了数が最も大きな指標になっていますが、見られている視聴完了数と見られていない視聴完了数というものがまずあると思います。見られている視聴完了数の中にも人間に見られている視聴完了数とbotに見られている視聴完了数があります。リアルな視聴完了数というものは、視聴完了数の中でも一部でしかない。
Teadsの強みはリアルな視聴完了数が数字として出てくるところだと思っています。

いわゆる、レポーティングと数字のマトリクスで見れば、視聴完了数とかけたお金で視聴完了単価がでます。ということでみなさんレポートしていますが、視聴完了ひとつひとつのクオリティという意味で、私たちはフォーマットの仕様上、実際に人間が見て、実際に興味を持った方だけが見続けるということをデザインで保証させて頂いています。

つまり、動画プレイヤーが50%以上表示されなければ再生されない。画面より下にいけば見られない、あるいはタブを切り替えてしまえば止まってしまう。ランディングページに飛べば見られない。
本当は見ていないのに再生され続けることがないというデザインで作られています。
モバイルでは15秒、PCでは30秒以上見られてはじめて課金ということになりますので、そういった意味で私たちが計測して、ご報告させて頂いている数字は、リアルにユーザーが視聴した数値ということになります。

もう一つ、bot的なもので大量にアクセスしてインプレッションを上げてCPMを稼ぐといった方法がありますが、私たちの場合は記事の中段にプレイヤーがありますので、そこまでスクロールして動画プレイヤーが表示されたところで止めて再生するなどといった高度なbotは世の中には存在しないので、botを使って大量にアクセスするだけでは不正な視聴が発生しないのがTeadsの特徴です。

アドフラウド対策においてもビューアリビティといった面でも非常に高い数値を保っているのはそういった理由にあります。

未来の動画広告をもたらすのはインタラクティブ性

― プロダクト面やビジネス面における今後の方向性をお聞かせください。

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特にモバイルのフォーマットに対して開発を進めています。
横長、スクエア、それからバーティカル(縦型動画)といったものなどです。日本でもお客様にご要望をいただければすぐにでも提供が出来る状態になっております。

― 360度動画や縦型動画など、新しいフォーマットはどのように普及していくとお考えでしょうか?ブランドで使われるケースが多いのでしょうか?

恐らく業種はある程度絞られた形でご採用頂くことが多いかと思います。これは一例でして、いわゆるモバイルの機能を活用した形でユーザーがインタラクティブで関わり合う広告フォーマットとして考えると、360度動画は一つの例でして、それとは別に動画広告の中でインタラクティビティをもたらすということが私たちとして進めていきたい方向になります。リサーチした結果、インタラクティブ性を持った動画広告というものの方が、通常の見るだけの動画広告と比較して4倍の広告効果があり、認知が深まるという結果が出ております。

また、動画広告にチャットボット機能をつけて動画を見ながらその場で質問をすることも出来るようになります。「一番最寄りの店舗はどこですか?」といった問いに返答することもできます。現在開発中なのが、それを音声でチャットできるというようなものをモバイル上で考えています。

― チャットボットのリリースはいつ頃でしょうか?

やろうと思えばオンライン上で展開されているクリエイティブ機能は盛り込むことができます。例えばGoogleマップとの連携、第三者データと連携して表示する等といった、インターネット上でできる事は全て可能です。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。