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ひとりマーケの仕事術、本社には「理解してもらえる」まで伝える-Remerge 倉林 祥子氏

デジタル広告業界で働く広報・マーケティング担当者は、専門性が高く難解な業界用語と向き合いながら、形として見えにくい自社プロダクトやサービスを、日々顧客をはじめとする様々なステイクホルダーに、ストーリー性をもって分かりやすく伝え、自社のブランド価値を高めていくことが求められる。

 

そんなミッションをもつ広報・マーケティング担当者は日々何を考え、どんなことに向き合っているのだろうか。デジタル広告業界の広報・マーケティングのプロフェッショナルにインタビューを行い、彼らのリアルに迫る。第3回は、Remerge株式会社の倉林 祥子氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 角田 知香)

 

 

【インタビュー対象者】

倉林 祥子氏

Remerge株式会社 シニアフィールドマーケティングマネージャー

官公庁向け事務局運営を専門とする会社を経て、スウェーデンに本社を置く産業向けシミュレーションソフトウェア開発企業にてセールスオペレーションとしてAPACを管轄しつつ、日本向けのマーケティングを担当する。マーケティングに面白さを感じ、2022年よりRemerge Japanに入社。日本と韓国におけるフィールドマーケティングを担当している。

 

【インタビュー対象企業】

Remerge株式会社

ドイツ・ベルリン発のグローバルDSP。モバイルアプリ向けに、アプリ内広告を通じた新規ユーザー獲得やリターゲティングをリアルタイムで最適化し、高いコンバージョンとROIを実現する。広告配信からパフォーマンス分析、広告入札やクリエイティブテストまで一貫して支援する。

 

-現在ご担当されている業務領域を教えてください。
日本と韓国のフィールドマーケティングを担当しています。イベントの企画や運営に携わることが多く、自社企画・他社との共催・展示会への出展など、様々な形でイベントを運営します。ローカライゼーションも対応領域となります。業務の割合は日本が6割、韓国が4割ぐらいです。

 

-異業種からアドテク業界に転職されていかがですか。
アドテク特有の用語や、言葉の使い方に慣れるまでは大変でした。英語は前職でも使っていたものの、知っている英単語がアドテクでは違う意味合いをもっていたり、戸惑いがありました。転職して最初の一年は、業界を学びつつ、自社プロダクトをプロモートするためには「どんなイベントで何ができるのか」を模索していました。

 

 

「理解」から「改善」が生まれる

 

-本社とのコミュニケーションで心がけていることはありますか。
日本オフィス以外でのコミュニケーションは、英語でオンラインがベースになります。海外メンバーには、「伝える」だけでなく「理解してもらえる」まで粘り強く話してこそ、やっと「改善」につながると思っています。そのためにはエビデンスを出す、状況を見せることが必要となります。

以前イベントで配布するノベルティの相談をしていて、日本で喜ばれそうなグッズ案を本社のデザインチームに出したところ、「どうしてそれが良いのか分からない」と言われることがありました。Remergeには社員が2年に一度、他国オフィスで3,4週間勤務できるという制度があります。デザインチームにまず日本のカルチャーや他社の状況を見てもらいたいと考え、「この制度を利用して一度日本に来てほしい」と何度も説得し、ようやく叶ったことがありました。来日した彼らをノベルティ販促の展示会に連れていくと、「言っていたことが分かった」と私の主張を理解してくれました。一度現場を見てもらえるとその後の調整も進めやすくなります。日本のクライアント訪問に同行する、直接ヒアリングするということも可能なので、実際に本社メンバーに来てもらうことの価値はあると思います。

 

-主な顧客層を教えてください。
フィールドマーケティングとしては広告主様や広告代理店様と関わることが多いです。代理店の担当者の方とは、イベントを通じて知り合ったり、共催イベントを通じてつながりを持ったりすることもあります。

 

-会社全体の雰囲気はいかがですか。
日本オフィスは実質6名体制で、日本語が話せる外国人社員が3名在籍しています。インターナショナルかつざっくばらんに話せる空気です。年に一度ベルリン本社で研修があり100名以上の社員が世界中から集まるのですが、普段オンライン上でしか仕事をしていないメンバーと話せたりする良い機会です。楽しいことが好きなメンバーが多く、お酒やクラブ文化が盛んだと感じます。

 

 

つながりがビジネスになっていく

 

-どのような業務に時間を割くことが多いですか。
イベント運営は日本と韓国それぞれのタイミングで行うので、関わる時間が必然的に多くなります。日韓ともに、四半期に一度のペースで何かイベントができるように調整しており、施策はカントリーマネージャーやセールスと相談して進めていきます。

韓国でのイベントでは、英語ができる会社と連携してロジなどを任せているので、私は運営を円滑にするための社内・社外の調整に注力します。日本と比べると、韓国のイベントでは広告主様の参加率が高いと感じます。日本では代理店経由でのビジネスが多くなりがちですが、韓国では自然に広告主様と接点を持つことができます。

 

-業務で注力していることは何ですか。
「与えられた予算でどこまで実行可能なプランニングができるか」という調整には神経を使います。予算について本社と調整が必要な時は、例えば「世界的な物価上昇」「イベント来場者の充実度を上げるために○○が必要」といった具体的な理由をひとつずつ積み上げて、交渉を進めます。もちろん予算交渉の前段階として、与えられた予算でどう施策を回していくか、をいろいろなパターンで考えていくことも必要です。

また、アドテク業界で横のつながりを作ることも大切にしています。マーケターの会などがあれば積極的に出向きネットワークを広げています。実際にそこからイベント共催に繋がることもありますし、業界内の人と出会うことで自分の仕事の幅が広がる楽しみがあります。

 

-いま最もPRしたいことを教えてください。
Remergeは2014年に創業当初からアプリリターゲティング広告に特化したDSPを提供しています。LTV向上やユーザーの呼び戻し、離脱ユーザーの回避を支援し、グローバルなトップアプリから信頼を得ています。日本オフィスは2017年に設立され、現在は世界5拠点で展開中。業界から高い評価を受ける中、iOSのリタゲに特化したiOSアンロック(iOS Unlock)やインストール(UA)プロダクトのテストも進めています。

 

ABOUT 角田 知香

角田 知香

ExchangeWireJAPAN 編集担当。イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。