「統合的なマーケティングプラットフォームの基盤・体制構築支援でデジタル化を推進」-MightyHiveが日本で本格始動 [インタビュー]

写真1:MightyHive クリストファー・マーティン氏、

異なる広告関連プラットフォームの統合基盤・体制構築支援を主要業務とするMightyHiveが、日本市場での活動を本格化させた。コンサルティング企業と広告代理店が侵食し合っているようにも見えるこの領域において、どのような立ち位置を確保しようとしているのか。共同創業者兼COOのクリストファー・マーティン氏に話を聞いた。

聞き手:ExchangeWireJapan 長野雅俊

技術・人材・研修提供を通じてマーケティング支援

自己紹介をお願いします。

MightyHiveの共同創業者兼COOを務めるクリストファー・マーティンと申します。大学でコンピューター・エンジニアリングの研究を行い、MBA取得後は米国のYahoo!にて基盤整備とM&A業務を担当。2012年にGoogleそしてSalesforceの中核メンバーであった2人とともにMightyHiveを創業しました。MightyHiveは大手広告会社グループのS4 Capital傘下にあり、日本オフィスでは現在、広告主、広告代理店、広告プラットフォームに対してサービスを提供しています。

貴社の事業内容をご説明いただけますか。

広告主や広告代理店が、Google Marketing Platformを始めとする広告在庫の買い付けに関わるプラットフォームを効率的に利用するための支援を行っています。

現代のマーケティングにおいては、これらの買い付けプラットフォームと、例えばMarketoやSalesforceといったMAツール、そして各種の分析ツールを統合させる必要に迫られています。ところが、メディア買い付け担当者はデータサイエンティストが用いるアルゴリズムを理解できない。データサイエンティストによる分析結果はメディアの買い付けにまで結び付かない場合が多い。統合基盤を開発そして運用するのは容易ではありません。そこで本領域における技術・人材・研修提供を行っているのです。当社は、このような統合的なマーケティングプラットフォームの基盤・体制構築サービスをグローバル規模で展開する唯一の専門事業者であると自負しています。

具体的にはどのような業務を行っているのでしょうか。

例えば、動画広告、検索広告、インフルエンサーによる投稿の宣伝効果を、すべて同一基準で評価するにはどうすれば良いのか。各々の広告プラットフォームの管理画面や広告代理店が提供するレポーティングを眺めても、そんなごく基本的な疑問に対する回答さえ得ることはできません。その答えを知るためには、異なる広告形態を横断する統合的な分析基盤を構築する必要があります。

また広告業というのはある意味では季節労働のような側面があるので、繁忙期になると体制が揺らぐということが往々にしてあります。しかもデジタルマーケティング業界における人材の移動ペースは速い。そこで例えばデジタルマーケティング部門のVPや検索広告担当に欠員が出たら、直ちに一時的な業務代行者を派遣すると同時に正式な次期担当者候補に対する研修を施すなどしています。

「三角形の中央にできた空白部分」で事業展開

いわゆるインハウス支援に相当する事業なのでしょうか。

当社の「マーケティングプラットフォームとデータ利用のための基盤・体制構築」業務の中には、インハウス支援も含まれます。ただし、インハウス支援のみに注力しているわけではありません。

ちなみにこの業界では「消費者に関するデータは誰が管理すべきなのか」という議論が頻繁に行われていますよね。つまり、広告主、広告代理店、広告プラットフォーム、はたまた国によっては政府のいずれが消費者データを管理すべきなのか。

また欧州と米国では、プライバシーに関する権利の扱いがますます重要な課題になっており、消費者が個人データをより管理できるように規制が導入され始めています。これは、これからはマーケティング担当者が消費者に関するインサイトをどう得て、またマーケティング施策におけるメッセージをパーソナライズするに際してどのような対応をとるべきかを再検討する必要性が生じていることを意味しています。

