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maioとIronSourceによる、動画リワード市場の新しい渦 [インタビュー]

世界最大規模のモバイルアプリプラットフォームironSourceが日本市場に参入、アイモバイルの動画リワードアドネットワークmaioとの連携を開始した。(PDFアイコンPDF)

両者の提携の背景と今後のビジネス展開について、ironSourceビジネスデロップメントディレクター峯秀一郎氏、アイモバイルmaio事業部メディアグループマネージャーの早瀬優希氏に、お話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)

イスラエル発のironSourceとは

― ironSourceのビジネスについて、お聞かせください。

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峯氏  ironSourceは2010年にイスラエルを本社に置いて設立されました。PC向けのマネタイズソリューションを展開していましたが、2年前にスーパーソニックというモバイルのマネタイズソリューションを展開する企業と合併して、現在主軸になっているモバイルメディエーションのソリューションを展開するようになりました。

― 仕組みや流れを教えていただけますか。

峯氏  1SDKにて動画リワード、インタースティシャル、バナー広告のメディエーションに対応しています。ApplovinやUnityAdsなど主要な動画アドネットワークと連携していて、それぞれのアダプターをSDKに追加する形で、広告による収益化が可能です。流れとしては、メディエーションプラットフォーム上にて各アドネットワークによる入札が行われ、最も収益性の高い広告案件が配信されます。

― 日本市場参入の背景についてお聞かせください。

峯氏  ironSourceは本社をイスラエルにおいて欧米を中心に展開していましたが、3年前にアジア進出の足掛かりとして中国の北京にてオフィスを開設しました。北京をAPACの主軸とし、昨年より韓国と日本での事業を始めました。日本市場参入の背景としては、特にゲーム面において欧米の市場である程度シェアをとれていたことと、プロダクト自体が成熟したこと、まだ追い風として日本市場においても動画広告の需要が高まってきたことなどが挙げられます。

1年半の時を経た両社の連携

― maioとの提携に至った背景と経緯についてお聞かせください。

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早瀬氏 maio側からは以前よりずっとアプローチをしていました。日本のSSP(メディエーション)とironSourceとでは大きな違いがあります。日本のSSPは、パブリッシャーさんがメディエーションを使う上で手数料がかかりますが、ironSourceの場合はironSourceメディエーション内でironSourceの持つ広告在庫を配信することができるため無料です。一方、それを自社で運用したいという大手のパブリッシャーさんはすでにironSourceに興味を持たれておりまだ我々があまり知らなかった頃に既にironSourceを導入されていました。ironSourceのことを調べていくうちに、アプリ領域では世界最大規模のモバイルメディエーションであることがわかりました。

そこで同社と連携したいという思いが強くなった頃、峯さんが日本におけるビジネスの責任者になられたので、アプローチをかけていました。その期間は1年半~2年と長かったですね。

― ironSourceとmaioとの提携内容についてお聞かせください。また両社の連携提携によりどのようなことが可能になるのでしょうか?

早瀬氏 日本のアドネットワークとしては、初めてironSourceのモバイルメディエーションに連携できたものです。これによって、グローバルに配信することも今後可能になっていく予定です。

最初の連携としては日本のインプレッション、在庫を持っている海外のデベロッパーがmaioの広告を配信できるようになります。反対に、日本のデベロッパーで海外展開していこうという場合、ironSourceを入れることで、日本ではmaioを利用し、海外ではグローバルなironSourceの広告や、ironSourceのメディエーションに既に連携している、大手グローバルSDKから広告を配信することができるようになります。

― ironSourceはどのような観点で「世界最大規模」なのでしょうか。

峯氏  ironSourceのリーチがMAU12億人に上り、このような観点で「世界最大規模」であると認識しております。

― これまではゲーム業界の中で認知を広めていらっしゃったのですか?

峯氏  モバイルの事業を始めた当初は、オファーオールなどを提供するマネタイズソリューションを中心に展開していました。その後、市場に合わせて動画リワードの需要が出てきたタイミングで、そちらにシフトしていったのですが、メディエーションプラットフォームについては、当時弊社の動画リワードSDKを利用していた北米のゲームデベロッパー数社からの要望に基づき開発し、都度彼らが抱える課題に対して解決策を提供するような形で、機能追加などの改修を重ねてきました。

そのため、メディエーション部分は弊社ネットワーク含め、どのネットワークも同じ条件にて評価されるようなロジックになっており、レポーティング部分についてもデータの透明性を重視したものになっています。配信の優先度や配信ネットワーク自体、すべてパブリッシャー側で自由に設定することができます。また自社広告や広告枠を直接売買できるダイレクトディールなども、あらゆる収益化施策が実施可能です。。

さらにそこから一歩踏みこんで、ユーザー動向の解析やユーザーセグメントに基づいた配信設定のカスタマイズ機能なども提供しており、ユーザー体験やエンゲージメントも含めた包括的なツールとして利用していただきたいと思っています。

第一線で活躍しているデベロッパーからの生の声を汲み取り、すぐにプロダクトに反映することにより、大きく成長することができました。デベロッパーによるデベロッパーのためのマネタイズソリューションといえるのではないでしょうか。

