AIトランスフォーメーションの最前線 JAPAN AI独自開発の高精度RAG技術とは?【インタビュー】
日本のAIトランスフォーメーション(AX)を牽引するJAPAN AI株式会社(代表取締役社長:工藤 智昭、以下「JAPAN AI」)が、独自開発したRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術(*1)で業界最高水準の82.7%の精度を達成したことを発表し、大きな注目を集めている。 本記事では、プレスリリースを発表した背景や反響、そして独自開発したRAG技術がJAPAN AIのマーケティングに与えるメリットと、将来展望について同社の執行役員 CMO マーケティング部 部長 飯田海道氏とプロダクトマネジメント部 リーダー 久保田善行氏にお話を伺った。 (*1)RAG技術:大規模言語モデル(LLM)の精度と信頼性を、外部ソースから取得した情報で強化する技術。大規模言語モデル(LLM)が持つ一般的な知識に、企業内の信頼できる最新データを組み込むことで、より正確で信頼性の高い回答を生成する。 RAG技術に関するプレスリリースを行った背景 JAPAN AIは、AIを活用した企業変革を支援するため、コンサルティングやプロダクト提供、AI人材支援まで幅広く展開している。 今回プレスリリースで発表したRAG技術に関しても、同社は創業以来力を入れてきた分野である。 プレスリリースを行った背景として久保田氏は「ユーザー様から『他社と比べて精度が良い』という評価をいただいていたが、定量的な比較はこれまでなかったため」と述べ、自社の技術力を客観的に確認するため、調査・検証を行ったと説明した。 今回の調査・検証では、複数の大規模言語モデル(LLM)を用いて模範解答との意味的な類似性・一致性を考慮した正答率指標により評価を実施。社内外の評価データセットを用い、他社クラウド製品と比較するベンチマークを行ったところ、業界最高水準の82.7%という高精度を達成したことから、プレスリリースを行ったという。 RAG技術というある意味でニッチな分野ではあるが、この発表は大きな反響を呼び、飯田氏も「企業のAI推進者がRAG精度に高い関心を持っていることを実感した」と述べた。 JAPAN AIが提供しているサービス JAPAN AI AGENT: 設定された目標に対し、AIが自律的に思考し、タスクを実行するAIシステム。日常的なタスクを自動化することができる。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/agent/ JAPAN AI CHAT: 最新の言語モデルを活用した法人向けAI活用プラットフォーム。データ連携と独自開発による高精度RAGにより、社内データの検索や回答生成が可能。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/chat/ JAPAN AI SPEECH: 議事録を自動生成するAIサービス。業界用語への対応や話者分離機能を備え、AIによる要約・編集も可能。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/speech/ 今回のプレスリリースに該当する機能 Agentic RAG:独自開発した高精度RAG。単に情報を検索して表示するだけでなく、回答の正当性を検証し、より適切な表現を確認・生成する。具体的には、複数の情報源を参照しながら、回答内容の整合性チェックや、より良い表現方法の検討を行い、最適な回答を生成する。 「Agentic RAG」は、JAPAN AIが提供している各サービスに実装されており、ユーザーは、従来のライセンスのまま使用することができる。 高精度RAG技術のユーザーメリットとマーケティング戦略 飯田氏はマーケティング視点からも今回の発表に大きな手応えを感じている。 「RAG精度が高いことで、新規のお客様はもちろんのこと、すでにJAPAN AIを利用しているお客様の満足度が上がり、利用率やライセンス数、LTV(顧客生涯価値)向上に直結すると考えています。私も実際に『Agentic RAG』を使用してみましたが、アウトプットされる品質が上がり、生成AIの回答の精度が明らかに向上していると感じています」と語る。 続けて「AIの進歩によって、日常的で雑多なタスクを人間ではなく、AIが行うシーンが今後増えていくでしょう。そんな時、企業におけるタスクの自動化においては、法人独自のデータとシームレスに連携できることは絶対条件であり、かつそこから正しい情報を抽出できることが重用な要素です。その両方を解決できる『Agentic RAG』は、多くの企業から支持されるはずです」と期待を込める。 実際に、今回のプレスリリースで、JAPAN AIのことを知った事業者からの問い合わせも多かったという。 飯田氏は「本リリースを機に、企業のAI活用における『RAG精度が重要な要素』であることを啓蒙し、より多くの企業に選ばれる存在を目指していきます」と強調した。 Agentic RAGの強みと特徴 「Agentic RAG」は、単なるFAQシステムに留まらず、独自のエージェント機能によって、真価を発揮する。従来のRAGでは、ユーザーが言語化できないニーズをシステムが汲み取れず、最適な回答を導き出すことが難しいという課題があった。しかし、エージェント機能を備える「Agentic RAG」は、システムがユーザーの意図を理解し、必要な情報を自ら考え、文章を吟味し、回答を生成することが可能となった。 この技術に関し久保田氏は「Agentic RAG」がゼロからカスタマイズされている点が大きな特徴と語る。 「他社がオープンソースやプリセットを利用するのに対し、JAPAN AIは独自の技術を開発して精度を上げると共に、将来的なカスタマイズに対応できるようにしています」と解説。 さらに、RAG技術において重要なデータアップロード時のチャンク分割(*2)の最適化について「文脈が維持される形でチャンク分割ができるように調整し、検索精度を向上させています。特に、検索後には質問に対する回答の妥当性をランキングする『Rerank』という手法を取り入れ、より正確な情報を生成できるようにしました」と明かし、JAPAN AIの高い技術力をアピールした。 (*2)チャンク分割:テキストやデータを意味のある小さな単位(チャンク)に分割処理すること。大規模なテキストデータを扱う際、一度に全体を処理するのではなく、分割することで、効率的な処理や検索、分析が可能となる。 今後の展望 最後、久保田氏、飯田氏にJAPAN AIの今後の展望について聞いた。 久保田氏は技術的な今後の展望として「データベースに保存する前に、AIエージェントがデータ形式を分析し、RAGの精度を自動で最大化する技術を開発中です。2025年の夏までに実装できるように作業を進めています」と報告。 この技術は、AIエージェントが人の手を借りず、自らデータの形式を最適化し、RAGの精度を向上させるというもの。これは、AI自らが考えて改善し、実行するという革新的な技術ではないだろうか。 飯田氏は「多くの企業がデータの保存方法やデータの活用方法(紙ベースのもの、パワーポイントなどテキストではないデータをどのように生成AIに学習させるのかなど)、AI導入による業務プロセスの変化に悩んでいます」と現状を説明。その上で「今後は、さまざまな業務アプリケーションや、他社が提供するソリューションと自社サービスの連携を進め、さまざまなデータソースからの情報を統合し、業務プロセス全体を自動化するプラットフォームとして業務の自動化を加速させていきます」と抱負を語った。 そして最後に、「JAPAN AIは、国産AI企業として、日本企業特有の業務文化に寄り添い、温かみのある支援を提供していきます」と力強く締めくくった。 JAPAN AI最新情報 JAPAN AIのプレスリリースは下記から確認できる。 https://japan-ai.co.jp/news/ 【PR [...]
