SeenThis Japan、デジタル広告の「ブランドセーフティ」と 「無効トラフィック対策」の2分野でJICDAQ認証を取得
SeenThis Japan株式会社(本社:東京都港区、マネージングディレクター:今村 幸彦、以下 SeenThis Japan)は、2026年10月1日付にて、一般社団法人デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)が運営する品質認証制度において、「ブランドセーフティ」および「無効トラフィック対策」の2分野で品質認証事業者としての認証を取得した。 SeenThis Japanは、「オープンウェブにおける動画広告のパートナー」として、独自のアダプティブストリーミング技術により、ユーザーの通信環境に応じて動画を最適化することで、これまでは静止画向けと考えられてきたディスプレイ広告枠に動画クリエイティブを配信することを可能にしている。 広告主、そして代理店にとって、透明性が高く安全な広告取引環境を提供することが今後の健全なデジタル広告市場の成長のためには不可欠であると考えから、JICDAQ認証の取得に至った。これからもデジタル広告の品質向上を目指した取り組みを積極的に推進していく。 ■ JICDAQとは デジタル広告市場の拡大に伴い、広告が意図しない不適切な媒体に掲載されることによるブランド毀損リスクや、アドフラウドをはじめとする無効トラフィックによる広告費の詐取は、広告主・パブリッシャー双方にとって大きな課題となっています。こうした中、JICDAQは公益社団法人日本アドバタイザーズ協会(JAA)、一般社団法人日本広告業協会(JAAA)、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の広告関連3団体を母体として2021年3月に設立され、デジタル広告に関わる事業者の業務プロセスを審査し、一定の基準を満たした事業者を「品質認証事業者」として認証する制度を運営しています。 ■ SeenThis とは オープンウェブ上には、まだ十分に活用されていない膨大な広告ポテンシャルが存在しています。 多くの広告主が大手主要プラットフォームでのリーチを追い求める一方で、ユーザーはプレミアムパブリッシャーやその他様々なコンテンツ上で多くのオンライン時間を過ごしています。 しかし、これまでオープンウェブ上での動画広告は、その力を十分に発揮できていませんでした。 SeenThisは、こうした状況に変革を起こします。 SeenThis はみなさまの動画広告パートナーとして、オープンウェブでも確かな成果が出ることを証明し、パブリッシャーの収益性を維持しながら、コスト効率の高い動画広告によって、より多くのアテンションと卓越した成果を実現します。2017年の創業以来、SeenThisは50カ国以上・5,000を超えるブランドに対し、数十億回規模のストリーミング配信を提供してきました。 ブランドには、オーディエンスがいるすべての場所でリーチする権利があり、パブリッシャーには、持続可能な収益を得る権利があり、そしてインターネットは、オープンであり続けるべきである、と考えています。 会社名:SeenThis Japan株式会社 マネージングディレクター:今村 幸彦 所在地:東京都港区麻布十番2-20-7 URL:https://seenthis.co/ja/ LinkedIn : https://jp.linkedin.com/company/seen-this-japan 本件に関するお問い合わせ先:info@seenthis.jp
進化するアドテク業界 ――「最良のパートナー」に求められるもの
日進月歩するアドテクノロジー業界が、再び大きな節目を迎えています。 ユーザーの過去の行動データに基づくターゲティングから、ユーザーの「今、この瞬間」の関心やニーズを捉えるターゲティングへ。 広告主にとって、こうしたテクノロジーの進化をどう活用するかは、「最良のアドテクパートナー」を選ぶ上でも、ますます重要なテーマになっています。 (Sponsored by GumGum Japan) 「今、この瞬間」のニーズを捉える 例えば、一日の仕事を終え、疲れを癒そうとあるバーに立ち寄ったとしましょう。そこは以前にも数回訪れたことのある店。バーテンダーは短いやり取りを交わした後、注文を聞くのではなく、あなたのその時の気分にぴったり合いそうなカクテルをさりげなく提案します。ひと口飲んでみると、まさに今の自分が欲していた味だった――。そんな体験は、とても心地良いものです。 優れたバーテンダーは、客の表情や仕草、来店した時間帯、そしてなぜそのバーを選んだのかといった、その瞬間に発せられているさまざまな「シグナル」を感じ取ります。以前来店したことのある客だからといって、過去に注文した飲み物を機械的に勧めるわけではありません。過去の履歴だけでなく、「今、この人は何を求めているのか」を読み取り、判断する。だからこそ、その時々のニーズに、より正確に応えることができるのです。 デジタル広告の世界でも今、同じような考え方が形になりつつあります。ここでいう「マインドセット」とは、単なる興味・関心ではなく、その人が今この瞬間、何に関心を向け、何を求めている状態なのかということです。同じ人であっても、朝と夜、仕事中と休日では、気分や関心、求めるものは変わります。過去に何を見たかという履歴だけでは、そうした「今」の状態までは捉えきれません。そこで、その時々に発せられているさまざまなシグナルから、現在の関心やニーズをより深く理解しようとするのが、GumGumの「マインドセット」という考え方です。 では、なぜ今「マインドセット」なのでしょうか。その背景を理解するために、これまでアドテクノロジーがどのように進化してきたのか、少し振り返ってみましょう。 DSPからコンテクスチュアルへ―アドテクの進化 デジタル広告業界における大きなイノベーションの一つが、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)の登場でした。それまでオープンウェブ上で細分化されていた広告取引は、DSPによって統合・集約され、最適化された広告を瞬時に大量配信できるようになりました。断片化されていたオープンウェブを横断してユーザーにリーチし、広告配信を大幅に効率化したという点で、非常に大きな進歩でした。リーマンショック後に開発・導入されたこの技術は、日本市場でも2010年代初めから広まり、現在も業界の中核的な役割を担っています。その後、Cookieなどを活用し、ユーザーが過去にどのようなウェブサイトを閲覧したのかといった行動データから、興味・関心を把握する手法が発展していきます。 しかし、過去の行動が、必ずしも「今」のマインドセットを表しているとは限りません。ユーザーの興味や関心は、気分や環境、時間帯などによって大きく変化します。先ほどのバーテンダーの例で言えば、「以前このカクテルを飲んだから、今回も同じものを求めているだろう」と判断するのではなく、その日の客の様子を見て、「今夜は別のものを勧めよう」と考えるのと同じです。 また、2018年に欧州でGDPR(一般データ保護規則)が施行されるなど、プライバシー保護をめぐる環境が変化する中で、改めて注目を集めたのがコンテクスチュアルターゲティングでした。これは、ユーザーが今閲覧しているウェブサイトやコンテンツをリアルタイムで把握し、その内容に関連する広告を自動的に選択・配信する技術です。コンテクスチュアルターゲティング自体は2000年代初頭から存在していましたが、プライバシー保護への意識が高まる中で再び脚光を浴び、デジタル広告の大きな進化の一つとなりました。 ユーザー理解を変える「マインドセット」 そして今、コンテクスチュアルターゲティングをさらに発展させ、ユーザーの「今」の状態をより深く捉えようとするのが、GumGumのマインドセット・テクノロジーです。その中核となるのが、Mindset Graph(マインドセット・グラフ)です。 Mindset Graphは、さまざまなシグナルを分析し、その瞬間に人々がどのようなことに関心を持ち、何を求めているのかを理解するためのインテリジェンス基盤です。つまり、「過去に何を見た人なのか」だけを見るのではなく、「今、どのようなマインドセットにあるのか」を捉えるための土台となるものです。 そして、このMindset Graphのインテリジェンスを、マーケターが実際の広告キャンペーンに活用するためのプラットフォームがMindset Portal(マインドセット・ポータル)です。Mindset Portalには、AIを活用した機能であるMindset Agent(マインドセット・エージェント)が搭載されています。 Mindset Agentは、キャンペーンの目的やメッセージを読み解き、Mindset Graphのインテリジェンスと掛け合わせることで、そのキャンペーンと親和性の高いマインドセットや広告掲載環境を提案します。さらに、そこで得られたインサイトをプランニングだけで終わらせず、DSPと連携することで、実際の広告配信までつなげることができます。 整理すると、Mindset Graphが「今」を理解するためのインテリジェンスの基盤となり、そのインテリジェンスをマーケターが活用するための場がMindset Portalです。そしてPortal内のMindset Agentが、キャンペーンに合ったマインドセットや配信環境の発見から、実際の広告配信までをサポートします。 「過去に何を見た人なのか」だけではなく、「今、この人は何を考え、何を求めているのか」。広告の送り手がユーザーをより深く、正確に理解し、その理解を実際の広告配信までつなげていく。