既に7割のクッキーが規制されている事実を語ろう~共通IDとデータクリーンルームで ”変える”マーケティング戦略~ ーATS Tokyo 2024イベントレポート
デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2024」が2024年11月22日、都内にて開催された。 「既に7割のクッキーが規制されている事実を語ろう~共通IDとデータクリーンルームで ”変える”マーケティング戦略~」と題した本セッションには、Globalive株式会社 代表取締役社長 梅野 浩介氏、株式会社電通 部長, データ・テクノロジーセンター 前川 駿氏、KDDI株式会社 コミュニケーションデザイン部 大下倉 舞氏が登壇した。 各登壇者は「日本・海外でのデータクリーンルーム(以下、DCR)活用の現状」「DCRの活用法や課題点」などに言及。昨年のATS Tokyo 2023でも話題に上がったDCRの現状アップデートのみならず、より有効的な活用法について興味深い意見が飛び交った。 昨年と比較しDCR活用がどのように変化したかについて問われた前川氏は、3つの変化を述べた。一つ目は、ビッグテックによる運用自動化ツールの増加に伴い、マーケティング効果を最適化するためのDCR利用が拡大したこと。二つ目は、ファーストパーティーデータとDCRをどう組み合わせるかという話題が増えたこと。三つ目は、キャンペーン後の効果計測のみならず広告出稿前や顧客の状態把握を目的としたDCR利用が増えたことである。 広告主として現状のDCR利用について問われた大下倉氏は、KDDIではゼロ次分析・広告の施策評価にDCRを活用しているが、主にリアルな顧客データの分析に使われていると述べた。 梅野氏は海外でのDCR活用例として、戦略的パートナーシップを結ぶOptableのDCRを用いた事例を紹介した。ある携帯キャリア企業にて、課題であったユーザーの紐づけを目指し、Optableを導入しユーザー判別・広告配信に活用する例、もう一つはオープンインターネット内でOptableを使って複数の媒体社のデータを一つに取り込み、IDで紐づけて情報を活用している例となる。 日本・海外の違いをふまえた上で、顧客のデータ保護の観点からDCRの必要性を強調した前川氏。一方、大下倉氏は現状課題として、DCRが他媒体を横断してデータ結果を活用することができない点に言及した。対して梅野氏は、オープンインターネット内での活用法として、それぞれの媒体の保有データをDCRに入れることで、媒体社が束になって、スケーラビリティを高めることができ、ウォールドガーデンと同じような配信が可能になる海外での取り組み実例を紹介した。 オープンインターネットでDCRを活用する価値について問われた前川氏は、「規模よりも深さ、ファンを作る、という部分で勝負ができるのでは」と述べた。DCRを介して企業同士がデータをシェアできるようになれば、既存の広告を超えた「体験」を創造していけるのでは、と提案する。 梅野氏は、「オープンウェブの中でDCRの上手な活用法を、メディアコンサルティングなどと共に媒体社をリードできればと考えている」と述べ、これからのDCR利用拡大への意欲を見せた。 DCRをどのように使っていくか、について個々の見解を交えながらも、データ分析のみならず、カテゴリーや産業といったジャンルを超えたプロダクトの開発にもDCR活用が広がり、今後さまざまなDCRを使ったトライアルが生まれることが期待される。
ATSTokyo非公式アフターパーティー、2025年は11月21日(金)に開催が決定!
毎年200名以上の業界関係者が集う、ATSTokyoの非公式アフターパーティー「MARTECH&ADTECH After Party 2025」が、早くも2025年11月21日(金)の夜に開催されることが決定した。場所はいつものアトレ恵比寿西館の屋上を予定している。 今年の11月に開催された本パーティーはATSTokyo2024にスポンサーした10社が協賛し、来年も同様の形式で開催されるという。 2023年から再開した「ATSTokyo」は例年水道橋の「東京ドームホテル」で開催されるのにもかかわらず、わざわざ恵比寿に移動するのは謎である。編集部からは「主催者側で移動用のバスを用意したらどうか」との提案を申し出ているものの、運営側からは正式な回答はまだない。しかしながら、広告主、代理店、パブリッシャーが中心となった来場者で毎年賑わっているというのでそれでいいのだろう。 なお、公式の「ATSTokyo2025」の来年の開催については、最終調整に向けた段階なのだが、これに先んじて、非公式アフターパーティーの開催が決まる形となった。 アフターパーティーなのに先んじて公表する当たり、どうやら「アフター」という自覚はあまりなさそうだ。 開催概要は以下のとおりである。 ■開催日時:2025年11月21日(金)19時頃から22時頃(多少の前後あり) ■場所:シロノニワ(アトレ恵比寿西館8階) ■開催規模:約200名 詳しくは、追って主催者側から告知がある模様だ。
【Rokt調査】2024年のノンエンデミック広告市場規模は541億円の見通し、2028年には約3倍の1,693億円と予測
