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Google、サードパーティCookieの廃止を再延期:アドテク業界が取るべき対応は?

アドテク業界の公然の秘密が、7月末についに公表された。Googleが再び、サードパーティCookieの廃止を延期すると発表したのだ。

 

Googleは当初、2022年までに「Chrome」からサードパーティCookieを排除するとしていたが、それをいったん2023年に先送りし、今回さらに予定を遅らせた。現在の予定では、期限は2024年とみられている。Googleはプライバシーサンドボックス内で、この変更に対応するソリューションの「評価とテスト」をおこなうため、時間を稼いだのだ。

 

今回の発表について、ExchangeWireの最高戦略責任者、キアラン・オケーンは次のように述べている。「『プライバシーという空き缶』をさらに遠くまで蹴飛ばしたとしても誰の得にもならない。業界はすでに、Chrome上のプログラマティックマーケティングに最適化された状態にある。だがそれも、ウェブ上の50%を占めるに過ぎない。広告運用の専門家の話では、この中でも、アドレサブルな在庫はわずか60%で、残りの40%のユーザーは、プライバシーモードを利用したり、強力なプライバシー設定を適用したりしているのだという。つまり、数十億ドル規模のアドレサブル市場は、オープンウェブのわずか30%にしか目を向けていないということだ。我々が行っているのは、崩壊しつつあるレガシー事業の延命にすぎない。Googleは勇気をもってプライバシーファースト時代へのタイムラインを早めるべきだったのに、結局はいつもの通り、先送りだ」

 

遅かれ早かれ「Cookie黙示録」がやってくる

サードパーティCookieの廃止に関する話題は、Googleが最初にこれを発表して以来、常にこの業界で物議をかもしてきた。エージェンシーもベンダーも「Cookie黙示録」に備えている。Cookieレス世界の到来が近づくなか、アドテク業界は、データの収集と、同意やプライバシーを両立させる代替テクノロジーの開発に取り組んできたが、その成果はまちまちだ。

 

サードパーティCookie廃止への備えはどれだけ進んでいるのか?この疑問が、いつも議論の中心にあった。サイビッズ(Scibids)の最高マーケティング責任者、ナディア・ゴンザレス氏は、「プライバシーファーストのソリューションは複雑」であり、最終期限の延長によって「広告主とパブリッシャーは代替手段をテストする時間を稼ぐことができた」と言う。アゼリオン(Azerion)の最高執行責任者、アナ・フォーブス氏も同じ意見で、「多くのブランドや広告主で、Cookieレスソリューションに向けた進展が見られる一方で、まだ備えが十分でない企業も数多く見受けられるのは残念だ」と、述べている。プライバシー保護への期待を満たしつつ、Cookieに代わるデータ収集手段を準備できていない企業は、Googleの2度目の延期措置に、安堵のため息をついているに違いない。

 

一方で、多くの人々が考えるよりも、サードパーティCookie廃止に向けた対策は進んでいるという意見もある。ライブランプ(LiveRamp)でアドレサビリティ・アクティベーション担当のシニアバイスプレジデントを務めるトラビス・クリンジャー氏は、「インターネットの45%以上はすでにCookieレスの世界だ。モバイルアプリ内にも、CTVにもCookieはない」と指摘し、Googleの2度目の延期は「多くの企業で、Cookieレスの代替手段への転換がまだ十分に進んでいない」という誤解に影響されたものではないかと述べた。パーミューティブ(Permutive)の最高収益責任者、マーク・パールスタイン氏はこうした考え方を支持し、ヨーロッパでは「『すべてのCookieを拒否』するオプションが導入され、すでにパブリッシャーは非常に高い(実に55%もの)オプトアウト率に見舞われている。Googleによる延期の発表はそうしたなかで」行われたのだと述べた。こうした視点で考えると、ティーズ(Teads)のジェームズ・コルボーン氏が主張する、「Cookieレスの時代は先送りされたどころか、すでに到来している」という意見も説得力が増す。Googleブラウザの競合でもあり、世界のオープンウェブの40%を占めるSafari、Firefox、Edgeといったビッグプレーヤーも、すでにCookieを廃止している。

 

最後の一瞬をただ待つわけにはいかない

アドテク業界が、サードパーティCookieの終焉に備えができているかどうかにかかわらず、Cookie黙示録が間近に迫っていることに変わりはない。到来が予定より少しだけ先に遠のいただけだ。このことは広告主にとって何を意味し、どんな対応をとるべきなのだろうか?だが、広告主の業種を問わず、その答えはみな同じになるはずだ。そう、今すぐ「行動を起こせ」ということだ。

 

「Googleの動きをあと1年待つのではなく、業界はCookieの先を見据え、効率的で倫理的な方法を模索し、すぐにでもテストを開始するべきだ。ファーストパーティのビヘイビアデータもその選択肢の中に含まれる」と、アドルディオ(Adludio)のCEO、ポール・コギンズ氏は言う。ナノインタラクティブ(Nano Interactive)でプロダクトマーケティングの責任者を務めるヘザー・ロイド氏も同じ意見だ。業界の「総力を尽くし、それによってもたらされた変化や機会、学びを積極的に取り入れるべきだ」と促している。実際、GoogleのサードパーティCookie廃止の延期という決定は、代替手段の開発の勢いを削ぐ可能性がある。しかし、アドテク業界が未踏の地に足を踏み出すための、足場固めに必要な準備期間を与えてくれたともいえる。ジェームズ・コルボーン氏は、「最終的にGoogleがサードパーティcookieを廃止するのがいつだとしても、ブランドやパブリッシャーがこのまま代替手段の導入を遅らせていては、備えが不十分なままに最後の一瞬を迎えることになる」と指摘する。要するに、Googleがくれた猶予を活かして、cookieレスへの転換を進めていなければ、やがて訪れるCookie終焉の時、取り残されるリスクが高くなるだけなのだ。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

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2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。