「見られない広告」への投資をどう見直すか――アテンション計測は広告投資の意思決定を変えるのか【Lumen × UNICORNイベントレポート】
デジタル広告における「アテンション(注視)」計測の意義と実践を議論するイベント「アテンションが広告の価値を変える日 〜Lumen × UNICORNが描く、次世代広告の新基準〜」がLumen Research Ltd.、UNICORN株式会社共催のもと、3月9日にUNICORN株式会社の本社で開催された。 アテンション計測で知られるLumen Research Ltd.のCEO・Mike Follett(マイク・フォレット)氏が来日し、グローバルの最新動向を共有。UNICORN株式会社 代表取締役の山田翔氏による日本市場での計測事例の発表に加え、株式会社博報堂、楽天グループ株式会社の実務者を交えたパネルディスカッションも行われた。会場では、「ビューアビリティの先」にある広告評価の新たな基準をどう捉えるべきかが、多面的に議論された。 Attention Economy最前線――世界の広告は「どこを見ているのか」 登壇:Lumen Research Ltd CEO Mike Follett(マイク・フォレット)氏 「ビューアブル」であることは、「見られている」ことを意味しない 「人々は広告を無視するのが非常に上手い」――初来日を果たしたLumen Research CEOのマイク・フォレット氏は、こう切り出した。ニューヨーク・タイムズスクエアの広告群を例に挙げながら、数多くの広告が技術的にはビューアブルであっても、実際に生活者の視線を捉えているとは限らない現実を指摘した。 同氏が問題提起したのは、デジタル広告業界が長年依拠してきた「表示された広告には一定の価値がある」という前提である。MRCビューアビリティ基準は、広告が画面上に表示されたかどうかを把握する尺度として広く使われてきた。一方で、それはあくまで“Opportunity to See(見る機会)”を示すものであり、“実際に見られたかどうか”とは異なる。スマートフォン上での高速スクロールや、複数スクリーンをまたぐ同時接触が常態化した現在、このズレは以前より無視しにくくなっている。 2013年設立のLumenは、ウェブカメラを活用したアイトラッキング技術を通じて大規模なデータを収集し、デジタル、テレビ、映画館、屋外広告など、多様なメディアにおけるアテンションの実態を可視化してきた。同社のアプローチは、広告のサイズや表示環境、スキップ可否などの視認性に関わる要素をもとにアテンションを推定する点に特徴がある。フォレット氏は、こうしたアテンション計測が単なる研究領域にとどまらず、すでにグローバルではプランニングやバイイングの判断材料に加え、広告主のクリエイティブ最適化やキャンペーン全体の効果向上にも活用され、実装フェーズに入りつつあると説明した。 アテンションは成果とどう結びつくのか 講演の後半では、アテンションと広告成果の関係を示す複数のエビデンスが紹介された。ブランドリフト、CTR、利益との関係を分析した結果、アテンションが高い広告ほど、これらの成果指標とも正の関係を示す傾向が見られたという。ここでの重要な論点は、アテンションが単独の新指標として注目されているのではなく、従来から広告主が重視してきた成果指標を説明する手前の変数として機能しうる点にある。 とりわけブランド広告の文脈では、認知、検討、購入意向といった態度変容が、単に“配信された”ことではなく、“どの程度見られたか”と密接に関わっている可能性が示された。クリック率についても、ビューアビリティだけでは十分に説明できない差を、アテンションが補完する余地がある。フォレット氏は、こうした知見を踏まえ、「興味深いデータ」だったアテンションが「意思決定に使えるデータ」へと変わりつつあると語った。 紹介された事例の一つでは、米国Kiaがオープンウェブ広告において高アテンション在庫を活用し、コンバージョン率の改善を図ったケースが示された。また、ハイネケンやカールスバーグの事例では、ブランド広告やグローバルのメディアプランニングにアテンションデータを組み込む取り組みが進んでいることが共有された。これらは、アテンションが一部の先進的な実験ではなく、広告売買の現場に入り始めていることを示すものといえる。 広告主だけでなく、媒体価値の見方も変わる アテンション指標の広がりは、広告主や代理店の判断を変えるだけではない。パブリッシャーや媒体社にとっても、自社在庫の価値をどう説明するかという問題に直結する。これまでビューアビリティの高さが評価されてきた面でも、実際の注視が伴わなければ、広告価値の再評価を迫られる可能性があるためである。 逆にいえば、ユーザー体験を大きく損なわず、自然に視線を獲得できる面やフォーマットは、従来とは異なる観点から評価される余地がある。フォレット氏の講演は、「どれだけ配信されたか」から「どれだけ見られたか」へ、さらに「その注視がどんな成果につながるのか」へと、広告評価の軸が動き始めていることを改めて印象づける内容だった。 アテンションは広告の「何」を変えるのか――UNICORNが示す計測の意義 登壇:UNICORN株式会社 代表取締役 山田 翔氏 日本市場に横たわる「数字の罠」 UNICORN代表の山田翔氏は、日本のデジタル広告市場が抱える構造的な問題を「数字の罠」という言葉で表現した。ビューアビリティ、CTR、CPAといった数値は、広告運用の現場で日常的に参照されている。一方で、それらが良好に見えることと、広告がきちんと見られ、事業成果につながっていることとは必ずしも一致しない。そのギャップを可視化する必要があるというのが、山田氏の基本的な問題意識である。 同氏は、ディスプレイ広告や動画広告に対するアンケート結果を引きながら、広告が表示されても内容まで読まないユーザーが多い現状に言及した。日本のデジタル広告市場が大きく拡大するなかで、仮に相当量の広告が実際には見られていないのであれば、そこには小さくない機会損失が生じていることになる。山田氏は、こうした“表示されているが見られていない広告”の存在を、アドフラウドとは異なるかたちの損失として捉える必要があると指摘した。 Lumen連携で見えてきた、ビューアビリティとのズレ UNICORNはDSP事業者として、Lumenと連携し、プラットフォーム上の一部トラフィックを対象にアテンション傾向を分析している。山田氏が示したのは、ビューアビリティが高い広告面と、実際によく見られている広告面が必ずしも一致しないという点である。 具体例として紹介されたのが、下部固定型の横長広告枠と、記事内のレクタングル広告枠の比較である。ビューアブルレートでは前者が優位に見える一方、実際の視認率やアテンションベースの買い付け効率で見ると、後者が上回るケースがあったという。つまり、従来の指標だけで評価すると優秀に見えた在庫が、アテンションの観点では異なる評価を受ける可能性があるわけだ。 この話は、広告主にとっては投資先の再考を促すものとなる。代理店にとっては、CPMや到達量だけでなく、注視の質まで含めてプランニングを組み立てる必要が出てくる。さらにパブリッシャーにとっても、単に画面内に長くとどまる面を用意するだけでは評価されにくくなり、ユーザー体験と注視の両立が重要なテーマとして浮上する。 CTRだけでは見えない、クリエイティブ評価の限界 山田氏はまた、CTRという指標そのものの限界にも踏み込んだ。そもそも見られていない広告が相当数含まれる環境では、インプレッションを分母としたCTRだけでクリエイティブの良し悪しを判断するのは難しい。広告表現の力をより正確に見るには、“見られたうえでクリックされたか”を問う指標が必要になるというのである。 その文脈で提示されたのが、アテンションベースのCTR、すなわちACTRである。これは、広告が実際に視認されたことを前提にクリックの質を評価しようとする考え方であり、単なるクリック率よりも、クリエイティブや掲載面の真価を見極めやすくする。運用型広告の現場では、CTRのわずかな差が大きな意思決定につながることも多い。その意味で、ACTRの発想は、広告表現をよりフェアに評価するための補助線になりうる。 新しい指標は、また“ハック”されるのか 今回のセッションで印象的だったのは、山田氏がアテンション計測を手放しで礼賛しなかった点である。同氏は、ビューアビリティという指標が普及した後、そのスコアを高めやすい固定枠やワイプ枠などの、ユーザビリティを阻害するような広告枠が増えた歴史を振り返り、新たな指標が登場しても同様のことは起こりうると警鐘を鳴らした。 たとえば、閉じるボタンが見つけにくいフルスクリーン広告では、ユーザーが離脱しようとして視線を動かすことで、結果的にアテンションスコアが押し上がる可能性もある。数字の上では注視されていても、それがユーザーにとって望ましい広告体験とは限らない。山田氏は、アテンションを測るだけでなく、「その注視はどのように生まれたのか」まで見なければならないと強調した。 新しい指標が登場するたび、業界はその数値を最適化しようとする。その流れ自体は自然である。しかし、最適化の結果がユーザー体験の悪化を招くなら、それは長期的に広告価値を毀損しかねない。山田氏が最後に語った「数字だけを見るのをやめましょう」という言葉は、アテンション時代においてこそ重みを持つ提言だった。 パネルディスカッション:何を根拠に広告に投資すべきか モデレーター:UNICORN株式会社 高橋 香名氏 ゲスト:株式会社博報堂 宮﨑 雅子氏、楽天グループ株式会社 李 侑皇氏 広告主・代理店・事業会社が感じる「レポート上の数字」への違和感 パネルディスカッションでは、代理店、事業会社、プラットフォームという異なる立場から、アテンション指標の実務的な使いどころが議論された。共通していたのは、従来の管理画面上の数字だけでは、広告投資の妥当性を十分に説明しきれなくなっているという認識である。 博報堂の宮﨑雅子氏は、マルチデバイス、マルチスクリーン環境が当たり前となった現在、広告主の間でも「表示されたこと」と「見られたこと」を切り分けて考える必要性が高まっていると指摘した。