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「パブリッシャー感謝祭2025」イベントレポート サイバーエージェント アドテクDiv.と取り組む広告メディアの成長戦略

株式会社サイバーエージェント(以下「サイバーエージェント」)のAI事業本部 アドテクDiv.は、2025年4月24日に「パブリッシャー感謝祭 2025」を開催した。

冒頭、挨拶を行った中村 鴻介氏(サイバーエージェント AI事業本部 アドテクDiv. メディアリクルーティング局 責任者)は、お取引のあるパブリッシャーの皆様へ「日頃の感謝を直接お伝えするため」「弊社との取引を通じた付加価値をより実感していただくため」に本イベントを企画・開催したと述べ、有意義な時間を過ごしてもらうべく3つのセッションを用意したと説明。

本記事では、約70社から150名を超える関係者が集い、大盛況のうちに幕を閉じた各セッションの模様をレポートする。

(Sponsored by サイバーエージェント)

 

バンダイナムコネットワークサービスが
オープンインターネットに広告配信する理由

第一部は「広告主が考える効果の良いパブリッシャーとは」をテーマに、株式会社バンダイナムコネットワークサービス 第1事業部 オンラインマーケティング部 オンラインマーケティング課 チーフ 宇津木 涼氏と、冒頭の挨拶に引き続き中村氏が登壇した。

宇津木氏は、インハウス組織として2022年からバンダイナムコエンターテインメントが提供する有名IPタイトルの広告出稿業務に従事し、スマホアプリのユーザー獲得施策 を筆頭に、オンラインプロモーションのサポートを行っている。
中村氏とは、4年ほど前から広告プランニングを一緒に行ってきたと説明し、現在まで継続的に「AMoAd(*)」に出稿し、各パブリッシャーへ広告配信しているという。

 

(*)AMoAd:サイバーエージェントが提供するアドネットワークサービス。閲覧者が深い理解や関心を示す広告を、各メディアの特性に合わせた最適な広告表現で展開することができる。

 

インストールを目的としたユーザー獲得のプロモーションを行う際、グローバル媒体だけではリーチできないパブリッシャーにも広告配信を行うためにアドネットワークを活用しているという宇津木氏。とりわけ、iOSの場合は、Androidよりも全体をリーチすることが難しいため、AMoAdを活用しながら、優良なウェブサイトやアプリのパブリッシャーに広告を掲載している。

中村氏もAndroidであれば、Google社が提供する広告で、大部分のリーチが可能だが、iOSの場合はリーチのボリュームが少なくなるというのはよく聞く話とし、宇津木氏のアドネットワークを活用する施策に理解を示した。

その上で、「広告主のマーケターは、リーチしきれないという理由があっても、グローバル媒体にしか出稿しないことが多々あります。なぜ宇津木さんは、アドネットワークやオープンインターネットのパブリッシャーにも広告配信を行っているのでしょうか?」と質問。

宇津木氏は、広告を出稿する状況や予算規模などによりグローバル媒体に出稿が集中するケースは多いとしつつ、
「ウェブサイトやアプリにも、良質なユーザーが多くいると考えています。実際に、グローバル媒体よりもインストール率が高いウェブサイトやアプリもあります」と理由を述べつつ、「サイバーエージェントの力はもちろんのこと、本日いらっしゃっているパブリッシャーの皆様のおかげです」と感謝の意を表した。

バンダイナムコネットワークサービス 第1事業部 オンラインマーケティング部
オンラインマーケティング課 チーフ 宇津木 涼氏

サイバーエージェント AI事業本部 アドテクDiv.
メディアリクルーティング局 責任者 中村 鴻介氏

 

オープンインターネットに純広告を出稿する可能性

最後に中村氏は、本イベントならではの質問として「広告主がオープンインターネットのパブリッシャーに純広告を出す場合どの部分を見ますか?」と質問。

宇津木氏は、純広告出稿の状況についてボリュームとターゲティング、ブランドリフト調査が行えると優先度が上がると述べた上で、純広告を出す場合のポイントとして

フリークエンシーの確認
同じIPで多数のアプリが出ていることもあるので、しっかりと自社アプリと認知してもらうために、接触回数が多くなる媒体を求めている。

視認性
広告主として、広告がどのような形で掲載されているかは注視している。大きく掲載されるのはもちろんのこと、ゲームがどのような内容なのかを、しっかりとユーザーに伝えられるフォーマットがある。