The Road to ATS Tokyo 2025:「代理店は必要か?」との問いに広告主はどう答えるか①[インタビュー]
ATS Tokyo 2025が11月21日に開催される。本イベントの看板コンテンツの一つが、パネルディスカッション形式の議論となる「広告主が本音で議論:次世代エージェンシー論〜代理店は必要か?〜」。広告主のインハウス化やAIの普及を受けて、代理店は「中抜きされる存在」になってしまうのか。それとも「戦略パートナー」として進化できるのか。登壇者の一人である株式会社Timersの栗城良規氏に予め課題意識を聞いた。 (聞き手:ExchangeWire JAPAN 長野 雅俊) インハウス運用と広告代理店を併用する理由 ―自己紹介をお願いします。 株式会社Timersの取締役最高執行責任者(COO)を務める栗城良規と申します。ママ・女性のキャリアアップ向けオンラインスクール運営の管掌役員兼事業責任者、オンラインアシスタント事業ならびにオンラインBPO事業の管掌役員を務めています。 デジタルマーケティングには、前職及び前々職を含めて、15年近くにわたり従事してきました。 ―貴社におけるデジタル広告運用体制を教えてください。 インハウス支援を行う複数の社外人材と連携した当社社員と広告代理店を併用しながら、良い意味で成果に対する緊張関係を持ちながら広告運用業務を行っています。 ―インハウス運用と広告代理店への委託の併用ということですね。 理想的には、すべてインハウス運用にしたいです。当社社員こそがそのサービスについては最も深く理解していますし、社内人材であればPDCAを回しやすく、同じ成果であれば広告代理店にお支払いする手数料がない分、インハウスの方がより広告効果の最大化が狙えるためです。 ただし、広告代理店が不要とは全く思いません。各主要広告媒体と強いパイプを築きつつ、幅広い広告主に対してサービスを提供できる広告代理店ならではの存在意義は確実にあると思います。また当社に関して言えば、インハウス部隊と広告代理店が適切な緊張関係で成果を求めて競争することで好結果を生みだしていると考えています。 生成AIがあるから広告代理店は不要とはならない ―媒体側の自動化などが進んできたことで、これまで広告代理店が担ってきた人的な役割の重要性が徐々に薄れてきているのではないでしょうか。 確かに広告プラットフォームのアルゴリズムが劇的に向上したことで、人間が細かい広告配信設定をせずとも、一昔前と比べると広告効果の最大化に向けて媒体側がかなりの部分で自動的に調整してくれるようになりました。また広告クリエイティブは、必ずしもデザイナーに委託せずとも、各種ツールを用いて自前で用意しやすくなってきています。 ただし、広告の配信前に適切な設定をする必要があり、一定の技術的な理解や実行が求められるので、こうしたアルゴリズムやツールを現状使いこなすことができている広告主は、まだまだほんの一握りに過ぎません。しかも世の中のデジタル化が進んでいくに従い、これから新しくデジタルマーケティングを開始する企業も増えていくことでしょう。いくら自動化が進んだといっても、デジタルマーケティングに関して経験値の低い企業がいきなりインハウス運用を行うのは非現実的です。 またデジタルマーケティングに関して既に十分な知見を持つ企業であったとしても、業務合理化を目的として、できる限り外部委託を進めようとする場合もあるはずです。こうした企業にとっては広告代理店が強力な味方になると思います。 ―生成AIの台頭によって、広告代理店を取り巻く状況は一変するという見方もあります。 生成AIが登場するずっと以前から、広告代理店の仕事を奪いかねないノーコードツールなどがたくさん出ていました。でもだからといって、例えば、WordPressやfigmaを使ってランディングページを自ら作成したり、Canvaを使ってバナーを自ら作るようになった広告主は、まだまだそう多くないはずです。 なお、生成AIは「適切な知見を持つ人」が「いかに適切にインプットをするか」でアウトプットが大きく変わります。つまりできる人の仕事の効率性を劇的に引き上げることはできるものの、万人に対して同様の成果を提供することは今現在はできないですし、この先もそこの不確実性は残る可能性が高いとも思います。 ―貴社のようにデジタルマーケティングに関して一定の知見を得た上で社内運用体制を整備している企業にとっては広告代理店の存在意義は薄まるのでしょうか。 インハウス体制を持つ当社でも、広告代理店を必要とすることは多々あります。とりわけ媒体社との強固なパイプ作りは、広告代理店ならではの機能だと思います。具体的な例を挙げると、広告プラットフォームは、特定の広告代理店を介してのみ新機能をリリースするということが往々にしてあります。このリリース直後の数カ月間で攻略法を得ることができれば、一般リリース後もしばらく当社の先行優位が続くので、非常に大きなメリットです。 社内人材に何を求めるか ―貴社のインハウス部隊は例えば広告代理店での業務経験を持つような方なのでしょうか。 いえ、どちらかというと事業開発領域の人材です。営業部やCRM担当といった他部署と連携した上でキャンペーンを設計し、広告運用まで落とし込んでいくという、社内人材だからこそ実行し得る統合的な業務をお願いしています。 少なくとも当社であれば、必要な知識やノウハウについては教えることができる環境が整っているので、特定のアドテクに精通していることよりも、きちんと社内連携を図った上で統合的な施策を実行できることを求めています。 ―インハウス人材について、資格や能力といった点ではどのような素養が求められているのでしょうか。 うーん。結局のところは数字に向き合う覚悟やコミットが求められるのかもしれませんね。例えばマーケターなら誰しも、「万が一にも設定のエラーが発生すれば広告費が一瞬で消えてしまうのではないか」という恐怖を抱いたことがあると思うのです。だから多くのマーケターは、1時間単位で管理画面に張り付いたり、または自分が目を離しているときでも管理できるような仕組みを構築したりしています。 だから、緻密さや数字への追求が優れている方でしたり、きちんとアラートが上がる仕組みなどを自ら構築できる人材が向いているのかもしれません。あとは、ユーザーの深層心理を想像したり確認することに固執できる人ですね。いずれの場合においても、業務に対するコミットがあるからこそ、そういった追求や、お客様のことを考え続けることができるのだと思います。 次世代エージェンシー像とは ―広告代理店に業務委託をする上でどんなことを重視していますか。 当然のことながら、様々な代理店がありますし、また一つの代理店の中にも様々な能力を持つ社員がいます。