かつては「安く、広く、リーチできた」こと自体が一定の説明力を持っていた。しかし足元では、それだけでは本質的な広告効果を捉えにくくなっている。アテンションは、そのギャップを埋める追加的な説明変数として注目されているという。 一方、楽天グループでラクマのユーザー獲得を担う李侑皇氏は、事業会社ならではの視点から、管理画面上の獲得効率と事業全体の増分効果が一致しないケースについて語った。広告停止時にオーガニック流入が増えるような挙動が見られたことから、媒体上では成果が良く見えても、事業全体では新たな需要を生み出していない可能性があったという。分析を進めると、オーバーレイ枠中心の配信では、オーガニックCVを広告によるCVとして計測されていた可能性が示唆された一方、インフィードやインライン中心の媒体では異なる傾向が見られたと共有された。 ブランディングの評価軸として、アテンションは使えるのか 宮﨑氏は、Lumenの計測を活用したブランド広告の実証事例についても言及した。注視時間とブランドリフトの間には正の関係が見られ、注視時間が長くなるほど、ブランドへの好意や認知などの指標も高まる傾向が確認されているという。この知見の実務的な意味は大きい。なぜなら、従来のブランディング施策では、事後調査が出るまで効果を評価しづらかったからである。 アテンションを中間指標として見ることで、キャンペーン期間中でも一定のPDCAを回しやすくなる。さらに宮﨑氏は、同一条件・同一予算で複数のクリエイティブフォーマットを比較した事例にも触れた。そこでは、注視時間が長いフォーマットほどブランドリフトとの親和性が高く、一方で注視時間が相対的に短いフォーマットはCPA効率に優れる傾向が見られたという。重要なのは、どちらが優れているかではなく、目的に応じて使い分けるべきだという点である。 この考え方は、広告主と代理店の関係にも変化をもたらす。単に配信量を確保するのではなく、キャンペーンの目的に照らして、どの接触がどの成果に結びつきやすいかを説明することが求められるようになるからだ。アテンションは、その共通言語になりうる。 オンオフ統合とインクリメンタリティ、その先の課題 議論の終盤では、アテンション計測をオンライン・オフライン横断で扱うニーズにも話題が及んだ。宮﨑氏は、テレビとデジタルでは1インプレッションの価値や接触の意味が異なるため、単純な統一指標化は容易ではないとしつつも、それを望む広告主が多い現状を語った。もしテレビ、オンライン動画、ソーシャル、オープンウェブなどを横断して、どれだけ注意を獲得し、どれだけ記憶形成に寄与したかを比較できるなら、メディアプランニングは大きく変わる可能性がある。 李氏もまた、流行する手法や指標は次々に現れるが、最終的に重視すべきなのは、自社の事業成長を最も正確に示すデータとツールを見極めることだと語った。広告主にとって重要なのは、新しい言葉を採用することではなく、増分効果に結びつく判断材料を持つことである。アテンションはその有力候補ではあるものの、万能の解ではない。だからこそ、MMMやブランドリフト、媒体別の成果検証などと組み合わせながら、実務に耐える形へと落とし込んでいく必要がある。 「伝わること」に立ち返るための指標としてのアテンション 本イベントを通じて浮かび上がったのは、デジタル広告業界が長年重視してきた「ビューアビリティ」「インプレッション」「CTR」といった指標の限界と、それを補完しうるアテンション計測の可能性である。Lumenのグローバル事例は、アテンションがブランド成果やクリック、利益と一定の関係を持ちうることを示した。UNICORNの日本市場における分析は、ビューアビリティが高くても、実際には十分に見られていない広告が存在することを可視化した。 その一方で、山田氏が指摘したように、新しい指標が登場するたびに、それを“ハック”する動きが生まれてきたことも業界は忘れるべきではない。アテンション計測が広告投資の意思決定を真に変えるには、単に数値を追うのではなく、その背後にあるユーザー体験の質まで問い続ける必要がある。加えて、デジタル広告テクノロジー領域のコンサルティング会社であるGlobalive株式会社の梅野氏によれば、グローバルではアテンションとブランドリフト調査(BLS)を組み合わせ、必要接触量の最適化、さらには短期記憶・長期記憶までを設計する活用への関心が高まっているという。 閉会にあたり山田氏は、デジタル広告をより良いものにしたいと考える人々が集まっていること自体に意味があると語った。広告主、代理店、パブリッシャー、アドテクノロジー事業者――それぞれの立場から、「見られていない広告に投資し続ける」という構造をどう見直すか。その問いに対し、アテンションはひとつの有力な座標軸になりつつある。もっとも、それが業界標準として定着するかはまだこれからである。それでも本イベントは、日本市場が“表示されたか”ではなく“本当に見られ、どう効いたか”を問う段階に入り始めたことを示す場だった。
モビリティ広告(アドトラック)、広告到達率56.4%・広告関心度61.8%を記録 ohpnerが広告効果調査結果を発表
オフラインマーケティング事業を展開するohpner株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:土井 健、以下 ohpner)は、街中を走行するモビリティ広告(アドトラック)の広告効果に関する調査結果を発表した。広告到達率56.4%・広告関心度61.8%を記録し、広告認知者の購買検討度は非認知者と比較して約8.1倍に上昇することが明らかになった。 デジタル広告飽和時代におけるオフライン接触の重要性 近年、デジタル広告市場の拡大に伴い、生活者が日常的に接触する広告量は増加を続けている。一方で、広告接触機会の増加によって、広告そのものが流されやすくなり、生活者にしっかりと認知・記憶される広告体験をどのように生み出すかが、マーケティングにおける重要な課題となっている。 そうした中、モビリティ広告は街中や都市部の生活導線上で自然な広告接触を生み出せる媒体として活用が広がっている。特に、大型ポスターラッピングや音を活用した演出によって、一般的な屋外広告とは異なる強い接触体験を生み出せる点が特徴だ。 しかし実際に、「どの程度広告が認知されているのか」「認知だけでなく、その後の興味関心や利用・購買検討にどのような影響を与えているのか」といった広告効果に関する定量的なデータは、十分に可視化されていなかった。 こうした背景のもと、ohpnerは今回の調査において、モビリティ広告の広告到達率・広告関心度・利用/購買検討度に加え、広告接触が認知や興味関心に与える影響、モビリティ広告に対する印象について調査・分析を実施した。 モビリティ広告の広告効果を定量的に検証 【調査の実施概要】 調査対象:東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県在住の男女 年齢:20歳~49歳 調査方法:インターネットリサーチ(スクリーニング+本調査一体型調査) 調査実施日:2026年2月13日〜2月18日 回収数:3978s 対象条件:新宿、渋谷、池袋、秋葉原、丸の内、原宿、表参道、銀座、六本木、赤坂、新橋、横浜のいずれからのエリアに週1回以上訪問する生活者 対象広告:当該エリアを実際に走行したモビリティ広告5件 調査会社:株式会社クロス・マーケティング 広告到達率56.4%、広告関心度61.8%を記録 街中でのリアル接触が高い認知率と興味関心・購買検討を実現 調査の結果、対象エリアを走行する広告トラックを「街中で確かに見た」は、33.7%、「見た気がする」は22.7%となり、モビリティ広告(アドトラック)の広告到達率は56.4%を記録した。 また、広告接触後の商品・サービスについて、「関心がある」「やや関心がある」と回答した人は61.8%、「利用/購買を検討したい」「やや検討したい」と回答した人も55.7%となり、半数以上が広告を認知しているという結果に加え、商品・サービスへの関心喚起や利用/購買検討においても高い数値が確認できた。 公告認知者は非認知者に比べ購買検討度が約8.1倍に上昇 広告接触の有無による差異を分析した結果、以下の顕著な格差が明らかになった。 商品認知:約4.7倍上昇 商品興味:約5.1倍上昇 購買検討:約8.1倍上昇 なかでも購買検討における約8.1倍という数値は、モビリティ広告が単なる認知獲得にとどまらず、購買行動の後押しにまで大きな影響を与えることを示す顕著な結果である。 モビリティ広告が与える生活者の印象 調査では、モビリティ広告に接した生活者から多様なコメントが寄せられた。視認性・ビジュアル・SNS拡散という3つの観点で印象が形成されていることが読み取れる。 【視認性】 「ぼーっとしている時に無意識に入ってくる」(30代・神奈川県) 「何気なく見た広告が記憶に残るケースが多い」(50代・神奈川県) 【ビジュアル】 「音と一緒にキャッチコピーやカラフルな広告が流れてくるので印象に残る」(30代・東京都) 「大型トラックの側面を使っているので面積が大きいし、大音声も伴っているから印象に残る」(50代・東京都) 【SNS拡散】 「推しが載っていると写真を撮ってSNSでも見るから印象に残る」(20代・東京都) 「友達と出かけている時などに通り過ぎると話題になるので印象に残りやすい」(40代・東京都) このように、モビリティ広告は単なる視覚認知にとどまらず、街中での偶発的な接触・音とビジュアルによる記憶固定・SNSでの拡散やコミュニケーションへの波及などを通じて、生活者の印象形成に繋がっている可能性が示された。 モビリティ広告とohpnerのサービスについて モビリティ広告(アドトラック)とは モビリティ広告は、4トン大型車両を活用し、トラック荷台の大規模な広告面と音声によって訴求を行う屋外広告である。人通りの多い繁華街やビジネス街を走行することで高い視認性と存在感を活かした広告体験を生み出す。また、街中で継続的に接触機会を創出できる点も特徴であり、都市部を中心に幅広い生活者への認知形成に繋がる。走行エリア設計やクリエイティブ表現だけでなく、ポスター施工品質や運行管理体制によって広告効果や生活者からの印象が大きく左右される媒体でもある。 ohpnerのモビリティ広告支援 ohpnerでは、媒体社としての運用だけでなく、広告主の目的やターゲットに応じたプランニング、クリエイティブ制作、他のオフライン広告媒体も含めた複合的な施策設計まで一貫して対応している。タクシー広告をはじめとした各種オフライン広告媒体と組み合わせることで、街中での複合接点を生み出す施策設計も可能である。戦略設計から実行まで一貫した支援を行い、モビリティ広告を事業成長に繋がるオフラインマーケティング施策として提供している。 ■ohpner株式会社について ohpnerは、オフライン広告とマーケティングコンサルティングを通じて、顧客の事業成長を支援している。モビリティ広告(アドトラック)、タクシー広告、交通広告、その他OOHなどのメディア選定から、クリエイティブ制作、広告配信、効果測定まで、トータルなマーケティングソリューションを提供している。 ・モビリティ広告(アドトラック)詳細 ・アドトラックをモビリティ広告へ再定義した理由 ■プレスリリース:https://ohpner.com/news/20260511
