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データドリブンなマーケティングが直面する課題を“有機的統合と可視化” した管理で解決するDatoramaのテクノロジー [インタビュー]

データドリブンなデジタルマーケティングが普及する中で、広告主や広告会社にとり必須となりつつある膨大なデータの取り扱いの現状、直面している課題、そしてこれを解決しうるDatoramaが提供するソリューションについて、CEO/ファウンダーのRan Sarig氏、Managing Director, APACのMick O’Brien氏に聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 野下智之)

マーケッター、エージェンシーを取り巻くデータ環境の変化と直面している課題

―プログラマティック取引がグローバル市場で拡大を続けています。業界が直面する課題はいまどのようなことが挙げられますか?

CEO/ファウンダー Ran Sarig氏, Datorama

CEO/ファウンダー Ran Sarig氏

Ran氏:まず直近のプログラマティック広告取引の課題として、アドフラウドやビューアビリティなどが、注目されています。これは業界全体で引き続き大きな課題として横たわっています。

また程度の差はありますが、最も難しいこととして、データ量が増えつつあるなかで、マーケッターやエージェンシーは、これらのデータセットを用いてどのように意思決定をしていくのかということです。キャンペーンに関わるデータについて、あらゆるチャンネルのデータが存在します。これらをしっかりと意思決定に利用出来るような体制、技術、知識を用意することが、マーケッターやエージェンシーの組織として求められつつあります。

―マーケター、エージェンシーは今、様々なデータを保有・活用して広告配信などに活かしていると思いますが、そこに最近何か変化があるのでしょうか?

Ran氏:歴史的なところから申し上げますと、初期の頃はプレミアム在庫にどのように向かうべきかという議論がありました。その後デモグラフィックデータなどを用いながらどうプレミアム在庫に向かうかということが議論として生まれ、それからデータ量がファーストパーティもサードパーティも増えました。これにより利用できるデータが増え、ターゲットの精度が上がり、よりキャンペーンの効果が上がってきたという経緯があります。その中で、データインテグレーションというのは非常に大きな課題になりつつあり、その領域を当社が支援をさせていただいています。

Mick O’Brien氏, Datorama

Managing Director, APAC
Mick O’Brien氏

Mick氏:オンラインだけではなくテレビなどオフラインチャネルの効果をどのように可視化していくのかというようなテーマもまた大きくなりつつあります。

したがって、現在はファーストパーティやサードパーティのデータを活用した後、その効果を可視化するという取り組みが進みつつあるという認識をしています。

―実際に貴社の取引先が持つデータのうち、ボリュームの観点ではファーストパーティとサードパーティのデータいずれが多いのでしょうか?

Ran氏:具体的なボリュームの比率ははっきりとは分からないです。われわれは現在マーケッター、デージェンシーとお仕事をさせていただくケースがあります。マーケッターの場合は、ファーストパーティデータ、エージェンシーの場合はサードパーティが多い傾向があります。ですが、エージェンシーとお仕事をしていても、マーケッターとの関係によりファーストパーティのデータ量が増えるなどのケースもあります。

Mick氏:どちらのデータセットについても、皆さん重視しておられて、両方をバランスよく使い分けていくスタンスを取られています。ファーストパーティデータのみ、サードパーティデータのみでよいという話ではないのです。潜在顧客を掘り起こすために、ある程度の規模のリーチを獲得するには、サードパーティデータというのは非常に有効だと思います。また、ファーストパーティデータは、既存顧客とのエンゲージメントを高めていく上で有効です。

 

独自技術によりAPIに依存せずデータ統合を実現、Datoramaがもたらすエンドベネフィットとは?

