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一社提供ならではのユニークな広告展開―TVerオリジナルコンテンツを活用したKINTOの特徴認知施策[インタビュー]

 

これまでテレビCMやYouTubeでの動画広告配信などを中心に、広告展開を広げてきた株式会社KINTO。そんな同社は2023年1月から、TVerオリジナルコンテンツ「褒めゴロ試合」においても、TVer初のKINTOの一社提供番組という形でユニークな広告展開を始めている。

 

KINTOのTVerにおける新たな広告展開や狙いについて、株式会社KINTO マーケティング企画部 主幹 小池 瑛之氏、Septeni Japan株式会社 第一営業本部 第一営業部 上野 佑氏に話を伺った。

(聞き手: ExchangeWire Japan 渡辺 龍)

 

 

 

サービス認知施策から特徴認知施策へ

―近年のKINTOのビジネス環境についてお聞かせください

小池氏:ありがたいことに、KINTOの契約件数は右肩上がりに増えております。この要因は大きく2つあります。1つ目は、多くの会社が自動車のサブスク事業に参入したおかげで、サブスクサービスに対するお客様の理解が進み、業界全体が盛り上がりを見せていることです。実際、Googleトレンドの自動車カテゴリで「サブスク」と検索すると、検索ユーザが右肩上がりに増えていることがわかります。2つ目は、取り扱い車種の強化です。KINTOでは、新サブスクサービス「KINTO Unlimited」の第一弾として、トヨタが今年初めに発売したプリウスのUグレードを対象車種として提供することを発表させていただきました。このUグレードの価格設定(月額利用料の安さ)、性能(燃費)、サービス性(乗っている車が進化する仕掛けやアプリによる安全運転診断)、納車時期の目途がお客様から好評価をいただいており、KINTOの契約件数増加に影響を与えております。これは、トヨタとともに、モノづくりの現場から入っていくKINTOならではの取り組みで、他社にはなかなか真似できない仕組みだと思います。

 

―現在のブランド・マーケティング戦略方針についてお聞かせください

小池氏:KINTOという名前が浸透し始めたこともあって、昨年は「サービス認知」よりも「サービス検討や理解」に重きをおいた1年でした。そのため、様々な動画媒体を利用しながらクリエイティブの分析を行い、どんなメッセージなら検討度や理解度がアップするのか、徹底的に検証できたと思っております。振り返りの方法などを広告代理店に協力していただきながら、一定の成果に手ごたえを感じることもできました。今年は検討度や理解度を向上させながら、並行して特徴認知を伸ばしていきたいと考えております。テレビCMでは秒数の制限もあり「KINTOというサービスの名前を認識させる」までしかできませんでしたが、特徴認知を伸ばすことで「KINTOというクルマのサブスクサービスを知っている。メリットは諸費用がコミコミ」のレベルまでお客様に浸透させていき、より検討度の高いユーザを増やしていきたいと考えております。

 

―そういった戦略に沿って、これまでデジタル動画広告をどのように活用してきたのでしょうか

小池氏:KINTOが提供するサブスクサービスは、理解してもらうのに時間がかかるサービスだと認識しております。そのためこれまでは、サービスの「検討度」や「理解度」を上げる時は長尺動画を使用してより丁寧に説明しつつも、お客様が飽きないように工夫を施すことを心掛けてきました。ただ、長尺動画は短尺動画と比べて単価が高くなるので、新規客へのリーチを広げるという観点では不向きでした。そのため、今年から積極的に取り組んでいく特徴認知施策では、リーチを広げることを目的に短尺動画で制作することにしました。短尺でもサービスの特徴を理解してもらえるよう「短い言葉」で「わかりやすいシチュエーションを想像させる」ことを心掛けながらクリエイティブを制作しております。振り返りの評価についても昨年同様、広告接触者・非接触者へのアンケート調査やデータクリーンルームを活用した分析を行う予定です。このような分析ができるのもデジタル動画広告の強みだと思います。

 

 