StackAdapt、ChatGPT広告パイロットへの早期アクセス提供を開始
StackAdapt(本社:カナダ・トロント、CEO:Vitaly Pecherskiy、以下「StackAdapt」)は2026年5月5日(米国東部夏時間/EDT)、広告主向けにChatGPT内広告へのアクセスを試験的に提供開始したと発表した。会話型AIが消費者の情報収集・比較検討・意思決定プロセスに組み込まれつつあるなか、StackAdaptはテクノロジーパートナーとして、広告主がこの新たなチャネルでテストと学習を行える環境を提供している。 会話型AIを新たなマーケティングチャネルへ 消費者の情報収集行動は急速に変化しており、ChatGPTは製品リサーチや選択肢の比較における出発点として利用されるようになっている。従来の検索行動やブラウジング行動を補完する形でAIを活用したリサーチが広がるなか、広告主にも戦略の進化が求められている。 StackAdaptは、こうした状況を「消費者が積極的に検討・比較を行う高インテント(購買意欲)の瞬間」として捉え、プログラマティック戦略をAI対話の場にまで拡張する機会として位置づけている。 ChatGPT広告パイロットの特徴 StackAdaptが提供する早期アクセスは、消費者が選択肢を検討・比較し、意思決定を下す過程において、適切なタイミングで有用なメッセージを届けることを目的としている。ChatGPT上の広告は、従来のアウェアネス型広告やローワーファネルのパフォーマンス型チャネルとは異なる特徴を持つ。 明確なラベル表示と回答からの分離:広告はChatGPTの回答とは明確に区別され、スポンサー表示などのラベルが付与された状態で表示される。 会話コンテキストに基づく表示:広告は、ユーザーの会話内容や関心の文脈に基づいて表示される仕組みとなっている。 これにより、広告主は次のような活用が可能となる。 消費者が積極的に商品やサービスを探索・比較しているタイミングへのリーチ リアルタイムの会話コンテキストに即したメッセージング配信 プログラマティック戦略を高インテントの瞬間へと拡張すること StackAdapt独自のアプローチ OpenAIが複数の購入経路をサポートするなか、StackAdaptはChatGPT広告のアクティベーションに対して、オーダーメイド型(bespoke)のアプローチを提供している。具体的には以下の4つの要素から成り立っている。 ① バーティカル(業種)特化 B2B、小売、CPG(消費財)、Eコマース、旅行、教育など多岐にわたる業種に関する知見を持ち、業種ごとに最適化された支援を行う。 ② クロスチャネル・オーケストレーション CTV(コネクテッドTV)、ディスプレイ、ネイティブ広告、パフォーマンスチャネルなど、複数チャネルにわたるアクティベーションを統合プラットフォーム上で一元管理できる。 ③ マネージドサービスとスケーラブルな実行 戦略的ガイダンス、クリエイティブ最適化、オペレーションサポートを通じてパフォーマンスの最大化を支援する。 ④ ブランドセーフティと品質管理 社内レビュー体制やインベントリー基準を通じて、広告メッセージが表示文脈に対して適切かつ関連性の高いものとなるよう支援する。 担当役員のコメント StackAdaptの共同創業者兼CTO(最高技術責任者)であるYang Han氏は、「会話型AIがカスタマージャーニーにおける新たなタッチポイントとして急速に台頭している」と指摘したうえで、「広告主がこうした瞬間に関連性高く参加し、AIを活用したより広範なマーケティング戦略に自然に組み込めるよう支援していく」考えを示した。 会話型AIを軸に、次世代マーケティングインフラの構築へ 会話型AIは、消費者が情報を収集し、選択肢を評価する方法において大きな変化をもたらしている。AIを活用したリサーチが従来の検索・ブラウジング行動を補完するなか、広告主には新たな消費者接点を前提とした戦略設計が求められている。 StackAdaptは、ChatGPT内広告とオムニチャネル実行、高度なコンテキスト戦略、AIドリブンな最適化を組み合わせることで、マーケターが意思決定の形成に影響を与える重要な瞬間に生活者へアプローチできる環境を提供していく方針である。 同社はテクノロジーパートナーとして、広告主の初期テストと学習を支援し、新たな広告チャネルの形成に貢献するフィードバックループを構築しながら、会話型AIを中心とした次世代マーケティングインフラの整備を推進していく。 【注釈】 StackAdaptの早期アクセス用ランディングページ(※1)によると、StackAdapt経由のChatGPT広告は、本稿執筆時点で、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのユーザーを対象とした限定的なロールアウトとなっている。 一方、OpenAIは2026年5月7日の更新(※2)で、今後数週間のうちにChatGPT広告パイロットを英国、メキシコ、ブラジル、日本、韓国にも拡大予定であると発表した。これにより、ChatGPT内広告の地域展開は段階的に拡大する見通しだが、StackAdapt経由での提供対象地域や実施条件については、同社およびOpenAIの最新案内に基づいて確認する必要がある。 ※1:StackAdapt「Run Ads in ChatGPT with StackAdapt Early Access」 ※2:OpenAI「Testing ads in ChatGPT」(2026年5月7日更新) ■プレスリリースURL:https://www.businesswire.com/news/home/20260505143235/en/StackAdapt-Announces-AI-Powered-Marketing-Capabilities-Through-Ads-in-ChatGPT-Pilot
ジーニー、「GENIEE DSP」に名刺アプリ「Eight」のデータを連携――決裁者へのBtoB広告配信の精度向上を実現
株式会社ジーニー(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:工藤 智昭、以下 ジーニー)は2026年4月27日 、同社が提供するDSP「GENIEE DSP」において、Sansan株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:寺田 親弘、以下 Sansan)が運営する名刺アプリ「Eight」のBtoBセグメントデータ・属性データとの連携を開始したと発表した。本連携により、役職・職種を指定した決裁者への精度の高いターゲティング配信が可能となる。 決裁者リーチの難しさというBtoBマーケティングの課題 近年、BtoBマーケティングにおけるデジタル活用の重要性が高まっている。一方で、「リードは獲得できるものの、実際の商談や受注につながりにくい」という課題を抱える企業が増加している。 BtoBの購買プロセスにおいては、現場担当者だけでなく、社内稟議の鍵を握る決裁者(経営層や部長職以上)の認知と理解を得ることが不可欠である。しかし、一般的なWeb広告では特定の役職者に絞り込んだ精度の高いアプローチが難しく、決裁者へダイレクトに情報を届けることには大きなハードルがあった。 こうした課題を解決し、BtoB企業の成約に直結するマーケティング支援を目的として、「GENIEE DSP」は名刺アプリ「Eight」が保有するビジネスデータとの連携に踏み切った。 「Eight」のビジネスデータが実現する2つの機能 役職・職種を指定した決裁者へのダイレクト訴求 本連携の第一の特徴は、「Eight」が保有するビジネスデータを活用することで、訴求内容に親和性の高いユーザー層への広告配信が可能になる点である。 「IT企業のマーケティング部門の決裁者(部長職以上)」や「特定の従業員規模の経営層」といった、BtoB企業が本当に情報を届けたい層に対して、正確な広告配信が実現する。従来の一般的なWeb広告では困難だった役職・職種単位の絞り込みを、Eightのビジネスデータが補完する形で可能にする。 リード獲得の効率化 第二の特徴は、広告配信の無駄を削減し、質の高いリード獲得に貢献する点である。 「GENIEE DSP」が保有する国内最大規模の広告在庫に対して、「Eight」の高精度なビジネスデータを掛け合わせることで、潜在層から顕在層まで幅広いビジネスパーソンへ最適なタイミングでのアプローチが可能となる。 リードの「量」ではなく「質」を高めることで、商談・受注につながるマーケティング活動の実現を目指す。 BtoB広告配信の精度向上と活用拡大へ 今回のデータ連携は、BtoB企業が長年課題としてきた「決裁者へのリーチ」という問題に対する、データドリブンな解決策の一つといえる。「GENIEE DSP」の広大な広告在庫と「Eight」のビジネスデータという両者の強みを組み合わせることで、単なるインプレッション数の拡大ではなく、商談・受注に結びつく質の高い広告活動の実現が期待される。 ジーニーは「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」というPurposeのもと、今後も広告主に向けたプラットフォームの機能拡充を推進していく方針である。 連携サービス紹介 名刺アプリ「Eight」について Eightは、出会いの価値を最大化するビジネスのための名刺アプリである。2012年の提供開始以来、400万人を超えるユーザーに利用されている。 スマートフォン一つで誰にでも簡単にデジタル名刺を渡すことができ、交換したデジタル名刺は昇進・異動・転職などの情報が自動で更新される。 こうした常に最新のビジネスデータが、今回のターゲティング精度を支える基盤となっている。 広告配信プラットフォーム「GENIEE DSP」について 「GENIEE DSP」は、広告主の利益を最大化するための広告買い付けプラットフォームである。 国内最大規模の広告在庫を保有する「GENIEE SSP」と連携することで、多様な買付手法やフォーマットで広告のパフォーマンスを最大化できることが特徴である。 今回のEightデータとの連携により、BtoBセグメントという新たなターゲティング軸が加わった形となる。 ■プレスリリースURL:https://geniee.co.jp/news/20260427-2/