それが、アドテクノロジーの進化における次のステップだと私たちは考えています。 最新技術を、既存の広告運用へ 一方で、ここで重要なのは、マインドセットがDSPに取って代わる技術ではないという点です。マインドセットのインテリジェンスをDSPと組み合わせることで、既存の広告配信の仕組みをさらに進化させる。その点にこそ、大きな価値があります。 Mindset Portalは、最初のDSPパートナーとしてThe Trade Deskとの連携を進めています。これによりマーケターは、Mindset Agentを通じてキャンペーンに適したマインドセットや配信環境を見つけるだけでなく、そのインテリジェンスをThe Trade Desk上の広告配信にもつなげることができます。 つまり、新たなインサイトを得るための「分析ツール」が一つ増えるのではありません。ユーザーの「今」を理解し、それを広告戦略に落とし込み、実際に届けるところまでを一つの流れにつなげる。新しいテクノロジーを導入するために広告運用の仕組みそのものを一から変えるのではなく、既存のDSPのワークフローとつなぎながら活用できることも、マーケターにとって大きなメリットと言えるでしょう。 「最良のパートナー」をどう選ぶか アドテクパートナーを選ぶ際、最新のテクノロジーを理解し、それをいかに実際の広告運用や成果につなげられるかは、常に重要な判断軸です。ユーザーの過去の行動を追うターゲティングから、「今、この瞬間」を捉えるターゲティングへ。テクノロジーの進化によって、広告主がユーザーを理解する方法そのものが変わりつつあります。だからこそ、これからのパートナー選びでは、単に「誰に広告を届けられるか」だけでなく、「その人が今、どのようなマインドセットにあるのかをどこまで理解し、その理解を実際の広告配信につなげられるか」という視点も、重要になってくるのではないでしょうか。 (文:セルビー健三) コラム執筆者 セルビー健三 GumGum Japan, Managing Director AOL、Teads、GumGumなど国内外のアドテク企業で、日本市場の立ち上げと事業拡大に従事。TeadsではHead of Salesとして成長を牽引し、退任時には同社を国内リッチメディア広告市場を代表するプレイヤーの一社へと成長させた。 現在はGumGum JapanのManaging Directorとして、日本における事業戦略と成長を統括。グローバルのテクノロジーやプロダクトを日本市場に適応させるだけでなく、日本独自のニーズを起点とした事業・プロダクト展開にも注力している。マーケティングテクノロジーアワード2025ではAPAC初となる受賞を実現したほか、CTV向け広告フォーマット「In-Video」の展開など、日本市場からGumGumの新たな可能性を広げている。 近年は、ブランディング広告を認知や好意形成にとどめず、来店や購買といった事業成果までつなげ、その価値を可視化する取り組みにも注力。テクノロジーとクリエイティブを掛け合わせながら、ブランド広告がビジネス成長に果たす役割を日本市場で広げていくことを目指している。
AI検索でカスタマージャーニーはいかに変化するかーRTB Houseが調査結果を発表[インタビュー]
AI検索が日常化したことで、消費者が探し求める商品に行き着くまでのカスタマージャーニーはどのように変化していくのか。ECマーケターにとって目下最大の関心事となるこのテーマを探るべく、RTB Houseが調査を実施した。その調査結果について、来日した同社幹部に話を聞いた。 (Sponsored by RTB House) AI検索の実態把握は「至上命題」 ―自己紹介をお願いします。 RTB Houseにて、VP, Global Product Commercializationという役職を務めるジェイセン・グレスピーと申します。アドテク及びデータサイエンス関連業務に15年以上にわたり従事してきました。現職においては、広告運用に関連した様々な指標やインサイトを、マーケターの皆様がビジネス上の意思決定に容易に活用できるように支援する役割を務めています。 ―貴社がこの度実施したAI検索実態調査の概要を教えてください。 消費者がAIツールを活用して商品の検索や比較検討を行い、最終的な購買決定に至るまでのプロセスを解明することを目的として、米国、欧州、日本に在住する消費者約2000名を対象としたオンラインアンケート調査を実施しました。 本調査は、グローバルな調査パネルを保有するCint社の協力のもとで行い、不正回答や不適切なデータの混入の防止策も設けました。2026年7月から8月にかけてデータを回収・集計しています。 ―なぜ本調査を実施したのですか。 RTB HouseのDSP(Demand Side Platform)をご利用いただくお客様の中には、Eコマース事業者が多く含まれています。こうした事業者の皆様にとって、現在の関心事となっているのが「消費者は商品検索において、いかにAIツールを活用しているか」という点です。 ChatGPTやGoogleのAI Overviewなどを使い、おすすめのレストランやホテル、あるいは服や家具を検索した経験を今や誰もが持っているのではないでしょうか。この購買行動の変化は今、世界中で同時に起きています。消費者はAIツールを通じて新しいブランドや商品に出会い、購入すべき商品をAIに相談し、さらには複数の商品を組み合わせる「バンドル購入」の提案まで受けるようになっています。 つまりECマーケターにとって、消費者が購買を目的としてどのようにAIツールを使いこなし、それが買い物体験にどう影響を与えているのかを把握することは、まさに至上命題と言えます。本調査は、こうした課題に直面するECマーケターの皆様の意思決定を支援し、次なる戦略のヒントを提供することを目的に実施いたしました。 AI検索は買い物体験を変革する ―AI検索の台頭によって、利用するプラットフォームだけでなく「検索」という行為そのものが変化しているということでしょうか。 皆様も実感されているかと思いますが、従来のキーワード検索に比べ、AI検索ではユーザーがより詳細な条件やコンテキスト(文脈)を入力するようになっています。これにより、消費者は購買プロセスにおいて、より多様な選択肢を手に入れられるようになりました。従来の検索では、検索結果の上位2〜3件のウェブサイトを確認して終わることが一般的でしたが、生成AIはユーザーのニーズに沿った多数の選択肢やウェブサイトを一度に提示してくれるからです。 また情報収集が容易になったことで、消費者が競合商品を比較検討する機会はむしろ増加しています。つまり、AI検索の普及によって、オンラインにおける購買決定プロセスはかえって長期化しているのです。 実際に今回の調査でも、この傾向が明確に裏付けられました。特に若年層でその傾向が顕著であり、「AIツールによって最終的な購買決定に至るまでの時間が長くなった」と回答した割合は、米国ではZ世代の48%、それ以外の地域ではミレニアル世代の35%に達し、それぞれ世代別で最多を記録しています。 なお、同じ質問に対して、日本を含む米国以外の地域から「AIツールによって最終的な購買決定に至るまでの時間が長くなった」と回答した割合は、ミレニアル世代が35%、ベビーブーマー世代が34%、Z世代が33%、X世代が32%でした。米国のような大きな世代間ギャップは見られず、どの世代も横並びの傾向を示しています。 出典:RTB House調査 ―本来は検索を効率化するためのAIツールによって、かえって購買までの時間がかかるようになるというのは興味深い現象ですね。 もちろん、AI検索によって購買プロセスが劇的に短縮される場合も数多く存在します。その代表例が、いわゆる「バンドル購入(まとめ買い)」です。 例えば、日曜大工で自宅の庭にデッキを設置する状況を想像してみてください。AIに対して「手元には丸のこと電動ドリル、ネジが100本ある。50平方メートルのウッドデッキを作るために必要な資材と工具のリストを教えてほしい」といったプロンプトを入力したとします。 するとAIは単一の商品だけでなく、不足している木材や基礎用コンクリート、固定金具、防水塗料などを網羅した「買い物リスト」を一括で提示してくれます。場合によっては合計で数十万〜100万円規模にのぼる購入リストが、一瞬で完成するわけです。今回の調査でも、米国在住者の63%が「AIを活用して買い物リストを作成した経験がある」と回答しています。 従来のキーワード検索では難しかったこうした一括購買のアプローチは、AI検索の普及に伴い、今後急速に一般化していくと考えられます。これに伴い、EC事業者側にもバンドル購入に対応した決済や注文処理の自動化が求められるようになるでしょう。具体的には、ユーザーがAIエージェントに決済権限を与え、一括購入を完結させる仕組みなどが挙げられますが、現時点でここまでの体制を整えられているEC事業者はまだごく一部に留まります。 ―ECマーケターには今後、AI検索への最適化が強く求められるようになりますね。 インターネット黎明期の1995年頃を思い出してみてください。当時はまず「人間にとって使いやすいウェブサイトのデザイン」が求められました。それから10年ほど経ち、GoogleやYahoo!などの検索エンジンが普及すると、今度は「検索エンジンに評価されやすいサイト構造(SEO)」が不可欠となりました。 そして今、時代は「AIエンジンへの最適化」へとシフトしています。AI検索最適化の本質とは、自社の全商品において「分かりやすく明確な情報を提供し、他社との差別化を図ること」に他なりません。