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コロナ禍以前・以後のアプリマーケティングとは―「マーケティングOS」を目指すAppsFlyerが語る最新動向

コロナウイルスの感染拡大と外出自粛を受けて世の中の動きが変わった。この状況下でアプリマーケティングはどう変化したのか。各種の広告プラットフォームを通じたアプリのインストールの量や質を順位付けする「パフォーマンスインデックス」などの公表を通じてアプリマーケティング動向を伝えるAppsFlyerに話を聞いた。
(聞き手:ExchangeWire Japan長野雅俊)

 

200億円強を製品やセキュリティ強化などに投資

 

―改めて自己紹介をお願いします。

 

モバイルアプリ広告の効果測定プラットフォームであるAppsFlyerの大坪直哉と申します。日本支社の立ち上げから今年で5年目を迎え、現在では社員数が20人を超えるまでに成長しました。

 

―近年における貴社の注力領域についてお聞かせください。

 

当社がこれまで注力してきたのは、セキュリティ強化です。競合事業者は取得していない、情報セキュリティマネジメントシステム規格のISO27001や、クラウドサービス事業者のセキュリティの成熟度を示すCSA STAR認証を始めとする各種の世界的な基準や規制に準拠しています。

 

これらの認証の取得には非常に長い承認プロセスを必要とします。一朝一夕で整備できるものではありません。スマホ決済アプリやポイントプログラムといった金融系の企業様にはこの点を高く評価いただいています。

 

また最近ではベイジアンネットワークを推論モデルとして導入しました。従来よりも少ない量のデータでもより精度が高い推論を導き出せるようになったことで、広告不正を検知そして除外できる量が20%ほど増えています。

 

さらに不正業者による対抗措置の迅速化に対応するため、過去に遡って不正アプリインストールを検出する「ポストアトリビューションテクノロジー」を装備。莫大なサーバー維持費と開発費がかかりますが、今年1月に発表した投資ラウンドで調達した2億1000万ドル(約231億円)の資金を充てるなどしてこの仕組みを用意しました。

 

ちなみに一般論として、不況時には犯罪や不正が増加します。新型コロナウイルス拡大の抑止を目的に様々な経済活動が停滞している昨今の状況においては広告不正がますます増えると予想され、それに応じて当社の高度なセキュリティ対策への評価が一層高まると思います。

 

究極の理想は「マーケティングOS」になること

 

―貴社の根幹事業である「広告の効果測定」ではどのように差別化を図っていますか。

 

昨年8月に、「人」ベースでの包括的分析を行うための「ピープルベースドアトリビューション(PBA)」という新機能をリリースしました。マーケターにとっての永遠の課題が、複数端末やプラットフォーム、チャネルをまたいだユーザーの行動把握です。例えばスマートフォンとPCでは異なるIDが割り当てられるので、実際には同一人物が利用していたとしても、データ上は異なる人格として計測されてしまいます。当社のPBAでは、然るべきコンプライアンスやセキュリティに準拠した上で、これを一つの人格として捉えます。

同様の機能を用意する競合事業者があるものの、すべての企業のデータを一緒くたにしています。これでは「データプロセッサとデータコントローラーを分けなければならない」とするEUデータ保護指令(GDPR)に抵触しますし、Appleのクロスサイトトラッキング制限機能(ITP)では異なる顧客間でのデータを共有するとcookieの保持期間を24時間に限定されてしまいます。当社では顧客ごとにデータを区分けすることで、cookieを7日間にわたり保持し、ユーザーマッチングの精度を高めているのです。

 

―貴社の広告の効果測定サービスを従来のようにアプリだけではなく、ウェブやPC端末にまで拡張しているということですね。

 

当社の究極的な理想は「マーケティングOS」になること。つまりマーケターがマーケティングを行う上で必要とするあらゆるデータを提供するプラットフォームとなることを目標としています。

 

一つ例を挙げますと、ある大手衣料品チェーン様では、ユーザーが店舗で商品を購入する際にアプリを開いてバーコードを表示してもらっています。店員がこのバーコードをスキャンすると、ユーザーの購入情報がAppsFlyerのシステムに飛んでくる。この情報を、Google広告の最適化にご利用いただきました。つまり従来のインストールベースではなく、購入データに基づく広告の最適化を行ったわけです。前者であれば、シャツを購入したユーザーにまた同じシャツの広告を表示するということになりかねない。後者であれば、購入したシャツに合うジャケットやズボンをお勧めするということができる。この施策を活用することで、実店舗の売上が3倍以上になったと聞いています。

