セプテーニに聞く、Apple Search Adsの現状と今後の期待[インタビュー]
市場環境が大きく変わりつつあるアプリ広告市場において、近年注目が集まり、また需要の増加が進む広告商品の一つに、Apple社が提供するApple Search Adsがある。
同商品の需要動向や事例、今後の期待などについて、アプリ広告運用の強さに定評がある、Septeni Japan株式会社 アドマネジメント本部 メディア戦略推進部 西迫 美京氏にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire Japan 野下 智之)
―自己紹介をお願いします
2015年に入社し、主にアプリ広告の運用担当として、コンサルタントのキャリアを5年ほど重ねてまいりました。その後2020年よりメディア担当として大手アプリ媒体を担当しています。
2年ほど前から集まる注目
―Apple Search Adsについてお聞かせください。いつ頃から注目され始めたのでしょうか?
Apple Search Adsは2018年に日本でローンチされました。比較的新しい媒体といえますが、直近でとても注目されています。
Apple Search AdsはAppleのアプリストアであるApp Store 内に表示される広告です。大きく二つの種類に分かれていて、一つ目はApp Store 内の検索結果の最上位に表示されるSearch results広告です。
Appleはアプリのインストール情報を保有しており、過去にプロモーション対象のアプリをアンインストールしたユーザーへ配信したり、あるアプリをダウンロードしたユーザーに対し、そのアプリを提供する企業の他のアプリの広告を配信するようなことも可能です。
二つ目は、検索タブのページにある「おすすめ」枠の最上位に表示されるSearch tab広告です。こちらは2021年5月にローンチされたメニューです。
二つともアプリストア内に広告を出すことができます。またどちらも1枠ずつなので非常に貴重な枠であり、アプリのインストールに対するモチベーションが高いユーザーに広告を配信することが出来るので、非常に広告主様からも注目されています。
―近年広告主からの支持が高まっている背景についてお聞かせください
Apple Search Adsは、アプリ広告向けの貴重なプル型の検索広告媒体ということで、需要が増しています。
Apple Search Adsはどの検索キーワードでユーザーがアプリをインストールしたのかなど、キーワード一つ一つの分析が可能です。広告主様のサービスに対するニーズやインサイトの把握が出来るという部分において需要が高い媒体であると認識しています。
-アプリ広告市場は、コロナ禍やIDFA利用制限など様々な環境変化がありましたが、Apple Search Adsについてはこの間どのような影響を受けていますか
アプリは余暇時間が増えるとインストールされやすくなります。アプリ広告の需要自体はコロナ禍でそこまで下がることはありませんでした。むしろコミックやゲームなど余暇時間を費やせるようなアプリにおいては需要が増加するという状況でした。
IDFAの制限についてですが、AppleはもともとIDFAを使わない、AppleIDベースによる計測手法をとっています。したがって、他の媒体と比べると大きな影響を受けなかったと聞いております。ATT(AppTrackingTransparency)導入によるIDFAの利用制限前後で、管理上何かが変わったということはないので、従来通りに広告効果を計測することが出来ます。このことから広告主様にも安心して出稿いただけるかと思います。
ただ、他の媒体と広告効果を比較したい場合は、Apple Search Adsも計測ツールベースでみることになるため他の媒体と同様に効果計測に欠損が出てしまう、ということには注意が必要です。
プロモーションに向かぬ業種なし
-どのような広告主に使われていますか?またApple Search Ads が向いている広告主とそうでない広告主というのはありますか?
当社においては、Apple Search Adsがどのプロモーションに向いていて、どのプロモーションには向いていないということはあまり考えておらず、Apple Search Adsはどの広告主様でも活用できる媒体であると認識しています。アプリプロモーションを実施される広告主様全てに推奨しているという状況です。
冒頭に申し上げましたが、アプリインストールに対するモチベーションが比較的高い状態のユーザーに対して広告を配信することが出来る媒体ですので、Apple Search Adsを出稿しないという選択はそれほどないのではないかと考えております。
Apple Search AdsはLTVの観点からも、継続率やROASがとても高い媒体です。アプリを長期的に利用してくれるユーザーを獲得するという意味においても支持されています。
Apple Search Adsは顕在顧客だけではなく、潜在顧客にもアプローチをすることが出来るという特徴があります。したがって、当社ではApple Search AdsをApp Store 内の受け皿の役割として、位置付けるのがいいと考えております。
-Apple Search Ads の出稿額が比較的大きい広告主の業種はゲームなどでしょうか?
当社においてみられる傾向として、Apple Search Adsだけではなくアプリ媒体全般にいえることですが、ゲーム領域の広告主様はリリースのタイミングで出稿額が大きく、コミックやマッチングアプリなどの非ゲーム業種の広告主様は、長期にわたり多く出稿されています。
-広告出稿時のKPIはどのようなものを設定されるケースが多いのでしょうか?