AIはロングテールつまりニッチな情報を見つけ出すことを非常に得意としていますが、いくら優れた商品を持っていても、その独自性が言語化されていなければ、AIは価値を認識できないからです。 ―具体的に、ECマーケターはどのような対策を講じるべきでしょうか。 自社ブランドにおける一貫したポジショニングの確立が、これまで以上に重要になります。AIは矛盾する文脈や曖昧な情報を処理するのが非常に不得意だからです。 ルイ・ヴィトンやシャネルといったラグジュアリーブランドは良い手本と言えます。彼らは店舗空間、プロダクト、接客に至るまで徹底して世界観を統一し、ターゲット層を絞り込むことで独自のポジションを築いています。 今後はラグジュアリーブランドに限らず、例えば500円のたこ焼きを販売する場合であっても、自社がどういうブランドで、誰に向けた商品なのかをAIにも正しく伝わるよう言語化して、明確に提示しなければなりません。「グルテンフリー専門のたこ焼き」のように独自性が尖っていれば、AIは特定ニーズの検索結果として拾い出しやすくなります。逆にコモディティ化された特徴のない商品は、競合の中に埋もれてしまうリスクが一層高まります。 ―これまで以上に商品・サービスの差別化が命運を分けるということですね。 おっしゃるとおりです。AIは情報の正誤や物事の特徴を正しく判定しているわけではなく、統計的に次に来る確率が高い単語を繋ぎ合わせて文章を作成しています。 言い換えれば、AI検索は放置すると情報をひたすら平均化してしまう性質を持っているのです。だからこそマーケターは、AIに競合と一緒くたに平均化されるのではなく、平均からはみ出してAIに発見・推奨される存在であり続ける努力が求められるのです。 DSP事業はどう変わるのか ―こうした購買行動の変化を踏まえ、貴社のDSP事業では今後どのような取り組みを強化されていくのでしょうか。 当社はリターゲティング広告の担い手として、今後もリターゲティング機能の精度をさらに強化していきます。AIツールの台頭により、消費者が複数のECサイトを行き来しながら慎重に比較検討する機会が増えている現状において、適切なタイミングで認知・検討を促すリターゲティング施策の必要性と有効性は今まで以上に高まっていくと確信しています。 なお、当社はChatGPTが登場する以前から、一貫してディープラーニング(深層学習)をコア技術として自社エンジンの開発を手掛けてきました。当社が提供するソリューション「Semantic Intelligence」は、LLM(大規模言語モデル)を活用することで、ウェブページ上のテキストや文脈、パブリッシャーが保有するファーストパーティデータ、そしてユーザーの行動履歴を高度に解析・理解し、最適な広告配信に活用しています。 例えば犬用のセーターをECで販売する場合を考えてみてください。愛犬家が集まる情報サイトに広告を掲載するのが王道ですが、仮に「犬に噛まれて負傷した事故」を報じるニュース記事上に広告が表示されてしまっては、成果につながらないばかりかブランドイメージの棄損にもつながりかねません。従来型のキーワードマッチングではこうした文脈の違いを判別することに限界がありましたが、当社のLLM技術を用いれば、記事の文脈まで高精度に識別し、真に価値ある面へ広告を届けることが可能です。 ―消費者が個別サイトを訪問せずAIプラットフォーム上で情報収集を完結するようになると、オープンインターネットを中心に広告在庫を保持する貴社事業にも影響が及ぶのではないでしょうか。 ユーザーがウェブサイトを訪れずに情報を取得する「ゼロクリック検索」の台頭は、パブリッシャーにとって深刻なトラフィック減少という課題をもたらしています。一方で、広告主側にとっては、少なくとも現時点において大きな悪影響は生じていません。AIプラットフォーム上で購買まで完結する機能はまだ一般化しておらず、ユーザーは最終的に各ECサイトへ遷移して買い物をしているからです。 実際、AIプラットフォーム経由の送客は非常に高いコンバージョン効果を示しているものの、現状ではEC全体のトラフィックにおける1%未満にとどまっています。 また、広告在庫への影響という観点でも、現段階でAIによるトラフィック減少の打撃を受けているのは主に一部のニュースサイトや汎用的な情報メディアに限られています。天候情報サイト、各種アプリ、メールサービスなどは依然として堅調であり、オープンインターネット全体の広告在庫が失われたわけではありません。 ただし、将来的には状況が一変する可能性が大いにあります。近い将来、ユーザーがAI上でメールやニュースを閲覧し、AIからECサイトへの大規模な送客が行われ、さらにはAIエージェントがAIプラットフォーム上で購買を全自動で代行する時代が訪れる可能性は大いにあります。その段階に達したとき、巨大なプラットフォームとなったAIサービス群は、間違いなく新たな広告在庫を市場に開放するはずです。 かつてニュースサイトやリテールメディアなどのオンラインサービスが、ユーザー数の拡大に伴い広告ビジネスへと参入していった歴史と同じ構造が繰り返されるでしょう。そして、我々のようなDSP事業者は、そうした新たな広告在庫と接続し続けることで、常にユーザーとブランドを結ぶ最適な接点を提供し続けていきます。
ATS Tokyo 2026割引チケット販売は9月30日まで!
11月20日(金)にシェラトン都ホテル東京で開催する「ATS Tokyo 2026」。現在販売中のEarly Birdチケットは、9月30日(水)をもって販売終了となります。 10月1日(木)からは通常価格での販売となるため、参加をご検討中の方は、ぜひお早目にお申し込みください。 テクノロジーベンダー向けチケット ¥69,300(9/30まで)→¥99,400(10/1から) 広告主・広告会社・媒体社向けチケット ¥63,600(9/30まで)→¥79,700(10/1から) ATS Tokyoは、広告・マーケティング業界の最前線で活躍するリーダーが一堂に会し、デジタル広告やマーケティングを取り巻く最新のトレンドやテクノロジーについて議論するカンファレンスです。 今年の「ATS Tokyo 2026」は、11月20日(金)にシェラトン都ホテル東京で開催。業界を取り巻く環境が大きく変化するなか、AIやデータ、アドテクノロジーをはじめ、これからの広告・マーケティング市場を考えるさまざまなセッションを予定しています。 【イベント概要】 ■日時:2026年11月20日(金)9:00-19:30(予定) ■場所:シェラトン都ホテル東京 (東京都港区白金台1丁目1-50) ■定員:500名 ■主催:ExchangeWire Ltd.(ExchangeWire.com) 【チケット概要】 テクノロジーベンダー向けEarly Birdチケット:69,300円(税込 、9/30まで) 広告主・広告会社・媒体社向けEarly Birdチケット:63,600円(税込、9/30まで)
インターネット広告業界を、もっと誇れる場所に。-ATS Tokyo 2026、総合司会は林 博史氏、山本 菜月氏、高梨 空美氏の3人体制-
司会とは、読んで字のごとく「会を司る」役割である。台本を読み上げる人ではない。誰に、どのタイミングでマイクを渡すのか。どこで熱を上げ、どこで空気を緩めるのか。一日の温度を決めているのは、しばしば壇上の中央ではなく、その脇に立つ人間だ。 500名が集まるATS Tokyoは、終日シングルトラックである。裏番組はなく、来場者全員が同じ会場で、同じセッションを、同じ順番で聴く。逃げ場がないぶん、会を司る者の力量が、そのまま一日の質になる。 11月20日(金)に開催する ATS Tokyo 2026 は、その大役を三人に託す。3年連続で舞台に立つ日本アドバタイザーズ協会 副事務局長の林 博史氏。2年目となる株式会社Uniiiqueの山本 菜月(やまもと なつき)氏。そして今回が初登板となる、サイバーエージェントの高梨 空美(たかなし そらみ)氏。約500名が集う一日を、この三人が束ねる。 三度、同じ言葉を語るということ -林 博史氏 林氏にとっては、三年連続の総合司会となる。そして語る言葉は、昨年も一昨年も、そして今年も変わらない。 「登壇する方は皆さん前向きです。その姿を見て、自分もこういう仕事をしているのは楽しい、と来場者に思ってもらえたらいい」 「仕事は楽しいものだと思えれば、やることは自分で勝手に見つけていける。誇りを持てば、正しいと思うことをやるようになる。その一歩目のきっかけになればいいんじゃないかな」 語られるのは進行の技術ではなく、会に何を残すか、である。司会を文字どおり「司る」仕事として引き受けている姿勢が、そのまま言葉になっている。 今年の三人体制についても、「3人いて何をするんだろうね、という役割分担はこれから考えないといけない」と笑いながら、「司会も含めて、その空間全体が楽しくなるように頑張ります」と続けた。見ているのは、壇上ではなく会場全体である。 「ワクワクを届ける」から、二年目へ -山本 菜月氏 昨年、山本さんが掲げていたテーマは「マーケティングでワクワクを届ける」だった。広告代理店の法人営業からキャリアを始め、PRやデジタルの領域へ。美容・コスメを中心に数多くの施策を手がけ、昨年はマーケターとして総合司会の舞台に立った。 この1年で、その場はさらに広がっている。現在はタレントマネジメントを手がける仕事に比重を移し、クライアントや代理店に向けたセールスを担当。Z世代を中心に100名規模のタレントが所属する現場で、人と人とを結ぶ仕事に日々向き合う。人を立て、場を回す。司会という役割とは、地続きの日常である。 昨年の記事では「依頼された仕事は基本的に断らない」というスタンスを紹介した。その姿勢は、今年も変わっていない。