 

アプリでGoogleがFacebookを抜いて1位に

 

―貴社では、各種の広告プラットフォームを通じたアプリのインストールの量や質を順位付けする「パフォーマンスインデックス」を定期的に公表しています。どのような目的でこのような取り組みを行っているのでしょうか。

 

当社は広告のアトリビューション計測を行う上での公平及び中立的な立場を維持するために、広告主様または広告会社様以外からはお金を一切いただいていません。そしてその広告主様または広告代理店様が、どのメディアを使えば効果的なプロモーションが実施できるかという示唆を得られるように、モバイル広告におけるメディアソースを評価した業界標準のランキングを発表しています。

 

―その最新ランキングの総合的評価において、これまで1位に君臨していたFacebookをGoogleが抜きました。

 

割安なAndroidの利用率が各段に高い発展途上国ではGoogleが支配的ですが、iOSが普及している国や地域ではFacebookが勝っている場合も多いです。実際に日本では依然としてiOSがおおよそ6割のシェアを持っています。ただ日本市場の経済的停滞といわゆる「端末とサービスの分離」を受けた実質的な端末価格の値上がりを受けてか、シェアはフラットか漸減傾向にあります。

 

またOSだけでなく、アプリの種類によっても傾向は分かれます。非ゲーム領域ではFacebookが、ゲーム領域ではGoogleがグローバル規模で1位。いわゆるバーティカルごとに必要とされる広告のフォーマットが異なるため、それぞれの広告メディアの強みが生かされる場合とそうでない場合があるからです。

 

また忘れてはいけないのは、Facebookのインストールとして記録されたもの中にはInstagramのユーザーによるものが含まれていること。FacebookとInstagramでは、ユーザー属性が大きく異なります。つまりどういったジャンルで誰にリーチしたいかによって、最適な広告メディアは変わるのです。

 

―GoogleとFacebookの2強以外の動向についてはいかがですか。

 

Apple Search Adsが今後さらに伸長する可能性があります。また過去数年間の目立った特徴として、ハイパーカジュアルゲーム市場の急激な拡大が挙げられるでしょう。グローバル市場で成功した日本企業も増えている、芸者東京やITI、カヤック、またハイパーカジュアルではないですがマジカントなどがその好例です。これらのゲームアプリは広告収益モデルを採用しており、全画面に展開されるインタースティシャル広告を多用しています。このインタースティシャル広告で強みを発揮するのが、ironSourceやAppLovinといった広告プラットフォームです。

 

またMintegralやTikTokも強い。これまであまり存在感のなかったMoloco Adsも日本市場で急伸している。さらにはアドウェイズの子会社が運営するUNICORNが存在感を増してきています。

 

コロナ禍におけるアプリマーケティングとは

 

―コロナウイルスの感染拡大抑止を目的とした自粛の長期化による広告活動への影響が心配されています。

 

実際に広告の出稿を控えるという動きが出ています。日本ではその傾向が特に強い。一方で例えば中国では、広告単価が低下したことを受けて、広告出稿を積極的に行う企業もいます。

 

その際に重要なのはエンパシーつまりユーザーの気持ちに寄り添うこと。このような社会的状況においてただ「この商品を買って」を連発するだけの広告は反発を買ってしまいます。こんな状況だからこそ、ユーザーが本当に必要とする情報を届けることが重要です。

 

―一方で外出自粛が求められる環境下ではアプリの利用者は増えているのではないかと想像します。

 

少なくとも全体を平均してみれば、一般的な人々の可処分時間は確実に増えています。この状況を受けて、ハイパーカジュアルゲームアプリやマンガアプリといった細切れの時間を使って利用しやすいものだけでなく、ミッドコアまたはハードコアゲームや映画視聴に時間を費やすユーザーが増加しました。

 

日本市場に限定して言うならば、全体的に世界平均と比較して動きがワンテンポ遅れているといった印象です。通勤を続ける人が比較的多いからか、変化の度合いもやや少ない。

 

ただやはり非常事態宣言が出されてから、ハードコアゲームのインストールと収益がともに伸びました。さらにはソーシャルカジノ、教育、音楽といったジャンルも非オーガニックのインストールが増えています。

 

今は様々な広告主様が試練の時期を迎えていらっしゃると思います。データプロバイダーとしてできることは何なのか、マーケターの皆様をいかに支援できるのか。最新動向を記したレポート公表やオンラインセミナーの開催を通じた情報提供と合わせて、お客様と一緒にコロナ危機を乗り越えていきたいと考えています。

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長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。