×

国境を越えて1000アプリとの連携を目指す アドジャポンのプラットフォーム戦略 [インタビュー]

ファンコミュニケーションズグループ海外事業会社アドジャポンが、動画リワードのメディエーションプラットフォームviidle(ヴィードル)をリリースした。
同社の事業や今回のリリースの背景、プロダクトの特徴などについて、同社 取締役 遠藤 哲也氏と、事業開発部 マネージャー 堆朱(ついしゅ)克博氏のお二方にお話を伺った。

(聞き手: ExchangeWire Japan 野下 智之)

写真1

― 自己紹介をお願いします。

遠藤氏(写真右) アドジャポンには2014年からジョインし、これまで2つのサービスに携わってきました。もともと業界外からの転職で広告は門外漢でしたが、現在はアドジャポン取締役としてグループの海外事業や新規事業創出を担当しています。

堆朱氏(写真左) 私は2012年からファンコミュニケーションズにジョインしました。スマートフォンアドネットワークnend(ネンド)の広告主様営業を担当した後、リターゲティング広告サービスnex8(ネックスエイト)の広告主様向けのトラッキングサービスで1年間責任者をしました。2017年にアドジャポンにジョインし、今回の話しがあったタイミングで、viidleの事業責任者になりました。

― アドジャポンが発足したのはいつでしょうか?

堆朱氏: アドジャポンは2012年に発足しました。ファンコミュニケーションズの子会社として、海外事業を立ち上げるのがミッションです。当社では海外の広告主様を対象にしたエージェンシー事業と、medi8(メディエイト)というグローバル向けのSSPを運営しています。

我々の強みは、海外事業に特化していることで、全世界のデマンド・サプライいずれにも接点があることです。海外のクライアントは出稿先やキャンペーンなどについての透明性をより重視します。当初はアドネットワークnend(ネンド)などのサービスを海外に持っていこうとしましたが、海外の市場を取っていくには、レポーティングやキャンペーンなど海外には海外の方の望む形のサービスを一から作っていったほうが受け入れられやすいのかもしれないと判断しました。

今やっているmedi8事業は、PCもモバイルも対応しています。2017年には新たなサービスとして、アプリに特化したビデオアドプラットフォームのviidleをリリースしました。

― viidleを作ることになった背景をお聞かせください。なぜアプリ向けに特化しているのでしょうか?

遠藤氏: 背景としては、ユーザー体験のリッチ化があげられます。ユーザー投稿型のアプリメディアはあると思うのですが、これからは海外のメディア様が自分たちで動画を使ってオウンドメディアとしてどんどん自分たちのコンテンツをリッチ化してくる流れがあるのではないかという仮説がありました。

ユーザーが求めるものは、テキストから画像・動画とどんどんリッチなものになっていきます。私はゲームの会社にいましたが、モバイルゲームは、画像や動画の演出などのリッチ化が進展していきました。ゲーム以外の業界も同様の流れが起こっています。そうすると、サーバーや配信などのコストがかかってきます。将来的にはviidleのほうでホスティングなども含めて解決して、ユーザーの体験がリッチになっていけば、我々のビジネスチャンスも広がっていくという考え方です。

アプリで困るのはマネタイズです。今、既存のアプリディベロッパーさんの収益化の部分もお手伝いさせていただいています。

日本もグローバルの一部

― 今回立ち位置としては、SSPではなくメディエーションなのでしょうか?アドネットワークではないのはなぜでしょうか?

堆朱氏: 海外で展開していくということになると、viidleが提携する先は、海外のアプリディベロッパー様がメインです。自社で広告主を開拓してそこのデマンドをとるというより既存のアドネットワークに掲載している会社とつながっていくほうがメディア様に価値を提供できるかと思ったからです。今後は、アドネットワークサービスを提供する可能性もありますが、まずはサプライのほうに注力していく予定です。

― 対象のメインは海外のメディアなのですか?

堆朱氏: リクルートの対象は海外に絞っているわけではないです。日本もグローバルの一部として挙げています。日本から海外にアプリを展開されたいというアプリディベロッパー様も、メインのターゲットに含まれます。

― 対象としているアプリのゲームと非ゲームの比率はどうですか?

遠藤氏: 今はゲームが多いですね。

堆朱氏: 自社のアプリをオウンド化していくということを考えると、ゲームだけという考え方だけではなくフリマアプリなども対象に入ってくるのではないかと考えています。今、フリマアプリは画像だけですが、今後は動画で紹介することも増えていくと思っており、将来的にはそういった非ゲームのトラフィックも増えていくと見込んでいます。

動画リワードは爆発的に広がる注目市場

― 動画リワードはどのような市況であると見ていますか?