もっとも今回に限っては「頼まれる前に、もう決まっていた」と本人は笑う。 二年目に向けた準備は、すでに始まっている。「あんなに噛み噛みだったのに、2度目のキャスティングはキャスティングミスではないのか」と昨年の自分を振り返りながら、司会のためのボイストレーニングのレッスンを組み始めた。「去年の反省を生かして、もう少しステップアップした姿をお見せします」。宣言は、行動に裏打ちされている。 領域が変わっても、モットーは変わらない。 「私の代わりはいくらでもいると思っています。そのうえで、私だから一緒に仕事をしたいと思ってもらえるようなコミュニケーションや関係性の構築を、いちばん大事にしている」 昨年、「参加者に不快な空気を与えず、スムーズで心地よい進行を心がけたい」と語った姿勢と、同じ根から出ている言葉だろう。 オープンウェブの価値を、引き上げたい -高梨 空美氏 大阪生まれの大阪育ち。大学では外国語学部でスペイン語を専攻し、留学先もスペインだった。新卒で入社したのはSNSマーケティングを手がけるベンチャーで、テレアポから足で稼ぐ営業まで、泥臭い現場から社会人生活を始めている。 幼なじみの縁をきっかけにサイバーエージェントへ移ってからは、デジタル広告の営業として経験を重ねた。昨年春に担当する領域が変わり、今年3月からはマネージャーとしてチームを支える立場になった。 業界の現状を尋ねると、視線はまっすぐオープンウェブに向かった。 「広告主にとってさまざまな選択肢が広がるなかで、オープンウェブも、その価値をより明確に示していくことが重要だと感じています。媒体社や業界の皆さんと切磋琢磨しながら、ユーザー、広告主、媒体社それぞれにとって価値のある環境をつくっていきたいです」 長く業界を支えてきた人たちと切磋琢磨しながら、良質なコンテンツを生み出す媒体社が、その価値を持続的に高めていける環境に貢献したい 、と語る。 社内外で今よく耳にするキーワードとして挙がったのは、やはりAIだった。クリエイティブ制作、AIエージェント、そしてリテールメディア。「広告に関わるさまざまな領域でAIの活用余地があると感じています。人の判断やクリエイティビティを大切にしながら、AIを適切に取り入れていきたいです」。ATS Tokyoが扱うテーマと、日々の仕事が地続きにある。 司会就任については、率直だ。「こうしたお声がけをいただくのは初めてで、すごく緊張しています。ただ、業界の一員として、外に向けて発信する役割にも挑戦していきたいと思っていたので 、精一杯務めます」。ちなみに打診は上司経由。「この日は空けておいて、大事な仕事が入るから」――それだけで意味を察したという。 500人の一日を、三人が司る ATS Tokyoは、業界の知見と最先端のトレンドが交わる場である。だが、セッションの中身だけで一日が決まるわけではない。誰が場を温め、誰が話を引き出し、誰が一日を締めるのか。会の輪郭は、司会が描く。 今年はそこに、三年目の林氏の一貫した姿勢、二年目の山本氏の準備、そして初登板の高梨氏の新しい視点が重なる。約500名が同じ会場で過ごす一日を、この三人が司る。会が終わったとき、来場者が何を持ち帰るのか。その答えは、すでに三人に託されている。
ターゲティング設定はもう必要ない? 楽天のAI配信は何ができるのか[インタビュー]
オンライン広告は、それまでの広告形態では難しかった「ターゲティング」と「効果測定」を容易に行う環境を実現したことでマーケターに重宝されるようになった。しかし、AI技術の発展により、この状況にも変化が生まれつつある。「AIはターゲティングを超えた」と述べる楽天の田中 利昌 氏に話を聞いた。 (Sponsored by 楽天グループ) 時代はAI配信へと移行しつつある ―あらゆる業界が最新のAI技術を導入しています。貴社の広告事業ではどのようにAIを活用していますか。 現在はアドテク関連だけに限っても様々なテクノロジー企業様がAI技術を活用した新規の広告商品を次々と投入しています。当社の強みは、ユーザーの属性情報と消費行動が一元管理された独自のデータベースである「Rakuten Customer DNA(CDNA)」を使ってAIを組み込んでいることです。 このCDNAを基盤として、広告主様よりコンバージョンデータをお預かりし、広告主様サイト上でコンバージョンしたユーザーが、「楽天エコシステム(経済圏)」ではどのようなオンライン行動をとっているかを分析した上でモデリングを作成し、このモデリングに基づくスコアリングなどを行います。 資料提供:楽天グループ株式会社 この一連のターゲティングを行うソリューションを「未来購買予測」と呼び、楽天の広告アセットとしてご提供しています。 ―「未来購買予測」は通常の広告メニューとは異なるのでしょうか。 当社ではディスプレイ広告や動画広告、DMなどのマーケティングソリューションを集めたプラットフォームである「Rakuten Marketing Platform(RMP)」を運営しています。いずれのソリューションにおいてもノンターゲティング配信または購買履歴など様々なデータに基づき形成するセグメントに応じたターゲティング配信が可能であり、これらの選択肢に加えてさらに広告パフォーマンスを高めることができる「未来購買予測」をご案内しています。 ―つまり「未来購買予測」では「都内在住の30代女性」や「過去1週間以内に酒類を購入した人」といったターゲティング設定を行わないのですね。 当社が蓄積するデータとAI技術の精度は極めて高く、セグメントに基づくターゲティングよりもAIによるターゲティングの広告効果は高いです。オンライン広告市場はその黎明期からターゲティング広告を特徴として成長してきたと思うのですが、もはや時代はAI配信へと移行しつつあると感じています。 AIだけができること ―「航空券を購入した人に渡航先のホテルをレコメンドする」といったコンバージョンデータの活用法は随分と前から定着しているように思います。AIを活用することでその精度がさらに高まるということでしょうか。 巨大なデータベースを活用することで、コンバージョンの直前及び直後のオンライン行動だけではなく、その他様々なデータを抽出し、人間では決して気付くことができないような因子を見出すことを目的としてAIを活用しています。 例えば当社のデータベースでは、10年以上遡って購買履歴を蓄積しています。以前にもご紹介したBOTANIST様の商品は、メイクや他のヘアケア関連製品の購入者が積極的にご利用になっていることまでは自明であったものの、テニスやマリンスポーツ関連商品の購入者が多くいるということまでは十分に把握することは難しかったと思います。 後から振り返るとアウトドアスポーツを楽しんだ結果として髪の傷みを気にするようになったということが漠然とは想像できると思うのですが、ここまで具体的な購買データとの関連性を見出すことができるというのは当社のAIならではと思います。 ―AIを活用すれば「人間では決して気付くことができないような因子を見出す」ことができる一方で、そうした因子を見出すまでの過程が分かりにくくなるのではないでしょうか。 一般論として広告におけるAI関連商品はその仕組みがある意味でブラックボックス化しており、特定の因子を見出すためにどのような分析を行ったかが見えにくい部分は確かにあると思います。 ただし、当社の「未来購買予測」をご利用いただくのは大多数がいわゆるパフォーマンス案件であり、CPAつまりは費用対効果が良ければその過程はあまり問われないことが多いです。 ―広告代理店は広告主に対して説明する必要がありますよね。 AI配信を行うと、広告代理店が予め描いていたユーザー像とは異なるユーザーへと広告が配信される場合はあるかもしれません。ただユーザー像というのは常に新たな発見とともに更新され得るものです。また当社であれば、楽天インサイトなどの機能を通じて想定外のユーザーに対してアンケートを実施することでなぜ購買に至ったかを広告代理店企業様と一緒に探ることができます。 ―「未来購買予測」と相性の良い商材は何ですか。 分析項目が多岐にわたる高単価な長期検討商材が適していると思います。例えば不動産の場合、成約日を0日とすると、その1000日前つまり約3年前に、キッズ、ベビー、マタニティ、そして100日前つまり数カ月前からインテリア系の商品を買い始めるユーザーが多くいます。家族が増えて、新しい生活環境を整えようとしている様子がつぶさにわかりますよね。こうした人々に適切なタイミングで不動産広告を配信すれば成約率の増加が期待できます。 資料提供:楽天グループ株式会社 また教育商材のようなLTV型の事業との相性も良いです。2000日前つまり約5年前に抱っこ紐を買って、小学校への入学のタイミングで教育サービスの利用を開始するユーザーが数多くいらっしゃいます。AIを使って、こうした一連の流れをつぶさに把握することで適切なタイミングで広告を配信することが可能になるのです。 資料提供:楽天グループ株式会社 AI発展の道筋とは ―このような分析を行うには、AI技術の発展に加えて、それこそ10年単位で蓄積した膨大なデータが必要になりますね。 データがあればあるほど、様々な共通因子を導き出す確率が上がるので、AIの精度はさらに高まります。当社が蓄積するデータを増やすためには、広告事業だけに留まらず「楽天エコシステム(経済圏)」全体を発展させることが重要です。データが増えてAIの分析精度が高まり、広告主の皆様のマーケティングがさらに効率化されるという好循環が既に生まれています。 また現状では「楽天市場」の購買データなどが起点にはなっていますが、今後「楽天ポイントカード」を提供する店舗サービス企業様とのPOSデータ連携を通じデータは増強されていく予定です。 ―AI機能自体は今後どのように発展させていく見込みですか。 AIはあくまで何かを成し遂げようとするときの手段です。結局のところ、当社に求められているのは広告パフォーマンスなので、あらゆる手段を駆使して広告パフォーマンスを高めていきたいと思います。 一方で、パフォーマンス案件だけでなく認知向上やブランディング施策を実施する広告主様に対しても、とりわけ分析業務においてAI機能をご提供することを検討しています。 先ほども申し上げた通り、AIは人間が気付くことができない商品・サービスのターゲットや利用状況を見つけるのが得意です。広告配信前の仮説づくりやユーザー分析に活用できるAI機能を整備することで、ブランディング施策を行う広告主様のご支援がもっとできるようになりたいと思います。