EコマーステクノロジーのリーディングカンパニーであるRoktは、株式会社デジタルインファクトと共同で、ノンエンデミック広告市場に関する調査を実施した。その結果、2024年の国内ノンエンデミック広告市場規模は541億円の見通し(前年比128%)となり、2028年予測は、2024年比約3倍の1,693億円となった。 出典:Rokt合同会社プレスリリース ノンエンデミック広告はリテールメディア市場の起爆剤に リテールメディアの用途や機能が進化するにつれて、これまで取り込むことができなかった広告需要に対応できるようになった結果として、ノンエンデミック広告の取引が活性化するという事例が既に米国市場では見られ始めている。2025年以降はこうした事例が日本市場においても展開されるようになると予測される。 ノンエンデミック広告市場の成長速度と成長規模は、現在のオンライン広告市場において大きな割合を占める動画広告市場やインフィード広告市場の10年前の動きと相似している。 ノンエンデミック広告とは、リテールメディア広告の一形態であり、特定のECサイトやアプリ上で商品やサービスを販売していない企業が、そのECサイトやアプリ上に出稿する広告。一例として、ファッション/航空券/チケット/デリバリーサービスなどの販売を行うサイトやアプリ上に、動画ストリーミングサービスや保険商品などの広告が掲出される事例が該当する。 出典:Rokt合同会社プレスリリース ※1:本調査では、EC機能を主に提供するウェブサイトやアプリ等のオンラインサービス上に掲出された広告と、これらのECサービスが主体となって外部メディアへと配信した広告をリテールメディア広告として定義し、その中におけるノンエンデミック広告の市場規模を算出した。なお、本調査では、ECサイトやアプリ上に出店または出品していないメーカー企業が、自社商品を販売する小売企業やその他のパートナー企業の販売促進を支援する目的で出稿する広告について、ECサービス運営者の観点から従来の一般的なエンデミック広告と区別することを主な目的として、ノンエンデミック広告の定義に含めた。本調査におけるノンエンデミック広告市場規模の算出は、広告主によるノンエンデミック広告への年間支出総額を対象とする。 独立系EC事業者の市場規模は年平均で約3倍に EC本体事業と比較して利益率が高い傾向にある広告事業を付帯収益源として有力視するEC事業者は多く、その広告収益を拡大及び多様化していく上ではノンエンデミック広告の導入が有効な施策となり得るとの認識が先進的な事業者の間で醸成されつつある。 とりわけ独立系EC事業者の動向には大きな注目が集まっている。既に広告事業を一定規模にまで成長させた大手ECモールとは対照的に、ファッション/航空券/チケット/デリバリーなど専門化した商品やサービスの販売を行うこれら独立系EC事業者が形成するノンエンデミック広告市場はまだ黎明期にある。その結果として、少数の事業者による動向によって今後激しく変動し得るものの、全体としては市場規模が毎年3倍近くに拡大することが予測される。 出典:Rokt合同会社プレスリリース ノンエンデミック広告ではレレバンシーが鍵に ノンエンデミック広告市場規模の成長予測は、「ノンエンデミック広告がリテールメディアの新時代を切り拓く」と題した調査レポートを通じて発表された。本レポートでは、ノンエンデミック広告を活用する上での課題と、それらを克服する上での展望が示されている。 とりわけ多くのEC事業者が、付帯収益の創出機会として広告事業に期待を示していることが市場成長にとっての好材料となっている。日本の人口減少が進む中で物価上昇といった環境変化にも対応しつつ、ユーザーへの価格転嫁を最小限に留めるためには付帯収益の確保が重要であるとの見方が強まってきている。 さらにデジタル広告業界全体が今、購買データを活用できるリテールメディアへの期待を高めている。サードパーティCookieの利用制限が強化されていることを受けて、今までEC出店を行ってこなかった広告主及びその広告代理店が、代替する広告配信先としてリテールメディアを選択する機会が増えることは十分に考えられる。その結果として、リテールメディアの多様化が進み、リテールメディア広告は認知向上から購買促進まで幅広いマーケティング需要に対応できるようになり、ノンエンデミック広告は、こうした新たな需要の受け皿になっていくと見込まれている。 一方でノンエンデミック広告において一番の課題となるのがユーザー体験への影響。ECサイト上で販売していない商品の広告をやみくもに表示するだけでは、ユーザーが離脱する可能性が高まる。ユーザーの気持ちに寄り添いながら、ユーザーが受け入れやすい関連性(レレバンシー(※2))の高い広告をいかに配信できるかが、ノンエンデミック広告の成否を分けることになる。 ※2:「レレバンシー」とは、直訳すると「関連性」。マーケティング用語として使うときには「その人にとって意味がある」「自分ごと」「好みや嗜好に合う」「興味・関心がある」といった意味で使用される。 本調査レポートは、こちらよりダウンロード可能。
fluctが、リテールDX支援の領域で進む新たな路
