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電通ゲーミングQ&A:インタラクティブエンターテインメントの未来とその狙い

電通の東京本社でグローバルソリューション担当ディレクターを務めるジェイミー・マコンビル氏が、ゲーム領域のユニットである「dentsu gaming(電通ゲーミング)」の発足を受けて独占インタビューに応じ、APAC(アジア太平洋地域)におけるインタラクティブエンターテインメントの未来について語った。

 

電通ゲーミングは、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、それにメタバースといったゲーム技術の開発にどのようなアプローチで取り組むのでしょうか。また、こうした新たな機会に挑戦するブランドが考慮すべき重要な点は何ですか?

 

新しい技術の開発や統合にあたって、私たちは強固で没入感の高いゲーム体験を提供するだけでなく、商業的な成功の水準を引き上げることに努めています。私たちはよく、メタバース内にブランドのスペースを設置したり独自の仮想スペースをゼロから構築したりすることのメリットについて質問されるのですが、たいていの場合、この話はブランドにとって適切なことは何なのか、オーディエンスに本当に意味のある価値を提供するものは何なのかという点に行き着きます。

電通東京本社のグローバルソリューション担当ディレクター兼dentsu gamingのAPAC責任者、ジェイミー・マコンビル氏

 

ブランドによるバーチャル空間への参入に関して言えば、メタバースへの主要なアクセスポイントであるVRが今、転換点を迎えています。この転換を後押ししているのは「Oculus Quest 2」などのデバイスであり、驚くほど没入感の高い体験のレパートリーが、かつてないほど増えています。しかも、VR体験がますますソーシャル化しているため、仮想世界の中に構築するスペースをすべての人にとって安全でインクルーシブな場所にしなければなりません。そして、ブランドはVR体験を邪魔するのではなく、VR体験に貢献する必要があります。

 

eスポーツ分野は、APACでどのように発展しているのでしょうか。ブランドがこの地域で、あるいは世界全体でeスポーツのオーディエンスと効果的につながるにはどうすればいいですか?

 

APACでは、eスポーツがメインストリームとなるだけでなく、急速に独自の業界セグメントのひとつとなりつつあります。近年、eスポーツは本格的なスポーツとして認められるようになりましたが、これは人気の高まりやオーディエンスの増加に加え、大規模なリーグやトーナメントが登場したり、賞金額が高騰したり、主要な放送局が試合を中継したりしていることがその要因です。そして、このような状況が、eスポーツの制作、運営、商業化、プロモーションなど、あらゆる面で業界の発展につながっています。

 

また、業界のパートナーや各地域のチームからは、APACにおけるeスポーツのオーディエンスは他の地域とはかなり違うという声が聞かれることが増えました。APACのeスポーツのファンは、自国に対する誇りが高く、地元のチームを強く支持しています。そんなファンたちは、プレイや視聴の機会が多いだけでなく要望も多く、コンテンツの質や代表チームの多様性、体験の豊かさをさらに高めるよう求めています。世界のゲーム人口の半分以上を占めるアジアは、ブランドにとって無視できないほど大きなチャンスがある地域です。ノン・エンデミックなブランド(非ゲーム的なブランド)はスポンサーシップを参入の手段と考えがちですが、ゲームパブリッシャーやリーグ運営者と協力して、より統合されたコラボレーションの機会を確保し、オーディエンスに真の付加価値をもたらすことを目指した方が良いでしょう。

 

ゲームのスタートアップへの投資に関して、電通ゲーミングは主にどのような特徴に注目しているのでしょうか。特に調査している分野があれば教えてください。

 

電通ゲーミングは、ゲーム業界全体の発展と拡大に貢献すべく尽力しています。電通がすでに保有している資産に基づいて、私たちが戦略的投資の対象として関心を持っている分野は、ゲーム内広告、eコマース、データ管理技術、複数のゲームを橋渡しするコミュニティベースのプラットフォーム、そして3D開発など新しいゲーム体験の構築に取り組むコンテンツ開発者です。

 

また、電通の100%子会社で、オリジナルゲームを開発しているSMG Studioがオーストラリアにあります。私たちは、SMG Studioが他のクリエイティブ主導のゲームスタジオとも提携し、電通グループの力も活用して、それらのタイトルを市場に投入できるような仕組みを検討しています。SMG Studioと電通が力を合わせることで、エンターテイメントやポップカルチャーのIP(知的財産)ライセンスを活用したり、ブランドに開発者を直接紹介したりする機会がもたらされます。その結果、ブランドはゲームに参入するだけでなく、これまで不可能と思われていたレベルでインテグレーションを実現できるようになります。

 

ブランドは、地域レベルやグローバルレベルで、ゲーム内広告をどのように検討しているのでしょうか。他の形態のアプリ内広告と比較して、マーケターが考慮すべきことは何ですか?

 

ブランドはゲームの世界がチャンスに満ちていることに気づいており、独自のやり方でゲームに参入しようとさまざまなアプローチを試しています。ゲーム内広告モデルでは、ブランドをゲームの世界に統合し、ユーザーのゲームプレイを邪魔することなく、リアルな世界と同じように広告を提示することが求められます。しかし、ゲーム内広告のエコシステムは非常に複雑で、しかも急速に進化しています。ブランドにとって新たな機会が生まれているとはいえ、この形態の広告は今までにない極めてユニークなものであるため、他のタイプのアプリ内広告とは直接的に比較できないことを頭に入れておく必要があります。

 

したがって、マーケターがゲーム内広告にアプローチするときには、ゲーマーの好みや考え方を常に考慮しなければなりません。具体的には、目の前の体験を邪魔したり気を散らしたりすることなくゲーム空間に価値をもたらす方法を考える必要があります。さらに重要なのは、あらゆるゲーム、タイトル、体験に同じものは一つとして存在しないということです。したがって、ブランドがゲーム分野に参入するにあたっては、ちょっとした手法の違いがきわめて重要な意味を持ちます。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。