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スマートフォンターゲティング広告のリリースラッシュから読み解くモバイルゲーム会社のプロモーション需要の変化

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今年、スマートフォン広告大手事業者が、新しいターゲティング広告商品を相次いでリリースしている。

 

 

 

 

アイモバイルはサイジニアと共同開発したパーソナライズリコメンド広告アイレコを1月14日にリリース、ファンコミュニケーションズは、2月2日に同社のスマートフォン広告プラットフォームnex8においてダイナミックリターゲティング広告をリリース、そしてサイバーエージェント アドテクスタジオは、1月9日にスマートフォンゲームアプリに特化したダイナミックリターゲティング広告Dynalyst for Gamesを、2月10日にはスマートフォンのWeb、アプリ面を横断した配信が可能なリターゲティング広告をリリースした。

 

需要側の事情からこれらのリリースの背景を考えると、モバイルゲーム会社のプロモーション需要の中身が変化してきたことがうかがえる。

 

スマートフォン端末の普及が急速に進んでいた数年前は、スマートフォンゲームプロモーションの至上命題は、大量リーチにより新規ユーザーをできるだけ安く獲得するということであった。

そのプロモーション手法はリワード広告を出稿してランキングを上げ、上位ランキングで該当のタイトルを認知したユーザーの自然流入を獲得しつつ、CPCスマートフォンアドネットワークに予算を投下してリーチを幅広く取るというもの。したがってこの頃スマートフォンゲームのプロモーション手法として、ターゲティング広告は主流ではなかった。

 

だが現在はスマートフォン端末がユーザーに広く行き渡り、多くのユーザーがスマートフォンゲームで遊んだ経験がある状況となった。そして、スマートフォンゲームの新規ユーザーが少なくなった。スマートフォンユーザーの多くが、何らかのタイトルである程度の期間遊ぶようになった。既にほかのゲームである程度遊んでいるユーザーの、自社タイトルへのスイッチコストも当然高くなる。また、仮にそのユーザーを他から自社タイトルに強引に連れてきたところで、そのユーザーが定着して売上に貢献してくれるかどうかは分からない。大手会社によるパワーゲームになりつつある市場では、やみくもにユーザーの数だけを求めて、お互いに短期的にユーザーを取り合っても効率的ではなくなりつつあると言えるかもしれない。

そのため、スマートフォンゲーム会社のプロモーション需要は「とにかく多くの新規ユーザーを獲得してユーザー規模を爆発的に増やすことに注力する」というところから、「質のいいユーザーを獲得し、そのユーザーと中長期的な関係を継続して安定した収益を得る」というところに目が向き始めた。言い換えると、スマートフォンゲームのプロモーション手法に求められる役割の一部が従来はスマートフォンゲームのARPUをはじき出す際の分母を増やすところに力点が置かれていたが、現在分子のほうを増やす施策へと目が向き始めている。

それがゆえに、ターゲティング広告や、ユーザーのステータスに応じてパーソナライズ化が可能なクリエイティブ対応が進みつつあると読み解くことが出来る。

 

このようなモバイルゲーム会社の環境変化については、ファンコミュニケーションズの広報ブログに、ゲーム会社の実例を交えて詳しく紹介されている。

 

無論これらの広告商品の登場には、モバイルゲームだけではなく、Eコマースを運営する広告主をターゲットと想定しているものや、供給側における技術の進展など様々な背景があるのであろう。だが、スマートフォン広告市場で最大の広告主層であるモバイルゲーム会社のビジネス環境の変化が少なからず影響しているとみてよいであろう。

 

今年もスマートフォン広告市場は引き続き順調に成長するであろうが、その中身は昨年とはちょっと違うものになるのかもしれない。

 

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。