一般的な傾向としては、大きな広告予算を持つ広告主に対しては広告代理店はエース級社員を担当に、そして予算が少なければそれ以外の社員を担当にするので、予算の少ない広告主の方が、広告代理店に不満を感じることが多いのかもしれません。 広告主にとって重要なのは、広告代理店に丸投げしないことです。広告主側でもある程度の体制を構築することで適切な緊張関係に基づく競争関係を築くことができれば、より高いレベルで付加価値を提供しないといけない、という構造が作れ、より高いアウトプットを出していただきやすくなるかと思います。もちろん、そうなればインハウス部隊も良い刺激を受けてより高い成果を求めるようになるので、非常に良い関係性になります。 ―「次世代の広告代理店」にはどんなことを求めますか。 実質業界の慣習となっている「広告費の20%を手数料として徴収する」という事業モデルを見直すことはできないのでしょうか。 例えば、人手が足りなくて、「広告クリエイティブだけ大量に制作してほしい」とか「指示した通りに運用を回しておいてほしい」という状況は多々発生するわけです。ところが、広告代理店はそうした業務に対応し得る人員体制があるにも関わらず、媒体への出稿を前提とした出稿手数料ごとの事業モデルしか持たないので、広告主から適切に依頼することができず、場合によってはお互いに機会損失が生まれている場合もあると思います。同じデジタルマーケティングでも、LP修正やCRM設計は稼働時間に応じた業務対応ができることがあるのに、広告運用業務となった途端に広告費の手数料徴収モデルしか実質ないのは若干の違和感を覚えます。 ―広告代理店関係者からも「マージン(広告費の20%)」ではなく「フィー(専門作業に対する報酬)」にしたいという声を聞くことがあります。 そうですよね。手数料徴収モデルにおいては、契約条件にもよりますが、一般的には広告主がいきなり「ごめん今月は広告を止めて」と言えば、広告代理店はその指示に従わらざるを得ず、収益機会を丸ごと逸することになります。稼働時間に応じた課金システムや成果報酬型などの別の費用形態も持ち合わせることによって広告代理店が今よりもより機会損失をなくしたり、新しい収益機会を得られることもあるはずです。 おそらく業界慣習でしたり、一定の利益率を確実に達成できるためだとは思うのですが、デジタルマーケティング業務が多様化していることを鑑みれば、もう少し柔軟に対応してもらえると、広告主と広告代理店はより良いお付き合いができるような気がしています。 (ExchangeWire編集部より) 議論の続きは、ATS Tokyo 2025のパネルディスカッションで行う予定となっています。本テーマにご関心のある方は、ぜひ当日会場までお越しください! ATS Tokyo 2025 11月21日(金) 東京ドームホテルにて開催 広告主が本音で議論:次世代エージェンシー論〜代理店は必要か?〜 10:15-10:45 広告主のインハウス化、プラットフォーム直取引、AIを含めたSaaS型マーケティングツールの普及…。代理店はもはや「中抜きされる存在」なのか?それとも「戦略パートナー」として進化できるのか?今後求められるマーケターとしてのスキルは何なのか?広告主サイドのマーケティングスペシャリストが忖度なく議論する。 ATS Tokyoのチケットはこちらからお申し込みください。
こつこつ築くコミュニケーションが発信へとつながる-ジーニー 近村 優氏・小黒 奈那氏
デジタル広告業界で働く広報・マーケティング担当者は、専門性が高く難解な業界用語と向き合いながら、形として見えにくい自社プロダクトやサービスを、日々顧客をはじめとする様々なステークホルダーに、ストーリー性をもって分かりやすく伝え、自社のブランド価値を高めていくことが求められる。 そんなミッションをもつ広報・マーケティング担当者は日々何を考え、どんなことに向き合っているのだろうか。デジタル広告業界の広報・マーケティングのプロフェッショナルにインタビューを行い、彼らのリアルに迫る。第2回は、株式会社ジーニー の近村 優氏、小黒 奈那氏のお二人にお話を伺った。 (聞き手:ExchangeWire JAPAN 角田 知香) 【インタビュー対象者】 近村 優氏 株式会社ジーニー ブランドデザイン部 広報グループ マネージャー代理 事務職からシェアハウス運営会社の広報、PR会社を経て、事業広報への意欲からジーニーに入社。 小黒 奈那氏 株式会社ジーニー ブランドデザイン部 広報チーム 生命保険会社での営業を経て、ジーニーに入社。営業希望であったが広報を勧められ、未経験で広報担当者となる。 【インタビュー対象企業】 株式会社ジーニー 広告配信プラットフォームやマーケティングSaaSを開発・提供するテクノロジー企業。主にデジタルマーケティング支援を軸に、アドテクノロジー(SSPやDSP)、CRM、MAツール、AI事業などを展開。国内外に拠点を持ち、アジア市場を中心にグローバルにも事業を展開している。 -現在ご担当されている業務領域を教えてください。 小黒氏:主に社内向け広報を担当しており、社内報やニュースレターの執筆、noteやSNSの運営など、インナーブランディングの領域となります。noteでは社員紹介のインタビュー記事などを作成しています。 近村氏:私は広報グループのマネージャーとして、グループの方針を策定し、3名いる広報メンバーをディレクションしています。 日々のコミュニケーションから生まれる発信物 -インタビュー対象となる社員はどのように選ぶのですか。 小黒氏:ジーニーは「9つのバリュー」(価値基準、行動指針)を掲げているのですが、それを体現できている社員が対象となります。人選は人事部と一緒に進めることもあれば、色々な人と話す中でトピックや対象者を見つけることもあります。こういったnoteの業務を始めた当初は、執筆は得意だと思っていませんでしたが、今となっては楽しく取り組んでいます。 近村氏:小黒の社内コミュニケーション力はとても高く、適任だと思います。日常のコミュニケーションや雑談の中から対象者・トピックを見つけてくる力があります。 -近村さんはPR会社のご出身ですが、広報の仕事の違いは感じますか。 近村氏:PR会社でのミッションは、クライアントの商品・サービスの認知獲得や広告換算額を稼ぐことがメインでした。ジーニーでは、もっと長期的な視点で、商品・会社の認知とともに、良い人材の獲得までつなげて考える必要があります。思想やカルチャーを発信していくという意味で、note施策なども新鮮に感じています。 -主な顧客層を教えてください。 近村氏:会社としての顧客はマーケティング機能をもつ会社様すべてとなり、事業部ごとにプロダクトが違うことから様々なクライアントがいます。広報としては、やはりメディアと関わることが最も多いです。 -会社の雰囲気はいかがですか。 