SeenThis・電通デジタル・The Trade Desk対談:品質が高く効率的な動画広告体験を再定義 - リッチクリエイティブ動画が導く新たな可能性[インタビュー]
ブランディング戦略の要として活用されている動画広告は質の高い視聴体験と高いブランド効果が期待できる。一方、生活者のメディア接触が多様化する中、より幅広い生活者との接点を築くには、複数のタッチポイントを横断したコミュニケーションを設計し、効率的にリーチを広げる視点も欠かせない。本稿では、その選択肢の一つとして注目される「リッチクリエイティブ動画」を軸に、テクノロジー企業2社と広告代理店が、動画広告における質と効率性への打ち手と、具体的な活用事例について議論した。 (Sponsored by SeenThis Japan) 動画広告のプランニングを広告体験とインクリメンタルから考える ― 自己紹介をお願いします。 飯嶋氏:SeenThis Japan株式会社(以下、SeenThis)の営業責任者を務める飯嶋攝子(いいじませつこ)と申します。当社は「オープンウェブにおける動画広告パートナー」として、消費者の動画広告体験を高めるため、従来は静止画が中心だったディスプレイ枠に、動画広告を配信する技術を提供しています。また、キャンペーンの目的に応じたリッチクリエイティブの制作も支援しており、DSPとの連携により動画広告の視聴体験の向上や認知拡大、成果向上を実現しています。 藤澤氏:株式会社電通デジタル(以下、電通デジタル)でアカウントプランナーを務める藤澤千里(ふじさわちさと)です。主に外資系広告主のコミュニケーションおよびメディア設計を担当しています。その中で、広告効果の高いインクリメンタルリーチを増やす認知キャンペーンを取り組んでおり、SeenThisとは日本法人の設立当初からさまざまな取り組みをご一緒しています。 服部氏:The Trade Desk Japan株式会社(以下、TTD)の服部和磨(はっとりかずま)です。TTDは、広告主や広告代理店向けに、透明性と効率性を重視した広告配信プラットフォームを提供しています。私はストラテジックプランナーとして、広告主のマーケティング課題に合わせ、広告戦略の立案や、広告チャネルを横断したキャンペーン設計、インサイトの提供を支援しています。 ― 近年、生活者のメディア接触が多様化する中、動画広告の現状と課題、今後のプランニングに必要な視点について、それぞれの立場からお聞かせください。 藤澤氏:認知目的の動画広告を実施する際に、主には動画やSNSなど利用者が多いプラットフォームから予算を当てはめていくことが多いように感じます。しかし、生活者のメディア習慣や接触が多様化した中で、利用者の多いプラットフォームだけを選択することに課題を感じる部分もあります。 株式会社電通デジタル 藤澤千里氏 そこで私自身、よりチャネルを横断して広告アプローチを設計していくことや、動画広告自体の体験も多面的に行うこと、加えて、その中でも効率的にインクリメンタルリーチを増やすことでブランドと生活者の新しい出会いを増やすことを意識してプランニングを行うようになってきています。 服部氏:先ほど藤澤さんがおっしゃったようにデジタル広告投資は一部のプラットフォームに集中する傾向があり、生活者の実際のメディア接触との間にはギャップも見られます。広告主がUGCやSNSも重要な広告接点と捉えていることは深く理解しています。その上で、我々としては、より多様なチャネルを通して生活者へブランドメッセージを届け、広告コミュニケーションを設計し、さらには、チャネルを横断してデータを捉え、得られた知見を次の施策に生かすことも重要だと考えています。 飯嶋氏:SeenThisとしては、生活者の関心に沿ったコンテンツ環境でブランドメッセージを届けることが重要だと考えています。しかし、現状は「オープンウェブ」と呼ばれるニュースやファッションなどの数多くの多岐に渡るメディアが保有する広告枠の可能性が十分に認識されておらず、まだまだ活用の余地があると考えております。オープンウェブ、中でもSeenThisではディスプレイ枠の活用を再定義しており、インクリメンタルが望めるリーチ機会も多く、ブランドと生活者の新たな接点を生み出せる領域だと考えています。 藤澤氏:主要なディスプレイネットワークが提供する従来型のディスプレイ広告は、低CPCでウェブサイトへ誘導する、いわゆるダイレクトよりのイメージで語られることが多いです。一方、SeenThisが提供するようなリッチクリエイティブ動画を活用できると、生活者へ新たな広告体験を与え、ブランドメッセージを深く伝えることに役立つことに繋がります。現状は、その配信面や活用方法はまだ十分に知られていないため、より理解が広がれば、広告目的に応じて、より柔軟なプランニングや広告配信が可能になると思います。 服部氏:TTDでは、オーバーザトップ(OTT)/コネクテッドテレビ、オーディオ、屋外広告(DOOH)、ディスプレイなど、複数チャネルを横断的に配信・管理・評価できる広告プラットフォームを提供しています。広告体験を設計する上では、それぞれのチャネルの役割や特性を踏まえ、生活者がどの接点でブランドと出会うかを考えながら、横断的に広告を配信することが重要です。その中で、ディスプレイ枠も重要なチャネルの一つです。SeenThisのような1インプレッションの価値を高めるパートナーと共にリッチクリエイティブ動画を魅力的に伝えられることは、生活者とのより豊かな接点を生み出せます。 ― 「リッチクリエイティブ動画」とは実際にどのような広告なのでしょうか。 飯嶋氏:動画素材は他の動画広告と同じものを利用しますが、リッチクリエイティブでは動画広告と静止画を組み合わせたり、ギミックを追加するなど、インタラクティブな要素を加えることで、既存の動画素材を活かしながら表現の幅を広げることができる広告です。また、動画の周囲に企業ロゴや商品情報を継続的に表示することで、ブランドやメッセージをより明確に伝えることも可能です。既存の動画素材を元に表現の幅を広げ、ブランド想起や生活者のアクションにつながる接点を設計できる点が特徴です。 SeenThisクリエイティブ画像例 ハイブリッド カルーセル (上記はイメージです。SeenThis のクリエイティブ詳細はこちらをご覧ください) ― 表現力に加えて、配信やコストの面ではどのような特徴がありますか。 飯嶋氏:一般的な動画広告は、各プラットフォームが提供する動画広告枠に配信されます。一方、SeenThisでは、オープンウェブ上に広がるディスプレイ広告枠も動画の配信機会として活用できます。配信可能な広告在庫が広がることで、動画の表現力を生かしながら、リーチ規模とコスト効率を両立しやすくなります。 服部氏:質の高い動画広告を活用されたい一方で、コスト面も重視される広告主も多くいらっしゃいます。SeenThisのリッチクリエイティブ動画をTTDを通じて配信・最適化することで、幅広い配信面を活用しつつ、効率的にリーチを拡大することができます。 ―リッチクリエイティブ広告フォーマットを提供する事業者が複数ある中で、SeenThisならではの強みはどのような点にありますか。 飯嶋氏:リッチクリエイティブは以前から活用されている広告フォーマットですが、表現を豊かにするほどデータ容量が大きくなり、通信環境によっては読み込みに時間がかかる場合があります。 SeenThisは独自の「アダプティブストリーミング技術」により、通信環境に応じて動画データを最適に配信します。これにより、ページの動作やコンテンツの閲覧を妨げにくく、生活者のメディア体験を保ちながら、動画広告を素早く滑らかに表示できます。こうした仕組みを通じて、ビューアビリティ、再生率、視聴完了率などの向上を支援します。 SeenThis Japan株式会社 飯嶋攝子氏 また、SeenThis では、専任のクリエイティブ制作チームがおり、クライアントから提供いただく素材を活用して、キャンペーンの目的、KPIに最適なクリエイティブをご提案しています。配信技術と質の高いクリエイティブの両面から、キャンペーン成果の向上を支援できる点がSeenThisの特徴です。 リッチクリエイティブ動画を掛け合わせ、広告接点を拡張 ―3社が共同して取り組んだというキャンペーン概要をお聞かせください。 藤澤氏:担当する広告主様から、認知系のキャンペーンのご依頼を継続的に受けており、1年目は大手動画広告プラットフォーム、2年目にオーディオ広告を追加、そして3年目となる今年からディスプレイ枠を活用したリッチクリエイティブ動画を新たに組み込みました。 その広告主様では、市場が大きく拡大するOTTをはじめとするプレミアムな動画媒体への出稿を強化しながら、同時に、より幅広い生活者との接点をつくっていきたいというニーズがありました。そこで、特定のチャネルに置き換えるのではなく、それぞれのメディアの強みを生かしながら、キャンペーン全体としてリーチと広告体験を広げていくことを考えました。 