― 連携ではかなり長い期間を要しましたね

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峯氏  弊社の都合もありますが、グローバルで展開しているので、なかなかローカルのマーケットに合わせてというのが難しく、maioとの連携の重要性を認識するまでも時間がかかりました。

maioを日本で初めての連携先として選んだのは早瀬さんからの熱烈なアプローチだけではなく、弊社がSDKを日本でどうやって展開していくかについて、考えた結果です。パブリッシャーさんにとってメリットを提供できないと意味がありません。実際にパブリッシャーさんにお話を聞いている中でmaioの評判がどこにおいても高く、これは弊社としても連携することで、パブリッシャーさんに対して大きなメリットとなるであろうという判断があったからです。

連携のメリットはグローバルでの補完関係

― 今後の具体的なサービスの展開イメージをお聞かせください。また、ironSourceの日本市場でのビジネスプランをお聞かせください。

早瀬氏 まずは日本市場で、日本のパブリッシャーさんも海外に展開していかねばならない時期で、台湾や香港などグローバルに広がっていっています。しかし、広告のマネタイズの部分ではあまり最適化できていません。以前あったのがmaioのお客さまのアプリが中国で、当地の大きい媒体に取り上げられていきなりランキングが上がったのですが、在庫が足らずフィラーが出てしまっていました。そういうところにironSourceを紹介させていただきます。これまではその部分ではmaioは使えませんでしたが、今後は日本ではmaioの収益性の高い広告、海外ではironSourceのグローバルな広告と使い分けてサポートさせていただこうと思っています。

maioの広告主からすると、ironSourceの持っているゲームの日本在庫にmaioを配信することができるようになるので、世界規模のゲームのインプレッションを買えるという利点があります。

現状、デベロッパーは海外での広告のマネタイズにおいて、情報もサポート体制が少なくて困っているではないかと思っています。その部分でサポートの連携もできますし、展開のアプローチもできるのではないでしょうか。

峯氏  早瀬さんがおっしゃったのとは反対になりますが、弊社はグローバルでは既に事業展開をしております。しかし日本のアプリ業界内においてはまだ知名度もありませんし、メディエーションの普及も、まだこれからだと感じています。ですから、単純にSSPとしてリプレイスして入れてもらうのではなく、エンゲージメントプラットフォームとしてご利用いただきたいという前提があります。そこで、maioの認知度や営業リソースをご協力いただいて日本でもパブリッシャーさんのマネタイズに貢献できればと考えています。

まだ日本の市場でマネタイズが浸透しきれていない部分も大きいと思いますので、これまでのイメージを覆すようなポジティブな実績を作っていって変えられればと考えています。

― 今の動画広告市場における動画リワードの需要性をどのようにご覧になっていますか?

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早瀬氏 動画リワードに関しては、もともと広告マネタイズモデルとしてアプリを展開されている、カジュアルゲームのデベロッパーに関しては、かなりポジティブに考えていただけるようになっています。アプリを作る際には動画リワードという、動画をるとインセンティブがもらえるというモデルを、アプリの作成時中にゲームバランスに組み込むことが当たり前になりつつあります。

しかし、課金型のソーシャルゲームへの導入は、まだまだこれからといったところです。

かたや海外では課金型のソーシャルゲームに動画リワード広告や動画インタースティシャル広告があたりまえのようにアプリ内に組み込まれているということを考えると、成長の余地がまだまだあると考えています。

直近でいうとスクウェア・エニックスさんの2タイトルで独占配信させていただくことになったのですが、ゲーム制作側の考えもそれぞれですし、ほかのゲームにどんどん展開していきましょうという感じではないので、一つずつですがしっかり導入が進んでいけば未来といいますか、伸びしろはあるのではないでしょうか。

スクウェア・エニックスさんで独占させていただくのは、1500万ダウンロードされているゲーム「グリムノーツ」、と、「フレイム×ブレイズ」というゲームです。選んでいただいた理由はいろいろありますが、国産のサポート体制が万全であるというところが大きかったようです。もちろんmaioの動画在庫を魅力に感じていただけたことも大きかったと思います。また、先に「フレイム×ブレイズ」に入れていただいていたので、横展開がしやすかったこともあるでしょう。

ソーシャルゲームは海外展開していることが多いですが今回の連携により、海外をカバーしてもらうことが出来ます。その意味でもironSourceとの連携は大きな意味があると思います。

― 最後に両社からのメッセージがあればお聞かせください。

峯氏  EA(Electronic Arts/EA Games)さんをはじめ、世界中で80,000以上のアプリに導入されています。日本でもストアランキング上位に入る海外ガジュアルゲームアプリに多数導入され、収益の最大化はもちろん、ユーザーエンゲージメントやユーザー体験の向上のお手伝いをさせていただいています。是非日本のデベロッパーにもironSourceメディエーションプラットフォームの効果を体験していただければと思います。

早瀬氏 EAさんのゲームなどは、日本でもプレイしている人がたくさんいます。また、海外ゲームで遊んでいるユーザーはゲーム好きな人が多いイメージです。ironSourceとの連携することにより、そのユーザー層に対して、maioで配信ができるのはかなり大きいと考えています。ですから、海外のデベロッパーが今後日本でマネタイズしようとした時に、maioを使えば日本での収益性が高まるというイメージを持っていただきたいです。そのイメージが強まれば、かなり大きな規模感になるでしょう。日本のデベロッパーが海外に展開されたい際にも、弊社からironSourceをご紹介、提案してサポートさせていただくつもりです。

maioとしては今回の提携を海外展開の第一歩として、今後どんどんシェアを広げていきたいところです。ironSourceにも日本でのシェアを伸ばしていただいて、相互に補完し合えればよいと考えています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。