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ECのように動画広告を申し込み―ポータルサイト「テレ東広告」ではじまる新たな広告購入体験一 [インタビュー]

株式会社テレビ東京と株式会社テレビ東京コミュニケーションズは、動画広告をオンラインで簡単に申し込むことができるサービスを、テレビ東京グループの広告ポータルサイト「テレ東広告」上で開始した。本サイトを通じて、広告出稿が初めてという企業や担当者であっても、複雑なステップを介さずに簡単に広告出稿を始めることが可能となっている。テレ東広告のコンセプトや狙い、現在のテレビCM市場について話を聞いた。

 

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏海)

 

※インタビュー出席者の名前・所属等は次のとおり。
(写真左)岸義治氏:株式会社テレビ東京コミュニケーションズ コーポレートオフィサー
(写真中)今田智仁氏:テレビ東京コミュニケーションズ デジタルマーケティン部長 兼 テレビ東京
(写真右)桑原佑介氏:株式会社テレビ東京 マーケティング局 マーケティングセンター

 

開局60周年を迎えたテレビ東京

自己紹介をお願いします。

岸氏:テレビ東京コミュニケーションズにてマーケティング・開発の統括をしており、テレ東広告についても立ち上げから全体のプロダクト開発に従事してきました。また、テレ東の動画配信サービスではAVOD・SVODの双方を担当しています。

 

今田氏:テレビ東京コミュニケーションズにてデジタルマーケティング部の部長をしております。テレ東広告のローンチにあたっては、認知拡大をはじめとしたプロモーションなどのマーケティング全般を担当しています。

 

桑原氏:テレビ東京のマーケティングセンターにて、放送配信周りの広告事業はじめ法人を対象としたマーケティングを担当しています。また、テレ東広告ではマーケティング全体を担当しています。

 

「テレビ東京」は2024年4月に開局60周年を迎えました。改めて、今のテレビ東京についてのご紹介をお願いします。

25年ぶりにブランドマークを刷新

 

桑原氏:系列局含めると全国7割の世帯をカバーし、配信を通じては全国・世界に向けたコンテンツの発信をしています。

 

また、開局60周年にあたっては「ちょっといい明日のために。」をタグライン(キャッチコピー)にリブランディングも進め、ブランドマークも刷新いたしました。

 

テレビ番組やテレビCM枠については、どのような特徴があるのでしょうか。

 桑原氏:テレ東はアニメや「ワールドビジネスサテライト(WBS)」、「ガイアの夜明け」といった経済番組、また乳幼児向けの子ども番組「シナぷしゅ」など、特定層を対象とした番組を多く放送しているのは特徴の一つですね。

 

今田氏:これらの特定層を対象とした番組を複数取り扱っていることを生かして、配信では「経済番組パッケージ」など、テレビ東京としての強みが発揮できる番組をひとまとめにした広告パッケージ商品の販売もしています。地上波では経済番組のパッケージを組むことは難しいので。

 

例えば、TVer上の経済番組に広告をご出稿いただくことで、富裕層やビジネスマン層に対しての効率的なリーチが可能となります。他にも様々なターゲットに即した最適な「のみ取り」限定パッケージのプランをご提案することが可能です。

 

「テレ東広告」で営業担当者を介さずワンストップで取引

―2024年2月に、動画広告をオンラインで簡単に申し込むことができるサービスを広告ポータルサイト上で立ち上げた。その背景・狙いは。

https://ads.tv-tokyo.co.jp/pages/lp

 

岸氏:テレビ広告の営業における人的リソースを鑑みると、対面での取引には限界があります。そこでお取引の新たな接点を生み出すために、広告ポータルサイトを通じたオンライン窓口を立ち上げることになりました。

 

購入が可能となる広告商品は、民放公式テレビ配信サービス「TVer」や、テレビ東京公式動画配信サービス「ネットもテレ東」(*)で流れる広告枠となります。

*テレビ東京の人気番組動画が放送後にPC・スマートフォン・タブレットで無料視聴できるサイト

 

これらの広告を対象として、番組検索、出稿プラン検討、見積もり、広告審査、申し込みまでをオンラインで、広告営業担当者を介することなく、ワンストップで取引を完了することが可能です。

 

約10万円から出稿ができるオンライン限定のパッケージもご用意しているので、まずは広告を試しに出していただき、出稿の結果も見ていただいたうえで、末永いお付き合いに繋げられることを期待しています。

 