その中で、既存の動画広告を補完し、新たな接点を加える選択肢として、オープンウェブの幅広い配信面を活用できるSeenThisのリッチクリエイティブ動画をご提案し、採用いただきました。 服部氏:今回は幅広い生活者を対象としていたため、TTDを経由してSeenThisを含む複数のチャネルを横断して配信し、継続的にブランドメッセージを届けつつ、チャネルを横断して広告効果を評価できる設計としました。また、データ活用の文脈では、広告主様のファーストパーティデータを活用し、広告クリエイティブと広告配信データの効果検証なども行いました。 ―キャンペーンの配信結果をお聞かせください。 藤澤氏:配信結果を見ると、各チャネルがそれぞれ異なる役割を果たしていることが確認できました。SeenThisは、オープンウェブの幅広い配信面を活用することで、効率的なリーチ獲得と高いコスト効率を示しました。 SeenThis を基準とした場合のCPM単価比較 一方で、OTTや音声広告もそれぞれの接触環境や広告体験を生かし、ブランド効果の面で良好な結果が確認されました。加えて、SeenThis単体でも非接触者と比較して広告認知のブランドリフトが確認され、クリエイティブによっては特に高い効果が見られるなど、ブランド効果への貢献も確認できました。 ブランドリフト調査 – 広告認知 服部氏:また、OTTのみに接触した層と、SeenThisとOTTの両方に接触した層を比較したところ、両方に接触した層で、より高いブランドリフトが確認されました。この結果から、SeenThisとOTTは二者択一ではなく、組み合わせることで相互に効果を補完し、ブランド効果をさらに高められる可能性があると考えています。 複数チャネル接触によるブランド認知効果 ―SeenThis の運用サポートについてはどう評価していますか。 藤澤氏:SeenThisには、キャンペーンの目的に合わせて、遊び心を取り入れた多様なクリエイティブをご提案いただきました。制作まで一貫して支援いただけるため、運用負担を抑えながら、新しい表現に挑戦できた点を高く評価しています。 服部氏:施策の目的や概要を共有すると、短期間で具体的なクリエイティブに落とし込んでいただけます。企画意図を的確に捉え、リッチクリエイティブとして形にする提案力とスピードは、SeenThisの大きな強みだと感じていますし、会社としてホスピタリティの高さを感じています。 いつもの広告配信に新たな選択肢を追加 ― 今回の取り組みについて広告主はどのように評価していますか。 藤澤氏:配信結果にご満足いただいたほか、新たなチャネルへチャレンジしていくことの具体的な重要性を理解いただく機会にもなりました。データ活用への関心も高まり、現在ではキャンペーンの設計段階から、チャネルの組み合わせや活用方法について意見交換する機会が増えています。 今回の3社共同の取り組みでは、SeenThisとTTDの強みを生かし、幅広い生活者に質の高いクリエイティブを効率的に届けることができました。プレミアム動画とその他の動画広告を二者択一で捉えるのではなく、それぞれの役割や強みを生かして組み合わせることが重要です。SeenThisは、コスト効率とブランド効果の両立を支援する選択肢の一つとして、まずは既存キャンペーンの一部に組み込み、効果を検証いただくのがよいと思います。 服部氏:前年度の実績を生かして広告配信を継続することは重要ですが、生活者のメディア接触は常に変化しています。定期的に配信結果を見直し、複数のチャネルを横断して成果を捉えることで、それぞれの役割や生活者の反応をより具体的に把握できます。こうした分析結果やインサイトを、次のキャンペーン設計や配信改善につなげることが重要です。 The Trade Desk 服部和磨氏 飯嶋氏:新しい媒体を試すことで、特に広告代理店の業務負担が増えることは理解しています。当社はTTDの配信技術と提携することで広告主・広告代理店の追加負担を相当程度に軽減しているので、ぜひお気軽にご利用いただけたらと思います。またTTDとの提携を通じて、視聴完了率といった動画自体のデータに留まらず、その他の統合的なデータを活用することで仮説検証が行えることも利点となっています。 服部氏:SeenThisとTTDのデータを掛け合わせることで、エンゲージメントしたオーディエンスの反応や接触状況に応じて、クリエイティブや配信設計を最適化することなどができます。また、広告主様が持つファーストパーティデータやTTDの広告ログデータと掛け合わせれば、ユーザー属性ごとの傾向を見出すこともできます。 TTDは現在、エージェントAIの活用を推進しており、2026年8月には、TTDのKokaiプラットフォームの大幅なアップグレード「ZUMA」の一環として「Koa Agents」を発表しました。また、広告代理店や広告主が自社のエージェントAIシステムをKoa Agentsに接続できる「Open Agentic Kit」も今後導入する予定です。これにより、広告代理店や広告主が利用する幅広いテクノロジーエコシステム全体で、ワークフローをよりシームレスにつなげることが可能になります。今後はこうした取り組みを通じて、複数のチャネルから得られる豊富なデータやインサイトをキャンペーン改善により迅速に活用できる環境の構築にも取り組んでいきます。 ― では最後に、飯嶋さんから読者へメッセージをお願いします。 飯嶋氏:SeenThis Japan設立からまもなく2年を迎えようとしています。しかしながら、まだまだ当社と当社のケイパビリティをご存じない方は多くいらっしゃると思うので、より多くの広告主様にご興味を持っていただきたいです。当社のテクノロジーを使えば、動画広告に関する指標はほぼ確実に改善します。限りある広告予算を少しでも効率よくご活用いただき、オープンウェブ上の1インプレッションの価値を上げるための手段としてぜひご活用いただけたと思います。 SeenThis Japan株式会社 オープンウェブ上には、まだ十分に活用されていない膨大な広告ポテンシャルが存在しています。多くの広告主が大手主要プラットフォームでのリーチを追い求める一方で、ユーザーはプレミアムパブリッシャーやその他様々なコンテンツ上で多くのオンライン時間を過ごしています。しかし、これまでオープンウェブ上での動画広告は、その力を十分に発揮できていませんでした。SeenThisは、こうした状況に変革を起こします。SeenThis はみなさまの動画広告パートナーとして、オープンウェブでも確かな成果が出ることを証明し、パブリッシャーの収益性を維持しながら、コスト効率の高い動画広告によって、より多くのアテンションと卓越した成果を実現します。2017年の創業以来、SeenThisは50カ国以上・5,000を超えるブランドに対し、数十億回規模のストリーミング配信を提供してきました。ブランドには、オーディエンスがいるすべての場所でリーチする権利があり、パブリッシャーには、持続可能な収益を得る権利があり、そしてインターネットは、オープンであり続けるべきである、と考えています。 ・会社名:SeenThis Japan株式会社 ・マネージングディレクター:今村 幸彦 ・所在地:東京都港区麻布十番2-20-7 ・URL:https://seenthis.co/ja/ ・LinkedIn : https://jp.linkedin.com/company/seen-this-japan ・お問い合わせ:info@seenthis.jp
メディアの内側から、業界を支える側へ ― Taboola安藤氏が語る、AI時代のパブリッシャー再成長戦略[インタビュー]
パブリッシャーを取り巻く環境は近年大きく変化し、これまでの成功モデルが通用しにくくなる中で、メディア企業には新たな戦略が求められている。2026年Taboolaへ入社し、パブリッシャー戦略推進部長に就任した安藤 雄二氏は、約20年にわたりメディア業界の変化を最前線で見続けてきた。パブリッシャー、出版社、デジタルメディアなどで培った多様な経験をもとに、業界の現状と展望について聞いた。 (Sponsored by Taboola) ―自己紹介をお願いします。 Taboola Japan パブリッシャー戦略推進部長の安藤 雄二と申します。 AOL Japan日本法人のカントリー・マネージャー、Verizon Mediaの日本法人メディア事業の統括、朝日新聞出版でDXIP戦略本部長と社長補佐役の兼任など、これまで約20年、メディア業界で仕事をしてきました。今回縁があって入社したTaboola Japanでは、メディア側に携わってきた経験を活かして、クライアントとなるパブリッシャー企業との連携を推進していく役割を担います。 もともと私はデジタル業界の第一世代ではありませんが、インターネット広告が発展していく過程や、メディア企業が変化していく様子を現場で経験してきました。新しい技術が登場すると、既存のビジネスモデルも変わり、新たなチャンスも生まれます。そうした変化そのものに面白さを感じながら仕事を続けてきました。 ―長く携わってきた「メディア側」から「メディアを支援する側」に場を移されました。 Taboolaに入社を決めた理由の一つは、これまで培ってきた経験をより広い範囲で活かしたいと思ったこと、そしてそれを推進するためのテクノロジーを持っている会社であると思ったからです。 前職ではメディア企業の「内側」で事業改革やデジタル活用を進めてきました。その中で、自分がメディア側で培ってきた知見を、パブリッシャーの「外側」から活かすことで、業界全体と向き合うことができるのでは、と考えるようになりました。