サイバーエージェントが見渡す、2024年の動画広告市場と今後の成長余地インタビュー]
サイバーエージェントは、今回で10回目となる2023年国内動画広告の市場調査を公表した。
今から10年以上前、動画広告市場の黎明期よりこの市場にいち早くコミットし、トップランニングを続けてきた、同社がみる動画広告市場のトレンドおよび、現在の市場における課題、そして同社の動画広告ビジネスにおける注力ポイントについて、執行役員 インターネット広告事業本部 統括 中田 大樹氏に、お話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 野下 智之)
広告のデジタルシフトとともに成長
-動画広告の過去1年間、2023年の市況についてお聞かせください
日本を含む世界的な経済環境の不安定化もあり、広告市場では引き続きマス広告の予算がデジタルにシフトする流れが続きました。これに付随して、動画広告市場も引き続き成長がみられました。
-広告主の動画広告に対する期待や関心はどのようなところに向いているのでしょうか
経済がよくないときは、お客様はコストカットを意識しますし、マーケティング予算については、いかに事業成果に結びけられるかというところに関心が向きます。動画広告に関しても、この1年は特にその傾向が見られました。お客様の事業にどこまで貢献することが出来るのか、ということが全体のトレンドとして見られました。
動画広告の成長余地はKPIとクリエイティブ
-そうすると、動画広告の効果指標についてもよりシビアに追及するようになってきているのでしょうか?
求めたいとは思っているのですが、動画広告がどこまで事業貢献できているのかを指標化することはかなり難しく、引き続き動画マーケティングの課題となっています。
たとえば、動画広告に1億円を投資したとき、それが結果としてどのくらい事業に貢献したかを見える化させることは、お客様の業種やマーケティングフェーズによっても適した指標が異なるため、難しいというのが現状です。
-動画広告を事業で取り扱う中での課題がそのほかにもあればお聞かせください。
大きく二つあります。一つ目は、やはり動画広告のKPIに関することです。テレビであれば、GRPという統一化された指標があります。「このくらいのリーチを取るためには、このくらいのGRPが必要である」となりますが、こと動画配信の場合には、「KPIをどこに置くべきか」という話になりがちです。KPIが不明確であると、動画広告媒体間はもとより、テレビと動画広告との比較も不明瞭です。そのような環境下で、広告主、広告代理店はプランニングをすることを求められています。
二つ目はクリエイティブに関することです。認知獲得目的の動画広告の場合、本来は、ユーザー属性や接触態度が異なっているはずの広告媒体もいるので、広告媒体、広告枠ごとに異なるコミュニケーションを図るべきです。ですので、それぞれに適したクリエイティブを用意する必要があります。これをやりきれていないということは課題です。
-今もっとも注目されている媒体とその理由についてお聞かせください
広告在庫の規模の観点で、YouTubeが圧倒的に強いです。今後も堅調に伸びていくであろうと私たちも予測しており、最も注目しております。成長率の観点では、ABEMAやTVer、TikTokなども大きいと思います。
縦型へのフォーマットチェンジに注目、KPIとクリエイティブに注力
-2024年の動画広告市場の見通しについてお聞かせください
今、新しい媒体が出てきていることもなく、今年大きなゲームチェンジが起きるかというと、そうではないと思っています。強いて述べるならば、縦型フォーマットについてでしょう。TikTokにはじまり、YouTubeが対応したことで広告枠としては増えていくことになります。今後も縦型動画広告枠の供給量が増えていきますので、しいて言うとこのフォーマットチェンジというものが上げられるでしょう。
-動画広告ビジネスにおける貴社の注力領域についてお聞かせください
私たちは、市場に広がっている大きい課題をつぶして正しいマーケティングを提供するという考え方を持っている会社です。KPIとクリエイティブにおける課題を変えていかなければいけないと思っています。
お客様の業界・業種、マーケティングフェーズごとにあるべきKPIは全く異なります。事業貢献に紐づくKPIというものをどれだけ明確に見える化をすることが出来るか、ということに注力していきます。また、より品質が高い動画広告クリエイティブをより多くデジタルにアジャストさせてユーザーに届けるということがあるべき姿であると思っております。
動画広告のクリエイティブ制作は、今後は質と量の両方を追求し、これら両輪を回していくことが求められる世界観になっていくはずです。これらを見越して、AI・CGを活用すべく、それらを活用した広告効果最大化の追求に特化したクリエイティブ制作スタジオ「極(きわみ)AIお台場スタジオ」を昨年2023年に新設しております。そして、優秀なクリエイターさんたちの力を借り、これを融合することで質と量を両立させていく「クリエイティブ革命」に向けて、注力をしてまいります。
ABOUT 野下 智之
ExchangeWire Japan 編集長 慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。