店舗送客へのラストワンマイルにDOOHを。丸亀製麺・電通・LIVE BOARDによる効率的な広告プロモーション戦略とは【インタビュー】
丸亀製麺では2025年5月、全店舗で無料の薬味とトッピングに「わかめ」と「しび辛ラー油」の2種類が追加され、計8種類に増えた。8月からリマインドの目的で再度広告キャンペーンを展開。その際にLIVE BOARDマーケットプレイス(※1)に接続している媒体(DOOH)を活用し丸亀製麺の店舗周辺のスクリーンのみに限定した広告配信を実施した結果、同時期に広告配信をしたテレビ・デジタルなどの他のメディアと比較しても、来店効率において最も効率的な結果を残すことができた。 丸亀製麺と、広告プランニングを担当した株式会社電通、DOOHを運用・管理している株式会社 LIVE BOARDの担当者に、今回の取り組みを聞いた。 (Sponsored by LIVE BOARD) ※インタビュー出席者の名前・所属等は写真の右から次のとおり。 吉岡俊祐氏:株式会社 電通 第3マーケティング局 コネクションプランニング部 シニア・マーケティングディレクター 江田壮寿氏:株式会社 丸亀製麺 執行役員 兼 マーケティング本部長 間部徹氏:株式会社 丸亀製麺 マーケティング本部 エクスペリエンスデザイン部 部長 真能広大氏:株式会社 LIVE BOARD インサイト部 ディレクター KPIにリーチの最大化と来店効率を設定 ―自己紹介をお願いします。 江田氏:丸亀製麺のマス・デジタルなどのマーケティングコミュニケーション活動全体の実行・統括をしている江田と申します。 間部氏:私は丸亀製麺のマーケティングの中でも、顧客体験や接点といった、エクスペリエンスデザインを主軸に担当しています。また、データサイエンスなどの分析周りの担当もしております。 吉岡氏:電通でメディアプランニングを中心に担当しています。キャンペーン設計のほか、どのメディアの効率が良かったのかなど、分析も含めて全て請け負っています。丸亀製麺様とは、広告効果が良かった広告配信を活用していくと同時に、新しい展開にもチャレンジをしながら並走させていただいています。 真能氏:LIVE BOARDでインサイト部のディレクターをしている真能と申します。LIVE BOARDではNTTドコモの位置情報等のデータを活用しながら、クライアントの課題に対して、どのようなソリューションを提案できるかの検討や、効果検証の高度化に日々取り組んでいます。 ―今回の3社での取り組み概要(キャンペーン内容)について教えてください。 江田氏:丸亀製麺では2025年5月9日から、無料の薬味とトッピングにわかめとしび辛ラー油の2種を新たに追加しました。5月のリリース時にも大きなキャンペーンは実施していましたが、今回の取り組みはその3か月後となる8月に、消費者の方々へのリマインドとして、無料トッピングについての再キャンペーンをしたものとなります。 間部氏:メディア展開として、テレビCMは、2025年8月1日・2日の2日間で活用し、初動の認知を一気に立ち上げ、デジタルでは、リマインド告知の意味合いも含めリーチ拡大を狙った出稿を実施しました。 LIVE BOARDは特に、店舗周辺での来店直前リマインドを目的に出稿しました。掲出期間は2025年8月1日〜8月17日で、クリエイティブはTV素材をベースに、共通素材で展開しました。LIVE BOARDに関しては、音声がない状況でも訴求できるように、L字で字幕を入れ込んだクリエイティブと、通常字幕のクリエイティブの2パターンにチャレンジしています。 江田氏:なお、当社が定めるKPIとしては大きく2つあり、1つ目はリーチの最大化で、2つ目が実際にどのくらいの来店に寄与したかを示す来店効率です。これはアナログ・デジタルを問わず、広告配信をした全てのメディアに対して確認しております。 アナログ・デジタル問わず全ての広告効果を横並びで確認 ―丸亀製麺からの発注を受けて、電通やLIVE BOARDでは、どのようなことを考えていましたか。 吉岡氏:8月のキャンペーンはリマインドのため、5月のリリース時と比較すれば小さい予算で展開をしていましたので、本キャンペーンは効率的に伝えていくことは我々としても意識していました。 そのなかで、丸亀製麺様からは「新しい広告にもチャレンジをしていきましょう」とお声かけもいただいたので、当時はテレビ・デジタル以外にも様々なメニューにチャレンジをしていたのですが、そのなかでも5月の時には配信をしていなかった、LIVE BOARD Network(※2)を活用した配信で、とても良い結果が出ました。 真能氏:「丸亀製麺様の店舗から約500m圏内のDOOHをピックアップした配信が最後の一押しとなることで、店舗に立ち寄っていただきやすくなるだろう」と、我々の役割のイメージはとてもしやすかったかと思います。 LIVE BOARD側の経験としても、このような来店を促すキャンペーンは訴求する内容やクリエイティブにも大きな影響を受けると感じていたところでしたが、今回の丸亀製麺様の無料の薬味とトッピングの追加については、プランニング時から高い効果が得られそうだと感じていた記憶があります。 中長期的に継続して出稿できるメディアを重視 ―本プロモーションで特に重視されていたことは。 江田氏:冒頭にお話しをした2軸のKPIはありながらも、中長期的に継続して出稿できるかどうかという目線で、PDCAを回せることを重視していました。 我々としても人流データでトラッキングができるメディアには高いプライオリティを置いていますが、LIVE BOARDは効果が可視化できるため、それを見て今後につなげることが可能となっています。当社の需要にもマッチしており、テレビ・デジタル・DOOHといったトータルスクリーンの観点でも非常に面白い取り組みになるかと思いながら、会話させていただきました。 吉岡氏:リーチ計測においては、テレビとデジタルのリーチを、各媒体の到達をそれぞれ測定できるパネルデータを活用し、広告がターゲットにどれだけ到達しているかを電通のツール「MIERO Digi×TV」(ミエロ・デジテレ)を活用して正確に把握しようとしています。 来店計測においては、電通のオンオフ統合マーケティング基盤「STADIA360」も活用し、データクリーンルームと連携させて、各メディアの接触とその後の来店の増加を検証しています。他にも、今回は「unerry」 の位置情報のログデータを使い、①何時何分にDOOHで広告が流れたか②何時何分にDOOHの前を通ったか、の2つを掛け合わせることによって広告接触を追いました。 配信・分析などの対応が可能な配信プランをLIVE BOARD様としてもご用意いただいたうえで、我々に対しても、他のメディアとも横並びで比較可能になるようにデータを整理・加工いただくなどの協力もいただけたので、その点は私達としては非常に心強いですし、ありがたいと思いましたね。 ―来店の効果測定をするときに、LIVE BOARDとしてはどのように対応することが多いのでしょうか。 真能氏:1つ目はLIVE BOARDの内部だけで効果検証させていただくケースで、2つ目は今回のように代理店様と一緒に効果検証させていただくケースになります。 前者ではNTTドコモのデータ等を活用しながら、Wi-Fiやd払いのログなどを見ていくことで計測をしますが、LIVE BOARD単独では「他のメディアと比較してどうだったか」まで、対応しきれていないケースもございます。 今回は代理店様がお持ちの知見やリソースを活用いただきましたが、トータルスクリーン・プランニングに注力をしていくLIVE BOARDとしては、横並びで効果を可視化したうえで非常に良い結果が出せたことの意味は大きいと思っています。 DOOHが最も良い配信効率を生み出し来客数も増加 ―改めて、効果計測の設計と結果についてお話をお願いします。 吉岡氏:基本的には広告接触をすることで来店の純増がどれだけ増えたかどうか、という分析をしています。また、その人たちがもし広告にあたっていなかったらどれぐらいの確率で来店していたかを類推で出すこともしています。 この比較はテレビもデジタルもDOOHも同じやり方・目線で計測させていただいていますが、LIVE BOARD様の広告効果が、本キャンペーンで活用したメディアの中でも1番良かったです。言い換えれば、インプ単価的にも非常に安価で態度変容の効率も良い結果となったので、非常に面白いし驚きもありましたね。 真能氏:吉岡様に同意する形とはなりますが、今回の結果は我々が今までやってきたキャンペーンと比較しても、とても良い結果が出ました。これは丸亀製麺様が元々持っていたブランドの強さと訴求内容を我々が更に引き出すことが出来たのではないかと振り返っています。 間部氏:丸亀製麺の実店舗で計測している来店データを見ても、LIVE [...]