パブリッシャー側がテクノロジーやプロダクトを活用する手助けをし、メディア業界の発展に貢献したいと思っています。 Taboolaは広告収益の最適化だけではなく、コンテンツレコメンデーションやユーザーエンゲージメントの向上など、パブリッシャーが抱えるさまざまな課題に向き合うためのテクノロジーを持っています。長年メディア側で仕事をしてきたからこそ、パブリッシャーが求める理想やこだわり、一方でビジネスサイドでの葛藤などは大いに理解できます。自分なりの切り口で支援していきたいですね。 広告依存ではなく、メディアブランドの価値が収益を作る ―約20年、オンライン広告販売の成長とともにパブリッシャーの変化を見てこられました。その歴史をどのように振り返りますか。 私はアメリカの専門メディアから業界に入りました。雑誌や新聞といった紙媒体の勢いがあった時代に比べると、私が入った頃はバナー広告が売れていて、記事タイアップといったものがでてきていました。その後、アドネットワークが登場し、さらにプログラマティック広告へと進化していったことで、広告の売り方も大きく変わりました。 ただ、パブリッシャーの視点から見ると、プログラマティック広告だけで十分な収益を確保することは簡単ではなく、デジタル広告プラットフォーム側は景気がよくなっていく一方で、その進化に対応できるメディアは多くありません。特に専門メディアはコンテンツ制作コストが高く、広告収益だけでは事業が成立しにくい構造があります。 その結果、多くのメディアが広告以外の収益源を模索するようになりました。サブスクリプション、イベント、コミュニティ運営、リサーチ事業など、多角的な収益モデルへの挑戦が進んでいます。 私自身、イベント事業に長く携わってきましたが、そこで実感したのは「メディアブランドの価値」です。広告だけでは差別化が難しくなっても、長年積み上げた信頼やブランドがあれば、人を集めたり、新たな事業を立ち上げたりすることができます。かつて携わったイベントでは、チケットを購入してくれる参加者が集まり、スポンサー企業や登壇者からも高い評価をいただきました。それを実現できたのは、イベント単体ではなく、その背景にあるメディアブランドへの信頼があったからだと思います。 メディアが積み上げてきた歴史や信頼があることで、取材対象者が取材を受けてくれるか、ということにもつながってきます。 メディア企業にとって本当に重要なのは、ブランドそのものなのではないかと思います。長い時間をかけて築き上げてきた信頼や専門性こそが、これからの事業成長の源泉になるのではないでしょうか。 AI時代に問われる、パブリッシャーの変革力 ―収益源が多様化する中で、パブリッシャーの現状と課題を教えてください。 収益環境の厳しさはもちろんですが、それ以上に重要なのはマインドセットの変革だと思っています。 もちろん現状に対して多くの方が危機感は持っています。ただ、その危機感が組織全体で共有され、本当の意味で「自分事」になっているかというと、そうではないケースも少なくありません。 歴史の長いメディア企業では、従来の成功体験があるからこそ変化が難しくなることがあり、「これまでうまくいっていたやり方」が強いほど、新しいことへの挑戦には抵抗が生まれます。だからこそ、経営層だけではなく現場も含めて、変化を前提とした組織づくりが必要になっているのではないでしょうか。 デジタルメディアでは、AIオーバービューの登場により検索流入からトラフィックが取れなくなっており、メディアは新しいマネタイズの方法を考えなければなりません。トラフィックの流入量が大きく変わる中で、Taboolaではほかの流通経路の確保やユーザーのエンゲージメントを上げるための取組を進めています。「内側」の変革とともに、「外側」にある最新テクノロジーを取り入れてテコ入れをするというように、構造そのものを横断的に変えようとする人材も必要だと思います。 ―これまで外資と日本企業の両方でメディアに携わってこられました。海外と比較して日本のパブリッシャー特有の特徴はありますか。 外資と日本企業の大きな違いの一つは、新しい取り組みに対する意思決定のスピードです。外資系企業の場合、まず試してみて、うまくいかなければ修正・撤退するという考え方が比較的浸透しています。 一方、日本企業は関係者との調整を重視する傾向があります。そのため意思決定に時間がかかることもありますが、その分、組織としての一体感や再現性のある運営は得意です。 また、日本のパブリッシャーにはチームとして成果を出す文化があります。編集、営業、制作などが協力しながら一つの価値をつくる力は、日本企業の強みだと思います。 どちらが良い悪いではなく、それぞれに強みがあります。自社の強みを活かしつつ、どうやって収益を上げるか、記事作り以外でもビジネス開発していくマインドを育てることが大切だと感じます。 ―AI時代にパブリッシャーが事業を発展させるには、何が必要だと考えますか。 検索流入中心の時代は大きな転換点を迎える中で、素早く他社・他国の情報を察知できるか、ということが必要だと思います。 例えばアメリカのTaboolaでは、メディア自身に生成AIエンジンを組み込む仕組み(Deeper Dive)を展開しており、日本でも今後展開される予定です。こういった最新情報やテクノロジーをうまく使い、どうやって自分たちの強みを活かしてビジネスを展開していくかがキーになってくるのではないでしょうか。 もちろんSEOやAI最適化への取り組みは重要ですが、それだけで十分とは言えません。今後は「訪問者をいかにファン化するか」が非常に重要になります。 高品質なコンテンツ作りは前提として、そのうえでユーザーが何度も訪れたくなる仕組みや、エンゲージメントを高める体験設計が必要になります。コミュニティ、イベント、サブスクリプション、オンラインサロンなどが考えられます。リソースを使って試すためにも、経営層が先陣を切って行うか、そういった役回りの人を社内に配置するか、社外に頼るか、やり方はあると思います。 ―最後に今後の展望を教えてください。 テクノロジーを通じてパブリッシャーの課題を「外側」から解決していきたいと考えています。「内側」だけでは解決しきれない課題に、Taboolaのプロダクトを使って向き合うことはもちろん、ネットワーク作りなどあらゆる方面から向き合っていきたいです。 多くのパブリッシャーは共通の課題を抱えていますが、実践的な知見が共有される場は決して多くありません。Taboolaは数百社のパートナー企業と接点があるので、そのネットワークを活かし、情報交換や交流の機会を作り、業界のハブ的な存在になることができればよいなと思います。 メディア側で培った経験と、Taboolaが持つテクノロジーや知見を掛け合わせながら、業界の発展に貢献していきたいです。
Amazon Ads、Prime Videoの新広告フォーマットを発表ほか|ExchangeWire Japan YouTube第10回
ExchangeWire Japan編集部は9月14日、デジタル広告業界の主要ニュースを映像と音声で伝える動画の第10回をYouTubeで公開した。 目と耳でニュースに触れられる新しい形式として、継続シリーズでお届けする。 ■Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/@ExchangeWireJapan ▼【ニュース】Amazon Ads、Prime Videoの新広告フォーマットを発表ほか:ExchangeWire Japan(ExchangeWire Japan公式YouTubeチャンネル) 第10回となる今回の動画では、Amazon AdsによるPrime Videoを中心とした新広告フォーマットの発表を中心に取り上げている。 Amazon Adsは9月1日、東京でメディアラウンドテーブルを開催し、Amazon Ads Japanカントリーマネージャーのステファン・グルニエ氏が、Prime Videoを中心とした広告戦略と最新の広告フォーマットを発表した。新たに紹介されたのは、Prime Videoのストリーミングコンテンツ視聴中にリモコン操作で商品をカートに追加したり、詳しい情報を受け取ったりできる「インタラクティブ動画広告」で、すでに日本での提供を開始している。さらに、位置情報を活用して近隣店舗への来店を促す「ロケーションベースのインタラクティブ動画広告」と、ストリーミングコンテンツを一時停止した際に表示される「ポーズ広告」を、2026年第4四半期に日本でローンチする予定だ。Amazon Adsは、視聴から商品への関心、購買や来店までをシームレスにつなぐ広告体験の強化を進めていくとしている。 このほか、動画では以下のニュースを紹介している。 ソニー・ピクチャーズ テレビジョン:PS5向け無料広告付き配信サービス「Live TV on PS5」を米国で開始 ■URL:https://www.sonypictures.com/corp/press_releases/2026/0831?utm_source=chatgpt.com オトナル:ポッドキャストアドネットワークの配信可能な音声広告枠が月間2億を突破 ■プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000126.000035509.html サイバー・バズ:講談社ViVi事業部と共同運営するSNSメディア「MYPE」が開設1周年、累計再生回数2億回を突破 ■プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000159.000013256.html Meta:若者の安全をめぐり、米29州と最大180億ドルで和解 ■URL:https://techcrunch.com/2026/08/26/meta-settles-for-18-billion-in-lawsuit-brought-by-29-states-over-social-media-harms-to-children/ ぜひ目と耳でも、ExchangeWire Japanをご覧いただきたい。