本サービスで取り扱っている商品・動画広告の特徴について教えてください。

今田氏:配信先は「TVer」および「ネットもテレ東」といったAVODの動画配信サービスが対象となりますが、大きくは3つの特徴があると考えています。

 

1つはテレビCMとの違いとなりますが、ブロードではなく、ターゲティング設定をしたうえで、クリック誘導なども可能なのはデジタル広告の強みだと考えています。効果測定も細かい数値でお出し出来ますが、テレビCMを買い付けするようでありながらも、デジタル広告のメリットを享受することが可能となっています。

 

2つ目はSNS広告との違いとして、取り扱っているコンテンツは全て、テレビの良質なコンテンツ由来となっています。ブランドセーフティにも優れていながら、広告もスキップが出来ない設計(ノンスキッパブル)となっていますので、視聴完了率が非常に高くなっています。

 

3つ目は経済番組をはじめとして「シナぷしゅ」などの子供向け番組やアニメなど、番組という視聴者の嗜好がわかりやすい要素でターゲティングができるという点です。

 

実際に、本サービスを利用されたユーザーからの反応はいかがでしょうか。

岸氏:会員登録をいただいたユーザーの多くは過去にお付き合いのなかった方でしたので、そこは当初の見込み通り、タッチポイントを増やすことに成功したのではないかと思います。

 

また、サイトは24時間稼働しているので、ユーザーが広告出稿を検討する気持ちが高まったタイミングを逃すことなく、広告を受け付けることも出来たのではないでしょうか。

 

一方で、会員登録をいただいた全ての方が、必ずしもご出稿につながったわけではないので、今後はそのようなユーザーをご出稿まで導くための伴走支援や交通整理も課題として見えてきました。今後はより使いやすいサービスへと、改修がしていければと思います。

 

「中期的には地上波CMについても、オンライン取引を検討していきます」とリリースでは書かれていますが、こちらを実施するにあたっては、どのような課題・検討が必要であると想定されていますか。

今田氏:本サービスを通じて意識していたのは、いわゆる大手企業や既存取引のあるお客様ではなく、過去にお取引がなかった、CM出稿など考えたことがないといった広告主との接点づくりになります。そのうえで、動画広告を通じて新しいお客さまにテレビ東京の広告商品を使っていただきたい狙いはありながらも、広告会社等を通じた既存の商流取引をリプレイスしていきたい意図はありません。

 

桑原氏:想定しうる課題としては例えば、新しい商流が生まれることによるお申し込みのダブルブッキングなどが考えられます。地上波CMのオンライン取引については、既存の商流を壊すことなく、新しい取引方法の確立が可能か否か、引き続き整理・検討を進めていきたいと思います。

 

テレビCMやテレビ番組の強さと価値とは

テレビCM市場の市況感については、どのように捉えていますか。

桑原氏:スマートフォンやSNSなど、テレビおよびテレビCMのライバルが増えている現状もあり、必ずしも順風満帆ではないと捉えています。

 

その一方で、テレビの媒体としての視認性や安全性(ブランドセーフティ)、広告枠としてのCPMの安さなど、強みはたくさんあります。また、運用型テレビCMに代表される購入方法や商流の変化により、テレビCMの価値が再定義され、動画広告との相乗効果を生む事例も出てきました。

 

テレビCMやテレビ番組のコンテンツの優位性には引き続き大きな価値があると考えているので、今までテレビに広告を出稿する選択肢がなかった方におかれては、今回のテレ東広告をはじめ、テレビが提供するコンテンツの広告枠を通じた効果を、まずは実感していただくきっかけや接点を作っていければと思います。

 

貴社の今後のサービス展望などがございましたらお聞かせください。

今田氏:テレビもスマホも、それぞれで広告商品としての強みや弱みはあると考えていますが、その広告商品が買いやすい仕組みや環境を整備していくことで、興味を持っていただいたタイミングを逃さず、しっかりと検討や購入が可能な状況は作りあげていきたいと思います。また、そうすることにより、自社のサービスやコンテンツが選ばれる機会も増やせるのではなかと考えています。

 

岸氏:「広告主に取って何がメリットになるか」または「何を提供することが求められているか」をしっかりと見極めたうえで、ご提案をしなければならないのは大前提となります。

 

それがテレビCMなのかデジタル広告なのか、または媒体がスマホなのかCTVなのか、多種多様な組み合わせはありますが、我々のサービスを通じて、広告主のリーチや課題を解決するようなご提案を今後も続けていきたいと思います。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。