LIVE BOARDの田中社長に聞く―「トータルスクリーン・プランニング」による次世代メディアの市場拡大【新社長インタビュー】
2026年2月2日、株式会社 LIVE BOARDの新しい代表取締役社長に田中 淳泰(たなか あつひろ)氏が就任した。同氏は2008年に電通に入社して以来17年間、一貫してテレビのタイム・スポット業務、デジタルでのブランディングから獲得案件まで、幅広いメディア業務に従事してきた。そうしたなか、デジタルOOH広告配信プラットフォームの運営をしてきたLIVE BOARDではテレビ×デジタル×DOOHでの統合展開を「トータルスクリーン・プランニング」として再定義し、注力方針に掲げている。 今回はテレビ×デジタル×DOOHを横断した次世代メディアの市場拡大に挑戦する田中氏に話を聞いた。 (Sponsored by LIVE BOARD) 広告の統合メディアプランニング需要が高まる ―自己紹介をお願いします。 2008年に電通に入社して以来、一貫してメディア部門に携わってきました。当初はテレビのタイム・スポット業務を担当していましたが、デジタルのブランディング・獲得案件についても電通デジタルへの出向を含めて幅広く経験し、直近の約6年間はOTTメディアを担当する動画業務推進部に所属していました。 その部署のメインミッションは、テレビとデジタルを横断した戦略設計からバイイング、効果検証までを一気通貫で行う「統合メディアプランニング」となりますが、私個人としてはテレビ・デジタルソリューションのキャリアを生かし、統合マーケティングダッシュボード「MIERO (ミエロ)」のソリューション開発・推進も担当してきました。 ―田中様が新社長に就任した経緯について教えてください。 テレビ×デジタル×DOOHを横断した統合メディアプランニングが市場で当たり前に受入れられる状態をLIVE BOARDが作り、拡大をさせていくために、私が培ってきた経験を生かしていくことがミッションだと捉えています。 広告主からは統合メディアプランニングが求められているなか、TVerやABEMA、InstagramやTikTokなどメディアの選択肢も広がっています。しかし、昨今のユーザーのテレビ離れに加え、デジタルにおいてもメディアの多様化が進んだ結果、広告主が届けたい情報をターゲットに届けるのが難しくなっています。そこで今後はDOOHやリテールメディアのように、ユーザーの外出中に広告を見せていくことも、統合メディアプランニングでは必ず必要になると考えています。 これまで私が培ってきた「テレビとデジタルの統合」における実践知やノウハウも最大限に生かしながら、LIVE BOARDが新たな市場を切り開いていきたいですね。 OOH業界で「メジャメントデータ」計測がスタート ―田中様はテレビとデジタルの動画領域市場のプロデュースやメディアプランニングに長年携わって来ました。田中社長から見た現在のDOOH市場についてはどのように見えていますか。 日本の総広告費の推移が105%前後で成長している中、OOH市場全体も同水準で成長しており、その成長を牽引しているのがDOOH市場の拡大です。一方で、テレビやデジタルの動画広告を合わせた動画市場全体(約2.7〜2.8兆円)から見ると、DOOHのシェアはまだ4%程度に留まっています。だからこそ、この4%を少しでも拡大させていく余地と可能性が大いにある市場だと捉えています。 ―DOOH市場の中で、LIVE BOARDはどのような役割を担っていると考えていますか。 これまでのOOHは、高い強制視認性や公共性、そして圧倒的なロケーションの力による「ブランド体験」や「話題化」といった、情緒的な価値を中心に評価されてきました。そのため、象徴的な媒体を指名して買い付ける手法が主流であり、それは現在も有効な戦略の一つです。DOOHにおいても同様で、インパクト媒体が大きく注目をされ、市場を牽引してきたと考えています。 また、LIVE BOARDも加盟している一般社団法人 日本OOHメジャメント協会にて、OOH広告の接触を統一指標で可視化する 「日本版OOHメジャメントデータ」計測が3月にスタートしています。 テレビやデジタル広告における「インプレッション」や「リーチ」のような、他メディアと横断して比較できる共通指標は長らく不在でした。その結果、統合的なメディアプランニングの検討土台において、OOHの投資対効果を定量的に証明することが難しく、予算が個別に切り出されてしまう、あるいは選定の選択肢から漏れてしまうといった課題を抱えていました。 この「指標の壁」を解消し、DOOHが持つ本来の広告価値を科学的に定義・証明していくこと。そして、デジタルとリアルの垣根をなくした柔軟な広告取引を実現すること。その使命を掲げ、日本で初めてインプレッションベースのプログラマティックDOOHを展開したのが、我々LIVE BOARDです。 DOOHが広告キャンペーンの加速・増幅装置の役割を果たす ―LIVE BOARDでは注力方針として「トータルスクリーン・プランニング」を掲げました。現在の市場環境の中で、この3つのメディアを統合して活用することの意義やメリットをどのように捉えていますか。 これまで、テレビ・デジタル・DOOHを統合するアプローチは一般的に「トリプルメディア」と言われており、当社でもそのように提唱してきましたが、LIVE BOARDでは新たに「トータルスクリーン・プランニング」として再定義することにいたしました。 DOOHは、テレビとデジタルという土台の上に「家の外での接点」として加わることで、広告キャンペーン全体を後押しし、投資対効果をさらに引き上げる「Campaign Accelerator(キャンペーンの加速・増幅装置)」の役割を果たすと考えています。また、メディアの多様化が進んでいるなか、DOOHが新聞や雑誌、リテールメディアなどと競合をしていくような、3番目争いをしていきたいわけではないという表明でもあります。特にリテールメディアについてはDOOHネットワークとの連携も進めば、広告のトップ・ミドル・ボトムファネルで全てを統合的にカバーしやすくなります。 その立ち位置を明確にしたうえで競合するのではなく、むしろ協調して広告効果を立てていく必要があると考え、我々はこの概念を新たに「トータルスクリーン・プランニング」と再定義しました。 ―「Campaign Accelerator」について、具体的なイメージを教えてください。 DOOHにはCampaign Acceleratorとして、大きく2つの機能があると考えています。 一つは「Incremental Reach Accelerator(リーチの増幅装置)」です。 テレビやデジタルに一定の予算を投下すると、後半になるにつれて新規リーチの獲得単価が高騰します。ここでDOOHを組み合わせることで、テレビ・デジタルだけでは取り切れなかった層へリーチを伸ばし、全体の効率曲線を崩すことなくリーチを最大化できます。 次に「 Perception Accelerator(認知の加速装置)」です。 テレビやデジタルで広告に接触しても態度変容に至らなかったターゲットを、家の外で再び捉えます。多面的な接触を生み出すことで、最後の最後まで認知形成を後押しし、結果的に1人あたりの認知獲得単価を効率化します。 ―トータルスクリーン(トリプルメディア)が特に効果的に働く案件と、注力していくためのアクションを教えてください。 テレビやデジタルに一定規模の予算を投下されているなかで、効率が悪化し始めたタイミングのキャンペーンでDOOHを組み合わせるのが特に効果的です。「広告を届けたい人に届ける」という点では、どの業種のクライアント様でもお使いいただけるかと考えています。 2026年は業界にとって「共通メジャメント元年」となりますので、今後のアクションとしてはまず、DOOHのインプレッション等の共通指標の浸透に全力を尽くすとともに、投資効果を含めた統合分析事例を増やしていきます。 LIVE BOARDがOOH・広告業界にイノベーションを起こす ―貴社の事業展望と今後の市場発展に期待することをお聞かせください。 LIVE BOARDは既存のOOHメディアからではなく、データとテクノロジーの会社であるNTTドコモグループを基盤にして生まれました。「トータルスクリーン・プランニング」や「Campaign Accelerator」もその一環となりますが、Instagramが写真・カメラの会社から生まれなかったように、OOH・広告業界へのイノベーションを起こしていくのがLIVE BOARDの果たすべき役割かと捉えています。 市場の動きとしては「メジャメント(測定指標)の統一」という歴史的転換点により、OOH全体が統合メディアプランニングの土台に乗ることを期待しており、そのうえでLIVE BOARDとしては、DOOHがインパクト重視の媒体にとどまらず、データドリブンな「トータルスクリーン・プランニング」の一部として常態化して組み込まれる未来を目指します。ステークホルダーの皆様と連携しながら新たな広告価値を証明し、日本の広告体験そのものを進化させていきたいと考えています。
日本の広告費、8兆円突破で構造転換が顕在化—電通・森永氏「歴史的転換期」、CARTA高松氏が示す“媒体構造の変質”