パブリッシャーの成長支援に軸足-fluctが歩んできた軌跡 2008年にadingoとして誕生したCARTA HOLDINGSのfluctは、サプライサイドのビジネスに軸足を置き、刻一刻と変化するデジタル広告業界の趨勢を見定めながら、変化を遂げてきた。そして、昨今は成長するリテールメディア市場にも進出し、新しい成長領域に力を注いでいる。 現在、同社の舵取りをするのは、2024年より代表取締役CEOを務める、藤井 洋太氏である。藤井氏は、2009年にCARTA HOLDINGSの前身であるVOYAGE GROUPに入社し、Zucksの取締役を務めるなど、バイサイドとセルサイドの両サイドでのビジネス経験を持つ。2020年にfluctに参画して以降は、主に媒体社向き合いのセールスチームを率いてきた。2023年より代表取締役COOを務め、今年前任の望月貴晃氏(現CARTA COMMUNICATIONS 取締役執行役員)よりCEOのたすきを引き継いだ。 また、同社の取締役としてリテール領域を担当するのが松本 昌樹氏である。松本氏は、前身のadingoより15年ほど在籍をしている。 リテール領域への新たな一手を打つ SSPは、その機能以外にもアドサーバーとしての機能を持っている。fluctは、この資産を活かして、リテール向けのアドサーバービジネスを新たに立ち上げて、提供を開始した。同社は、2023年1月に、リテールアドマネージャーの提供開始を公表しているが、実際には顧客からの相談を受けて、2022年よりPOCを開始していたという。 「我々が電通グループ傘下に入ったことで、CCI(CARTA COMMUNICATIONS)とお取引があった企業からの相談が増え、同時に自社から提案をする機会も増えたことが、この事業を始めたきっかけでもある。」と、松本氏はその背景について語る。足元では、「我々としても、従来の顧客層向けにアドサーバー事業をやるということはもちろんですが、自社で運営しているアプリなどの収益確保を目指して、これから広告事業を新たに始めたいという小売事業者の広告ビジネスに立ち上げを支援しています。」(松本氏) 顧客である小売企業が、大手広告代理店やコンサルティング会社の支援を受けて広告事業を設計する。実際に事業を始める段階で、fluctが細部にわたる要望に対応しながら、リテールメディア向けのアドサーバーとして提供する、というような連携を図っている。 最前線で感じるリテールDXへの期待と現状、そしてfluctの役割 松本氏によると、小売企業側のリテールメディアビジネスに対する熱量は日増しに高まっているという。「大手と呼ばれる小売企業においては、大体がリテールメディアビジネスを手掛けている。業態としては、ドラッグストアが特に先行している。またコンビニエンスストア大手3社のほか、スーパーマーケットがこれに続いている状況にあると思います。」(松本氏)とのことだ。 業界全体を俯瞰すると、小売企業におけるリテールメディアビジネスはまだ始まったばかりである。また業種特性上、従来のWebメディアよりも、広告主を厳選する傾向がある。もともとが広告マネタイズを前提で立ち上がったものではなく、あくまでもCRMを目的とする会員証や、支払いのためのものである。したがって、自社店舗で取り扱いをしている商品の広告を優先したいという想いがある。現在のところ、広告フォーマットは純広告の期間販売が中心で、内容は商品クーポンなどが多い。 小売業界と広告業界が今ほど深く、本格的な広告ビジネスを一緒にすることはこれまでなかったことである。業界慣行も広告ビジネスに対する考え方も異なり、小売企業とこれを支援する広告会社とで、なかなか取引条件が折り合わないこともあるなかで、同社はすでにドラッグストアやスーパーマーケットなど、複数の小売業態への支援を始めている。 小売企業の広告販売方法には二通りがあり、一つ目は広告代理店を通して、広告主企業のマーケティング部門に販売するケース。そして二つ目は、小売企業が自分たちで販売をしているケースである。小売企業はメーカーと直接的な取引があり、商品部を通して広告商品の提案を行っている。 「小売企業の強みは、購買データです。我々のアドサーバーから広告配信をして、我々からユーザーのクリックやインプレッションのデータを提供し、これらを突き合わせることで、広告を見たユーザーの購買行動が明らかになります。これをメーカーにレポートしています。」(松本氏) 今後同社では、リテールメディア領域でどのようにビジネスを広げていくのかという問いに対して、松本氏は「今までは、メディア支援実績が豊富な当社に対して、小売企業様からのお声がけをいただくことが多いので、お客様からのニーズに合わせた開発を一緒になって進めています。」と語る。 「小売企業におけるリテールメディアという市場は立ち上がったばかりで、小売企業の広告ビジネスにおいては、まだ全企業が業界トレンドの流れに向いているというフェーズではありません。したがって、我々が何年後かのトレンドを見据えてこうあるべきですとお伝えするのではなく、まずはお客様ごとのご要望に寄り添うことが重要であると考えています。そのためにアドサーバーとして出来ることを、しっかりと整えてお客様に提供をしています。」と、代表の藤井氏は、現状を俯瞰した顧客動向と同社の現状の取り組みを語ったうえで、「我々はDX領域において国産の優れたプロダクトを提供することで、日本のDX化を裏側で支えていくことを、ミッションと感じています。」と締めくくった。
- Latest news
ニュースレター(WireSync)に登録
ExchangeWire Japanの最新情報を毎週まとめてお届けします