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「認知施策と獲得施策を統合するのはデータ」―LINE社がダイレクトマーケティングイベントを実施

 

 

LINE株式会社は、7月28日、ダイレクトマーケティングをテーマとしたオンラインイベントを開催した。

 

 

cookie制限による影響は少ない見込み

基調講演を行った同社執行役員で広告ビジネス事業担当の池端由基氏は、コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした外出自粛傾向を踏まえたダイレクトマーケティング動向を説明。消費者の生活様式が大きく変わった結果、日本国内におけるECの利用率は前年比で118.9%、また近年は高止まり傾向にあったアプリのダウンロード数が131%と飛躍的に増加したと振り返った。

 

同社マーケティングソリューションカンパニーのカンパニーエグゼクティブでProduct Planning担当の菅野圭介氏は、2017年に開始したLINE広告は「運用型広告としては最後発であるかもしれない」と認めた上で、同サービスのリリース後は機能を急速に拡充したことで他の大手広告プラットフォームとは遜色ない状態となったと報告。電話番号やメールアドレスとの紐づけや半径3メートル単位の位置情報に基づいたターゲティング配信を実現したことに加えて、今後は類似オーディエンスの自動入札機能を追加する予定であると伝えた。

 

今後の市場の課題については、サードパーティーcookieの利用制限やiOS 14のトラッキング制限を挙げた。これらの課題に対応するためには、ファーストパーティーデータの活用や各社独自の固有識別子や固有IDの活用が鍵を握ると指摘。8400万人以上(2020年6月時点)のユーザーIDを保有するLINEという媒体上では、今後も変わらずターゲティング精度の高いマーケティング施策を実施できるとの見込みを述べた。

 

認知と獲得施策をいかに融合させるか

「LINEを活用したブランディングとダイレクトマーケティング」をテーマとしたパネルディスカッションでは、いわゆる認知施策と獲得施策の対比及びその統合手法などについて議論を実施。ゲーム、D2C、食品デリバリーサービスなどの各業界のマーケターがそれぞれの見解を披露した。

 

アプリマーケティング市場を牽引するゲーム企業を代表して登壇したのは、株式会社バンダイナムコエンターテインメントのビジネス戦略室NEマーケティング部データマーケティング課に所属する橋本貴大氏。同氏によると、ゲームアプリ業界ではこれまでブランディングが重視されていなかった。

 

しかし、世界全体で7兆円以上にまでゲーム市場規模が拡大したことに伴い、その巨大な市場において「目指すポジショニングの第一想起」となるためにブランディング施策が求められるようになってきている。

 

そこで同社では、LINEのトークリスト最上部に動画広告配信を行う「Talk Head View」を活用しながら、市場調査などを通じて認知の向上率などを計測しているという。また認知目的で実施した本施策はユーザーの行動に寄与したことから、認知施策と獲得施策を「無理に切り離す必要はない」との見解を示した。

 

さらにまたゲームアプリの競争激化を受けて、「初動の確保」の重要性が増しているとも指摘。事前登録を活性化させるためにLINEの友だち登録やメッセージ送信を活用しているという。

 

メッセージ受信をもサービス化

ボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST」やD2C ブランドを展開する株式会社I-ne ECセールス部 部長代理の稲益仁氏は、LINEを通じたCRM施策計画の一部を披露。ユーザーに対してLINE公式アカウントのフォローを積極的に働きかけており、宅配事業者のアプリを通じた「お届け予定通知」などを参考にした「LINE公式アカウントからメッセージが届くまでをサービスとする」ユーザー体験構築のあり方を模索している最中という。

 

LINE株式会社で広告事業の本部副事業部長を務める富永翔氏は、他のSNSでは能動的なユーザーに対して情報を提供する傾向が強いのとは対照的に、LINEの特性はプッシュ型でユーザーの興味をひくことができる点に強みがあると説明。また認知施策と獲得施策を統合させるためにはデータが必須であると主張した。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。