小黒氏:若手が活躍できる環境が備わっているので、20・30代の社員が多いです。会社の近くに住んでいて休日も一緒に出かけている社員がいるなど、和気あいあいとしています。一方、仕事現場では当事者意識を強く持って、課題に取り組む人が多い印象です。 「攻め」と「守り」の広報 -どのような業務に時間を割くことが多いですか。 近村氏:各事業部にマーケティング担当者がそれぞれいるので、彼らと広報チームで定例を行い、情報を吸い上げてプレスリリースに落とし込んでいきます。リリースに向けてのスケジュール調整、社内コンテンツの公開がメインになります。事業部が企画や登壇するイベントについては、運営などは各部のマーケティング担当者が行い、広報がリリースやお知らせの公開を行います。 ジーニーは上場企業であり事業部も多いので、広報としては外への「攻め」と、ブランドイメージをコントロールする「守り」、どちらの要素もあります。各部署との連携が欠かせないので、社内コミュニケーションに比重が偏ることもあります。 -業務で注力していることは何ですか。 近村氏:ジーニーはSSPから事業を拡大しているので、昔から知ってくださっている方は「アドの会社」というイメージを持たれています。しかし今では、マーケティング支援・マーケティングSaaSやAIの領域を拡大しているので、ジーニーのイメージや認知を変えていきたい、ということに注力しています。サイトの見せ方や、noteの中での表現など、発信物の中でも意識的に変えています。 色々な会社のSNSをリサーチして見せ方を学んだり、イベントでは他社の担当者にブースの作り方や広報発信について質問するなど、自発的にコミュニケーションを持つようにしています。他社であっても親切に教えてもらえることが多く、参考になります。 -いま最もPRしたいことを教えてください。 株式会社ジーニーは「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」「日本発の世界的なテクノロジー企業となり、日本とアジアに貢献する」という2つのPurpose(企業の存在意義)のもと企業の成長を支援するマーケティングテクノロジーカンパニーです。広告プラットフォーム事業、マーケティングSaaS事業のほか、AI事業にも注力しています。9つのValueを体現した社員たちのエピソードを通じて、会社の紹介をしていますので、ぜひnoteをご覧いただけたら嬉しいです! https://note.com/geniee_inc?p=2217
社内を見つめることで生まれるPR施策を目指して-ニューステクノロジー 林 優里氏
デジタル広告業界で働く広報・マーケティング担当者は、専門性が高く難解な業界用語と向き合いながら、形として見えにくい自社プロダクトやサービスを、日々顧客をはじめとする様々なステークホルダーに、ストーリー性をもって分かりやすく伝え、自社のブランド価値を高めていくことが求められる。 そんなミッションをもつ広報・マーケティング担当者は日々何を考え、どんなことに向き合っているのだろうか。デジタル広告業界の広報・マーケティングのプロフェッショナルにインタビューを行い、彼らのリアルに迫る。第1回は、DOOHメディア業界をけん引し、タクシーサイネージメディアを筆頭に複数のメディア事業を運営する株式会社ニューステクノロジー の林 優里氏にお話を伺った。 (聞き手:ExchangeWire JAPAN 角田 知香) 【インタビュー対象者】 林 優里氏 株式会社ニューステクノロジー 広報マネージャー 新卒で航空会社に入社し客室乗務員として数年勤務した後、20代のうちに色々なことを経験したいという想いから、もともと興味があったPRの仕事が出来るベクトルグループのニューステクノロジーに転職し、広報部門に配属される。 【インタビュー対象企業】 株式会社ニューステクノロジー 国内最大手のPR会社であるベクトルのグループ企業として、モビリティプラットフォームや動画マーケティングを中心に事業を展開。都内最大級のタクシーサイネージメディア「GROWTH」、日本初のモビリティ車窓メディア「Canvas」など、移動空間を活用した新たなメディア開発に注力。さらにYouTubeを主軸とするカルチャー動画メディア「McGuffin」や、喫煙所サイネージメディア「BREAK」など、オンラインからオフラインまで多様なメディアを展開している。 -現在ご担当されている業務領域を教えてください。 林氏:ニューステクノロジーでは、サイネージを起点としたメディア事業やYouTube・映像制作、モビリティ領域で高級ハイヤーサービスも手掛けています。それぞれの広報戦略の立案から、戦略に紐づくPR企画の進行、プレスリリース作成、メディアリレーションの構築、イベント企画などを行っています。採用広報を目的とし、オウンドメディアを運営したり、各サービスのSNSを活用した企画のディレクションも一部担当しています。さらに社内広報として、定期的な社内イベントの運営や最近は社内のサイネージを活用したコンテンツ作りや企画も手掛けています。 すべてのサイネージにクリエイティビティを -社内向けの広報とはどういったものでしょうか。 林氏:デジタルサイネージを手掛ける企業ということもあり、社内のいたるところにサイネージが設置してあります。そこで社内に対して何を発信していくのかというコンテンツ作りや社内イベントの運営などがあります。 代表がPR会社出身であるということもあり、アウトプットには目的に対して、クリエイティブかつスタイリッシュな表現が求められます。代表の方針に加えて「広報ならではの視点で、社員にどんな情報を届けたいか」ということを意識してコンテンツ作りをしています。 -社外向けのイベントなども多くありますか。 林氏:最近ですとカルチャー動画メディア「McGuffin」で、メンバーシップ向けのイベントを企画提案しました。その他、クライアントや広告代理店向けにデジタルサイネージ事業のメディア勉強会を企画することもあります。自社開催以外にも、代表や営業メンバーが広告やメディア関連のカンファレンスに登壇することもあるので、ニューステクノロジーとしてどういったターゲットに、どのようなメッセージを発信していくべくなのかということを代表や事業部とすり合わせながら全体の構成を考えていきます。 -会社の雰囲気はいかがですか。 林氏:中途採用での社員が多く、メディア・広告業界以外から異業種転職してきている社員も多くいます。私もその一人ですが、それぞれのスキルを活かしつつ、チームで補いあっている空気があります。一人一人の裁量が大きく、若手であっても頑張り次第で評価される職場です。 -主な顧客層を教えてください。 林氏:広告主や広告代理店が主な顧客となりますが、ステークホルダーは多岐にわたります。