さらに当社としては、決済が実際に行われる場所と販売時点情報管理システムにできるだけ近い位置で活用してこそ、消費者データは有用なものとなり得ると信じています。そうであるならば、そのデータを管理する基盤、体制、人材、ノウハウも広告主自身が持ち合わせていなければならない。世間で言われる「インハウス」とは、結局のところ、データ統合、データ保護、データ活用を促進する施策のあくまで一形態に過ぎないのです。

マーケティングに関連したデータ統合やデータ活用を目的とする支援業務は、一部のコンサルティング企業や広告代理店が既に提供しているのではないでしょうか。

実際のところ、それらの事業者を通じて、広告主が効率化や無駄な経費削減を実現することは難しいと考えています。

写真2:クリストファー・マーティン氏

まずコンサルティング企業は、例えば「2年にわたり5名を派遣する」といった契約を通じて企業の人件費抑制や人材確保を支援することを得意としており、基本的に広告在庫の買い付けを行わないので、広告事業そのものや広告費の抑制についての知見に欠けています。

一方の広告代理店は、広告在庫やデータ関連商品をパッケージ化して販売することを生業としています。パッケージ化することによる利点は多くある一方で、透明性には欠けるという問題がどうしても生じてしまいます。

また広告プラットフォームはソフトウェア事業なので、本来的にはサービス提供には適していません。また異なるプラットフォームを横断したサービスは絶対に提供しません。

コンサルティング企業、広告代理店、広告プラットフォームのいずれもができないことを、貴社であれば実現できると考える理由をお聞かせいただけますか。

当社は基本的にプロジェクト単位で業務を行うので、必要が生じたときのみ、顧客とはお付き合いさせていただいております。またオペレーターとして管理画面上で広告在庫の購入は行いますが、不特定多数の事業者への販売を想定した仕入れには関わらずに中立的な立場を維持しているため、広告運用業務の効率化を実現することができます。

つまり当社であれば、コンサルティング企業、広告代理店、広告プラットフォームを結ぶ三角形の中央にできた空白部分で事業を営むことで、広告費と人件費の双方における無駄を削減することができるのです。とりわけ広告費の中には、媒体、広告代理店、テクノロジー企業それぞれに対する費用に加えて、ビューアビリティ課金や重複接触分までが含まれています。これらを統合的な視点から精査するという作業は、当社だからこそできることなのです。逆に言えば、当社はコンサルティング企業、広告代理店、広告プラットフォームのいずれの事業者とも協業関係にあるとも言えるでしょう。

日本におけるマーケティングのデジタル化は遅れている

日本市場に対する印象を聞かせてください。

日本市場では、多くの西洋諸国と同様の広告プラットフォームや関連テクノロジーが利用されています。ただそれら西洋諸国とは異なり、インハウスはまだ普及していない。データ管理に関する課題も顕在化していない。日本市場のエコシステム全体としては、当社のサービスはこれまでそれほど必要とされていなかったように思います。

一方で、米国ではようやく取り組みが本格化した機械学習やクラウド技術を用いたデータ収集においては、日本市場の方がずっと先進的です。ところが、データ収集基盤構築を担当する部署と、広告在庫の買い付けを行う部門が完全に分離してしまっているので、マーケティングのデジタル化が遅々として進まない。

尚、日本ではビューアビリティとアドフラウドに関する問題の発生率が非常に低いです。日本の媒体社は極めて優良であるとの印象を持っています。つまりデジタルマーケティングのサプライチェーンがしっかりとしているので、欧州、米国、ラテンアメリカ市場で見られたようなサプライチェーンの精査や再構築に対する需要はそれほど強くない。

ただやはり、デジタルマーケティング業務の効率性は低いと言わざるを得ません。多くの広告主が広告代理店に大きく依存している状況が背景にはあるのかもしれません。日本におけるマーケティングのデジタル化は世界標準から5年ほど遅れているのではないでしょうか。

その意味では、日本は当社にとって最もやりがいのある市場であるとも言えます。だからこそ、私は日本への移住を決意し、日本オフィスの活動を本格化させたのです。これからがとても楽しみです。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。