電通が発表した「2025年 日本の広告費」によると、日本の総広告費は前年比105.1%の8兆623億円と、4年連続で過去最高を更新した。 日本の総広告費の推移 出典:電通「2025年 日本の広告費」 インターネット広告費は4兆459億円に達し、マスコミ4媒体由来のデジタル広告費を合算したネット広告比率では50.2%と初めて半数を超え、日本の広告市場は明確に新たな局面に入った。 媒体別広告費 出典:電通「2025年 日本の広告費」 株式会社 電通 電通メディアイノベーションラボ 主任研究員 森永陸一郎氏(以下、森永氏)はこれを「歴史的な転換期」と位置づけ 、インターネット広告の詳細分析を担った株式会社 CARTA HOLDINGS リレーションマネジメント室 室長 高松 幹夫氏(以下、高松氏)は、動画とソーシャルの伸長による「広告の質的な変容」を浮き彫りにした。 「想定より早い」デジタルシフト。森永氏が語る構造変化の本質 株式会社 電通 電通メディアイノベーションラボ 主任研究員 森永陸一郎氏 インターネット広告が総広告費の約半分を占めるに至った点について、森永氏は「正直ちょっと早かった」と率直な所感を述べた 。コロナ禍以降のデジタル化の加速が寄与しているものの、その進展スピードは業界の想定を上回るものだった。森永氏はこの変化を、単なる媒体間の予算移動とは捉えていない。 「広告市場全体が構造変化を遂げたことが確認された2025年だった」 実際、マスコミ4媒体の広告費が383億円減少する一方で、インターネット広告費は3,942億円増加している。森永氏は、この差分は既存媒体からの単純なシフトではなく、従来「販売促進費」として広告統計の外にあった予算が、デジタル広告へ流入し「広告」として定義し直されている可能性を示唆した。 高松氏が分析する「インターネット広告媒体費」3つの核心 株式会社 CARTA HOLDINGS リレーションマネジメント室 室長 高松 幹夫氏 高松氏は、インターネット広告費の8割強を占める「インターネット広告媒体費(3兆3,093億円)」に焦点を当て、2025年のポイントとして以下の3点を挙げた。 インターネット広告媒体費の広告種別構成比 出典:CARTA HD/電通/電通デジタル/セプテーニ「2025年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」 1.動画広告がついに1兆円を突破 動画広告は前年比121.8%の1兆275億円となり、推定開始以降初めて、1兆円の大台に乗った。 高松氏はその内訳について、動画コンテンツ内で流れる「インストリーム広告(5,246億円)」と、SNSのフィード等で流れる「アウトストリーム広告(5,029億円)」がほぼ50%ずつ、拮抗しながら共に2桁成長している点を強調した 。広告が特定のフォーマットに偏ることなく、生活者のデジタル体験全体に浸透している実態を示している。 2.ソーシャル広告の“質的変容” ソーシャル広告は1兆3,067億円(前年比118.7%)と、市場全体の伸びを牽引している。 注目すべきは、そのプラットフォーム別構成比の変化だ。高松氏の分析によれば、SNS系が依然最大(42.1%)ではあるものの、最もシェアを伸ばしているのは「動画共有系(39.2%)」である 。若年層を中心に、広告が「情報」ではなく「ショート動画などのコンテンツ体験」として消費される傾向が強まっている。 3.AI検索と「ゼロクリック」への冷静な視点 AI検索の普及により、検索結果だけで満足しサイトを訪問しない「ゼロクリック現象」が議論されている。 しかし高松氏は、「現時点での影響はまだなかったのではないか」と冷静な分析を示す。検索連動型広告は依然として構成比トップを維持しており、AIとの親和性が低い分野では引き続き広告の優位性が保たれている 。ただし、2026年以降はAIのマネタイズ手法が確立されるため、「注視が必要な領域」であると付け加えた。 AIは「市場実装前夜」、一方で制作現場には地殻変動 AIの活用について高松氏は、「各社のマネタイズのやり方にはグラデーションがある」とし、本格的な市場形成は「まだ市場実装する前かなという状態」との認識を示した。 一方で、広告制作領域にはすでにAIの影響が現れ始めている。インターネット広告制作費は4,922億円(前年比104.0%)と伸長しているが、制作物数の増加に対して、単価の低下が懸念されている。森永氏・高松氏共に、生成AIによるクリエイティブ制作の自動化・効率化が、市場のコスト構造を変化させている可能性を指摘した。 2026年予測:成長は「調整局面」へ 2026年のインターネット広告媒体費について、高松氏は前年比108.3%(3兆5,840億円)との予測を提示した。 成長率が鈍化して見える点について高松氏は、これまで120%前後の成長を続けてきた動画広告の予測を114。7%に設定するなど、「不確実要素を考慮し、アグレッシブな読みを控えた」と解説。急成長フェーズから、市場規模に見合った「安定成長フェーズ」への移行を予感させる予測となった。 広告は「媒体」から「統合設計」の時代へ 今回の発表が示したのは、広告市場が単にデジタル化したという事実だけではない。森永氏が定義した「歴史的転換期」とは、デジタルが過半を占めることで、もはや「デジタルかリアルか」という議論が終わり、両者を前提とした「統合的な顧客体験の設計」が不可欠になったことを意味している。 高松氏が示した詳細なデータは、その設計の核が「動画」と「ソーシャル」にあり、そこに「AI」という未知の変数が加わろうとしている現状を鮮明に描き出している。
新団体APTIが始動――広告サプライチェーンの透明化は「実務の実装」から【APTI発足イベントレポート】
3月11日、広告取引の透明性向上を目指す新団体「APTI(Advertisers and Publishers Transparency Initiative)」の発足記念イベント「広告の健全さを、実務から。〜 APTI始動:広告業界の新しい第一歩 〜」が都内で開催された。 広告主・パブリッシャー・広告代理店・アドテクノロジー事業者の各レイヤーから参加者が一堂に会し、宮一良彦氏を軸とした単独セッションと、全プレイヤーが登壇するパネルディスカッションの二部構成で、業界が抱える構造課題と具体的な解決策が議論された。 運用の空白を埋める――ads.txt・sellers.jsonが機能不全に陥る理由 単独セッション「APTIとは何か? ― 活動内容と参画の意義」は、APTI共同代表であり、JIAAフェロー・米IAB Tech Labメンバーでもある宮一良彦氏を中心に進行し、後半では菊池満長氏(株式会社Shirofune 代表取締役)も加わる形で展開された。 宮一氏はまず、APTIの基本理念を「広告主・パブリッシャー・広告事業者がともに透明で信頼できる広告取引環境を整えるイニシアチブ」と定義した。単なる技術的な情報発信ではなく、価値観の共有と行動変容を通じて業界全体を動かしていく点を重視する姿勢が冒頭から強調された。 続いて提示されたのは、プログラマティック広告のサプライチェーンに横たわる構造的な問題である。 ads.txt(パブリッシャーが認定した広告販売者を明示するためのファイル)やsellers.json(SSP事業者が自社の販売経路情報を公開する仕組み)は、いずれも不正な広告取引を防ぐための国際標準として広く導入されている。 しかし現場の実態は異なる。記載ミスやメンテナンス不足が放置され、SSP側とパブリッシャー側の情報が整合していないケースが頻発しているのである。 こうした「放置」が積み重なると、広告主にとっては「なぜ自社の広告が特定の枠で買われないのか」が分からなくなり、パブリッシャーにとっては収益が適正な手数料体系のもとで流通しているかどうかすら確認できない状況に陥る。 宮一氏はニューヨーク・タイムズのサプライパス図を例に挙げ、取引経路が少数であれば関与者と責任の所在が明確になるが、日本の大手メディアサイトで同様の図を作成すると「どの線がどこに繋がっているか判別できない」ほど複雑化していると指摘した。 ある大手メディアの役員にこの図を見せたところ、自社の広告取引構造の複雑さに驚いたというエピソードも紹介され、経営層にすら実態が見えていない深刻さが浮き彫りになった。 技術仕様としては優れたads.txtやsellers.jsonも、人間が正しく運用しなければ本来の機能を発揮しない。この「運用の空白」をいかに埋めるかという問いが、APTI設立の出発点となっている。 実務に落とし込む仕掛け――3つの柱と4つのプロジェクト こうした課題に対し、APTIは3つの活動の柱を掲げる。 第1は「情報共有と可視化」であり、ツールやレポートを通じてサプライチェーンの現状を把握可能にする取り組みである。 第2は「相互支援と実践の場づくり」で、ワークショップやクロスレビュー、実証実験を通じた個社レベルの改善支援に踏み込む。 既存の業界団体では業界全体のガイドライン策定が主軸となり、個別企業への実装支援までは手が回らないことが多い。宮一氏は「どこも実務のサポートまで踏み込めていない」と指摘し、JAAやJIAA、JICDAQとの連携を前提としつつ、その隙間を埋める「補完的な存在」としてのAPTIの立ち位置を明確にした。 第3は「つながりと信頼の醸成」であり、現場担当者同士の横のつながりや海外団体との連携による情報流通を推進する方針である。 この3つの柱を具体化するものとして、APTIは発足と同時に4つのプロジェクトを始動させた。 1つ目は、自社メディアの透明性を診断できるツール「Transparency Toolkit(ttkit)」だ。 従来のads.txtバリデーターが表記エラーの指摘にとどまっていたのに対し、ttkitではsellers.jsonとの整合性チェック、サプライパスの深さ(ホップ数)分析、オープンデータを活用した広告価値のインサイトレポートまでを一元的に提供する。 さらに「オプティマイザー」機能では、不要なエントリーの特定やsellers.jsonとの不一致に対する修復案を段階的に提示し、リソースが限られたパブリッシャーでも無理なく改善を進められる設計となっている。 2つ目は「透明性月次レポート」だ。