タクシーのサイネージから、映像制作やモビリティなど各事業部によって向きあう顧客は変わってきます。広報として各事業部とコミュニケーションを取り、こちらから積極的に提案するときと、意見を聞きながら進めていくときと、事業の進捗や事業部の空気感によって、手段を使い分けながら進めています。 地道なインプットと社内コミュニケーションを日々積み上げていく -どのような業務に時間を割くことが多いですか。 林氏:メディアリレーションの構築には、常に一定の時間を割いています。私が入社したときはそもそもメディアとの関わりがなかったので、メディアの方に会いに行って、プロフィール資料を持ち込んで代表や会社・サービスの取材をお願いするというようなことが多かったです。そのころと比べると企画やイベント運営、コンテンツ作りなどに割く時間が増えてきましたが、今でもメディアとのお付き合いはとても大切にしています。こまめに対面でお会いし、コミュニケーションを取ってトレンドや読者の興味・関心を把握しておかないと、広報として時流を汲み取った提案もでてこないと思います。常に生の声から情報収集をしてインプットをし、自分の意見や思考をもって提案できるように日々勉強しています。 -業務で注力していることは何ですか。 林氏:事業部ごとでステークホルダーや課題が異なるので、短期・中長期での戦略や施策の立て方もさまざまです。絶えず状況も変化する中で、コミュニケーションを通してそれぞれのサービスの進捗把握をしておくことには注力しています。そうしないと、意図を持った再現性の高いPR施策はできてないと感じているからです。広報部門としては、良かれと思い一定のコストや労力をかけてPR施策を実施しても、振り返った時に会社やサービス単位で、どういった意味やインパクトがあったのか説明できないという状態は一番避けるべきだと思います。 代表からは、「社内の状況や課題感をきちんと把握・理解していることが事業成長に繋がるPRを生む」とよく言われます。時には、社内でのちょっとした出来事や声がPRのネタやヒントになり、企画やメディアへの露出に繋がることもあります。それが結果、事業成長や課題解決に繋がるアウトプットになることもあると思います。最近では、セールスチームにPRの視点を交えて、企画の切り口などを提案をすることもあり、良い形での社内連携ができていると思います。 -いま最もPRしたいことを教えてください。 タクシーサイネージメディア「GROWTH」を筆頭に、喫煙所サイネージメディア「BREAK」やカルチャー動画メディア「McGuffin」など、オフラインからオンラインまで複数のメディアを運営しています。社内に映像制作の事業部「HOLONIX」もあり、作るところから届けるところまで一気通貫したプランニングが可能です。興味のある方は是非お気軽に会社HPよりご連絡いただけますと幸いです。 https://newstech.co.jp/contact/
ATS Tokyo 2025、3年連続で大トリは高広 伯彦氏[ニュース]
2025年11月21日(金)に東京ドームホテルで開催を予定しているExchangeWireのATS Tokyo 2025の年間プログラムの大枠が決まりつつある。 今年も大トリは、高広 伯彦氏の登壇が確定した。 高広 伯彦氏といえば、もはやその経歴は言うまでもない。 近況で変化があったので付け加えておくと、同氏は今年4月より同志社大学大学院 ビジネス研究科で教鞭を執っており、志高いビジネスパーソンにBtoBマーケティングを指導している。 そして今年開催されている大阪万博への並々ならぬ熱意をもち、既に訪れた回数は11回(6月13日現在)を数える。あと数パビリオンを残して、全制覇も近いという。そんな高広氏がまとめた、「【万博行くならこれ持っていき!】大阪・関西万博に5回行ってわかった、現地で役立つアイテムたち」は、これから大阪万博に行く方たちは必読だ。 さて、話を元に戻そう。 今年高広氏が登壇予定のセッションは、「マーケティングはどこへ向かうのか──変革期を生き抜くための羅針盤(仮)」 AIの急速な普及に象徴される、様々な技術的な与件が変化するなか、マーケティングの変化の本質を語っていただく(予定)。 ATSTokyo2025は、過去1年のデジタル広告業界における振り返りを、技術的な側面を盛り込み、広告の買い手と売り手それぞれの視点で、オーディエンスの目線に合わせて出来るだけ分かりやすく議論する場である。 選ばれた各登壇者たちや、一堂に会する400名とともに、業界の現状と今後のあるべき姿を一緒に考える一日を、意識が高くエッジが尖った業界のエキスパートにお届けする。
ABCash Technologies、2024年の金融情報サービス・金融教育サービス市場は計3,315億円、2030年には4,052億円に達すると予測[ニュース]
お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する株式会社ABCash Technologiesは、株式会社デジタルインファクトと共同で、金融情報サービス・金融教育サービス市場に関する調査を実施した。投資が「一部の人のもの」から「誰もが学び活用するもの」へと広がる中、金融教育・金融情報サービス市場は2024年に3,315億円へと拡大し、今後もさらなる成長が期待されている。 本調査では、金融に関する最新の市場動向やニュースを提供する「金融情報サービス」、金融に関する知識やスキルを長期的に身に着けていくことを目的に提供する「金融教育サービス」、これらの制作ならびに消費者や企業への提供に際し、企業や個人が対価として受け取る金額(※1)を「金融情報サービス市場」および「金融教育サービス市場」と定義し、市場規模の推計・予測を行った。 ※1 金融情報サービスおよび金融教育サービスの提供にあたり、提供者が受け取る広告収入、課金収入や、コンテンツ制作にあたり制作者が受け取る費用も市場に含む。金融投資商品・生命保険商品の売買で生じる代理店への契約手数料等は含まれない ■金融情報・金融教育サービス市場の現状 日本における金融情報は、これまで主に新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディアを通じて、株価や為替の動向などのニュースとして投資家層に向けて発信されてきた。 2014年には、政府が家計の安定的な資産形成と成長資金の供給拡大を目的に、「少額投資非課税制度(NISA)」を導入。その後も、2018年の「つみたてNISA」、2024年の制度改正による年間投資枠の拡大など、制度は段階的に拡充されてきた。これらの後押しにより、2024年12月時点のNISA口座数は2,560万口座に達し、国民の5人に1人以上が利用する身近な仕組みへと定着している。 