Spotifyは「まだ」プログラマティックなメロディを歌わない <インタビュー>
(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)
今のところ、プログラマティック・バイイングをサポートする予定はないと言っているSpotifyだが、ニューヨーク支社の最近の人材募集広告を見ると、その方針が比較的すぐ変わるかもしれないことが見えてくる。
最近シンガポールで行われたメディアフェスティバルのサイドラインとして行われたExchangeWireとの会談で、Spotifyのアジア代表取締役Sunita Kaur氏、は同社が継続的にプログラマティックを検討していると語った。その一方で、導入開始には時期尚早だとも述べた。「今の段階ではまだ必要性を感じていませんが、最終的には必要になってくるでしょう」と語った。
彼女の言葉は、同社のチーフマーケティングソリューションオフィサー、Jeff Levick氏の発言に同調するものだ。Levick氏は、2012年のアド・エクスチェンジャーとの対談で、成長戦略の一環としてRTBを含むことは必要だとは感じていないと語った。
「ターゲット設定の適正化のためにデータやその価値を理解することは、私たちにとっては非常に重要で最も注力している取り組みです。私たちが目指しているのは、目標設定の扱いや自社データの保護において最良の効果を出すことです。」
一方、Kaur氏は、プログラマティックは複雑な市場で、実際の導入にはまだ至らないと強調しながらも、Spotifyが今年初めてプログラマティックを真剣に考慮していたと言及した。
「私たちはまだそこまで準備ができていませんでした。Spotifyには、(顧客やマーケターが)望む広告体験について言えば、素晴らしい多くの選択肢があったので、当時プログラマティックに敢えて踏み込む必要がありませんでした」。
Spotifyが最近出したプログラマティックプロダクトマネージャーの人材募集広告
しかしながら、ExchangeWireは先週、Spotifyニューヨーク支社の「プロダクト・マネージャー、プログラマティック・マネタイゼーション」の募集広告を目にした。この募集内容には、「当ポジションではプログラマティックビジネスを根底から築き上げることに従事する」と記載されていた。
募集要項には、「この役割において、当社のプログラマティック広告商品戦略の立ち上げや運営、パートナーシップ開発、需要経路の活性化を担当」「専門チームを指揮し、独特な提案やSpotifyのマネタイゼーションへの取り組みをその過程で加速させる中で重要な役割を果たす」などと記されていた。
この広告はそれ以来、企業サイトからは削除されている。そのポジションの採用が決まったかとの質問に対して、Spotifyのスポークスマンは「プログラマティックについて詳細に語る段階ではありませんが、新しい情報が入り次第またお知らせします」
と言及するだけに留まった。
アジアにおけるビデオ広告の開始
プログラマティックの取り組みについて詳細が語られない一方、同社は、Kaur氏が重要な市場の需要があると語るビデオ広告のスタートについては詳細に語っている。
Kaur氏は、Spotifyが第2四半期にシンガポールでビデオ広告を立ち上げ、その後、年間を通してアジア地域の他の市場に展開していくと語った。現在では香港、マレーシア、台湾を含むアジア7カ国となっている。
「これは私たちの新しい広告ユニットで、ブランドからの要望により実現したサービスです。ビデオは今やブランド戦略の大部分となっていて、作成に多くの時間がかかることから、できるだけ多くのプラットフォームで広めることが求められます。」
Spotifyのビデオ広告はデスクトップ、モバイルで流され、スポンサーのビデオ広告を見ることで、ユーザーが音楽を30分広告無しで聴けるという「スポンサーセッション」として提供されている。
シンガポールのユーザーが一日に平均160分をSpotifyに費やすことに言及しながら、Kaur氏はブランド側からの価値が高くなるという理由から、同社が視聴者のエンゲージメントの確立に注力してきたと説明した。そして複雑な広告購入のプランを導入する前に、リーダーボードやオーディオ広告といったベーシックな広告単位の提供から開始したのである。例えば、ブランドは、ランナーのような特定の顧客セグメントをターゲットに、Spotify上でプレイリストやサウンドトラックを作成することが出来る。Spotifyにランナークラブを持つアディダスは、ランナーの走るペースに合わせたプレイリストを作成している。
彼女はさらに、オーディエンスの参加をさらに促進するのにデータは重要であり、ターゲティング能力を増強するために2014年に買収したデータプラットフォーム「The Echo Nest」についても言及した。
(編集:三橋 ゆか里)
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ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長 慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。