コンテンツメディアの透明性
バンダイナムコエンターテインメントが配信を行っているゲームの多くの場合はIPを版権元様からお借りしているケースが多いため、ブランドを棄損するようなコンテンツメディアではないか、一緒に出る広告も公序良俗に反しないかどうかは特に重要視して確認している。

と語り、現状、オープンインターネットのパブリッシャーに対して純広告を打つ施策はあまり行っていないが、上記の3つを満たした適切なフォーマットを提供しているのであれば、オープンインターネットでも広告出稿の検討テーブルに乗る可能性はあると説明。

これを聞いて中村氏は「弊社のメディアリクルーティング局でも、ターゲティングボリューム、視認性、コンテンツメディアの透明性を担保した広告配信方法については日々パブリッシャーの皆様と協議しています。有効なメニューが完成しましたら、ぜひ提案させてください!」と結んだ。

 

 

サイバーエージェントが考える
効果の出るアドフォーマットとは?

第二部は「効果の出るアドフォーマットの考え方」をテーマに、AI事業本部 アドテクDiv. クリエイティブパフォーマンス局 責任者 木俣 聡一朗氏が登壇した。
ProFit-X事業部でクリエイティブディレクターも務める木俣氏は、これまで約2,000メディア以上のアドフォーマットを制作してきた経験を持つ。

木俣氏はアドフォーマットの制作に注力する理由として、CTR(クリック率)を向上させ、収益率を高めるためと話す。
「国産SSPの多くが運用開始から10年以上経過し機能や性能で差別化を出すことが難しい状況の中で、収益性を高めるためには、CPC(クリック単価)とCTRの向上が必要不可欠です。CPCは、デマンドやターゲティングに依存しますが、CTRはアドフォーマットの影響が大きいと考えています。私の部署はメディア経験のあるクリエイターが日々CTRを向上させるために、アドフォーマットの制作に注力しています」

サイバーエージェント AI事業本部 アドテクDiv.
クリエイティブパフォーマンス局 責任者 木俣 聡一朗氏

 

アドフォーマットで効果を出すには?

CTRを上げるには、圧倒的な改善・検証スピードと実装量が重要になってくる。木俣氏は、これらの問題を解決するために、「匠(たくみ)機能」という独自のシステムを開発したと報告する。
匠機能は、

モニタリング
最新のデザイントレンドをクローリングし、どのようなデザインが効果的かを日々確認する。

効果予測
LLM(大規模言語モデル)を利用して、アドフォーマットのCTRを事前に予測する。これにより、効果の低いフォーマットを排除し、効率的な制作を可能にする。

効果検証
目標CTRを設定し、ABテストを実施する。1つの広告枠に複数のアドフォーマットを適用し、CTRを測定する。目標を達成した場合は、CTRの低いフォーマットの配信量を自動的に減らし、高いフォーマットのみを配信する。目標未達の場合は、CTRが目標に到達するまでアドフォーマットの改善を継続する。

疲弊改善
アドフォーマットにもクリエイティブと同様に疲弊が見られるため、媒体ごとの疲弊速度を検知し、改善を繰り返す。

という上記4つのサイクルを高速で回転させ、CTRを向上することを目的としている。このシステムを構築したことで「メディアごとに効果的なアドフォーマットを選択することができるようになったほか、今まではCTRが高い“勝ちアドフォーマット”を見つけるために1~2日ほど掛かっていましたが、現在は数時間で見つけることができます」と木俣氏は語る。

また、2024年5月から匠機能を実装した結果、「インタースティシャル広告の価値を向上させることができました」とも報告した。
“勝ちアドフォーマット”を短時間で選べるようになった結果、CTRが向上し、CPM(インプレッション単価)もそれに伴って上昇したことはパブリッシャー、広告主の双方にとって有益な結果と言えるだろう。

そして最後に、2つの最新のアドフォーマットが紹介された。

タテカル
300x250のレクタングル広告枠に縦長の動画フォーマットが並ぶ形式。クリーンな広告案件(主にアプリダウンロード)を配信し、ユーザーに新しい広告体験を提供することができる。

ワイプライン
通常のインライン広告(320x100)の見た目だが、ページ上部にスクロールするとオーバーレイ広告に変化する。エキスパンドボタンで広告の拡大も可能。低単価になりがちなインライン広告の収益性の向上を目的としており、実証実験では初速の単価が向上した。