さらに、トランプ大統領が打ち出した一連の政策により、世界経済の先行きは一層不透明さを増しており、市場の変動リスクも高まっている。政策の不確実性に加え、各国政府の発言も市場に大きな影響を及ぼし、株価の乱高下を招く要因となっている。その影響は日本の投資家にも及んでおり、経済リスクへの備えとして、投資判断を他人任せにせず自ら学び備える「金融リテラシー」の重要性が、社会全体で改めて認識されつつある。 こうした背景のもと、投資家の知識習得ニーズに応える形で、インターネットを通じた金融情報の提供や、金融教育コンテンツの拡充が進んでいる。従来のマスメディアに加え、金融機関によるオンラインセミナーやリアルイベントの開催、アプリを活用した金融教育サービスの展開など、多様なチャネルでの情報提供が活発化している。 このような市場動向を踏まえ、2024年における国内の金融情報サービス市場は2,250億円、金融教育サービス市場は1,065億円、両者を合わせた市場規模は3,315億円と推計される。 ■市場拡大の見通しと将来の成長要因 今後も国民全体の投資活動が拡大を続ける中で、これらを支える金融情報・金融教育サービスの需要は持続的な成長が見込まれる。 金融情報サービス市場は、投資人口の増加に伴い堅調な拡大が期待され、金融教育サービス市場についても、2022年度に高校家庭科で義務化された金融経済教育をはじめとする取り組みなどの社会的動きが後押しとなり、高水準の成長が続くと見られる。 また、体系的なカリキュラムを提供する有料Web・アプリサービス、YouTubeなどを通じた動画コンテンツ、新聞・雑誌などの従来型メディアによる情報発信など、複数のチャネルを通じた多角的なサービス提供も継続的に拡大していくと考えられる。 これらの動向を踏まえ、2030年には金融情報サービス市場が2,389億円(2024年比 約1.06倍)、金融教育サービス市場が1,663億円(同 約1.56倍)に達し、両市場を合算した規模は4,052億円に達する見通しとなった。
AIトランスフォーメーションの最前線 JAPAN AI独自開発の高精度RAG技術とは?【インタビュー】
日本のAIトランスフォーメーション(AX)を牽引するJAPAN AI株式会社(代表取締役社長:工藤 智昭、以下「JAPAN AI」)が、独自開発したRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術(*1)で業界最高水準の82.7%の精度を達成したことを発表し、大きな注目を集めている。 本記事では、プレスリリースを発表した背景や反響、そして独自開発したRAG技術がJAPAN AIのマーケティングに与えるメリットと、将来展望について同社の執行役員 CMO マーケティング部 部長 飯田海道氏とプロダクトマネジメント部 リーダー 久保田善行氏にお話を伺った。 (*1)RAG技術:大規模言語モデル(LLM)の精度と信頼性を、外部ソースから取得した情報で強化する技術。大規模言語モデル(LLM)が持つ一般的な知識に、企業内の信頼できる最新データを組み込むことで、より正確で信頼性の高い回答を生成する。 RAG技術に関するプレスリリースを行った背景 JAPAN AIは、AIを活用した企業変革を支援するため、コンサルティングやプロダクト提供、AI人材支援まで幅広く展開している。 今回プレスリリースで発表したRAG技術に関しても、同社は創業以来力を入れてきた分野である。 プレスリリースを行った背景として久保田氏は「ユーザー様から『他社と比べて精度が良い』という評価をいただいていたが、定量的な比較はこれまでなかったため」と述べ、自社の技術力を客観的に確認するため、調査・検証を行ったと説明した。 今回の調査・検証では、複数の大規模言語モデル(LLM)を用いて模範解答との意味的な類似性・一致性を考慮した正答率指標により評価を実施。社内外の評価データセットを用い、他社クラウド製品と比較するベンチマークを行ったところ、業界最高水準の82.7%という高精度を達成したことから、プレスリリースを行ったという。 RAG技術というある意味でニッチな分野ではあるが、この発表は大きな反響を呼び、飯田氏も「企業のAI推進者がRAG精度に高い関心を持っていることを実感した」と述べた。 JAPAN AIが提供しているサービス JAPAN AI AGENT: 設定された目標に対し、AIが自律的に思考し、タスクを実行するAIシステム。日常的なタスクを自動化することができる。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/agent/ JAPAN AI CHAT: 最新の言語モデルを活用した法人向けAI活用プラットフォーム。データ連携と独自開発による高精度RAGにより、社内データの検索や回答生成が可能。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/chat/ JAPAN AI SPEECH: 議事録を自動生成するAIサービス。業界用語への対応や話者分離機能を備え、AIによる要約・編集も可能。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/speech/ 今回のプレスリリースに該当する機能 Agentic RAG:独自開発した高精度RAG。単に情報を検索して表示するだけでなく、回答の正当性を検証し、より適切な表現を確認・生成する。具体的には、複数の情報源を参照しながら、回答内容の整合性チェックや、より良い表現方法の検討を行い、最適な回答を生成する。 「Agentic RAG」は、JAPAN AIが提供している各サービスに実装されており、ユーザーは、従来のライセンスのまま使用することができる。 高精度RAG技術のユーザーメリットとマーケティング戦略 飯田氏はマーケティング視点からも今回の発表に大きな手応えを感じている。 「RAG精度が高いことで、新規のお客様はもちろんのこと、すでにJAPAN AIを利用しているお客様の満足度が上がり、利用率やライセンス数、LTV(顧客生涯価値)向上に直結すると考えています。私も実際に『Agentic RAG』を使用してみましたが、アウトプットされる品質が上がり、生成AIの回答の精度が明らかに向上していると感じています」と語る。 続けて「AIの進歩によって、日常的で雑多なタスクを人間ではなく、AIが行うシーンが今後増えていくでしょう。そんな時、企業におけるタスクの自動化においては、法人独自のデータとシームレスに連携できることは絶対条件であり、かつそこから正しい情報を抽出できることが重用な要素です。その両方を解決できる『Agentic RAG』は、多くの企業から支持されるはずです」と期待を込める。 