こんなに変わる! AIでマーケティングをアップデート―ATS Tokyo 2024イベントレポート
by ニュース
on 2025年1月22日 in
デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2024」が11月22日、都内にて開催された。
「こんなに変わる! AIでマーケティングをアップデート」をテーマとしたセッションには、株式会社電通デジタル 執行役員 データ&AI部門長 (※) 山本 覚氏が登壇。
(※肩書は登壇した2024年11月時点。2025年1月現在は執行役員 CAIO)
AIの活用によってマーケティングは過去に類を見ない進化を遂げようとしているが、AIはオンライン広告関係者たちの仕事を奪ってしまうのか。AI×マーケティングの第一人者である山本氏がAIをいかに活用するべきかについて実践的な視点から解説をおこなった。
山本氏
電通デジタルは自身を総合デジタルファームと位置づけ、クリエイティビティとテクノロジーを掛け合わせ、顧客企業の既存事業の成長伴走や変革支援に取り組んでいる。AIの分野では「∞AI(ムゲンエーアイ)」のブランドに基づき、広告プロセスや表現へのAI活用、 マーケティングの対話化、顧客体験のリッチ化などを提供している。
「広告プロセスや表現へのAI活用(「∞AI Ads」)」にあたっては、①訴求軸発見AI②クリエイティブ生成AI③効果予測AI④改善サジェストAIの4つのステップがあると山本氏は話す。そのうえで「2024年だけでも100社以上に本サービスを活用いただき、各社でパフォーマンスも大きく伸ばされている。それだけ広告領域において生成AIを活用していくことがあたり前になりつつある」と成果を述べた。
また、新たな取り組みの一つとして広告運用業務の自動化についても山本氏は言及。ファイルのダウンロード、データの貼り付け、キャンペーンへの入力などの広告運用業務の簡易作業の動作をAIが学習し自動化をさせることで稼働時間を75%削減出来ており、AIが広告運用の分野で様々なケースで使われていることを伝えた。
「マーケティングの対話化(「∞AI Chat」)」について山本氏は、今までの広告やマーケティングが一方向であったとしたうえで「次世代のマーケティングは双方向性が大事になる」と提言。
電通デジタルの具体的なソリューションとしては、企業の独自データを活用したチャットAI作成ツールを提供。本ソリューションを活用し、ゴルフのプレー後にメールやLINEでの振り返り会話やショップ誘導をした事例では、ゴルファーの9.8%にグッズの購買意欲が生まれる結果となった。
そのうえで山本氏はAIソリューションの抱える課題として「そもそもAIと話す必要があるのか」と提言し「AIだからできる体験の提供が今後は大切になるのではないか」と展望を述べた。
その問題を解決するための一つでもある「体験のリッチ化(∞AI Contents)」の事例では、様々なIPや著名人をAIと掛け合わせて、様々な顧客体験を提供している。
茨城県日立市とのコラボレーションでは、LDH JAPANで地域創生や社会貢献を推進している橘ケンチ氏の想いや喋り方の特徴を学習させた対話型AIを用いて、日立市の特徴や魅力を対話形式で回答する体験ブースをイベントで披露したという。
山本氏は「広告業務にAIが活用されていくだけでなく、これからは対話が重要視されていき、それらはユーザーのリッチな体験によって推進される」と電通デジタルの取り組みを総括したうえで「決して一方向にはせずに、対話をしていく過程で“何が大切なのか”に気づくための広告・マーケティングのプロセス構築が大事となる」と会場に伝えた。
ExchangeWireJAPANとのトークセッションでは「生成AIを普段の業務で使いこなすためにはどうしたらよいか」との質問が編集部から挙がった。
山本氏は質問への回答として「自分たちの業務プロセスのどこに生成AIが活用できるかは今から考えるべきである」と回答。現在、生成AIを利用する際の課題の一つとして、生成AIが間違った情報を生成してしまうハルシネーションへの懸念があげられるが、このリスクが各企業における閾値(許容値)を下回るタイミングは必ず訪れるとしたうえで、閾値が下回ってから業務プロセスでの活用方法を考えていくのでは非常に遅くなってしまうと提言した。
最後に山本氏は会場へのメッセージとして、AIによるマーケティングのアップデートの展望を語り、本セッションは終了となった。
「私は生成AIを通じて、本当のマスマーケティングを実現したいと強く思っている。今はデジタルによってメディアやコンテンツのパーソライズ化が進んでいるが、全員が最初から違うことを考えて、全員が違う体験をしていくのは寂しい。必ずしもすべてをパーソライズしていくのではなく、膨大なデータに基づきながら、そのブランドが本当に望まれていることなど、まずは大きな幹をしっかりと構築をしたうえでパーソライズされた体験を作っていくことが、本当のマスマーケティングであり、大きな社会のうねりを生み出すことにつながるのではないか(山本氏)」
ABOUT 柏 海
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ExchangeWireJAPAN 編集担当
日本大学芸術学部文芸学科卒業。
在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。