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サイバーエージェント流、レコメンドエンジンへの取り組み【前編】-参入背景とサービスの特徴-

サイバーエージェントのエディトリアルアドスタジオは今年4月に「A.J.A. Recommend Engine(アジャ レコメンド エンジン)」をリリースし、レコメンドエンジン事業に参入した。

同社がこの領域の参入に至った市場背景、サービスの特徴、そしてパブリッシャーへの導入事例について、2回に分けてお届けする。

第一回目は、同社 Ameba統括本部 広告部門(MDH) コンテンツマーケティング局 局長 湯田哲行氏が、市場背景やサービスの特徴について解説する。

メディアのマネタイズ環境の現状と、レコメンドエンジン需要の背景

パブリッシャーは、メディアをマネタイズするにあたり、メディアのDAUやユーザーの滞在時間といったメディアグロースの指標と、より高いCPMでメディアのスペースをマネタイズしていく収益指標という、大きく2つの指標で運営されています。
それぞれ様々なアプローチがありますが、これら2つの需要を同時に満たすものとして発展を遂げてきたのが、レコメンドエンジンです。

レコメンドエンジンは、記事や動画などのコンテンツの下部に、「こちらもおすすめ」といったレコメンドウィジェットを設け、ユーザーが次に見るべき最適なコンテンツを掲載することで、メディアの回遊率を高めてメディアをグロースさせ、 またそのウィジェット内にユーザーにとって最適なコンテンツタイプの広告を掲載することで、高いCPMでのマネタイズも同時に実現するというものです。

レコメンドエンジンのイメージ図

ユーザーが次に見るべきコンテンツの抽出方法は、協調フィルタリング、自然言語処理、DMPデータ、その他多数の要素を掛け合わせたハイブリッドレコメンドアルゴリズムに発展しています。

提供されるコンテンツタイプの広告も、キュレーション記事や動画タイアップ広告など、コンテンツマーケティング市場の伸長とともに高いCPMのものが提供され始めました。
コンテンツ下のレコメンドウィジェットのスペースについても、親和性の高さから高いCPMのコンテンツ広告の掲載に割り当てているパブリッシャーが多い状態です。

レコメンドエンジン市場の歴史と現状

レコメンドエンジン市場は、グローバルにおいては、「Outbrain」や「Taboola」などが大きくシェアを獲っています。日本への参入も早く、「Outbrain」は2013年、「Taboola」は2014年にTaboola社がヤフー社と業務提携し「Yahoo!コンテンツディスカバリー」としてサービスインして拡大を続けています。

また、popIn社の「popIn」、ログリー社の「logly」、インタースペース社の「X-lift」、GMOアドマーケティング社の「TAXEL byGMO」など、国内での新規事業者の参入もあり、市場は非常に活性化しています。
当社も2016年4月に、「A.J.A. Recommend Engine(アジャ レコメンド エンジン)」をリリースし、レコメンドエンジン事業に参入しました。
恐らく、ほとんどのパブリッシャーは、現在上記のいずれかを導入されているのではないでしょうか。また、フルスクラッチでの開発や、Cxenseなどを用いて自社でレコメンドエンジンを実装している企業も複数存在します。

サイバーエージェントがレコメンドエンジン事業に参入した背景

サイバーエージェントのメディア広告部門がレコメンドエンジン事業への参入を決めた理由は3つあります。

①レコメンドアルゴリズムの主要な要素のひとつである自然言語処理において「Amebaブログ」をはじめとする多数の当社運営メディアにおいて、この10年以上技術を磨いてきている。また市場において日本語に特化しているレコメンドエンジンは少ない。

②自社が運営するメディア・サービスに蓄積された大量のデータをレコメンドアルゴリズムに活用できる。

③当社では、エディトリアルアド(編集記事広告)や動画プラットフォーム「FRESH! by AbemaTV」の企画動画など、コンテンツタイプの広告の売上が急伸しており、これを最適なユーザーに提供する手段や最適な評価をする方法が求められている。またレコメンドネットワークに提携していただいたパブリッシャー様へ高いCPMの収益還元ができる。

どれも、我々がパブリッシャーの広告部門として本事業に参入することにより生まれる独自の強みだと思っています。
実際に、「Ameba」や「Spotlight(スポットライト)」をはじめとする自社メディアへ「A.J.A. Recommend Engine」の導入を行ったことで、回遊率も収益額も大幅に向上しています。

また、当社のタイアップ広告の企画・編集専門組織「エディトリアルアドスタジオ」では、以下のような思想を掲げています。
「最も質の高いコンテンツを生成し、最適なユーザーに最適なタイミング・プレイスでコンテンツ体験をしてもらう。」

当社においては、コンテンツの生成はエディトリアルアドスタジオの編集ラボが行い、配信ロジック部分をA.J.A. Recommend事業が担っています。この2つのプロフェッショナル組織を掛け合わせて、この思想を実現させたいと思っています。

イメージ図2

さらに「エディトリアルアドスタジオ」では、コンテンツマーケティングにおける態度変容効果検証など、生成コンテンツと配信技術を掛け合わせた総合的な研究も行っています。

「A.J.A. Recommend Engine」は、今後さらなる能力向上を狙うため、ハイブリッドアルゴリズムの要素のひとつである自然言語処理分野において何度も世界1位を獲得しているStudioOusia社と業務提携し、 より精度の高いアルゴリズム生成も試みています。
(参考URL:https://www.cyberagent.co.jp/newsinfo/info/detail/id=12346

今後は特にデータ活用の分野により注力し、あらゆるコンテンツマーケティングにおいて横断的に影響するレコメンドエンジンを組み立てていく予定です。

次回は、実際に「A.J.A. Recommend Engine」を導入されたパブリッシャー様との対談を通して、具体的な取り組み内容や効果実績をお伝えしたいと思います。

ABOUT 湯田 哲行

湯田 哲行

株式会社サイバーエージェント
Ameba統括本部 広告部門(MDH)
コンテンツマーケティング局 局長

2006年にサイバーエージェントへ入社。インターネット広告事業本部にて営業として従事。その後、営業マネージャー、営業局長、メディア局長を経て、2012年にAmeba事業本部にて、リワード事業立ち上げの責任者を務める。

現在はAmeba統括本部 広告部門(MDH) コンテンツマーケティング局 局長として、キュレーションメディアや企画動画、タレント・インフルエンサーを活用したマーケティングなど、コンテンツマーケティング領域の責任者を務める。