実際に、今回のプレスリリースで、JAPAN AIのことを知った事業者からの問い合わせも多かったという。 飯田氏は「本リリースを機に、企業のAI活用における『RAG精度が重要な要素』であることを啓蒙し、より多くの企業に選ばれる存在を目指していきます」と強調した。 Agentic RAGの強みと特徴 「Agentic RAG」は、単なるFAQシステムに留まらず、独自のエージェント機能によって、真価を発揮する。従来のRAGでは、ユーザーが言語化できないニーズをシステムが汲み取れず、最適な回答を導き出すことが難しいという課題があった。しかし、エージェント機能を備える「Agentic RAG」は、システムがユーザーの意図を理解し、必要な情報を自ら考え、文章を吟味し、回答を生成することが可能となった。 この技術に関し久保田氏は「Agentic RAG」がゼロからカスタマイズされている点が大きな特徴と語る。 「他社がオープンソースやプリセットを利用するのに対し、JAPAN AIは独自の技術を開発して精度を上げると共に、将来的なカスタマイズに対応できるようにしています」と解説。 さらに、RAG技術において重要なデータアップロード時のチャンク分割(*2)の最適化について「文脈が維持される形でチャンク分割ができるように調整し、検索精度を向上させています。特に、検索後には質問に対する回答の妥当性をランキングする『Rerank』という手法を取り入れ、より正確な情報を生成できるようにしました」と明かし、JAPAN AIの高い技術力をアピールした。 (*2)チャンク分割:テキストやデータを意味のある小さな単位(チャンク)に分割処理すること。大規模なテキストデータを扱う際、一度に全体を処理するのではなく、分割することで、効率的な処理や検索、分析が可能となる。 今後の展望 最後、久保田氏、飯田氏にJAPAN AIの今後の展望について聞いた。 久保田氏は技術的な今後の展望として「データベースに保存する前に、AIエージェントがデータ形式を分析し、RAGの精度を自動で最大化する技術を開発中です。2025年の夏までに実装できるように作業を進めています」と報告。 この技術は、AIエージェントが人の手を借りず、自らデータの形式を最適化し、RAGの精度を向上させるというもの。これは、AI自らが考えて改善し、実行するという革新的な技術ではないだろうか。 飯田氏は「多くの企業がデータの保存方法やデータの活用方法(紙ベースのもの、パワーポイントなどテキストではないデータをどのように生成AIに学習させるのかなど)、AI導入による業務プロセスの変化に悩んでいます」と現状を説明。その上で「今後は、さまざまな業務アプリケーションや、他社が提供するソリューションと自社サービスの連携を進め、さまざまなデータソースからの情報を統合し、業務プロセス全体を自動化するプラットフォームとして業務の自動化を加速させていきます」と抱負を語った。 そして最後に、「JAPAN AIは、国産AI企業として、日本企業特有の業務文化に寄り添い、温かみのある支援を提供していきます」と力強く締めくくった。 JAPAN AI最新情報 JAPAN AIのプレスリリースは下記から確認できる。 https://japan-ai.co.jp/news/ 【PR [...]
The Road to ATS Tokyo 2025:「代理店は必要か?」との問いに広告主はどう答えるか①[インタビュー]
ATS Tokyo 2025が11月21日に開催される。本イベントの看板コンテンツの一つが、パネルディスカッション形式の議論となる「広告主が本音で議論:次世代エージェンシー論〜代理店は必要か?〜」。広告主のインハウス化やAIの普及を受けて、代理店は「中抜きされる存在」になってしまうのか。それとも「戦略パートナー」として進化できるのか。登壇者の一人である株式会社Timersの栗城良規氏に予め課題意識を聞いた。 (聞き手:ExchangeWire JAPAN 長野 雅俊) インハウス運用と広告代理店を併用する理由 ―自己紹介をお願いします。 株式会社Timersの取締役最高執行責任者(COO)を務める栗城良規と申します。ママ・女性のキャリアアップ向けオンラインスクール運営の管掌役員兼事業責任者、オンラインアシスタント事業ならびにオンラインBPO事業の管掌役員を務めています。 デジタルマーケティングには、前職及び前々職を含めて、15年近くにわたり従事してきました。 ―貴社におけるデジタル広告運用体制を教えてください。 インハウス支援を行う複数の社外人材と連携した当社社員と広告代理店を併用しながら、良い意味で成果に対する緊張関係を持ちながら広告運用業務を行っています。 ―インハウス運用と広告代理店への委託の併用ということですね。 理想的には、すべてインハウス運用にしたいです。当社社員こそがそのサービスについては最も深く理解していますし、社内人材であればPDCAを回しやすく、同じ成果であれば広告代理店にお支払いする手数料がない分、インハウスの方がより広告効果の最大化が狙えるためです。 ただし、広告代理店が不要とは全く思いません。各主要広告媒体と強いパイプを築きつつ、幅広い広告主に対してサービスを提供できる広告代理店ならではの存在意義は確実にあると思います。また当社に関して言えば、インハウス部隊と広告代理店が適切な緊張関係で成果を求めて競争することで好結果を生みだしていると考えています。 生成AIがあるから広告代理店は不要とはならない ―媒体側の自動化などが進んできたことで、これまで広告代理店が担ってきた人的な役割の重要性が徐々に薄れてきているのではないでしょうか。 確かに広告プラットフォームのアルゴリズムが劇的に向上したことで、人間が細かい広告配信設定をせずとも、一昔前と比べると広告効果の最大化に向けて媒体側がかなりの部分で自動的に調整してくれるようになりました。また広告クリエイティブは、必ずしもデザイナーに委託せずとも、各種ツールを用いて自前で用意しやすくなってきています。 ただし、広告の配信前に適切な設定をする必要があり、一定の技術的な理解や実行が求められるので、こうしたアルゴリズムやツールを現状使いこなすことができている広告主は、まだまだほんの一握りに過ぎません。しかも世の中のデジタル化が進んでいくに従い、これから新しくデジタルマーケティングを開始する企業も増えていくことでしょう。いくら自動化が進んだといっても、デジタルマーケティングに関して経験値の低い企業がいきなりインハウス運用を行うのは非現実的です。 またデジタルマーケティングに関して既に十分な知見を持つ企業であったとしても、業務合理化を目的として、できる限り外部委託を進めようとする場合もあるはずです。