DSPはどこまでプログラマブルになるのか-AppNexus Adoni Ioannou氏 [インタビュー]

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グローバル大手のAppNexusが「業界初のプログラマブルDSP」と謳う「AppNexus Programmable Platform(APP)」をリリースした。旧来のDSPとの違いは一体どこにあるのか。AppNexus JapanのDirector of Strategic Marketsを務めるAdoni Ioannou氏に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire Japan 長野雅俊)

― APPの概要についてお聞かせください。

APPは当社が開発した次世代DSPです。オンライン広告枠の買い付けを行う広告会社が自社サービスを差別化すると同時に、各広告主の目的に沿ったカスタマイズができるという点に旧来のDSPとの違いがあります。またブランディングやダイレクト・レスポンス型のキャンペーン向けのターゲティングや最適化を目的とした高度な機械学習機能を有しています。

― 具体的にはどのような機能が含まれているのでしょうか。

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Adoni Ioannou氏、AppNexus
Director of Strategic Markets

APPを通じて様々な機能を利用することができます。利用者はAPI連携を通じて、またはAPPのユーザーインターフェースから諸々の機能を組み合わせた独自のソリューションを構築できるというのが特徴です。APPを通じて提供している機能には、Augmented Line Items(ALI、キャンペーン設定を行うユーザーインターフェース)、AppNexus Programmable Bidder (自社保有データと連携させる仕組み)、Programmable Splits(KPIを達成するために手動設定と自動設定の切り替えなどを行う調整機能)などが含まれます。またデータ・サイエンス部門を設けている広告会社であれば、この仕組みを通じて自社独自の最適化アルゴリズムを構築することもできます。

―「業界初のプログラマブルDSP」とのことですが、広告会社はどのような作業を自動化できるのですか。

オンライン広告取引に関連した反復作業を自動化することができます。例えば、広告会社の担当者が毎朝行っているような異なる広告手法に応じた広告予算の配分、レポートの抽出、パフォーマンスが芳しくない媒体のドメインの削除、一つのラインアイテム(個別の広告と各々の関連条件)が1日かけて均等に広告予算を消化するための調整、ビューアビリティー率を鑑みた上での入札価格の変更などです。

― オンライン広告取引に関する設定作業を自動化することで、実際にはどのような効果が得られるのでしょうか。

世界最大級の広告代理店グループとして知られるWPP傘下のデジタル・エージェンシーであるGreenhouse Groupが、APPと同社の運用担当者の手動設定を比較するA/Bテストを実施しました。同社はこのテストで、APPの機能の一つであるALIを活用しました。
このALIを使えば、オンライン広告枠の買い付け時に多数のラインアイテムを用意せずとも、ターゲティング用のパラメータとキャンペーン目標を設定することができます。実際に、ALIの高度な機械学習機能を通じて各種の複雑な要素を分析することで、最適な広告在庫を購入することができました。

その結果、A/Bテストでは、手動設定と比べて、APPはCPCが13%も改善。また作業時間は運用担当者が6時間30分を費やしたのに対し、APPは1時間45分と73%削減となりました。

パフォーマンスの改善及び効率化の度合いは状況や利用方法によって大きく異なりますが、単純なキャンペーンを実施する場合から、自社DSP内で複雑な買い付け方式を採用している場合まで、すべてのトレーディング・デスク担当者が効率化とパフォーマンスの改善を期待できるでしょう。

― オンライン広告運用作業が高度に自動化されれば、トレーディング・デスクという業態は必要なくなりますね。

いいえ。APPの機械学習アルゴリズムは、過重労働または人員不足に陥りがちなトレーディング・デスクをむしろ支援するためのものです。人間と機械学習アルゴリズムではそれぞれの得意と不得意があると考えています。

機械は、膨大なデータを処理したり、人間では見つけられないような一定パターンを見つけ出したり、繰り返し作業などを得意としています。一方で、機械よりも人間が得意な業務があります。正しいメッセージを、最適なメディアを通じて、最適なタイミングでユーザーに対して発信するためにマーケッターの目的をきちんと理解するといったようなことです。APPの活用を通じて、トレーディング・デスクは自らが蓄積してきた知見と機械学習技術をかけ合わせることで、費用対効果がある形で事業目的を達成できると信じています。

― ただ多くのトレーディング・デスクは、実際のところ、日々の運用業務を生業としているとの見方もできます。

確かにプログラマティック取引に関わるトレーディング・デスク担当者の多くが、ターゲティングや細かな広告配信設定作業に追われています。言い換えると、消費者のブランド認識を変えるための最も重要な部分であるにも関わらず、広告のクリエイティブな側面にはほとんど時間を割くことができていないのです。つまり、彼らは作業工程上に生じるあれやこれやといった面倒をこなすことばかりに忙殺され、事業の最終成果を出すということに集中できていません。

一方で、トレーディング・デスク担当者の多くは実はマーケッターが何を成し遂げたいのかという点を深く理解しています。APPは、彼らが広告戦略を練る時間を作り出し、彼らならではの創造性を発揮するための手助けをするツールです。

煩雑な日常業務から開放されれば、例えば異なる環境で色々なクリエイティブをテストするといった取り組みを行うことができるようになるでしょう。もしこのようなテストを実施すれば、その結果はマーケティングや商品開発にも生かすことができます。テスト実施開始から数日以内で、異なるサービス特典に対する評判や自社商品の位置づけなどが判明するからです。つまり広告活動が商品開発にまで影響を与える可能性があるということです。

― APPの世界及び日本での導入状況をお知らせください。

APPは現在オープンベータテスト版として公開しており、AppNexusのサービスをご利用いただいているお客様なら誰でも利用することができます。既に全世界で数百社が導入しており、日本では株式会社ジオロジック様や当社の戦略パートナーである ヤフー株式会社様にもご利用いただいています。

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長野 雅俊

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。