―貴社のプロダクトの概要やユニークポイントをお聞かせください。

Ran氏:当社のプロダクトは、企業の様々なところに散在しているマーケティング施策のデータを一元管理し、経営者やマーケッターが、これらのデータをもとに、最適なマーケティング施策を行う上で意思決定を支援するためのダッシュボードです。

マーケッターが自ら行った施策に関する説明責任を果たしていく中で、本当にそのデータが正しいものであるかどうかは常に問われています。そこで、マーケティング施策の意思決定を行うために必要なデータを、散らばっている状態から、一元管理をしてマーケッターの意思決定のためにベースとなる環境を整えてあげる必要があります。具体的には、マーケッター、エージェンシーやトレーディングデスクが、アドテクノロジーというものを活用した際に、これらに点在したデータを統合的に集約して、それをもとに意思決定をし、トレーディングをしていただくツールとしてご使用いただくものです。

エージェンシーは現在複数のDSPを活用されていると思いますが、それぞれのDSPは独立しており、予算管理も個別かつ部分的にしか出来ないのが現状です。

これらの個別の予算データをすべてDSPからDatoramaに転送して集約して全体の予算管理をすることが出来ます。

DSP以外にも、例えばマーケターの視点からするとソーシャルにも投資をしております。それぞれのチャネルで運用をするために、様々なプラットホームを活用されていますが、全ては部分最適化になります。

これまでは、マーケティング全体の活動の中でデータを集約するためには、Excelなどを使っていましたが、そこをDatoramaに置き換えてお使いいただくことにより、マーケティングデータの統合ダッシュボードをおライン上に構築し、マーケティングの活動に関わる社内外のステークホルダーで活用することが可能です。

Datoramaは、複数のデータソースからデータを取り込む際に、Datorama TotalConnectというわれわれ独自の技術を用いてAPIを介さずデータを取り込むことが可能です。

これにより、API接続対応をしていないデータソースからもデータを取り込めたり、あるいは接続するためのIT開発コストや手間を省き、効率よくデータを取り込めたりすることが可能になります。

Datorama TotalConnectは、マシンラーニングの機能も備わっており、運営者が過去にどのようなデータを取り込んできたかをラーニングしていきます。また、運営者はデータを取り込む際、ある程度の指示を出します。「こういうデータをこういう用途で使いたいからこういうふうに定義をします。」というようにです。これをシステム側が実績として吸収しながら、人の指示を受けずにデータのマッピングを自動的にすることが出来るようになるのです。

APIに依存したデータ管理ツールでは、データソースが50社あれば、データを取り込むためには50社のAPIと接続をするために、50社と仕事をする必要があります。われわれはダイナミックランディングゾーンがあるため、APIに依存しなくてもよいのです。マーケッターやエージェンシーがサンプルデータを基にデータモデルを構築してしまえば、あとはDSPやアドネットワークから、例えばEメールで送られてきたレポートや、通常レポーティングを受けているフォーマットのデータを基にして自動的に取り込むプロセスを作ることが出来るのです。このスピード感が、われわれが短期間で1400のクライアントと取引させていただいている実績にもつながっているのです。

―貴社のベストプラクティスについてお聞かせください

Mick氏:当社のベストプラクティスとして、ロレアルのケースが挙げられます。ロレアルは、自社で複数のブランドを持っており、各ブランドのセールスチャネルごとにエージェンシーが存在しています。そのような中で、全体のデータを統合的に管理して意思決定を行うということは非常に困難な作業でした。またこれをExcelでやろうというのは非常に現実離れしたことでした。そこをDatoramaが関与することにより、データを有機的につなげていくところを自動化し、それをダッシュボード化して、ロレアルのブランド担当者、メディア担当者、さらにエージェンシーというマーケティングの意思決定にかかわるステークホルダーの皆さんがDatoramaにアクセスして現状の把握をタイムリーに行い課題を早期に発見し、これを解決して、次のアクションへつなげていくというようなPDCAサイクルを回すことが出来る環境を整えることをお手伝いさせていただいたという背景があります。

―現在何社に導入されているのでしょうか? またどのような企業に導入されていますか?