こうした企業にとっては広告代理店が強力な味方になると思います。 ―生成AIの台頭によって、広告代理店を取り巻く状況は一変するという見方もあります。 生成AIが登場するずっと以前から、広告代理店の仕事を奪いかねないノーコードツールなどがたくさん出ていました。でもだからといって、例えば、WordPressやfigmaを使ってランディングページを自ら作成したり、Canvaを使ってバナーを自ら作るようになった広告主は、まだまだそう多くないはずです。 なお、生成AIは「適切な知見を持つ人」が「いかに適切にインプットをするか」でアウトプットが大きく変わります。つまりできる人の仕事の効率性を劇的に引き上げることはできるものの、万人に対して同様の成果を提供することは今現在はできないですし、この先もそこの不確実性は残る可能性が高いとも思います。 ―貴社のようにデジタルマーケティングに関して一定の知見を得た上で社内運用体制を整備している企業にとっては広告代理店の存在意義は薄まるのでしょうか。 インハウス体制を持つ当社でも、広告代理店を必要とすることは多々あります。とりわけ媒体社との強固なパイプ作りは、広告代理店ならではの機能だと思います。具体的な例を挙げると、広告プラットフォームは、特定の広告代理店を介してのみ新機能をリリースするということが往々にしてあります。このリリース直後の数カ月間で攻略法を得ることができれば、一般リリース後もしばらく当社の先行優位が続くので、非常に大きなメリットです。 社内人材に何を求めるか ―貴社のインハウス部隊は例えば広告代理店での業務経験を持つような方なのでしょうか。 いえ、どちらかというと事業開発領域の人材です。営業部やCRM担当といった他部署と連携した上でキャンペーンを設計し、広告運用まで落とし込んでいくという、社内人材だからこそ実行し得る統合的な業務をお願いしています。 少なくとも当社であれば、必要な知識やノウハウについては教えることができる環境が整っているので、特定のアドテクに精通していることよりも、きちんと社内連携を図った上で統合的な施策を実行できることを求めています。 ―インハウス人材について、資格や能力といった点ではどのような素養が求められているのでしょうか。 うーん。結局のところは数字に向き合う覚悟やコミットが求められるのかもしれませんね。例えばマーケターなら誰しも、「万が一にも設定のエラーが発生すれば広告費が一瞬で消えてしまうのではないか」という恐怖を抱いたことがあると思うのです。だから多くのマーケターは、1時間単位で管理画面に張り付いたり、または自分が目を離しているときでも管理できるような仕組みを構築したりしています。 だから、緻密さや数字への追求が優れている方でしたり、きちんとアラートが上がる仕組みなどを自ら構築できる人材が向いているのかもしれません。あとは、ユーザーの深層心理を想像したり確認することに固執できる人ですね。いずれの場合においても、業務に対するコミットがあるからこそ、そういった追求や、お客様のことを考え続けることができるのだと思います。 次世代エージェンシー像とは ―広告代理店に業務委託をする上でどんなことを重視していますか。 当然のことながら、様々な代理店がありますし、また一つの代理店の中にも様々な能力を持つ社員がいます。一般的な傾向としては、大きな広告予算を持つ広告主に対しては広告代理店はエース級社員を担当に、そして予算が少なければそれ以外の社員を担当にするので、予算の少ない広告主の方が、広告代理店に不満を感じることが多いのかもしれません。 広告主にとって重要なのは、広告代理店に丸投げしないことです。広告主側でもある程度の体制を構築することで適切な緊張関係に基づく競争関係を築くことができれば、より高いレベルで付加価値を提供しないといけない、という構造が作れ、より高いアウトプットを出していただきやすくなるかと思います。もちろん、そうなればインハウス部隊も良い刺激を受けてより高い成果を求めるようになるので、非常に良い関係性になります。 ―「次世代の広告代理店」にはどんなことを求めますか。 実質業界の慣習となっている「広告費の20%を手数料として徴収する」という事業モデルを見直すことはできないのでしょうか。 例えば、人手が足りなくて、「広告クリエイティブだけ大量に制作してほしい」とか「指示した通りに運用を回しておいてほしい」という状況は多々発生するわけです。ところが、広告代理店はそうした業務に対応し得る人員体制があるにも関わらず、媒体への出稿を前提とした出稿手数料ごとの事業モデルしか持たないので、広告主から適切に依頼することができず、場合によってはお互いに機会損失が生まれている場合もあると思います。同じデジタルマーケティングでも、LP修正やCRM設計は稼働時間に応じた業務対応ができることがあるのに、広告運用業務となった途端に広告費の手数料徴収モデルしか実質ないのは若干の違和感を覚えます。 ―広告代理店関係者からも「マージン(広告費の20%)」ではなく「フィー(専門作業に対する報酬)」にしたいという声を聞くことがあります。 そうですよね。手数料徴収モデルにおいては、契約条件にもよりますが、一般的には広告主がいきなり「ごめん今月は広告を止めて」と言えば、広告代理店はその指示に従わらざるを得ず、収益機会を丸ごと逸することになります。稼働時間に応じた課金システムや成果報酬型などの別の費用形態も持ち合わせることによって広告代理店が今よりもより機会損失をなくしたり、新しい収益機会を得られることもあるはずです。 おそらく業界慣習でしたり、一定の利益率を確実に達成できるためだとは思うのですが、デジタルマーケティング業務が多様化していることを鑑みれば、もう少し柔軟に対応してもらえると、広告主と広告代理店はより良いお付き合いができるような気がしています。 (ExchangeWire編集部より) 議論の続きは、ATS Tokyo 2025のパネルディスカッションで行う予定となっています。本テーマにご関心のある方は、ぜひ当日会場までお越しください! ATS Tokyo 2025 11月21日(金) 東京ドームホテルにて開催 広告主が本音で議論:次世代エージェンシー論〜代理店は必要か?〜 10:15-10:45 広告主のインハウス化、プラットフォーム直取引、AIを含めたSaaS型マーケティングツールの普及…。代理店はもはや「中抜きされる存在」なのか?それとも「戦略パートナー」として進化できるのか?今後求められるマーケターとしてのスキルは何なのか?広告主サイドのマーケティングスペシャリストが忖度なく議論する。 ATS Tokyoのチケットはこちらからお申し込みください。
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