サービスのリリース初期においては、KPIをインストールにおくこともありますが、中長期ではLTVを見ていらっしゃる広告主様のほうが多いです。当社ではアプリのユーザー登録単価や、ROASといった指標をKPIとして運用をしている案件が多いです。
アプリ広告主の予算配分上位媒体へ
-広告主がアプリのプロモーションをするということになった時、その予算配分をするとき、今ではもうApple Search Ads は相当上位の媒体として扱われていると聞いたことがあります。貴社においてもやはりそのような状況を実感されていますか?
そのような実感はあります。広告主様からも、Apple Search Adsに予算をしっかりと充てるという判断をしていただいています。
当社の中でもApple Search Adsの需要の伸びが顕著になってきたのは直近2年ほどです。
―Apple Search Ads の活用における成功事例がありましたら、お聞かせください。
ここでは大きく二つの事例をご紹介いたします。
事例①
1つ目はスクリーンショットにおける検証事例です。
Apple Search Ads では、キーワードとスクリーンショットを掛け合わせることでユーザー行動の検証が可能となります。例えば、「無料 〇〇アプリ」と検索しているユーザーに対して、DL数をアピールした訴求と機能をアピールした訴求のどちらがクリックをされるのか、インストールにつながるのかなどの検証を行うことが可能です。
他にも縦型と横型ではどちらのスクリーンショットがよいのか、静止画と動画はどちらがよいのか、など様々な検証が可能です。当社ではこれらの検証を行った結果、TTR(CTR)が上昇し、CPIが改善した事例がございます。特にTVCMご実施時などは、CM素材を活用することでより効果が出やすいということがわかっています。
また、このスクリーンショット検証に関して、以前はお客様のApp Storeページ自体を変更する必要があったのですが、2022年1月末より連携が可能となったカスタムプロダクトページ(CPP)を活用することでApp Storeページを変更する必要がなくなったため検証が容易になっています。
当社ではアップデートに合わせてスピーディーに検証を進めていき、各キーワード群に合わせたカスタムプロダクトページ(CPP)を作成することで、TTR(CTR)・CVRを改善できた事例が既にございます。検証に活用するスクリーンショットの作成も当社で行うことが可能です。
*カスタムプロダクトページ:通常のApp 審査とは別の審査にて、35種類のプロダクトページを作成し公開することが可能。
事例②
2つ目はSearch tab広告の事例です。
Search tab広告は検索広告ではなくオーディエンスを指定した配信になるため、どちらかというとPush型の広告になります。そのため認知要素が強いメニューになっており、TVCMや周年イベントなどがあるタイミングでアプローチするのが効果的です。
TVCMや周年イベントの認知キャンペーンに接触したユーザーが、後にApp Storeに訪れた際、ユーザーの取りこぼしのないよう、Search tabキャンペーンを受け皿として活用している例もございます。インストール後のアクションを目的とする広告主様でももちろん配信は可能です。
また、特に認知度の高いサービスや、リリース後少し日が経っているようなサービスにおいて獲得効率が上がりやすい傾向があります。お試しいただいて効率が上がるターゲット層を分析するのが良いかと思います。
App Store アップグレードに沿った最適機能を期待
-今後のApple Search Adsの活用ではどのようなところがポイントになってくるでしょうか。
App Store内では様々なアップデートがあるため、App Store全体の最適化という面でもApple Search Adsと掛け合わせながら上手くアップデート機能を活用していくことがユーザーの獲得につながると思います。
―Apple Search Adsの運用に関して貴社ならではの強みがあればお聞かせください。
広告主様ごとに、どのような配信設計にすればよいか、どのようなキーワードで配信をすべきかといった細かい設計・分析を行うところが、当社の強みとして自負している点です。先ほど、どの業種の広告主様であれApple Search Adsが向いていない業種はないと申し上げたのは、私たちがこの点を徹底しているからです。運用の設計は広告主様とご相談をしながら進めさせていただいており、Apple社のご担当者様からも、しっかりと細かい運用をしてくれていると、高く評価いただいております。
【西迫氏が登壇するExchangeWireJAPAN ThoughtLeaders #002のご案内】
今回のインタビューにご登場いただいた西迫氏が登壇する無料バーチャルミニイベントExchangeWireJAPAN ThoughtLeaders #002を、2022年6月22日(水)17時より開催いたします。
タイトルは「Apple Search Adsを上手に伸ばすには?セプテーニの運用メソッドを公開」です。セプテーニが持つノウハウから生まれた事例を共有いただきます。
詳細及びお申し込みはこちらからご確認ください。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長 慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。