世界で月間2億人が利用する「Ghostery」、ウェブサイトのデータトラッキングの可視化で実現する健全なオンラインプライバシー [インタビュー]

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(ライター:Ginger)

米国や欧州を中心に、世界で月間2億人以上のユーザーに利用されるのが「Ghostery」だ。ウェブブラウザの無料プラグインで、訪問するウェブサイトに導入されている解析、トラッキングツールを明示し、ユーザーにオプトアウトするオプションを提供する。オンラインプライバシーの規制が特に厳しい米国などでは、企業による活用も増加しているという。日本でもDDAIといった団体が登場し始めており、少しずつプライバシーへの認知が高まりつつある。日本市場への参入準備を進めているというEvidonの戦略的パートナーシップ担当、シニア・バイスプレジデントであるAaron Letscher(アーロン・レッシャー)氏に話を伺った。
 

 

 
— Ghosteryのサービス概要を教えてください。

 

Aaron: Ghosteryは、ウェブブラウザの無料プラグインです。インターネットユーザーが、Ghosteryのプラグインを入れたブラウザでexchangewire.comを訪問したとします。するとGhosteryは、exchangewire.comで使用されているデジタルテクノロジーツールをリストで表示します。

 

 

テクノロジーツールとは、サイト解析ツールやアド配信ツールなどでしょうか。

 

Aaron:そうです。DSPやExchangeなどのアド配信や、Google+のようなソーシャルウィジェットなど、サードパーティーベンダーのツールを一覧にします。これによって、ユーザーは希望しないツールによるトラッキングを拒否し、取捨選択できます。例えばGoogleからのトラッキングをブロックした場合には、その後どのウェブサイトを訪問してもその設定が引き継がれ、Googleにはあなたの存在が見えなくなります。

 

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— Ghosteryはどれくらい普及しているのですか。

 

Aaron:全世界で月間2億人ものユーザーに利用されており、3rd パーティーによるトラッキングツールの中で最も普及しているサービスの一つです。米国で40%、欧州で40%、日本を含むその他の国と地域で20%と、グローバルで利用されています。

 

 

日本のGhosteryユーザーの大半は専門家やアドテク業界に関わる人に限られているようです。そもそも日本では、cookieが何であるか理解している人すら少ない。米国や欧州では一般ユーザーへの普及も見られますか。

 

Aaron:欧米では「Wall Street Journal」のような大手のメディアが、cookieによるトラッキングの脅威を伝えるようになったため、それが一般的に認知され始めています。少なくともcookieの基本的な理解や、トラッキングが及ぼす影響は理解されてきていると感じます。3年前はわずか5万人だったユーザーが、3年で2億人まで増えていることが何よりそれを物語っているでしょう。

 

 

— Ghosteryの存在はどのように認知されていったのでしょう。

 

Aaron:口コミやメディアの記事による効果です。ソフトウェアとのバンドルは一切していませんし、アフィリエイトや懸賞でダウンロードを促すこともしていません。

 

 

一般ユーザーには無料提供されていますが、ビジネスモデルを教えてください。

 

Aaron:Ghosteryはインターネットユーザーを対象としていますが、応用テクノロジーを企業に対して提供しています。企業、特にパブリッシャーはウェブサイトにいくつものテクノロジーを導入しており、テクノロジーが次のテクノロジーを呼び出す仕組みになっています。例えば、ADPLAN がGoogle Adsenseを、そこからまたDoubleClickをというように。ただ、こうしたテクノロジーの一連のつながりを把握しきれていない企業も多い。そこで、起点となる企業のウェブサイトと、そこにリンクするテクノロジーのテクノロジーチェーンを可視化して提供しています。

 

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図1:テクノロジーチェーンを可視化する「TrackerMaps」

 

 

テクノロジーのつながりと、影響範囲の可視化ですね。

 

