商品がメディアになる日-セブン-イレブン×八代目儀兵衛が示すリテールメディアの力-ATS Tokyo 2025 セッションレポート
by on 2026年1月19日 in ニュース

本セッション「商品がメディアになる日。—リテールメディアが変えるブランド体験の新常識」では、株式会社セブン-イレブン・ジャパン 新規事業推進室 総括マネジャー 杉浦 克樹氏、株式会社八代目儀兵衛 取締役CMO 神徳 昭裕氏が登壇し、モデレーターは ExchangeWire JAPAN 副編集長 柏 海 が務めた。
セッションでは、セブン‐イレブンの商品における「ライスイノベーションプロジェクト」の一環として八代目儀兵衛の知見、商品パッケージを含むリアル店舗におけるリテールメディアの構造変化、店頭起点でのブランド体験拡張、さらにセブンカフェを活用した広告検証事例などをもとに、商品・店舗・空間をメディアとして再定義する取り組みが議論された。
セッション登壇者
- 株式会社セブン-イレブン・ジャパン/新規事業推進室/総括マネジャー/杉浦 克樹氏
- 株式会社八代目儀兵衛/取締役CMO/神徳 昭裕氏
- ExchangeWire JAPAN 副編集長/柏 海(モデレーター)
リアル店舗をメディア化するための「課題」と「可能性」

杉浦氏は全国展開されているセブン‐イレブンにおける、リテールメディアの特徴として、2,700万IDのアプリ会員基盤と全国約2万1,800店(※)の店舗網という構造を挙げた。アプリを中心とした1stパーティデータ基盤によって、購買履歴に基づく1to1コミュニケーションが可能になっている一方、課題としてセブン‐イレブン店舗以外における購買前後の行動を捉えきれない点を指摘した。
(※25年11月末時点)
アプリではIDベースで購買が追えるものの、店頭サイネージなどの店舗メディアから来店者の行動が個別でどう変化したか、あるいはセブン‐イレブン店舗以外での購買にどのような影響を与えたかを把握することは難しい。
八代目儀兵衛は、通販・飲食・業務卸・中食という多角的展開を基盤に、他社ブランドの米品質向上を支援するソリューション事業も展開していた。そのなか、神徳氏は八代目儀兵衛が抱えていた課題として「お米離れが進む中で、お米の価値をどのように再定義できるか」としたうえで、全国的なブランド認知を高める手段を持ちにくいことが課題であると取り上げた。
「ライスイノベーションプロジェクト」が示した商品メディア化の実例

セブン‐イレブンの商品開発における「ライスイノベーションプロジェクト」の一環として、2022年から八代目儀兵衛の知見を加え取り組んで来た。
本取り組みの背景には、コロナ禍で専門店の台頭や家庭内調理の増加により、コンビニおにぎりの需要が低下したことがあった。また、産地銘柄ごとに品質が揺らぎやすく、安定したおいしさの維持が難しいという構造課題もあった。
八代目儀兵衛は、約70種類の米から最適な品種を選定する「低温精米」、「目利き」、「ブレンド」の取り組みを実施。約1年半の開発を経て、2023年3月21日にセブン‐イレブンで八代目儀兵衛ごはん監修のおにぎりが全国発売となった。
神徳氏は、「事前に想定をしていた以上に、発売後味への評価が大きく広がった」と語り、セブン‐イレブンでは 販売数が前月比10%増といった成果が見られた。1日あたり500万個規模で販売されるおにぎりカテゴリーでの10%増は、全店への波及効果も含めて大きい数値である。また、八代目儀兵衛自身のブランドにも波及し、企業認知率が半年で12%→60%超へ上昇、通販の年間売上も大きく増加した。神徳氏はこれも「想定外の効果」だったと振り返っている。
さらに、商品パッケージをめぐる変化がブランド認知にどのように影響したかが紹介された。海苔なしおにぎりのパッケージが変化する過程で「監修が終了したのではないか」と誤認されるケースも発生したが、後発の「手巻きおにぎり」が定着して以降は認知も安定し、商品そのものがメディアとして引き続き機能するようになった。
セブンカフェでの広告検証が示した「行動変容可視化」の可能性
セッションの後半では、セブン‐イレブンがテスト運用を進める セブンカフェマシン広告の事例が紹介された。
セブン‐イレブンではカップをセットすると挽きたてのコーヒーをすぐ飲むことが出来るカフェマシンを全国に設置し、広く知られている。カフェマシンに取り付けられたディスプレイでは、抽出時(約60秒)の待ち時間に動画を流し、広告メディアとしての機能も果たしている。カフェマシンは多くのお客様にご利用いただいているため、約153万人が視聴するメディアとなる。
このカフェマシンのディスプレイを利用し、セブン‐イレブンでは自社商品の「しっとりフィナンシェ」を広告として配信。その結果、広告配信期間中に、トライアル率:166%、併買率:173%と大幅に上昇するなど、レジ会計後に広告を閲覧してから商品を購入する行動が起きた可能性や、後日に別店舗で購入した可能性など、即時購買に限らない効果が上がったことが示唆された。
さらに、広告配信終了後においては、フィナンシェの販売数が前年同週比で120%前後を維持するなど、「残存効果」も確認されている。杉浦氏は、この事例を通じて「リテールメディアの効果や評価軸は購買直後に限定されず、ブランドへの認知や中長期の行動変容にも広がりうるだろう」と述べた。

最後に両者は、リテールメディアの今後についてそれぞれ見解を述べた。
杉浦氏は、購買データとリーチ効果の両立を深化させるため、小売横断のメディア連携や共通の計測手法の構築が重要であると強調した。すでに小売企業間でもメジャメント(広告効果の指標)整備を進める動きがあることにも触れ、広告主が利用しやすい共通基盤をつくることが次の課題であると語った。
神徳氏は、米価が高騰する中で「今はお米の価値を見直す機会」が訪れているとした。自社単独での大規模投資には課題が残っている一方、セブン‐イレブンのような全国チェーン店とも協働していくことで、八代目儀兵衛の技術・ノウハウをブランドとして認知させる取り組みをさらに磨いていくと述べた。
ABOUT 柏 海
ExchangeWireJAPAN 副編集長
日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。