KINTO一社提供のTVerオリジナル番組で新規客へのリーチを広げる

―TVer完全オリジナルコンテンツ「褒めゴロ試合」への一社提供チャレンジに至った背景や狙いについてお聞かせください

小池氏:先程もお話した通り、長尺動画は短尺動画に比べて単価が高くなり、新規客へのリーチを広げるという観点では不向きでした。何か良い方法がないかと考え始めたタイミングで、TVerでは初となる一社提供でのオリジナルコンテンツ番組のお話をいただきました。お話を聞いた時、この仕組みならうまくいけば広告費を増やすことなく、リーチを広げることができると思ったのが最初のキッカケです。また、他にTVer の提案に惹かれた点として、番組のコンセプト検討から入らせていただけたことも大きかったです。最初の段階から番組の目的や狙いたいターゲット層を制作現場とすり合わせることができたので、ズレが生まれずに番組内容の議論ができました。ターゲット層に合わせた番組作りをしたいという観点から、プロデューサーに佐久間宣行さん、MCにさらば青春の光の森田哲矢さんと若槻千夏さんを起用できたことも非常に良かったです。このキャスティング力もTVerの強さだと思います。実際、「褒めゴロ試合」の視聴者の性別や年齢を見ると、TVer全体の傾向とは全く異なり、当社が狙った通りのターゲット層に届いていることがわかっております。

 

―番組連動のインフォマーシャルや提供表示の仕掛けへ込めたこだわりについてお聞かせください

小池氏:TVerの広告はスキップ機能が無く完視聴率が高いので、せっかくなら広告面もコンテンツ化して楽しく視聴体験してもらえるようこだわりました。今回のインフォマーシャルでは、人気芸人コンビのコットンさんを起用して番組本編と連動した内容になっているので、コットンさんの掛け合いを是非、楽しんでいただきたいです。一方、KINTOに興味がない人にもわかりやすく、更に興味をもってもらえるような説明を考えるのに苦労しました。こちらが言いたいことばかり伝えていると途中で視聴者が離れてしまうリスクを考慮し、セリフ回しは何度も修正しました。

また、少しでもKINTOの印象が残るよう、提供クレジットにも遊び心をふんだんに盛り込み、面白い仕掛けを取り入れました。従来なら「この番組はKINTOの提供でお送りします」の一言で終わってしまうところですが、ここでも番組にちなんだ「褒める」掛け合いを交えた、ユニークな提供表示にしています。このようなチャレンジができるのも、まさに一社提供ならではの良さだと思っております。

 

―広告では視聴者に「KINTO」をどのように印象付けたいと考えていたのでしょうか

小池氏:高額商品の車を利用することは、お客様にとって決断力がいることだと思います。

KINTOは「毎月のお支払額が一定」「万が一の時も安心の保障内容」「いつでも車を手放せる手軽さ」というコンセプトで、お客様のハードルを下げたサブスクサービスを展開しております。今回の施策を通して、このようなKINTOの良さを少しでも理解してもらえたら嬉しいです。

 

 

インフォマーシャルの接触・非接触者間で利用意向は約2.8倍の差に

―実際の効果はどのようなものだったのでしょうか

上野氏:今回、メディア横断で計測できるようデジタルログリサーチのAccessMillを用いて計測を行いました。その結果、TVer「褒めゴロ試合」においても、インフォマーシャル接触者のうち「KINTOのサービスを検討したい(『検討したい』『やや検討したい』の合算)」と回答した人の割合は、非接触者に比べて約2.8倍になりました。

 

―施策に関して周囲からの反響はいかがでしょうか

小池氏:番組本編についてコメントをいただくことが多いのですが、それに加えてインフォマーシャルに出演していただいているコットンさんの演技や提供表示の面白さについても反響があり、番組全体を楽しんでいただけているなと実感しております。

 

―今後チャレンジしたい取り組みについてお聞かせください

小池氏:今までお話ししたトップ領域(認知)やミドル領域(検討)とは違い、ボトム領域(刈り取り)のお話になるのですが、広告の最適な入札戦略は今後も注力したいことの1つです。特にGoogleが提供するVBB(Value Based Bidding)には早い段階でチャレンジしたいと考えております。

 

 

株式会社KINTO 総合企画部

小池瑛之

 

2020年12月に入社後、デジタルマーケティング領域を統括。宣伝活動の戦略立案、施策の構築・運用・管理に従事。2023年4月より総合企画部に異動。現在は新規事業立ち上げに従事。

 

 

Septeni Japan 株式会社

第1 営業本部第 1 営業部

上野 佑

 

営業としてデジタルプロモーション全般の支援に携わる。2021年の11 月からKINTO社の担当となり、マーケティング領域全般のプランニングを電通×セプテーニの協業チームで行っている。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。