ttkitで収集した約9,000ドメイン以上のデータをもとに、日本のプログラマティック広告サプライチェーンの現状を定点観測する。 宮一氏は具体的なデータとして、ads.txt 1.1のオーナードメイン設定率がわずか8%にとどまっている実態を紹介し、業界全体の「健康状態」がいかに可視化されていないかを示した。また「ダークプーリングレポート」として、複数パブリッシャーの広告在庫を不透明な形で集約する行為の兆候を4つのシグナルで追跡する取り組みも含まれる。 SSP事業者にとっては耳の痛い内容となり得るが、「これが現状だ」という客観的なファクトを業界に示すことこそがAPTIの役割だと宮一氏は述べた。 3つ目は「IAB Standards」プロジェクト。IAB Tech Labが策定するads.txt、sellers.json、OpenRTBなどのグローバル標準仕様書を日本語に翻訳し、さらにMCPサーバーとして構築することで、ClaudeやChatGPTなどのLLMから仕様に関する質問を日本語で行える環境を整備した。 英語の仕様書を原文で読み込む負荷を下げると同時に、エビデンスに基づいた議論を可能にする狙いがある。 4つ目は「AdCP」と呼ばれる実践プログラムである。 将来的にDSPやSSPの管理画面を介さず、AIエージェント同士が対話して広告取引を行う世界の到来を見据え、関連する仕様やエージェンティック・フレームワークの議論を踏まえた取り組みとして紹介された。 パブリッシャーや広告事業者が仮想的な広告取引を体験できるモックサーバーのような環境も視野に入れており、杉原剛共同代表がIABのエージェンティック・アドバタイジング・グループのメンバーであることもこの活動の推進力となっている。 非プログラマティック領域への拡張――ダイレクト取引の再評価 セッション後半では、共同代表の菊池氏がAPTIの活動範囲をプログラマティック広告の枠を超えて拡張する構想を語った。 ダイレクト取引(非プログラマティック)は広告主とパブリッシャーの二者間で完結するため、構造的に透明性が高い。菊池氏は「プログラマティック広告の健全性を高めることに加え、非プログラマティックの取引量を増やすことで業界全体の透明性と健全性を底上げできる」と提起した。 パブリッシャーが自社のユーザーデータを活用して魅力的な広告商品を設計し、ダイレクト取引で広告主に提供するプロセスを確立していく構想である。まず少数の成功事例を積み上げてパターンを掴み、提案テンプレートやレポーティングの型を標準化して水平展開を図る。 菊池氏は「足の長い取り組みになるが、簡単ではないからこそ価値が生まれる」と述べ、長期的なプラットフォーム構築への決意を示した。宮一氏もこの構想に対し「AIエージェント時代にはプログラマティックと非プログラマティックの境界が曖昧になる」と補足し、双方のアプローチが不可欠である点を強調した。 広告主にとっては信頼できる出稿先の判断材料が増える可能性があり、パブリッシャーにとっては自社メディアの広告価値を可視化し訴求する手段となりうる。広告代理店にとってはエビデンスに基づく提案の基盤となり、アドテクノロジー事業者にとっては健全な取引環境の構築が自社プロダクトの差別化要因につながる可能性がある。 それぞれの立場に接点を持たせる設計こそが、APTIが「支えあい」を掲げる所以である。 イベントまとめ――実務起点の循環が拓く業界の構造変革 第2部のパネルディスカッションでは、ディップ株式会社の中村大亮氏(広告主)、株式会社 電通デジタルの青木亮氏(広告代理店)、日本経済新聞社の種村貴史氏(パブリッシャー)、UNICORN株式会社/株式会社アドウェイズの山田翔氏(広告事業者)が登壇し、モデレーターの杉原剛共同代表のもと各プレイヤーの課題が率直に共有された。 AIエージェントの普及による再ブラックボックス化への懸念、短期KPIと健全化施策のトレードオフ、「数字の1が本当に1なのか」を問い直すべきだという指摘など、議論は広告業界の構造的な問題の核心に迫るものとなった。 課題がサイロ化し、責任の所在が各プレイヤーに分散している現状が浮き彫りとなり、中立的に論点を翻訳して実務に落とし込む存在としてAPTIへの期待が集まった。 本イベント全体を通じて浮かび上がったのは、個社の努力だけでは乗り越えられない「構造的限界」の存在である。 透明性を高めれば短期的に収益が下がり、健全な取引を追求すれば不健全な競合に対して不利になる。この膠着を打破するためにAPTIが選んだアプローチは、ガイドラインを策定して上から降ろすのではなく、「まず使ってみる」実務起点のツールとプログラムを用意し、現場の改善を積み上げていくという方法論であった。 ツールで自社を診断し、ワークショップで改善を実践し、レポートで業界全体の動向を把握する。この循環を回し続けることが、APTIを既存の業界団体と差別化する最大の要素である。 広告は本来、優れたコンテンツの制作を支え、消費者に無料で情報を届けるための社会基盤である。その仕組みが歪んだまま放置されれば、生活者の広告離れはさらに加速し、オープンインターネット全体のエコシステムが揺らぎかねない。 技術標準の正しい運用という地道な一歩から始まるAPTIの挑戦は、広告業界全体の信頼を取り戻すための構造変革へとつながっていくはずだ。 上記のとおりAPTIではこの取り組みに賛同していただける広告業界各プレイヤーの入会を募集している。 参加希望の企業は以下の手順に従って、積極的に入会して欲しい。 ▼入会のご案内 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【入会申請の手順】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 会則をご確認ください APTI 会則(定款): https://apti.jp/APTI_Articles_of_Association_JA.pdf 会員ポータルに新規アカウント登録してください GoogleアカウントまたはMicrosoftアカウントでのログインが必要です。 はじめての方は、下記リンクより「Googleでログイン」または 「Microsoftでログイン」を選択すると、自動的に新規登録されます。 ログイン: https://apti.jp/login ログイン後、入会申請フォームよりお申し込みください 入会申請フォーム: https://apti.jp/join/apply ・登録の確認ができましたら、請求書を発行させていただきます(※)。 (※)現時点ではパブリッシャー、広告代理店、広告事業者が対象となります ・代表者会員登録後、御社メンバー(同一ドメインに限る)の方のご参加方法については、 APTIログインページ( https://apti.jp/login )より、それぞれメンバーの方が ご登録いただければ参加可能となりますので、ご周知をお願いいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
FLUX平田氏が明かす、恩師への「恩返し」から始まった、AI時代の次世代育成[インタビュー]
左から株式会社FLUX インターン 宮本 遥樹氏、株式会社FLUX 取締役CPO 平田 慎乃輔氏、株式会社FLUX インターン 新井 穂高氏 デジタルマーケティングの事業から始まり、現在はAIコンサルティングから人材紹介まで幅広く手掛ける株式会社FLUX。急速な成長を遂げている同社を率いる平田氏が、かつての恩師たちの子息をインターンとして受け入れた背景には、起業家としての「原点」とも言える深い絆があった。 (聞き手:ExchangeWire 野下智之) 起業時の「看板」を貸してくれた恩人への報恩 今回のインターン受け入れについて、平田氏は単なる教育プログラムではなく「恩返し」であると強調する。 「新井さん(穂高氏の母)には僕が新卒の頃からお世話になっていて、FLUXを立ち上げたばかりの、何の実績もない頃から本当にお世話になっています。新井さん(穂高氏の母)はご自身の信頼という「看板」を僕に貸し、重要なキーパーソンを次々と紹介してくださっただけでなく、営業の現場にまで同行して支えてくださった。あの時の恩は一生忘れません」 また、宮本氏についても「ビジネスの戦友」と語る。 「宮本さん(遥樹氏の父) とは居酒屋での出会いから始まりましたが、彼がLINEヤフーに移ってからも、ビジネス開発のブレスト相手として壁打ちをしていただきました。現場で一緒にアイデアを形にしてきたカウンターパートとして、深い信頼関係があります」 意思決定の現場に放り込む「平田密着プロジェクト」 平田氏が二人の恩師から受け取ったバトンは、恩師それぞれの子息である二人のインターン生へと手渡された。二人のために特別なインターンシップのプログラムを平田氏は考え、穂高氏には平田氏が出席するほぼすべての会議に同席させ、経営の最前線を見せる試みを始めた。穂高氏は当初、専門用語が飛び交う会議のスピード感に圧倒されたという。 「最初は本当に何を言っているのか分かりませんでした。でも、採用活動から顧客との定例、事業会議まで、あらゆる会議の現場で平田さんがどのような意思決定を行い、どのように実行していくのかを間近で見られたことは、社会の基本構造を知る上で非常に重要な経験でした」 穂高氏が経営の意思決定を間近で学ぶ一方、同じくFLUXでインターンを行う遥樹氏は、より実務に近い現場で別の形の衝撃を受けていた。遥樹氏は、参加前はスタートアップに対して「キラキラしたイメージ」を持っていたと振り返る。 「話しているビジネスの規模感や、英語でのビジネスコミュニケーションなど、今までのアルバイトでは経験できないことが続く日々でした」 SIer志望からPdMへ。技術を「事業」に変えるリアリティ この経験は、理系大学生である穂高氏のキャリアプランを大きく見直すキッカケになった。 