Ran氏:グローバルでは、1400社に導入されています。現状、全ての業種広告主の導入実績があります。特にデジタルでアクティビティが活発なクライアントについては、ブランド系からダイレクトレスポンス系まで幅広く利用していただいています。

Ran Sarig氏, Datorama

CEO/ファウンダー Ran Sarig氏

Mick氏:当社のツールは、デジタルでのアクティビティが活発なクライアントとは非常に親和性が高いです。デジタルに対する投資が多いクライアントであれば、業種を問わず皆さんお使いいただいております。言い換えると、デジタルでのアクティビティに紐づく、データボリュームが多ければ多いほど、Datoramaとの親和性が高まります。もしデータボリュームが少なければ、Excelで事が済んでしまいます。

Datoramaが挑戦するグローバル、そして日本市場のデータ活用の現状と今後のビジネス展望

―貴社は現在グローバルで13拠点を展開されていますが、それぞれの国や地域での貴社サービスの導入状況や、データを活用したデジタルマーケティングの進捗状況について、どのように感じていますか?

Ran氏:本社のある米国市場では、マーケッター、メディア、トレーディングデスク、そしてエージェンシーがDatoramaを活用しております。喫急の課題は、多くのデータセットをつなげていくということです。このようなことを、Datoramaのように解決するベンダーは、他には存在していないという点において、非常に大きなリクエストを受けており、それをどう満たしていくのかについて、現在社員が一丸となり取り組んでいる状況です。

データを統合していくことにより、有機的につながったデータとより向き合う時間を取ることが出来るようになり、今までは発見できなかったポイントを見つけ、それをトレーディング、広告運用などの様々な意思決定に生かしていくことが出来るようになるということが、われわれから顧客への一つのフィードバックとしてあるのではないかと思っております。

欧州は、ロンドンを中心に、ヨーロッパ諸国の統合的なキャンペーンを管理したいというニーズが非常に多いです。そこの中でもデータを統合的に結合して管理をしていくといような要望がやはりあります。この点において、Datoramaに対する期待値が大きく、われわれにとりましても非常に大きな市場です。

オーストラリアは2年前に拠点を開設しました。業界は、今まさに同様の課題について解決策の糸口というのをDatoramaに期待しているところです。

Mick O’Brien氏, Datorama

Managing Director, APAC
Mick O’Brien氏

Mick氏:アジアでは、日本の他にはシンガポールでも拠点を開設しました。他の地域と同様に業界には潜在的な課題感があり、これらが今後より顕在化されていくのではないかと感じております。そのとき、われわれに対する期待がより高まると思っております。

東南アジアは、第三者配信がまだ根付いていないため、データを統合するための課題は多いのではないかと感じております。したがって、われわれのサービスの潜在的な需要は大きいと認識しておりますが、顕在化するに至るまでの段階を経ていく必要があります。そこはわれわれにとってのチャレンジとなります。東南アジアに対しても、シンガポールでの拠点開設を皮切りに今後積極的に投資をしてまいります。

―日本のプログラマティックの取引やデータ活用の現状については、どのようにご覧になっていますか。

Ran氏:一般的には米国のプログラマティック業界と比べて、日本はまだまだ発展途上であるというような意見もあります。ですが私個人が日本のマーケットを数か月体験した意見としては、日本のマーケットは、想像以上にプログラマティック領域に対して真剣に取り組んでおり、皆さんが独自にDSPやSSPを開発するなど、非常に投資を増やしており、マーケットの環境を整えようとしているエネルギーを感じます。

―今後の日本におけるビジネスプランとかマーケティングプランとかセールスプランについてお聞かせください。

Ran氏:日本は非常に先進的で、かつ洗練されたマーケットです。Datoramaにとっても非常に戦略的なマーケットとして捉えております。われわれのテクノロジーがマーケター、エージェンシー、アドテクプレイヤーなど、この業界のスティックホルダーの方々にまずは知っていただけるように努力をしてまいります。既に大規模のお客様との取引も開始しております。これを中長期的な関係性を構築できるように、実績を積みながら組織を作ってまいります。また日本には数多くのグローバル広告主さんがいらっしゃいますので、グローバルキャンペーンにおけるデータの統合、プラットフォームとしての立場でしっかりとご支援させていただけるような組織作りやオペレーション体制の整備を進めてまいりたいと考えております。また日本からグローバル市場に展開するキャンペーンの支援もさせていただけるような関係性を構築していきたいと思っております。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。