Aaron:はい。テクノロジーチェーンを可視化することで、企業はプライバシーポリシーを再確認したり、導入テクノロジーをウェブサイトで公開したり、オプトアウトをするなど、ユーザーに対してプライバシーの透明性を提供できます。またプライバシーポリシーは国によって法律が異なるので、データの取り扱いなど国ごとに対策を施すことが可能です。

 

 

 

そのデータを頻繁に活用するイメージが湧かないのですが、実際、企業はどれくらいの頻度で活用していますか。

 

Aaron:例えば、米国の消費財企業では、テクノロジーサービスのホワイトリストを持っています。そのリストにないテクノロジーを使用していないかを、プライバシーや法務、編成部などが週次で確認しています。管理するサイト数が1,000を超えるグローバル企業だと、この週次作業でもかなりのボリュームになります。

 

 

企業によるGhosteryの導入方法は。

 

Aaron:GhostRank というGhosteryのパネルユーザーから、プラグインを通してデータを収集し、SaaSでレポーティングを提供しています。企業は、サービスにログインするだけで収集データのレポートを利用できます。
図2_Japanese trends_high ranking display ad deliverers

図2:日本のディスプレイ広告配信サービスの配信状況を確認できる

 

インターネットユーザーのプライバシー保護だけでなく、企業のデータの外部流出の防止などにも有効なのですね。

 

Aaron:その通りです。企業には、自社のデータが不適切に流出しないように、監視、管理する責任があります。また、適切なページに適切なテクノロジーが導入されていることを保証する必要もあります。

 

 

— Ghosteryはウェブサイト専用に展開しているのですか。

 

Aaron:ウェブサイト全体ではなく、バナー広告でも活用できます。バナー広告のトラッキングの通知、またオプトアウトの選択機能を提供しています。特にグローバルのブランド企業では世界広域に広告を配信しており、中でもトラッキング情報を利用したリターゲティング広告を用いたマーケティング活動が増えています。こうした活動を健全に行うために、企業によるユーザーのトラッキングを国ごとの規制に合わせて通知し、オプトアウトの選択肢を提供する需要が高まっています。現時点で、Ghosteryの通知が入った広告を1日20億インプレッション配信しています。

 

 

米国、特に欧州ではプライバシーに関する規制が厳しいと聞きます。

 

Aaron:はい、欧米では厳しいレギュレーションが存在します。米国では2009年にFTC(連邦取引委員会)により提唱され、インターネットユーザーに対して、トラッキングの内容やテクノロジーを通知し、オプトアウトする選択肢の提供が義務付けられました。これを守らない企業には、The Better Business Bureauが勧告し、改善が見られない場合はFTCに持ち込まれ、プレスでの発表もありえます。欧州でもおおよそ同じレベルのレギュレーションが存在します。

 

 

日本にもDDAIという自主団体が発足し、インターネットユーザーにオプトアウトの機会を提供しているようです。

 

Mr.AaronLetscher_2013Aaron:DDAIの存在には我々も注目しており、日本市場の成長を実感しています。Ghosteryに関しても日本語対応の準備が出来ていますし、日本のレギュレーションに応じてサービスを提供していきたいと考えています。

 

日本企業は、さまざまな形でGhosteryを活用できるでしょう。テクノロジーチェーンを把握したデータ管理、レギュレーションに遵守したプログラマティックバイイング、サードパーティーデータの健全な利用など、日本でデジタルマーケティングのサポートができることを非常に楽しみにしています。

 

 

 

(編集:三橋 ゆか里)

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大山 忍

ExchangeWire Japan 編集長 米国大学卒業。外資系企業を経て2000年にネット広告効果測定ツールを提供するベンチャーに創業メンバーとして参画。その後、バリューコマース株式会社と合併。 2007年1月にオムニチュア株式会社(現Adobe)に参加、コンサルティングサービスを立ち上げる。ビジネスコンサルタントとして米国のベスト プラクティスを日本の課題やニーズに合わせて提供、ウェブ解析やガバナンス(データ主導の組織・仕組化)に関する執筆・講演を行う。