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インターネット広告業界を、もっと誇れる場所に。-ATS Tokyo 2026、総合司会は林 博史氏、山本 菜月氏、高梨 空美氏の3人体制-

司会とは、読んで字のごとく「会を司る」役割である。台本を読み上げる人ではない。誰に、どのタイミングでマイクを渡すのか。どこで熱を上げ、どこで空気を緩めるのか。一日の温度を決めているのは、しばしば壇上の中央ではなく、その脇に立つ人間だ。

500名が集まるATS Tokyoは、終日シングルトラックである。裏番組はなく、来場者全員が同じ会場で、同じセッションを、同じ順番で聴く。逃げ場がないぶん、会を司る者の力量が、そのまま一日の質になる。

11月20日(金)に開催する ATS Tokyo 2026 は、その大役を三人に託す。3年連続で舞台に立つ日本アドバタイザーズ協会 副事務局長の林 博史氏。2年目となる株式会社Uniiiqueの山本 菜月(やまもと なつき)氏。そして今回が初登板となる、サイバーエージェントの高梨 空美(たかなし そらみ)氏。約500名が集う一日を、この三人が束ねる。

 

三度、同じ言葉を語るということ -林 博史氏

林氏にとっては、三年連続の総合司会となる。そして語る言葉は、昨年も一昨年も、そして今年も変わらない。

「登壇する方は皆さん前向きです。その姿を見て、自分もこういう仕事をしているのは楽しい、と来場者に思ってもらえたらいい」

「仕事は楽しいものだと思えれば、やることは自分で勝手に見つけていける。誇りを持てば、正しいと思うことをやるようになる。その一歩目のきっかけになればいいんじゃないかな」

語られるのは進行の技術ではなく、会に何を残すか、である。司会を文字どおり「司る」仕事として引き受けている姿勢が、そのまま言葉になっている。

今年の三人体制についても、「3人いて何をするんだろうね、という役割分担はこれから考えないといけない」と笑いながら、「司会も含めて、その空間全体が楽しくなるように頑張ります」と続けた。見ているのは、壇上ではなく会場全体である。

 

 

「ワクワクを届ける」から、二年目へ -山本 菜月氏

昨年、山本さんが掲げていたテーマは「マーケティングでワクワクを届ける」だった。広告代理店の法人営業からキャリアを始め、PRやデジタルの領域へ。美容・コスメを中心に数多くの施策を手がけ、昨年はマーケターとして総合司会の舞台に立った。

この1年で、その場はさらに広がっている。現在はタレントマネジメントを手がける仕事に比重を移し、クライアントや代理店に向けたセールスを担当。Z世代を中心に100名規模のタレントが所属する現場で、人と人とを結ぶ仕事に日々向き合う。人を立て、場を回す。司会という役割とは、地続きの日常である。

昨年の記事では「依頼された仕事は基本的に断らない」というスタンスを紹介した。その姿勢は、今年も変わっていない。もっとも今回に限っては「頼まれる前に、もう決まっていた」と本人は笑う。

二年目に向けた準備は、すでに始まっている。「あんなに噛み噛みだったのに、2度目のキャスティングはキャスティングミスではないのか」と昨年の自分を振り返りながら、司会のためのボイストレーニングのレッスンを組み始めた。「去年の反省を生かして、もう少しステップアップした姿をお見せします」。宣言は、行動に裏打ちされている。

領域が変わっても、モットーは変わらない。

「私の代わりはいくらでもいると思っています。そのうえで、私だから一緒に仕事をしたいと思ってもらえるようなコミュニケーションや関係性の構築を、いちばん大事にしている」

昨年、「参加者に不快な空気を与えず、スムーズで心地よい進行を心がけたい」と語った姿勢と、同じ根から出ている言葉だろう。

 

 

オープンウェブの価値を、引き上げたい -高梨 空美氏

大阪生まれの大阪育ち。大学では外国語学部でスペイン語を専攻し、留学先もスペインだった。新卒で入社したのはSNSマーケティングを手がけるベンチャーで、テレアポから足で稼ぐ営業まで、泥臭い現場から社会人生活を始めている。

幼なじみの縁をきっかけにサイバーエージェントへ移ってからは、デジタル広告の営業として経験を重ねた。昨年春に担当する領域が変わり、今年3月からはマネージャーとしてチームを支える立場になった。

業界の現状を尋ねると、視線はまっすぐオープンウェブに向かった。

「広告主にとってさまざまな選択肢が広がるなかで、オープンウェブも、その価値をより明確に示していくことが重要だと感じています。媒体社や業界の皆さんと切磋琢磨しながら、ユーザー、広告主、媒体社それぞれにとって価値のある環境をつくっていきたいです」 

長く業界を支えてきた人たちと切磋琢磨しながら、良質なコンテンツを生み出す媒体社が、その価値を持続的に高めていける環境に貢献したい 、と語る。

社内外で今よく耳にするキーワードとして挙がったのは、やはりAIだった。クリエイティブ制作、AIエージェント、そしてリテールメディア。「広告に関わるさまざまな領域でAIの活用余地があると感じています。人の判断やクリエイティビティを大切にしながら、AIを適切に取り入れていきたいです」。ATS Tokyoが扱うテーマと、日々の仕事が地続きにある。

司会就任については、率直だ。「こうしたお声がけをいただくのは初めてで、すごく緊張しています。ただ、業界の一員として、外に向けて発信する役割にも挑戦していきたいと思っていたので 、精一杯務めます」。ちなみに打診は上司経由。「この日は空けておいて、大事な仕事が入るから」――それだけで意味を察したという。

500人の一日を、三人が司る

ATS Tokyoは、業界の知見と最先端のトレンドが交わる場である。だが、セッションの中身だけで一日が決まるわけではない。誰が場を温め、誰が話を引き出し、誰が一日を締めるのか。会の輪郭は、司会が描く。

今年はそこに、三年目の林氏の一貫した姿勢、二年目の山本氏の準備、そして初登板の高梨氏の新しい視点が重なる。約500名が同じ会場で過ごす一日を、この三人が司る。会が終わったとき、来場者が何を持ち帰るのか。その答えは、すでに三人に託されている。

 

 

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長  

慶応義塾大学経済学部卒。
外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。

国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。

2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。
2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。