楽天のプログラマティック広告を支える [インタビュー]

2018年11月に楽天と米国リターゲティング広告大手AdRoll Groupとの合弁会社、楽天アドロールが誕生して以降、両者の取り組みはどのように進められてきたのか。

これまでの経緯と、楽天における現状の同社の位置づけや直近の取り組みなどついて、楽天アドロール代表取締役社長 香村竜一郎氏にお話を伺った。

(ExchangeWire Japan 野下 智之)

広告配信に楽天のデータを有効活用する

楽天とAdRollとの関係性についてこれまでの経緯を含めてお聞かせください

そもそもの両社の関係は、新会社を設立する以前の2016年11月に遡ります。AdRollは楽天に、楽天市場の店舗様向けにリターゲティング広告を配信するシステムのOEM提供を開始しました。

当時楽天としては4万に上る楽天市場に出店しているSMBを中心とする店舗様に向けたソリューションを求めていました。一方のAdRollはSMBに強いソリューションであったという点が合致をして、その後の提携に至りました。

現在は、月間700-800の楽天市場の店舗様に常時お使いいただいています。

パフォーマンスをより良くするために、楽天のデータを活用していくことになりましたが、それにあたっては楽天とAdRollとがより深い関係性にある必要があるとのことで、合弁会社を作り、楽天のグループ会社になることでより有効にデータを活用できる形を取ることにしたのです。

また折角データを使うのであれば、楽天市場に店舗を出店している広告主のみではなく、いわゆる楽天市場には出店していない、外部の一般のブランド広告主に提供できる商品も作っていくことを目指すことにしました。そして現在、楽天の広告商品RMP – AdRollとして提供しています。

香村さんの現在の役割についてお聞かせください

私は現在、楽天アドロールの代表取締役社長として、AdRollのソリューションをしっかりと提供することが出来ることと、楽天向けに開発したプロダクトマネジメントが役割になります。

楽天、楽天アドロール、そしてAdRollの3者間で開発を進めております。プラットフォーム自体はサンフランシスコの本社で作っています。その上に載るフロントエンドについては、合弁会社の方で開発することになります。

以前のAdRollは営業主体でしたが、楽天アドロールの現在は体制が大きく変わり、エンジニア主体の会社組織です。現在広告主と相対するアカウントマネジメントは、全て楽天の広告営業部門が対応しています。

6月10日のリリース「「RMP – AdRoll」において楽天グループサービスとの連携を開始の内容についてお聞かせください

昨年楽天と合弁会社を設立した当初は、両者でデバイスグラフの共有をして、クロスデバイスでのユーザー特定の精度を高めることを目的に楽天のデータを使っていました。そして今回、RMP – Trading Deskと同じ、楽天データのセグメントが使えるようになりました。

これにより、アッパーファネルのソリューションとしてより強くなります。プロスペクティングというAdRollならではの手法も使えますし、広告主自らがセグメントを独自に指定してターゲティングをすることも出来るようになります。

楽天AdRoll 図

出典:同社プレスリリース

楽天の消費行動分析データ活用も視野にプログラマティック領域を強化

ITPなど、ブラウザ提供者側によるクッキーの広告利用の規制により、リターゲティングを取り巻く環境は厳しくなりつつありますが、どのように見通していますか?

写真:香村 竜一郎氏

今後ますます厳しくなると見ています。この課題に対する明確なソリューションはまだどこも出していないと思いますが、クッキーに頼らない技術が今後1-2年で求められると考えています。
楽天の場合、ユーザーをIDベースで蓄積しており、これを利用したターゲティングが可能であるところが大きな強みです。

楽天アドロールは、スケーラビリティーを確保するために、クッキーを使ったターゲティングを引き続き行っていますが、今後ITPが強化されれば、クッキーに頼らないターゲティングや広告配信を行うという方向性へと変える必要があると考えております。

楽天として、AdRollのソリューションを取り入れたところで、新たに楽天の広告プラットフォームが出来るようになったことはどのようなことでしょうか?

今まで楽天の中ではなかったリターゲティングというソリューションを提供することが出来るようになったことが、一つ大きなことです。

楽天はプログラマティックな広告手法を広げていきたいと考えています。これまで、プログラマティックな領域では、RMP – TradingDeskというソリューションを提供してきましたが、ここにAdRollが入ることで、ソリューションとしての厚みが出来ました。今後プログラマティックをどのように拡張していくかというテーマに対するカギの一つになるのではないかと思います。

今後の楽天とAdRollとの連携の進め方についてお聞かせください

今回楽天データとの連携により、楽天のセグメントを使いRMP – AdRollからターゲティング配信が出来るようになりました。今後更に新しい機能をローンチしていきたいと思っています。

現在のRMP – TradingDeskとうまい形で融合していくことで、楽天のプログラマティックを強化していきたいと考えています。

楽天は2021年に広告取扱高2000億の目標に向けて広告商品の強化を進めています。共通して言えるのは購買データなどの消費行動分析データをベースにした楽天ならではのかたちでご提供できるということです。購買データを起点にした広告手法というのは今までになかったものです。この楽天が持つ強みを如何なく発揮することが出来るのではないかと思います。

ユーザーの検索データをベースにした広告商品は今まで強かったですが、そこを更に一歩掘り下げた購買データを活用し、より精度の高い広告商品を色々な形で提供できるのではないかと考えています。

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野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長

外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。