本セッションは多くの貴重な情報が含まれていたが、参加者限定で公開された内容も多く、この記事では許可された部分のみを取り上げている。
パブリッシャーにとっては、AIを活用した最新技術に関する情報を知ることができる非常に有意義な講演となった。

 

 

サイバーエージェントと神戸新聞社が取り組む
広告収益最大化施策

第三部は「神戸新聞社が取り組む広告収益最大化施策」をテーマに、サイバーエージェント AI事業本部 アドテクDiv. ProFit-X 責任者 三宿 仁氏と神戸新聞社 デジタル推進局 WEBマーケティング部 部長 初瀬川 文範氏が登壇。サイバーエージェントと神戸新聞が取り組んだ最新施策・事例について、現場視点も交えながらトークセッションを行った。

 

 

デイリースポーツオンラインが抱えていた課題

神戸新聞社は神戸新聞、デイリースポーツといった新聞のほか、サンテレビ、ラジオ関西などのメディアを抱える企業グループである。
ウェブサイトは、神戸新聞NEXT、デイリースポーツオンラインなど4つのサイトを運営しており、今回のトークセッションでは、主にデイリースポーツオンラインで行われた最新施策・事例が紹介された。

まず背景として神戸新聞社の初瀬川氏は、
「デイリースポーツオンラインは、ProFit-Xの広告タグを導入し広告の収益化を図っていました。ただ、運用していく中で

・デジタルに関する知見不足
・サイトの表示速度の遅さ
・アドフォーマットの疲弊(10年前と変わらないアドフォーマット)
・ソースコードが複雑化しサイトの管理が困難に

という課題を感じていたところ、サイバーエージェントより、単なるSSPとしての関係を超えて、課題を解決するための具体的な取り組みを提案していただきました」と報告。

具体的には、初瀬川氏自身も遅いと感じていたサイトの表示速度に対して、サイバーエージェントよりエンジニアリソースが提供され、ソースコード解析の解析含め、サイト表示速度の高速化のための施策を実行できたという。

三宿氏は、表示速度高速化の効果をこう解説する。
「デイリースポーツオンラインの場合、表示速度がアップしたことにより直帰率が改善しました。また、インタースティシャル広告のCTRが向上したことにより、収益換算で3桁万円の純増が見込めるほどのインパクトを得ることができました。さらに、インタースティシャル広告以外の広告枠(アドエクスチェンジ)においても、CTRとビューアビリティが改善する傾向が確認できました」

神戸新聞社 デジタル推進局 WEBマーケティング部
部長 初瀬川 文範氏

サイバーエージェントのAI事業本部
アドテクDiv. ProFit-X 責任者 三宿 仁氏

 

サイバーエージェントが取り組む
生成AIの活用について

トークセッションの最後には、生成AIの活用についても意見が交わされた。
サイバーエージェントは全社的に生成AIの活用を推進しており、そのノウハウを活かした企業支援も行っている。神戸新聞社も、生成AIをメディア運用業務に応用する考えを社内で検討しはじめている。

初瀬川氏は、生成AIの活用を考えた背景として

人員削減
該当部署が人員削減され、業務効率化の必要性が高まっていた。

業務の属人化
過去のデータや業務プロセスが可視化されておらず、担当者の経験や勘に頼る部分が大きかった。

を挙げ、生成AIによる業務改善に期待を寄せている。

三宿氏は、「AIエージェント」による業務効率化や新たな解析・レポートの作成を行える時代が訪れると説明。
「お越しいただいているパブリッシャーの皆様は、日々のメディア運営に時間を費やされていることと思います。『AIエージェント』はメディア運営業務との親和性が高いと考えており、サイバーエージェントとしても、このメリットをチャンスと捉えています」と述べた。
そして、「今後も広告収益の最大化はもちろん、テクノロジーを駆使して各メディアの課題を解決し、メディアの成長を支援してまいります」と締めくくった。

 

 

 

ABOUT 町田貢輝

町田貢輝

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学法学部法律学科卒業。編集プロダクション、出版社でエンタメ、健康、IT関連の雑誌と書籍の編集・進行管理に従事。2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。DX領域のメディア運営全般ならびに、調査研究を担当する。