「以前はエンジニア一本で考えていましたが、FLUXのPdMの方々と接し、市場のニーズを機能に落とし込んで事業を作る面白さを知りました」 平田氏は、「AIという変化の激しい領域で重要なのは、技術を事業成果に変える力。穂高君のような若い世代が、スタートアップの意思決定のスピード感と人間関係の機微を同時に学ぶことに、大きな意味がある」と説く。 一方、遥樹氏にとっての転換点は、より直接的な形で訪れた。CRMへの情報の手入力を担っていたある日、AIによる自動入力機能が導入された。URLを貼り付けるだけで30秒後には必要作業が完了する。「自分がやっていた仕事が、目の前でなくなった瞬間でした」。 さらに衝撃だったのはその後だ。同様の業務を担う別のインターン生が、遥樹氏が手作業でこなしていた量の2倍を処理しているのを目の当たりにした。「大学の社会学の授業でAIが仕事を奪う、と聞いていたけれど、それを自分ごととして体感したのは初めてでした」 この体験は遥樹氏の仕事観を根底から揺さぶった。「入力するだけのような作業でお金がもらえる時代は終わる、とはっきり思いました。自分だからこそできることを見つけなければという危機感が生まれた」。その問いはやがてゼミのレポートテーマにもなった。資本主義とAIの関係を社会学的に考察した内容は、FLUXの現場で感じたリアルな問いを学問として昇華させている。 求めるのは「ラーニング&アンラーニング」ができる人材 FLUXにはインターン生にも社員にも、様々なバックグラウンドを持つ人材が集まってくる。スタートアップとして急成長し、500人体制となった今も、平田氏の採用哲学は揺るがない。 「重要なのはラーニング&アンラーニングのバランスです。AI/テクノロジーといった常に最先端の技術や知見をラーニングすることはもちろんですが、それ以上に必要に応じて前職の成功体験を捨てられるかどうか。AI時代において活躍していく上で、このバランスはますます重要になってきます。」 新卒採用が切り拓く、FLUXの新たな可能性 今後、FLUXが本格的な新卒採用を開始すれば、この「次世代育成」の動きはさらに加速することになるだろう。中途採用中心で構築してきた「プロスポーツチームのような組織」という土壌に、真っさらな状態からFLUXのDNAを吸収する新卒層が加わることで、組織の柔軟性はより一層高まる。 平田氏は、「フレキシビリティを前提とした新卒採用は、既存の枠組みに囚われないAIプロダクトやプロフェッショナルサービスを生む源泉になる」と確信している。 かつての恩師との縁から始まった今回のインターン受け入れは、結果として、FLUXが「AI新時代」を勝ち抜くための組織育成文化を見つめ直す契機となった。 人のつながりを大切にする同社の原点を守りつつ、次世代のプロフェッショナルたちが躍動する新たなステージへ、FLUXは今まさに突入しようとしている。
サイバーエージェントが臨む、2026年の動画広告市場─縦型動画、CTV、生成AIで変わる、広告市場の構造-[インタビュー]
サイバーエージェントは、デジタルインファクトと共同で、12回目となる2025年国内動画広告の市場調査を実施し、その結果を公表した。 動画広告市場は拡大を続ける一方で、その成長の中身は大きく変化している。サイバーエージェント 執行役員 インターネット広告事業本部 統括 中田 大樹氏に、2025年の動画広告市場の成長ポイントを総括していただき、また同社の今後の戦略や組織体制についてもお話を伺った。 (聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之) 縦型動画、CTVが市場成長を大きくけん引 -2025年の動画広告市場全体について、総括をお願いします。 2025年の動画広告市場は縦型動画と動画広告の二つの側面から成長を遂げました。規模の大きさでは、縦型動画がOTT/CTVを上回っています。また縦型動画の領域では、規模と成長率の観点では、Metaの存在感が際立っておりました。 縦型動画は、ユーザーの視聴時間、広告主からの投資ともに拡大が続いており、動画広告の中心的なフォーマットになりつつあります。 -縦型動画がここまで成長している背景をお聞かせ下さい。 最も大きな理由は、ユーザーの日常における縦型動画視聴が完全に定着したことです。若年層に限らず、より幅広い世代で縦型動画を見ることが日常となりました。また広告主が、「縦型動画は成果が出るフォーマットである」という実感を持ち始めたという点も大きな理由です。 縦型動画は、運用型広告と非常に相性が良く、短期間で効果を検証しやすい。これにより広告主からの投資を呼び込むことが出来ています。ネット広告で成果を出すためには、ターゲットや媒体特性に合わせたクリエイティブを大量に用意し、短期間で良し悪しを判断することが重要です。縦型動画は、この運用モデルに最も適したフォーマットです。 MetaやTikTokでは、アルゴリズム上、多数のクリエイティブを投入することで成果が最大化されます。縦型動画が市場を牽引している背景には、この構造的な相性があります。 -OTT/CTV市場ではどのような変化がありましたか。 OTT/CTVについては、テレビ広告予算のデジタルシフトが本格化した一年でした。かつ、YouTubeはもとより、ABEMA、TVerに加えて、NetflixやAmazon Prime Videoといった有力なプレイヤーが広告市場に本格参入したことで、広告主にとっての選択肢が一気に広がり、市場全体の成長につながっています。 強みの運用力で、テレビ“も“最適に取引する -運用型テレビ広告が始まりましたが、これについてどう捉えられていますか? 運用型テレビCMのAdReach Maxに関しては、我々としても非常に注目している取り組みのひとつつであり、テレビ広告を「ネット広告のように運用できる」世界観を実現したいという想いがあります。 今のテレビ広告の取引は買い切り型で、事前に決めた枠に出稿して終わりという形態が中心である一方、ネット広告は、配信結果を見ながら改善し、運用によって効果を高めていくことが当たり前です。広告主の広告効果を最大化するという観点では、後者の方が合理的であることは明らかです。 テレビ広告が持つコンテンツの価値やリーチ力は、今後も一定以上残り続けると考えています。ただし、その価値を最大化するための「買い方」や「運用の仕方」は、今の形が最適であるとは言えません。 AdReach Maxは、テレビ広告をより柔軟に、より運用型に近い形で扱える可能性を持っている点で、他のOTTプラットフォームと同じように大きな意味があるとみています。 広告効果が可視化され、改善できる仕組みを取り入れた方が成果が出る、という流れは、いずれ避けられないものだと考えています。その意味で、AdReach Maxはテレビ広告の次のあるべき姿を考える上で、非常に重要なチャレンジだと思っています。 AIが市場にもたらすインパクト、サイバーエージェントの強み -AIは動画広告市場にどのような影響を与えていますか。 AIによる最大のインパクトは、制作コストの劇的な低下です。動画広告はCPMが高いという課題がありましたが、制作コストが限りなくゼロに近づくことで、このハードルが下がっています。特に運用型広告の動画制作では、AIの活用が前提になりつつあります。 クリエイティブ制作のPDCAが飛躍的に高速化しており、これまで人手では回しきれなかった量を、5倍、10倍のスピードで回せるようになります。結果として広告効果が向上し、動画広告市場全体を押し上げる要因になります。特に縦型動画では、その影響が顕著に出ると考えています。 -今現在貴社では、AIを活用してどのような価値を生み出すことに注力されていますか。 広告プラットフォーマーがカバーできない部分に対して、媒体横断での最適化やブランド要件を踏まえた高度な運用をAIで実現できることが、当社が提供できる価値です。 広告プラットフォームごとに運用の自動化が進んでいるものの、GoogleやMetaなど複数をまたいで、最も効果の高い形で広告運用を最適化したい、という広告主のニーズがあります。このような領域にこそ、サイバーエージェントが発揮できる価値があり、AIを活用することでこの課題を解決できると考えています。 -AIの領域において、サイバーエージェントの広告事業における強みはどこにありますか。 大きくは二つあります。 一つは、かなり早期の段階からAIの研究開発を自社で行ってきた点です。サイバーエージェントは、単なる広告代理店ではなく、自社でエンジニアを抱え、AIの研究やプロダクト開発を継続してきました。この蓄積は、今になって大きな差として表れていると感じています。 二つ目は、データです。我々はリテール、金融、交通、エンターテインメントなど、さまざまな業界の企業と協業し事業やプロダクトを作ってきました。その中で、多様な業界データに触れてきた経験があります。AIはデータ量と質が非常に重要なため、今後さらに効いてくると考えています。 開発ができ、サービスを作り、実際の運用現場で使い続けてきた。AIでこれら全てを同時にやってきた会社は、決して多くありません。AIを活用した広告ソリューションを本気で作っていく上で、このポジションは大きな強みになると考えています。 AIによってさまざまな業界がリスクを感じている側面もある一方で、サイバーエージェントとしては、AIによって課題解決できることが増え、ビジネスチャンスがむしろ広がっているという認識を持っています。広告運用の実務知見とAIを組み合わせることで、独自のポジションを築いていけると考えています。
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