堆朱氏: これからさらなる伸びをみせると思っています。ゲームアプリの中でもカジュアルアプリを中心にリワード広告は利用されてきました。スポティファイさんがリワードを使って視聴時間を延ばしてきているように今後は、非ゲーム系のほうにも広がってくる流れだと思います。あとはコアゲームのRPG系のゲームのほうでも、今後、爆発的にひろがってくるのではないかと思います。

― Viidleの特徴についてお聞かせください

堆朱氏: 一番の特徴は、グローバルに特化している点です。アプリが海外で展開することは、収益増に直接的につながりますが、現在国内ではその受け皿となるような、グローバルサポートを謳っているサービスは少ないです。

他のサービスですと、日本と海外という大きなくくりでしか見えなかったりするのですが、Viidleは国単位で配信先を見ることができます。透明性という点でもグローバルスタンダードに軸を据えています。サービスの利用手数料なども開示しており手数料は10%です。総報酬額とメディアさんにお支払いする金額をご確認できるような形になっています。

― 今アプリの海外進出状況はどこが多いのでしょうか?

堆朱氏: 広告マネタイズを中心にしたカジュアルゲームは、アジア圏への進出が多いですね。特に今注目されているのは台湾で、当たると大きいのは中国マーケットと言われています。台湾はこつこつとあたりを積み重ねていきやすい市場と言われています。

― 台湾以外では、どこがありますか?

堆朱氏: アジア圏では、香港・韓国が多いですね。その他は米国。言語化するのにやりやすいのは英語ですので、まずは米国にというケースも多いです。

― では動画リワードの展開先も韓国・台湾が有望ですか?

堆朱氏: 台湾ではアプリディベロッパー様がまだあまり動画リワードの存在を知らないということもあり伸びしろがあります。日本でも2016年に市場が弾けたということもあり、タイムラグがあるのでしょう。

― 日本で動画リワードが2016年に弾けたきっかけは何だったのでしょうか?

堆朱氏: 海外の事業者さんが入ってきたのが多いかと思います。彼らが紹介して、アーリーアダプターの事業者さんたちが使い始めたことがきっかけだと思います。

― メディエーションのロジックを教えてください。

遠藤氏: 基本的には過去の一定期間のパフォーマンスで定義されます。

堆朱氏: 我々のパートナーさんの優先順位は、一定期間のあいだでアプリに対して流してきたCPMの報酬ベースで高いものから見ていって、ウォーターフォール形式でリクエストを送っていく流れをとっています。ただ、パートナー社から送られてくるデータの中に、RTBの流れが浸透しきっていない背景もあり、案件がどのくらいの金額で流れてきたかといった情報がまだ活かせませんので、1リクエストに対して広告としての収益をCPM換算してパブリッシャーさんに報酬としてお支払いするという流れになります。

もともとnend(ネンド)などアドネットワークの基盤があるので、CPMの上がりやすいいタイミングは予測できるので、それだけではなく複数の評価軸でリクエストを行っていくという流れを取らせていただいています。
一定の基準となる期間と短期間の実績にパーセンテージを持たせて、写真2時間軸なども含ませながらロジックに反映させている。アプリ単位やかつ国ごとにも優先順位が違います。

― 事業をしていて課題に感じることをお聞かせください。

遠藤氏: 一つは、物理的な距離もある意味重要だということです。今後は、海外拠点も作っていきたいです。ビジネス拠点としてはシンガポールに出している企業が多いので、そちらや台湾などが候補です。

インターネットの世界充実させるインフラに

― 年内に1000アプリとの提携を目指しているのですね

写真3

堆朱氏: はいそうです。しかし、最初は少なく10アプリくらいからスタートです。動画リワードの中心になるのはダイレクトレスポンス系が多いです。今後、動画リワードの中には、今のゲーム系のみではなくブランド系の企業も入ってくると思います。今、ブランド系の企業が入ってこない理由を逆引きして架け橋になるようなものを作っていきたいと考えています。

遠藤氏: 1000アプリという目標は非常にチャレンジングですが、不可能ではないと考えています。大きい企業などで100に及ぶ数のアプリを運営しているところもあります。今まで私たちがWebで経験してきた事業のスケールのさせ方も、武器になります。

堆朱氏: アドジャポンの事業のミッションは、広告を入り口とした、インターネットの世界をより充実させるためのインフラです。まずはviidleに関しても強みを発揮できる広告事業を考えていますが、よりテキスト・画像から動画の体験を全領域に広げたいです。メディアの動画化から効果解析などまでお手伝いしていければと考えています。そうすれば、ユーザーもよりリッチな体験ができます。アドジャポンに関しても領域に限らず、世界に出ていければということを考えています。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。