Intent IQのIDソリューションはいかに機能するのか――CTOがひも解く独自技術の仕組み[インタビュー]
「プライバシー保護」と「ユーザー識別」という一見すると相矛盾した概念をいかに両立させるかはデジタル広告市場関係者にとって永遠の課題であろう。CEOへのインタビュー取材に続き、Intent IQがこの課題にいかに対応しているかについて、同社CTOに話を聞いた。 (Sponsored by Intent IQ) ユーザーを知らずに識別する仕組み ―自己紹介をお願いします。 イシャイ氏:Intent IQの最高技術責任者(CTO)を務めるドロール・ベン・イシャイです。第1号社員として参画して以来、当社の技術開発部門を管掌し、プライバシーを重視した拡張性の高いIDソリューションの開発に取り組んでいます。 シュブ氏:事業開発担当上級副社長のタミル・シュブです。 ―貴社が提供するIDソリューションの特徴を教えてください。 イシャイ氏:当社の分散型ID技術は非常に高い精度を持っています。複数のファーストパーティIDをクラスタリングすることによって、単一ユーザーのプロファイルを93%以上の精度で構成することが可能です。 また実装と統合が容易であり、同時に最高水準のプライバシーを維持しています。IDレス環境下で事業を営むパブリッシャーがIDソリューションを必要としていることは明らかですが、現行のインフラに容易に統合でき、また各市場固有のプライバシー関連法規制に則っていなければ実際に利用することができません。 さらに様々なID情報に対応したIDブリッジング製品となっていることも大きな特徴です。他の多くのIDソリューションは自社IDのみを取り扱っているのとは対照的に、当社は現在60種類以上の異なるIDに対応しています。 ―いわゆるIDレス環境下において、パブリッシャーはユーザーをどの程度まで識別できているのでしょうか。 イシャイ氏:単一のデバイスに限定したとしても、ユーザーは複数のブラウザをインストールし、各サイトと各アプリがそれぞれ固有のIDを発行し、また市場占有率の高いiOSは究極的なIDレスであるため、パブリッシャーがユーザーを識別することは相当に難しくなっています。 しかもユーザーは勤め先のデスクトップPC、CTV、その他の家庭用機器など複数の端末を使いこなしています。Intent IQのようなソリューションがなければ、広告主は異なる端末、ブラウザ、アプリのユーザーをそれぞれ別人と見なすような一元的なコミュニケーションしかとることができない状況です。 ―貴社のユーザー識別技術の仕組みを教えてください。 イシャイ氏:コンサート会場に行って、クロークに上着やカバンを預ける場面を思い浮かべてください。その時にあなたは荷物番号を受け取りますが、名前を名乗る必要はないですよね。当社でも同様にユーザーごとに異なる番号ないし識別子を割り振ることでプライバシーを最大限に尊重しながらユーザーを識別しています。 そして、機械学習やグラフ理論を駆使して、それぞれの識別子をグループ化し、端末、ユーザー、そして世帯ごとに紐づけます。つまり大量の信号をまとめあげることで、異なるID同士を接続し、ユーザーの氏名や素性を知らずとも、各ユーザーのプロファイルを構成することを可能にしています。 推定データを決定論的データで答え合わせ ―ユーザー識別の精度を高めるためにどのような工夫をしているのでしょうか。 イシャイ氏:一定規模のオンライン広告枠を自ら買い付けた上で自社ソリューションの推定結果の審査を日々行いながら、推定データを決定論的に確定させています。 例えばユーザーがアプリ内広告をクリックするとSafariが開きますよね。その際に広告の入札者は、推定データとしてよく使われるIPアドレスやユーザーエージェントなどと一緒に、決定論的デバイスIDを取得します。そしてここからが重要なのですが、取得した決定論的デバイスIDは一旦脇に置いておき、その他の推定データのみを当社のAPIに送信してユーザー識別をした後で、決定論的デバイスIDで答え合わせをするのです。 このような方式で毎日400万サンプルをテストして、そのうち380万サンプルで正答を得ることができれば精度は95%前後になるというわけです。 ―貴社ソリューションを実装後、パブリッシャーはどのような変化を期待できますか。 イシャイ氏:多くの場合、フィルレートが大きく向上します。例えば一つのページに8つの広告枠を設けていたとしても、下部枠はほとんど埋まらないという場合に、この空枠が埋まるようになります。 また広告の買い手が求めるオーディエンスとの一致率が高まるのでCPMが増加します。さらに関連性の高い広告が表示されるようになるので、ユーザーのエンゲージメント率が高まり、パブリッシャーに対するDSPのスコアリングが向上するでしょう。 ―ユーザーのプライバシーはどのように保護していますか。 イシャイ氏:当社は、ユーザーがウェブサイトを訪れた際に表示されるCookie取得の同意管理ポップアップで選択した内容をコード化したTCFトークンを米国のパブリッシャーからPrebidの入札環境で自動収集する機能を実装しています。またグローバル市場においては、データ取得時に同意管理プラットフォーム(CMP)ベンダーが宣言した個人データの用途を実際にユーザーが送信した情報と照合し、一致した場合のみそのデータを広告配信に活用しています。たとえユーザー本人からの承諾を得たとしても、DSPやSSPの承認が得られなければデータは同期しません。 ―「グローバル市場においては」と仰いましたが、日本市場では事情が異なるのでしょうか。 イシャイ氏:GDPRとは異なる法制度を持つ日本市場では、プライバシー対応の実務運用にも違いがあります。欧州ではCMPを通じた明示的な同意管理が重視される一方、日本ではパブリッシャー側がプライバシーポリシーや通知を通じてユーザーへの説明責任を担い、オプトアウト手段を提供する形が一般的です。 そのため、日本市場ではパブリッシャー側が、ユーザーへの通知やプライバシーポリシー上の開示、オプトアウト導線の整備などを行っていただくことを必ずお願いしています。 当社としても、各市場の法規制や業界ガイドラインに準拠しながら、パブリッシャーが適切なプライバシー対応を行えるよう設計しています。また、ユーザーがデータ利用を希望しない場合には、オプトアウトできる仕組みを提供しています。 いずれにせよ、当社は世界中のあらゆる同意取得方式に対応し、同意が得られない場合は広告配信にはユーザー情報を一切使用しません。 ―パブリッシャーは貴社ソリューションをどのように実装するのですか。 イシャイ氏:最も簡単なのがPrebidで、Prebidのチェックボックスをオンにし、当社から提供された認証情報を設定するだけで即座に当社ソリューションの利用を開始できます。またパブリッシャーが当社ソリューションをカスタマイズして利用したい場合は独自のJavaScriptやSDKを統合していただくことになります。またSSPのような大規模な事業者向けには、最も堅牢なAPI経由のサーバーサイド統合をご案内しています。 ―貴社ソリューションと他のIDソリューションを組み合せて使うこともできますか。 イシャイ氏:パブリッシャーがすでに他のソリューションを持っている場合、当社のIDが追加で配置されることになります。つまり、他のIDを上書きすることはありません。複数の異なるIDをまとめ上げることができるというのが当社技術の特徴となっています。 シュブ氏:オンライン広告の技術標準を策定するInteractive Advertising Bureau(IAB)が定めたルールに則り、パラメータを通じてIntent IQのIDであることを明示しているので、SSPまたはDSPは利用の有無を選択できる環境が整備されています。 イシャイ氏:なお、この機能はOpen RTBのバージョン2.6でサポートされています。 ―日本のパブリッシャーとはどのように関係構築を行っていきたいと考えていますか。 イシャイ氏:当社のソリューションはフランス、英国、スペイン、ドイツ、米国、カナダ、そして日本など世界中で導入されており、その配信規模は現時点で1カ月あたり1200億インプレッション、今年末までには2000億インプレッションに達する見込みです。 中には10年以上にわたり当社ソリューションをご利用いただいているパブリッシャーがいます。信頼と安定性が重視される日本市場においても、パブリッシャーの皆様と長期にわたるパートナーシップを構築することができたらと願っています。 シュブ氏:そこで当社は日本市場への投資を本格化することを決定し、半年前には東京にデータセンターを開設したばかりです。 イシャイ氏:東京にデータセンターを開設したことで、日本のユーザーのブラウザがIntent IQのIDをキャッシュしてデータセンターと往復する際にかかる時間を90%削減することができました。広告リクエストという極めて限定的なプロセスの中のさらにごく一部を改善するために当社が大きな投資を行っているという事実が、当社の覚悟を物語っているかと思います。 これからも日本市場への投資を続けながら、パブリッシャーの皆様が抱える課題に取り組んでいきます。
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